暁新伝《BORUTO編完結》   作:モリッチ

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後書きで、とんでも展開の解説をしています。本来なら文中で描写すべきなのですが、当時を知る人物と出会う展開が書けなかった場合。永遠の謎になってしまうので書きました。


REVOLUTION

 僕とドントさんは例のトラウマ空間にいた。このコンクリートの空間、本当にどうにかならないんだろうか。地面こそ土だが、それでもカチカチだ。そんな僕の苦悩をよそに彼は巻物を口寄せした。

 

 巻物は表のようなものが描かれており、風・火・土・雷・水・陰・陽の性質を表す文字と数字が複雑に表を埋めていた。

 

「血継淘汰についてはもう知っているな」

「はい」

 

 二種類の性質を同時に扱った結果生まれるのが、血継限界。これは基本的に先祖代々血の繋がりによってのみ受け継がれる先天的な術。これに対し、血継淘汰は三種類の性質を同時に扱う術。こちらは伝授もしくは開発によって得る後天的な術だ。

 

「この術の習得において、難関が三つある。一つはこの膨大なチャクラ合成表を覚えることだ。血継淘汰はただチャクラ性質を混ぜれば出来るものではない。それぞれに適切な比率がある」

 

 言われてみればそうかも。植物だって、水と土のバランスを間違えれば育たない。ということは、血継限界を司る一族は無意識にその配分が出来るということか。

 

「二つ目は、同時に複数のチャクラ性質を扱うこと。血継淘汰は三種だが、それ以前に二種の性質変化ですら扱うことすら非常に困難だ。喩えるなら、右を向きながら左を向くようなものだ」

 

 ドントさんはさらに言葉を続ける。

 

「最後に、チャクラの分量を繊細に調節することだ。一般的に忍は一定のチャクラコントロールが出来るようになれば、後は攻撃力・規模に走る。しかし、血継淘汰を使う上では針の穴を通すような繊細さが重要だ」

 

 そう言って、彼は馬鹿でかい表の一部を指した。風・雷・土・磁と書かれている。

 

「以前お前のチャクラ性質を調べた時は、風・火・雷・土の反応があったからな。これらから創れるチャクラ性質は磁遁だろう。三代目風影も磁遁だったようだが、あれは血継限界だ。厳密には違う。比率表を覚えたら一度やってみろ」

 

 彼はそう言って腕を組んだ。というか、やってみろって随分投げやりだな。取り敢えず、やってみるか。

 

「まあ、いきなりは無理だろう。だが、何年か修行を積み重ねれば・・・・・・」

「出来ました」

 

 僕の左手の上で、黒い砂鉄が渦を巻いていた。よく見ると、訓練場の地面から吸い出しているらしい。ちょっと得意げにドントさんを見と、この世の終わりのような顔をしていた。弟子の成功にそんな反応をするとは・・・

 

「馬鹿な・・・血継淘汰は右を向きながら、左を向いて、後ろを向くようなものだぞ」

「そんなことずっと前からやってたじゃないですか。視覚を共有して、全方向を見てたでしょう」

「そういうことを言ってるんじゃない。複数の複雑な動作を同時にやるということのだな」

「傀儡を百体同時に操れるのに、三つくらい造作もないですよ」

 

 ドントは昔を振り返っていた。師であるオオノキに嫌味を言われながらやった辛い修行の日々を。

 

「チャクラの比率調整はどうした。針の穴を通すようなやつだぞ」

「針の穴くらい、とっくに通せますよ。チャクラ糸は細さが命なんですから」

 

 しばらくの沈黙の後、彼は言った。言い知れぬ悲しみが彼の声からは感じられた。

 

「修行終了」

「やったー」

「最後にこれもやってみろ」

 

 彼が指さしたのは、風・土・火・塵と書かれている表だ。塵ってまさか。

 

「これはオオノキが創り出した塵遁の比率表だ」

 

 磁遁と違って、小数点のレベルで複雑な比率が書かれていた。でもまあ出来るだろう。さっそくかつて土影がやっていたみたいに手を合わせる。

 

「塵遁・限―」

 

 訓練場が爆発した。僕は手元での突然の爆発になすすべが無い。慌てて土矛を張るも、衝撃で吹き飛んだ。立ち込める黒煙の中、ドントさんの声がした。

 

「生きてるか」

「な、なんとか」

 

 彼には理解が出来なかった。磁遁をあれほど簡単に習得できたはずのリオンが、難易度は高くなるとは言え、塵遁でここまで失敗をするとはと。だが、ここで彼はある可能性に思い至った。

 

「おい、リオン」

「なんですか?」

「お前、火遁と土遁はデイダラの経絡系から来て、風遁は不明で雷遁はお前自身の経絡系から来ると言ったな」

 

 嫌な予感がする。恐る恐る質問に答えた。冷汗が凄い。傀儡だから出ないけど。

 

「・・・はい」

 

 黒煙が流れる。ドントさんの顔は見えなかったが、その声は言い知れぬ喜びに満ちていた。

 

「もしかして、雷遁はリオンから来るものじゃなくて、雷遁・風遁セットでその不明の人物から来てるんじゃないか」

「その不明の人物とは?」

「三代目風影だ」

 

 ・・・確かに、違和感はあった。僕には二人の経絡系が移植されている。一人はデイダラ。二人目は不明。初めてドントさんと闘ったとき、爆遁が覚醒したのに、もう一人のが覚醒しなかったのはなぜだろうと。

 

 覚醒してたのだ。雷遁が。そして、雷遁と風遁。僕の制作者であるサソリ。ここから推測される僕のもう一人の移植者は、かつてサソリに殺され傀儡にされた、磁遁の血継限界・三代目風影が一番ピンとくる。

 

「つまり、さっきの磁遁は血継淘汰が成功したという訳ではなく、単純に爆遁を使ったのと変わりないということですか」

「そうだ」

 

 僕の声に言い知れぬ悲しみが満ちた。

 

「ということは」

「修行続行」

 

 こうして、地獄の修行生活が幕を開けた。

 

  *

 

 岩隠れの大会議室で、四代目土影・黒ツチは窮地に陥っていた。彼女は先のテロ事件において、犠牲者こそ居なかったものの里中の高層ビルを爆破し、老中と三代目土影までも殺めた犯人を取り押さえるどころか、敗北するという致命的な不祥事を犯していた。

 

 よって、その責任追及の嵐が会議室で巻き起こっていたのだ。勢力は二つに分かれている。

 

 自国第一主義を掲げる大名、及び現土影の融和路線が気に入らない戦争世代の忍達。彼ら忍達は平和になりすぎて、腑抜けてしまった世界で忍の存在価値がどんどん失われていくことが満足いかないのだ。そして、五大国の中で最弱の扱いを受けていることが堪らなく悔しいのだ。

 

 一方、土影を庇う勢力もいる。その筆頭は老中であったが暗殺されてしまった。現在は融和を望む黄ツチやその他和平派の忍達が奮戦している。

 

「だから、何度も言ってるダニ。今回の犯人は暁並みの戦闘力を持っていて、あの状況では岩隠れのどの忍がいても、どうしようもなかったダニ」

「暁が何だ!そんな奴ら、俺が居れば簡単に始末できた」

 

 今、黄ツチに反発しているのはモブ土。岩刀の使い手で、茶髪。岩隠れの忍装束を着たガタイの良い男だ。黒ツチ達の遠縁にあたるが、残虐な性格から不遇の扱いを受けていた。

 

「それに、犯人はもう捕まったダニ」

「それも、岩の忍ではなく木ノ葉の忍が捕まえたと聞いた。先代火影が行くというのに、当事者の現岩影がしっぽを巻いて人任せとは、どういう了見だ!」

 

 モブ土の言葉に、他の忍達も呼応して叫ぶ。必死に黄土がなだめる中、会議室に真っ青になった忍が入ってきた。土影に何かを耳打ちする。

 

「オオノキのじじいの仇を取り逃がしただと!!!」

 

 激怒する黒ツチに、激怒する忍達。もはや会議は大混乱になっていた。大名が糾弾する。

 

「土影よ。いよいよ、後が無いでおじゃるな。わしはお主の土影としての器に疑念を抱いておるわ」

 

 はやしたてる忍達に黒ツチは唇を噛むことしかできない。伝令の忍に詳細を問う。

 

「なぜ取り逃がしたんだ。木ノ葉はなんて言ってんだ。捜索隊は送ったのか?」

「それが、木ノ葉は今、大問題が発生したためその余裕がない。岩隠れには申し訳ないが、捜索隊は送れないとのことで」

 

「ふざけるな!!!」

 

 もはや誰が言ったのか分からない。おそらく、会議室の皆が思ったことだろう。モブ土が叫ぶ。他の忍達もわめく。

 

「土影と老中の暗殺者捕縛より、重大な事なんかあるわけないだろう!」

「木ノ葉は先の大戦で世界を救ったからって、舐めてるんだ!」

「ふざけやがって!」

「ちくしょう。思い知らせてやる」

 

 怒号が飛び交い収拾のつかなくなった会議室に一人の老人が入ってきた。黒いローブを纏ったその人はこの場の誰よりも深く重い空気を放っていた。

 

「皆の者、黙れ」

 

 シンと静まる会議室。大名がまず口を開いた。

 

「おお、シンゲンではないか。久しぶりでおじゃる」

「あいつが、シンゲン。あの暗部の・・・」

「噂には聞いていたが、実在していたとは」

 

 黒ツチは顔の見えない老人をしっかり見据えて、睨みつけた。そうでもしないと、気迫負けしてしまう気がしたからだ。

 

「第四次忍界大戦。人々は共通の敵を前に、一つになったと錯覚した。里は平和というぬるま湯につかり、統制を緩めた。結果、周辺の隠れ里では昔から燻ってきた憎しみが破裂した」

 

「戦後の発展により、世界の至る所で不平等が生成され、治安は悪化し、紛争は止むことが無い」

 

 誰もが彼の発言に聞き入った。それだけの重みが感じられたからだ。だが、土影だけは違った。

 

「違う。五大国は二度と争いのない世界を創るために、懸命に強調し、協力して―」

「それが、いまのザマか。今の世界か。木ノ葉が何をした。結局は自国の問題とやらを優先して、見捨てたではないか」

 

 会議室の後方で膨張している大勢の忍達も同調した。彼らは爆発したのだ。心に燻っていた不満が、木ノ葉一強の世界。平和という退屈な世界。薄れていく自らの存在意義。

 

 そして、遂にシンゲンは言った。

 

「岩隠れが世界を支配するのだ。そして、秩序をもたらそうではないか。立ち上がれ忍達よ。我々の力で真の平和を勝ち取ろう」

 

 忍達は歓喜した。皆が立ち上がり己を鼓舞する。

 

「それだけは、駄目だ!」

 

 黒ツチは立ち上がった。土影として、人として、それだけは認められない。たとえ今、土影の座を失っても、命を失っても止めなければならない。

 

 黄ツチも立ち上がった。戦争を嫌う忍達も立ち上がった。一触即発。もう後戻りできないギリギリの所まで来てしまった。

 

「ふむ。わしは土影と二人で話がしたい。腹を割って話すのだ。皆は下がって、岩隠れの大広場に全ての忍を終結させてくれまいか。岩の忍全てがこれからの話し合いの結論を知る権利がある」

 

 心配する黄ツチに黒ツチが笑顔で返した。

 

「心配すんな。あたしを誰だと思ってるんだい」

 

 そして、シンゲンと黒ツチ二人は岩影室に着いた。彼女は岩影の席に着き、シンゲンは用意された席に着く。

 

「あんたは何者だ」

「そんなことは、この際どうでもよい」

 

 部屋には張り詰めた空気が満ちている。肌を引き裂かれそうな空気の中、土影は言った。

 

「あんたは、間違っている。今までどれだけの忍が、人々が血を流したと思っている。どれだけの悲しみが憎しみが、この世界を覆ってきたと思っているんだ。やっと、勝ち取った平和なんだ」

「偽りの平和だ。わしには見える。光ある所には闇があり、その闇がいつかどうしようもない所まで肥大する。いずれ、五大国の平和は崩れる。今の平和は五つにひび割れた平和だ。だから、一つにするのだ」

 

 土影は拳を握りしめた。涙が込み上げてくる。自身の不甲斐なさに。意識を亡くし、眠っている先代オオノキなら、もっと上手くできたのだろうか。里の人々の不満を目の当たりにして、自分は押さえつけていただけなのだと気づかされた。

 

 それでも、これだけは曲げてはいけないのだ。彼女はクナイを取り出した。チャクラを一気に練り上げる。風圧が窓を破る。

 

「あたしは戦争も支配も認めない。他の四大国だって、世界だって、認めない」

「いや、認める。認めさせる」

 

 シンゲンはローブを脱いだ。その風貌があらわになった。黒ツチの顔が驚愕に染まる。男の瞳で輝くのは輪廻写輪眼。

 

「お前は、死んだはずじゃ。志村ダンゾ―」

「別天神!」

 

 黒ツチの意識は失われた。別天神。それは、うちは一族の最強瞳術。対象が幻術に掛けられたという自覚も無しに、操ることができる。

 

「今から、わしが土影だ。その席を譲れ」

「はい」

 

 黒ツチは席をダンゾウに譲ろうとする。その時、黄ツチが部屋に入ってきた。

 

「お前、黒ツチに何をしたダニ」

「別天神」

 

 黄ツチからガクッと力が抜ける。

 

「お前と黒ツチは、今よりわしの側近となってもらう。岩の忍達は集合したか」

「はいダニ」

 

 ダンゾウが二人を連れて大広間に向かおうと席を立つと、時空に歪みが現れた。中から出てきたのは不気味なまでにひょろ長い僧侶・ホウイチ。謎の組織、実の一員だ。

 

「上手くいったそうですね。それにしても、どうやって別天神を連続使用したんです?」

「マダラの万華鏡写輪眼だ。奴の天津甕星(あまつみかぼし)はチャクラの消費を幻術で書き換える。使っていなかったことにするのだ」

 

 そこで、ホウイチは合点がいったのか、微笑んだ。

 

「なるほど。私はいつも疑念に思っていたんですよ。うずまきでも、千手でもないマダラがチャクラ切れすることもなく、なぜあれほど長時間、スサノオを使い九尾を操れるのか、千手柱間と立ち会えるのかとね」

「穢土転生で復活した後は、チャクラが無限になる。だから、第四次忍界大戦で奴は使わなかったんだろう」

 

 ダンゾウは話を切り上げて、去ろうとする。だが、彼はふと立ち止まり振り向いた。

 

「七草の時、赤髪の少年がいただろう」

「ええ。鬼灯バトラを利用して、トトを不信任にしたところまでは良かったんですがね・・・あの少年が来なかったらせっかく、あなたと共謀した計画が崩れる所でした」

「始末しておけ」

 

 そう言い残し、彼は立ち去った。そして、とうとう時は来る。大広間いっぱいに集まる全岩の忍の前にダンゾウは立った。左右に付き従う、黒ツチと黄ツチを見てざわめきが起こる。

 

「ここまで来るのまでにわしは醜く老いてしまった。しかし、これだけは言っておこう。わしの決意はこれまでにも増して強固なものになったと。安全を確保し、安定を維持するために岩隠れは史上初の忍界帝国として再編される!安心かつ安全な世界のために」

 

 ダンゾウは宣言す。

 

「今、ここに帝国は他四大国に宣戦布告し、第五次忍界大戦の開戦を宣言する。さあ、革命の時だ」

 

 万雷の拍手の中、平和は死んだ。

 




Q:何でダンゾウ生きてるの?
A:イザナギだ

Q:何でイザナギ使えたの?
A:別天神用にとってた写輪眼を咄嗟に使った
 (裏四象封印で自爆した時)

Q:何でダンゾウ生きてるの?
A:柱間細胞で傷を癒し、寿命も柱間細胞で伸びてる

Q:何でイザナギで使った別天神使えるの?
A:失明した目にマダラの万華鏡写輪眼を移植して、瞳術が宿り復活した

Q:岩隠れ如きが、木ノ葉に勝てるの?
A:ダンゾウに聞いて下さい

ドヤ顔で実はシンゲン様はダンゾウでしたってやろうと思っていたら、読者様にシカマルがいて焦った。
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