暁新伝《BORUTO編完結》   作:モリッチ

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飛段復活

 僕は気絶したジャシン教の女を連れ、警務部に到着した。そこは大変な騒ぎになっており、右を見ても左を見ても余裕のある顔をしている者はおらず、怒号が飛び交っていた。泣きながら母親を呼ぶ子供すらいる。

 

 どうしよう。僕の様な子供を相手にするような雰囲気じゃないな。でも、ヒマワリちゃんが攫われている今そんな事気にしている場合じゃない。

 

 意を決して、誰かに話しかけようとしている所に一人の忍が話しかけてきた。

 

「どうしたんだい?」

 声をかけてきたのは青い警務部の制服を着て、風魔手裏剣を背負う太く真っすぐな眉毛をもった忍だ。

 

「あなたは?」

「俺は風魔コウタロウだ。現場の指揮を任されている」

 

 現場の指揮官か。なら、話は早い。自己紹介も早々に要件を伝えた。

 

「リオンです。ジャシン教と名乗る者たちと交戦し、一人を捕縛しました」

「それは本当かい?見た所、忍ではないようだけど」

 

 彼は驚いた顔のまま、リオンを見つめた。確かに、見た目は精々下忍一年目か二年目くらいの見た目の上、額当をしていないから忍かどうかも怪しいか。

 

「ええ、たまたま額当を忘れてしまって。そんな事より情報共有を」

「そうだね。現在、木の葉の里にジャシン教と呼ばれる集団が攻めてきている。目的は現在調査中だ。深刻なのは里中に狼が溢れかえっていることだ、下忍たちにはその避難誘導をお願いしたい。特に雷門カンパニーは今日セレモニーが行われる予定だったらしく、避難が遅れている」

 

 やっぱり敵はある程度木ノ葉の内情を掴んでいる。そうでなければ、こうも木ノ葉が後手に回るとは考えづらい。きっと、僕たちが岩隠れを襲撃した時の様に里の結界を抜ける暗号や飛段だとかの場所をリークした存在がいるはずだ。

 

「コウタロウさん。狼は殺さず無力化するように伝達してもらえませんか」

「どうしてだい?」

 

 さっき考えた情報はあくまで僕の推論。現在最も重要な情報はこれだろう。なぜなら、

 

「狼達の中には、敵の術によって姿を変えられた人間達が混ざっている可能性があるからです」

「何だって⁉」

 

 動揺のあまり、警務部の指揮を務めるという立場でありながら、思わず声を出してしまった彼であったが、直ぐに平静を取り戻した。直ぐに僕に指示を飛ばす。

 

「取り敢えず、すぐそこの刑務所にそいつを連行してくれないか。そっちに行けば尋問部がそいつから何か聞き出してくれるかもしれない」

「了解です」

 

 赤服の女を抱えながら、僕は考えてしまった。

 

 ただ事じゃないみたいだ。今なら確実に木の葉から脱出できる。土の暗部の一員として、救助に来てくれるだろう、ドントさん達のリスクを下げる為にも逃げるべきじゃないか。ふとそんなことが思考をよぎる。

 

 でも、今ここでボルトやヒマワリちゃん、あの泣いている子供たちを見捨てれば、名状しがたい何かを失ってしまう確信もあった。ボルトの声がよみがえる。

 

『周りなんて関係ねえ。やりたいようにやればいいさ』

 

 気づけば刑務所の前に立っていた。バンダナと黒いコート。顔中傷だらけの男がポケットに手を突っ込んで立っている。

 

「お前がリオンか。警務部から連絡が来ている、入れ」

 

 僕は決心した顔で男についていった。

 

「俺はイブキだ。手短にいこう、その女がジャシン教の構成員なんだな?」

「はい」

「取り敢えず、独房にぶち込んどけ。俺は拷問の準備に入る」

「いいんですか?僕を独房に近づけて」

 

 尋問部は機密情報を司る部署だ。当然、僕の事は知らされているはずなのに。僕の困惑が見透かされたのか、強面の男が言った。

 

「勿論、お前の事情は把握している。その上で言っているから、さっさとしろ」

 

 ・・・木ノ葉の人たちはどうしてこんなに直ぐに人を信頼するんだろう。僕が壁を作っているだけなんだろうか。

 

「一分一秒が惜しい。俺はもう行く」

 

 そう言うとイブキは鍵を渡して、一人さっさと行ってしまった。リオンは無機質で、どこかひんやりとする廊下に立ちすくむ。

 

「まあ、いまはそんな事気にしてる場合じゃないか」

 

 気絶した女を独房に入れた後、壁に並ぶ独房を眺めながら歩いているとふと目に留まる人物がいた。

 

「あなたは」

 

 鉄格子の向こうに座りこんでいたのは、七草の一人ロウだった。

 

「あの紫電使いから聞いたゾ、バトラを倒したんだってナ」

 

 僕と同様にチャクラ操作が封じられてるのか、実体の姿を彼女はしていた。相変わらず、目に毒な体系だったが少しやつれている様に見える。

 

「しかも、牢屋の外にいるってことは上手くやったみたいだナ」

「そっちは、そうでもないみたいですね」

 

 沈黙が二人を包んだが、それは気まずさではなく気安さのそれだった。それはきっと、僕も彼女も所詮同じ穴の狢だからだと何となく感じた。

 

「さっき抱えていた女は誰ダ?」

「彼女はジャシン教という組織の一人で、現在木ノ葉はそれに襲われているんです」

 

 ジャシン教と聞いて少し目を細めた彼女であったが、会話を続けた。

 

「で、何でお前がそいつを牢屋に運んでいるんダ?」

「・・・・・・木の葉に友達が出来まして、助けるために」

 

 ロウはたまらず息を漏らす。

 

「ふっ、相変わらずお人好しだナ。お前ハ」

「心外ですね。木ノ葉の人たちに比べれば僕なんて、大したことありませんよ」

 

 なにが琴線に触れたのかは分からないが、彼女が苦笑した。こんな表情もするんだと僕は思ったが口には出さなかった。ロウが誰に聞かせるでもない様に言う。

 

「正直、お前があの小娘を助けに来るとは思っていなかっタ」

「仲間ですから。助けるのは当然でしょう」

 

 彼女は無表情で壁を見つめる。今度は壁に吸い込まれて消えてしまうのではないかという声量で呟いた。

 

「仲間か。新鮮な響きダ」

「あなたにはいないんですか?」

 

 ロウはしばらくの間、沈黙した。何を考えているのか、あるいは振り返っているのか僕には分からない。

 

「昔は居たかもしれないガ、気づけば私の周りは仲間でなく部下しかいなくなっていたヨ」

 

 今度はリオンが沈黙する番だったが、長くは続かなかった。激しい衝撃が建物を襲ったからである。

 

「何だ⁉」

 

『署内に連絡。現在、雷門カンパニー及び火影岩のシェルターに多数の狼が進行中。速やかに撃退の援護に向かってください。繰り返します』

 

「ボルト‼」

「言ってやレ、行かなければきっと後悔することにナル」

 

 彼女はそう言ったきり横になってしまった。

 

「ええ、では達者で」

「そっちこそナ」

 

 リオンは意識を切り替え駆け出そうとしたが、ふと振り返る。

 

「七草の時・・・」

 

 言葉を発そうとしたが、自分にそれを言う資格はあるのかと逡巡し押し黙った。

 

「何ダ?」

「七草の時、あなたのお仲間を殺してしまいすいませんでした」

 

 僕はそれだけ言うと、今度こそ振り返らず走り出した。

 

   *

 

 ボルトは必死に駆けた。今までにないほどに走り、息は乱れ、足を痛め、それでもがむしゃらに駆けた。そして、着いた。

 

「父ちゃん‼」

 

 ナルトは息子の声に反応し一瞬驚いた表情になるものの、直ぐに火影の顔になる。

 

「何だ。見ての通り今は非常事態だ。アカデミー生は今すぐに避難を」

 

 ナルトが言うとおり、室内には普段はまず集まらないだろうトップクラスの忍達がいた。

 

 この中でボルトが知っているのは、サイさん、シノ先生、サクラおばさん、テマリおばさん、カカシのおっちゃんの五人である。まず、警務部全体を統括している者としてサイが意見を述べた。

 

「ナルトの分身達が里全域に向かってくれているから、最悪の事態は免れてはいる。しかし、とにかく雷門カンパニー周辺の避難を急がせないと、取り返しのつかないことになる」

 

 みなその意見には賛成したが、シノが懸念事項を述べた。

 

「しかし、経済区だけに集中するのは危険だ。なぜなら住宅街、特に高齢の世帯では避難が・・・」

「そもそもあの突然現れた狼は何なのか突き止めないと」

「奈良の森への援護にも誰か向かったほうが良い」

 

 サクラとテマリもそれぞれの意見を述べる。どの意見も至急かつ重大なものであるため会議は膠着状態に陥っていた。そんな中、大人達が一向に自身を見てくれないことに、ボルトは激しく苛立つ。

 

「聞いてくれってばさ‼リオン、あっいや友達の事なんだけど、とにかくそいつと帰っている時にジャシン教とかいう変な奴らと闘うことになって」 

 

 怒りと焦りからか要点が掴めない報告に、ナルトが厳しい声で言った。

 

「ボルト。落ち着いて喋れ」

「ジャシン教のゲーテとかいう男と蟲使いが攻撃してきたんだ」

 

 シノが蟲使いという言葉にピクリと反応する。サイは彼が持っている情報は重要度が高いと判断し、先を促す。

 

「で、どうなったんだい」

「リオンが戦ってくれたんだけど、ゲーテが母ちゃんを狼にして攻撃してきたんだってばさ。それで、あいつはヒマワリを攫って奈良の森とかいう所に逃げちまって、それで」

 

 早口で伝えられた想定外の事実に全員が固まる。特にテマリの動揺は大きかった。勿論、奈良の森という言葉のせいである。ここにいる最年長の忍として、いくらか冷静であったカカシがボルトに確認を取った。

 

「それは本当かい?」

「本当だってばさ!」

「大変だわ。今すぐ救出にっ」

 

 サクラが焦った表情で喋る。彼女にとって、今の情報がもし真実なら親友が獣に変えられ、その愛娘まで敵の手中に落ちたことを意味するからだ。

 

「サクラ。落ち着いて。それより優先すべきことがある。今すぐ各忍に狼の正体が木の葉の人間だと伝えないと」

 

 サイが諭すように言う。一見、非常に思える意見を出す彼も、心の中では激しく困惑していた。しかし、かつて根に所属していた忍として、自分の心を抑える事に長けている自分こそがこういう意見を述べるべきだとも思っていたのだ。

 

「加えて、雷門カンパニーへ向かわせる忍びの編成も考え直さねば。なぜなら、市民の避難誘導に加え、狼の対処法が殺傷可ではなく捕獲となると並の忍では困難だからだ」

 

 シノが付け足す。

 

「ふざけんなっ!ヒマワリの救助が先だってばさ。なあ、父ちゃん」

 

 そこでナルトが口を開いた。

 

「雷門カンパニーの方は俺が行く」

 

 ついに、ボルトの堪忍袋の緒が切れ、父親に殴りかかるも張り倒される。床に尻をつく息子にナルトは言った。

 

「ボルトッ。俺たちは木ノ葉の忍だ、だったらまず守らなきゃいけないものがある」

「じゃあ、家族は見捨てるって言うのかってばさ‼」

 

 そこで、カカシが止めに入る。

 

「ボルト。落ち着け、連れ去ったゲーテとやらは奈良の森に行ったんだな?なら、あっちにはシカマル達がいる。きっとやってくれるさ。それに、ナルトは行けないが他の奴らを向かわせる」

「私が行こう」

 

 カカシがそう言って場所を取りなし、テマリが結論づけようとした瞬間、建物に衝撃が走る。

 

「何⁉」

「あれは!」

 

  狼の大群が火影岩、つまりここへ侵攻してきていた。サイが苦々しい表情になる。それはシノも同様であった。

 

「まずいことになった」

「同感だ。何故なら後ろにはシェルターがあるからだ」

「ここの防衛に人を回して、なおかつ狼は捕獲して、さらにけが人の治療ともなると奈良の森へはとてもじゃないけど」

 

 サクラが無意識に漏らす。カカシは一刻も早く駆け付けたいであろうテマリに要請せざるを得なかった。

 

「テマリさん。あなたには火影岩のシェルターの防衛指揮を執ってもらいたい」

 

 彼女は身も竦むような冷徹な瞳で、問い直した。

 

「どういう意味だい」

「テマリさんはこの中で最も広範囲の術を扱える。それに風遁は敵の捕獲にも向いている。あなたがこの最終防衛ラインに最も適した忍なんですよ」

「・・・」

 

 歯ぎしりしながら黙り込むテマリさんの様子を見ながら、ボルトも悟っていた。誰もが精一杯やっているが、限界になっていることを。大人に比べて実力のない自分は今すぐにでも、一般市民を連れて避難すべきだということも。でもだからこそ、言わなければならなかった。

 

「俺は一人でも行くってばさ」

「ボルトッ」

 

 ナルトが声を荒げる。

 

「いいか、ボルトこれは授業なんかじゃない本当に命の危険があるんだ。一人で行かせられる訳ないだろう」

 

 シノがなだめるように言う。彼の担任を務めている身として生徒の気持ちは痛いほどわかるが、かといってそれに流されるわけにもいかなかった。その時、断腸の思いでいる彼の耳に、涼しげな声が響く。

 

「なら、僕も行きます」

「リオン君‼本気で言ってるのかい?」

 

 疑念の発言とは裏腹にカカシはどこか嬉しそうな様子だった。

 

「ええ。ゲーテは人だけでなく無機物すら狼に変える能力を持っている。しかし、何かしらの条件があるみたいで、確証は無いですけどおおよそ想像はついてます。僕なら、あいつを倒せます」

「なら、こっちに来なさい」

 

 カカシはリオンを前に出し、印を組んだ。静かに僕の体に触れる。

 

「解」

 

 瞬間、僕の体にまとわりつく違和感が消え去った。体が軽い。これなら爆遁が使える。カカシはみなを代表して礼を言った。

 

「君の封印を解いた。ボルトを頼んだよ」

「私からも礼を言わせてくれ。うちの馬鹿亭主を頼む」

 

 二人からの重い、重い視線をしっかり受け止めながら僕は頷く。

 

「任せてください」

 

 火影として、ナルトが皆に命じた。

 

「ではサイは経済区を、シノは住宅街、サクラちゃんは医療班の統率、テマリはシェルターの防衛、俺は木ノ葉全域を担当する。リオン、そしてボルト。お前たちには奈良の森へ向かってくれ」

 

 そう言って火影はオレンジ色の光を纏って、掻き消えた。

 

「それじゃあ、僕らも行こうか」

 

   *

 

 ヒマワリは怯えていた。お兄ちゃんと突然りゅうがく?に来たリオン君の為にお母さんとごはんを作っていたら、急に変な男の人が来て、それで、それで・・・

 

 涙があふれそうになるけど、ぐっと我慢する。お母さんが忍はピンチになっても泣いちゃダメだって、出来ることを精一杯しなさいっていってた。

 

 ヒマワリは目の前の状況をはあくしようとした。

 

 目の前には怖い狼たちがうろうろしていて、うんうん。狼が8匹と誰か人が倒れてる。あれは、シカマルおじさんだ!血が出てるっ。助けないと。

 

 ヒマワリが密かに決意を固める一方、シカマルは朦朧とした意識を辛うじて繋ぎとめていた。彼を突き動かすのは火の意思。

 

 だが、その心は折れずとも体は限界となっていた。体の節々は悲鳴を上げ左目は額から流れ落ちる血で見えなくなっていた。

 

「驚嘆に値するよ。神父が言うのもおかしなことだが自身の信条に殉じ、命を懸ける者は強いな。滑稽だが」

 

 シカマルの周囲は倒された狼たちが山となり、あるいは死して教徒達の姿に戻って倒れ伏した人の山となっていた。彼はたった一人でゲーテを相手にしながら何十頭もの狼を始末したのだ。だが、彼を最も苦しめたのはかつて仲間であったはずの二人が襲い掛かってくることであった。

 

「ハァハァ。お前と会話すんのめんどくせえ」

 

 黄色と赤茶に大きな狼を中心として、獣たちがじりじりと近づいてくる。

 

「お前との問答は愉しかったよ。だが、そろそろ終わりにしよう」

 

 ゲーテが指を鳴らすと一匹の獣がシカマルの命を狩らんとす。彼は影を伸ばそうとして、意識が途切れた。この刹那の間が命取りとなる。彼が再び目を開けた時にはもうどうしようもない状況になっていたのだ。

 

 一輪の花のような声がした。

 

「はあっ!」

「キャウン」

 

 狼の首筋に刺さっていたのは、ヒマワリの指先。彼女の白眼は正確に猛獣の点穴を見抜く。

 

「ヒマワリっ⁉」

 

 驚くシカマルを背にヒマワリは左手を前に構えた。瞳の白眼は真っ直ぐ獣達を見据えていたが、一抹の不安も抱えていた。

 

「シカマルおじさんは絶対に守るからね」

「六六六達よ纏めて始末しろ」

 

 男の発言にシカマルが声を上げる。

 

「おいっ、この子を殺したら」

「御子さえ復活すれば誰も止めることはできない。狼に食い散らかされながら飛段様の復活を目の当たりにするがいい」

 

 狼は二人を取り囲みその包囲網を少しずつ少しづつ狭めていく。木ノ葉の二人が絶体絶命の危機に瀕しているのを傍目に、ゲーテは飛段が埋まっている穴を塞いでいる岩に手を触れた。

 

 岩々は獣へと姿を変え自ら穴から飛び出しては岩に戻り、それを際限なく繰り返す。そしてついに一匹の狼が骸骨を咥えて飛び出してきた。

 

「おお御子よ。今再びの受肉を果たしましょう。生贄はここに」

 

 ゲーテは教典を取り出し唱え始める。

 

「忍法・死司捧肉」

 

 赤服の教徒達の体が生死関係なく、血肉の塵となり骸骨に吸い込まれていく。死した者であったらまだ救いはあったが、まだ生者であった者には地獄としか言いようが無かった。何故なら、生きながらにして自身の身体が血潮へと変えられていくからだ。

 

 教徒達の絶叫に恐怖を感じながらも、少女は目の前の狼達から逃げ出さなかった。

 

 どうしよう。さっきはたまたまできたけど、こんなに沢山はむりだよう。でも、ここにはヒマしかいない。助けてお兄ちゃんっ。

 

 絶望的な状況の中に一つの声が割り込んだ。

 

『ヒマ~!!』

「お兄ちゃん?」 

 

 突然頭に響いた声の主を探して周囲をきょろきょろする。狼達はそんなヒマワリの様子などお構いなしに飛び掛かってきた。

 

 たまらずヒマワリは頭を手で押さえしゃがみ込む。少女と狼を分かつのは一言の詠唱。

 

「喝」

 

 狼達の真下が爆発し、火炎と爆風が彼らを吹き飛ばし木々を焼き尽くす。狼の大半は消し飛んだが、黄色と赤茶の狼だけは難なく回避した。

 

「むっ」

 

 ゲーテは空中で回転しながら爆風の勢いを殺し危なげなく着地する。火炎が少女とシカマルから男を遮った。ボルトがヒマワリを抱きかかえる。

 

「大丈夫か?シカマルのおっちゃん」

「ボルトか。助かった。マジでやばかった」

 

 リオンが三人の前に舞い降りた。ヒマワリはお兄ちゃんの顔を見上げて安堵し目を潤ませる。

 

『お兄ちゃんっ』

『頑張ったな。ヒマ。兄ちゃんとリオンが助けに来たからもう大丈夫だってばさ』

 

『リオン君?』

 

 そっと、目の前のお兄さんを見上げる。爆風ではためく白い外套と揺らめく赤髪からは昨日の優しそうな雰囲気は全くしなかったけど、とってもかっこよく見えた。

 

『シカマルさん。恐らくですが敵の術のカラクリが分かったかもしれません』

『俺も、実は一つ考えがある』

 

 シカマルは覚束ない足で立ち上がる。全身血だらけでぼろ雑巾の様になりながらも、余裕の笑みを浮かべていた。まだ小さいが強力な二人の援軍が来たからだ。

 

「ゲーテさんよ。どうやら、木ノ葉は詰んでいなかったみたいだな。どうやら飛車角の到着だ」

「いや、飛車はこちらのものだ」

 

 ゲーテの深く落ち着いた声とは正反対に、酷く耳障りな声が唐突にした。

 

「そうだぜぇ?だって俺が飛車だからなあ」

 

 爆炎を切り裂いて現れたのは血のような赤い凶鎌と、赤雲の外套を羽織った男。その凶悪な相貌はまるで悪魔の如し。シカマルが目を見張った。

 

「飛段!」

「よお久しぶりだなあアアア。下しに来たぜ天誅をよおおおお!!!」

 

 

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