暁新伝《BORUTO編完結》   作:モリッチ

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決着

 

 火影岩には歴代の火影たちの顔が彫られている。七代目の顔岩ももちろんある。その頭上に七代目火影・うずまきナルトは立っていた。

 

 里の全住人の避難が完了したことにより、ナルトは決断をする。自分が本気を出せば、里の家々やその他建造物はただでは済まないだろう。それでも、目の前の敵から里のみんなを守るためには出し惜しみをしている場合ではなかった。

 

 ナルトの瞳孔が十字に開く。それは九尾の力と仙人の力を統べる者にのみ許されし瞳。彼の全身がオレンジに光り輝き、襟に六つの勾玉が浮かぶ羽織が金色にはためく。

 

 ナルトは自分の中の九喇嘛に話しかける。

 

『いくぜ、九喇嘛。準備は出来てるか』

『当たり前だぁ。ありったけで行くぞ!!!』

 

 火影が瞬間移動した。いや、ただ駆け出しただけだ。彼ほどの者になると、全ての行動が空間移動したかのように見えるのだ。

 

 だが、死神は文字通り次元が違う存在。的確に神への反逆者に対して、無数の腕を伸ばしていく。無数にして目視不可、こんなものを避けることが出来る存在など、世界にありうるはずも無く、ついにナルトが掴まれた。鬼がケタケタとあざ嗤う。

 

「あいにく、姿が見えねえ敵とはやりなれてるんだってばよ」

 

 ボンと音を立てて掻き消える、ナルト。ジャシンの顔が歪んだ。まるで、宙に消えた蚊を探すように鬼の目が蠢く。だが、直ぐに死神は彼の姿を見つけることとなった。紫色に極光を放つ球体と共に。

 

「仙法・尾獣螺旋丸!」

 

 死神が山の様に巨大なヒ首を振り払う。螺旋丸が切り裂かれる。しかし、鬼の一振りはそれだけにとどまらない。風圧だけで、空を裂き、里を裂き、山まで裂いた。真っ二つになった山に、真っ二つになった螺旋丸が落下する。

 

 超常的な爆発が起こった。それは跡形もなく山を消し飛ばし、地図を書き替えた。九喇嘛が吠える。

 

『おい、ナルト。せっかく作った螺旋丸が当たる前に切り裂かれたら、世話ねえぜ。落下先が山だったから良かったが、里に落ちたらどうするんだ』

『分かってんだけど、敵の姿が見えねえから、狙いが定まらねえんだってばよ』

 

 火影はジャシン相手に攻めあぐねていた。常に背後のシェルターに気を配りながら、不可視かつ無数の腕を掻い潜り、匕首を突破して、高威力の一撃をお見舞いすることは、非常に困難であった。

 

 ナルトから見れば、見えない何かに螺旋丸が切り飛ばされたように感じられた。

 

『恐らくキバの言ってた腕は螺旋手裏剣で破壊できる。でも、逆に敵は尾獣玉螺旋丸を破壊できる何かを持っているみてえだ』

『わしにも確証は無いが、刀の様な物を持っているんだろう。スサノオの使えるサスケがいないのが痛いな』

 

 九尾と対策を練りながらも、回避と攻撃の手を火影は緩めない。ジャシンから少しでも注意を反らすと、シェルターに向かうからだ。

 

「なら・・・多重影分身の術!」

 

 一気に千人ものナルトが現れた。四人一組になってオレンジに輝き、その手に螺旋丸を宿す。

 

「いくぜッ。仙法・尾獣玉帯連丸!!」

 

 大災害に匹敵、あるいはそれ以上の地震が、暴風が巻き起こった。数十発も有れば里が吹き飛ぶものが、二百五十発。ナルトが上空に向かって放っていなかったら、衝撃波だけで里は無くなっていただろう。噴き上がる黒煙の中で稲妻が走る。

 

『どうやらやったみたいだな』

『ああ』

 

 ナルトは一切の油断無く感知を開始したが、ジャシンの存在は弱弱しく薄っすらとしたものになっていた。

 

『敵は風前の灯火だ。早く止めを刺せ』

『おう。流石にチャクラを使いすぎたしな』

 

 火影は青い螺旋丸を光らせる。後は叩き込むだけという段階で、数十人の人間達が建物の影から出てきた。

 

「おいっ、今すぐそこから離れろ!」

 

 慌てて叫ぶナルトの声を完全に無視して、その人間達はひれ伏した。

 

「我らがジャシン様、どうか我々の魂を喰らいたまえ」

「しまった」

 

 彼が里の住民だと思った人々はジャシン教徒であった。私服を着て潜伏していた彼らに出し抜かれた火影は一瞬対処が遅れる。

 

 ナルトは感知した。教徒達の命が消え、ジャシンの存在感が増したのを。白装束の鬼は舌なめずりし、狂乱の叫びをあげた。

 

 衝撃波が悉くナルトの分身達を吹き消していく。本体はびくともしなかったが、仙人チャクラも九喇嘛のチャクラもほとんど使い果たした彼は風圧の中で身動きがとれない。

 

「逃げろっ、みんな!!!」

 

 死神は耳まで届く口をニタと開いた。木ノ葉の全市民が避難しているシェルターに匕首を振り下ろした。シェルターは火影岩に守られているがその程度、神にとっては空気に等しい。

 

 死神の刃が火影岩を一刀両断する刹那、不気味なフクロウの人形が舞い降りた。

 

「喝」

 

 先ほどの火影の攻撃に比べれば児戯ではあるが、砂隠れなら一発で壊滅するほどの爆発がジャシンの刃を反らす。ずれた結果、まだ顔岩の彫られていない部分が岩盤まで断ち切られたが、奇跡的にシェルターは守られた。

 

「危ない所でしたね」

「何やってんだよ、父ちゃん」

 

 ナルトの目の前に二人の少年が空から降ってきた。

 

「ボルトに、リオンか。でも、何であいつの攻撃位置が分かったんだ?」

「ボルトの右目のおかげです」

 

 予想外の答えに彼は目を見開いて、息子を見る。確かに、右目が白く輝いていた。

 

「どうだ、父ちゃん。やっぱり、俺は白眼が開眼してたんだってばさ」

 

 途轍もなく得意げな顔をする息子の目を見ながら、ナルトは若干引っ掛かっていた。彼が普段見る白眼とは明らかに格が違って見えたからだ。だが、今は火影としてやるべきことがある。

 

「ボルト。お前にはあいつが見えるんだな」

「お、おう」

 

 いつもどこか自分を半人前の子供の様に見てくる、父親が向ける重い眼差しにボルトは嬉しいよりも緊張とも違う重圧を感じた。

 

「分かった。俺の残りのチャクラをありったけ託す。あいつに叩き込んでくれ。やれるな」

 

 急に託された里のみんなの命にボルトは心が竦んだ。揺れる眼差しで父親を見返す彼に僕は言った。

 

「大丈夫。僕も一緒に行くから。これまで二人で突破できなかった困難があった?」

 

 少年は僕を見返し言った。

 

「そんなもの無いってばさ。今までも、これからも」

 

 息子が決心したのを見て、ナルトは言う。

 

「ボルト手を出せ」

 

 言われるままに手を伸ばすボルトにナルトは手を添えた。親子二人の手の上に青く煌く光。

 みるみる強く大きくなっていくそれを見て、少年は呟いた。

 

「ここまでするのに、一体どれだけ・・・」

「これが螺旋丸だ」

 

 独特な音を鳴らして、乱回転する青き球体に僕は目を細める。これが火影の力か。

 

「行くぜ、リオン!」

「うん!」

 

 同時に跳ぶ。怪鳥が空中で僕らを乗せ一気に加速した。不可視であれば回避不能の腕も、視覚共有をした鳥が避けるのは造作もない。ギリギリまで接近し飛び降りる。

 

 ジャシンも明らかに僕たちから見られていると悟ったのか、匕首を振り上げた。

 

 ナルトさんの二百五十発の螺旋丸と違い、こちらは一発きり。陽動は出来ない。敵が上か、こちらが上か。それだけだ。

 

 刃と球がぶつかり合った。接触部から迸散るチャクラが空間を削っていく。拮抗するそれは、次第に崩れていく。僕たちが押されるという形で。

 

 じわじわと螺旋丸に切り込んでいく匕首を感じながら、僕は考えた。チャクラが足りない。どこから、もらえば。こうなったら、

 

「そんなの決まってるだろ。里のみんなからもらうんだよ」

 

 ボルトがニヤリと笑った。どうやら同じことを考えていたみたいだ。チャクラ糸をナルトさんとシェルターへと伸ばす。

 

『ナルトさん!』

『どうした』

『シェルターにいるみんなからチャクラを貰いたいです。説得を』

『任しとけ』

 

 ナルトが電光石火でシェルターに向かった。そろそろ限界が近い。匕首が螺旋丸の核に届きそうだ。

 

 じりじりと近づいてくる刻限に届かれてしまうと思われたその時、伸ばしたチャクラ糸から膨大なチャクラが注がれてきた。

 

「これ程とは・・・」

「負ける気がしねえ」

 

 木ノ葉の全ての人々からもたらされるチャクラが混ざり合い、螺旋丸は虹色に輝く。匕首はとっくのとうに弾かれ、ジャシンは刃の部分で懸命に受け止めていた。

 

 どこまでも光り輝いていく螺旋丸が臨界に達す。渾身の力で押し込み、ボルトは雄たけびを上げた。

 

「木ノ葉螺旋丸!!!」

 

 螺旋丸はジャシンを巻き込んで、空へと飛んでいき、月を超えた所で爆発した。

 

   *

 

 暗雲が晴れ空が見えたかと思うと、清々しい青空が広がっていた。いつの間にかもう朝になっていたらしい。

 

 僕は体力を振り絞って眠り込んでしまったボルトをベンチに寝かせ、一人木ノ葉の里の街並みを散策していた。ズタズタになってしまった顔岩を背にして、あうんの門へと向かう。

 

 里の人々は疲労困憊で、火影ですらチャクラを使い果たして動けないだろう。ということは、ここを脱出してドントさんのもとへ帰るのは今ということになる。

 

 たった一週間しかいなかったが、この里の人には本当にお世話になったし、思い出の数が最も多いのもここ木ノ葉になるだろう。

 

 ボルトに連れて行ってもらった商店街を眺めながら、歩いていると蒼髪の少女がお店の一つから出てきた。雫だ。

 

「何買ったの?」

「な、なんでもないわよ」

 

 慌てて何かを背に隠す彼女の様子に興味を覚える。ちらりと出てきたお店の看板を見るが、木ノ葉忍具店と書いてあった。

 

 別に隠す事でもないと思うんだけどな。軽くフェイントをかけて覗き見る。

 

「ちょっと!」

 

 じたばたする少女の手がずれて、商品名が見える。・・・基礎から始める傀儡キット。

 

「さては、僕の新しい傀儡を見て自分のも欲しくなったな」

「そ、そんなわけ無いじゃない。リオンを迎えに行きがてら暇だったから、なんとなく買っただけよ。なんとなく」

 

 研究班のゲンナイさんを穀潰し扱いしていた彼女が傀儡に興味を持ってくれるとは。人に理解されない趣味の同志が増えたことが、少し嬉しい僕であった。

 

「で、店員は避難していないみたいだけど、ちゃんとお金払った?」

「失礼ね。ちゃんと代金は置いてきたわよ」

 

 ぷんすか怒る雫の後を追いながら、僕は木ノ葉の里に別れを告げた。

 




これにて、木ノ葉編は終劇になります。

正直、ナルトが動けない理由を考えるのが、一番大変でした。場所を気にせず、チャクラ満タンのナルトであれば二回はジャシンをたおせるでしょう。

もしサスケが居たら四回は倒せるかもしれません。この二人がチートすぎるんじゃ。

原作のボルトの成長フラグはモモシキ戦ですが、こっちでは前倒しされた形になります。

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