暁新伝《BORUTO編完結》   作:モリッチ

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今回はダンゾウ節が炸裂します。

カブトやペイン、イタチなど様々えげつない事をしている、原作の彼を忠実に再現しようとしたら、こうなるのは致し方無いのですが。


桔梗

 岩影室、否、今や玉座の間となった部屋でダンゾウは座していた。皆、片膝でひれ伏しておりその中には大名や元土影など錚々たる面々もいる。みな、別天神の前に屈したのだ。

 

 静寂の中、ダンゾウは口を開いた。彼の足下には各隠れ里の地図が広げられている。

 

「わしの見立てでは、木ノ葉以外の大国は各個撃破していけば恐るるに足らん。我が帝国に最も近い大国は風の国、そして火の国だ。滝隠れと音隠れ、さらに無所属の土地を挟んで、雷の国があり、さらに海を挟んだ所に水の国がある」

 

 旧岩隠れの忍は黙して続きを聞く。彼らは勢いこそあるものの、この戦争で勝つビジョンは何もなく、皇帝であるダンゾウの策しか選択肢がないのだ。ダンゾウが地図の一点を杖で突いた。雨隠れの里だ。

 

「つまり、初戦が鍵となる。帝国と風と火この三つに囲まれた、雨隠れの里。ここでの戦を制することが出来れば勝ちだ。なぜなら、ここで勝ったということは風と火が敗北したということ。後は、地理的にどうやっても遅れてくる雷と水を殲滅するだけでよい」

 

 ここで土影が口を開いた。彼女は意識こそダンゾウに服従しているものの、忍としての戦略眼まで曇ったわけでは無い。

 

「おそれながら、皇帝陛下。その策であれば、風と各個撃破の難しい火の連合軍と激突することになります。それに、四大国との連戦となりますと我が帝国の戦力だけでは持ちません」

 

 当然の疑問であった。各大国をバラバラに撃破するための作戦にもかかわらず、その初戦で五大国最強の火と風の連合軍と戦うのでは本末転倒であるからだ。

 

 だが、ダンゾウは余裕の笑みを浮かべた。

 

「雨隠れでの戦の前に、火を潰せばいいのだ。正確には木ノ葉の里をな。その策はすでに用意してある。戦力の供給についても、既に策を弄しておる」

 

 そう言ったダンゾウは配下達を下がらせ、戦争の準備に向かわせた。

 

   *

 

 僕は訓練場で瞑想していた。血継淘汰とは血の繋がりでのみ許された術を、己の努力だけで操る術。肉体と精神その二つの調和がどうしても重要になってくる。

 

 チャクラのコントロール自体は、同時に扱うことも比率も完璧なのだ。しかし、異なるチャクラを結び合わせる段階になって、どうしても失敗してしまうのだ。

 

 ドントさん曰く、失われた記憶と眠ったままの僕の経絡系が調和を妨げているらしい。つまり、記憶を思い出して僕自身の経絡系を覚醒させるまで血継淘汰は使えないということだ。

 

 という訳で、絶賛瞑想ならぬ迷走中なのだが・・・

 

「駄目だ~。何にも思い出せない。きっと暁が鍵なんだろうけど、こう虫食いにあったみたいに断片的にしか浮かばない」

 

 じたばたしている僕を見かねたのか雫が休憩を申し出てきた。シンゲンに呼ばれたドントさんと入れ替わりに、訓練場にやってきたのだ。なんでも、先の木ノ葉での一件できついものがあったらしく、修行しに来たらしい。

 

「休憩って、さっきしたばっかじゃないか」

「だって、チャクラが無くなっちゃったんだもの」

 

 ふてくされている彼女を見ながら、僕はため息をついた。

 

 ドントさんが言うには、彼女は才能はずば抜けているらしいのだが、病気で必要以上のチャクラを練ってしまう。喩えるなら、水鉄砲の術を使おうと思ったら、大水龍弾になってしまうようなものだ。

 

 という訳で、チャクラコントロールの練習として壁のぼりをさせてみたのだが・・・壁が木端微塵になって終わった。

 

「僕じゃなくてドントさんの手ほどきを受けた方がいいんじゃない?」

「いやよ。あいつスパルタじゃない。後、なんか癪に障るのよね」

 

 確かに、彼の修行方法は常軌を逸している。だけど、どうしたものか。病気が原因ならもう治療するしか道はない気がしてきた。

 

 そこに、いつの間にいたのかバオさんが割り込んでくる。アフロが目に痛い。

 

「だったら、最初っからチャクラ消費の大きい術を使えばいいんじゃね。あの七代目火影も、チャクラコントロールが下手で、分身の術が出来ないって噂を聞いたことがあるぜ。まあ、あんだけ影分身が出来るならガセなんだろうけどな」

 

「いや、彼女はチャクラを使いすぎちゃうだけで、総量自体は雷切四発分もないと思いますよ」

「失礼ね。八発は打てるわよ」

「いくら何でも、雷切四発は馬鹿にしすぎだろう。嬢ちゃんの母親もそうだったのか?」

 

 ふと、投げかけられた疑問に少女は押し黙った。母親を失った彼女にこの話は地雷なのではと不安になる僕であったが、本人はぱっと見何でもない様だ。

 

「どうなのかしら・・・お母さんは林の国、つまり草隠れの忍だったみたいだから、チャクラは上手く扱えてたんじゃないかしら」

「お母さんの記憶があったの?」

 

 てっきり、母親の記憶も無いような幼いころに、シンゲンに拾われたと思っていた僕は内心驚いていた。

 

「いえ。時々、夢で母様を見たの。きっと死ぬ前に、赤子の私にチャクラを練りこんだのよ」

「嬢ちゃんの母親って、どんな奴なんだ。やっぱ、美人なのか?それとも、鷹みたいに―」

「バオさん」

 

 相変わらず、デリカシーというかマナーの無いこの人に呆れていると、雫は懐かしそうな様子で話し出した。

 

「桔梗って名前の様に、綺麗な人だったわ。それで、夢の中での母様は―」

 

 僕とバオさんが黙って話を聞いていると、突如、熱探知に異変を感じた。反射的に毒針を飛ばす。うめき声と共に忍の姿が現れた。痙攣している忍の装束は砂隠れ。

 

「なんでこんな所に砂隠れがいるのよ?」

 

 雫が倒れ伏している忍に近づく。

 

「離れろ!」

 

 僕が少女を抱えて飛びのいた、ほぼ同時に忍の身体が爆発した。いや、爆発したわけじゃない。これは砂が炸裂したのか。砂分身!

 

 術者はどこに?

 

 僕がまき散らされた砂から意識をそらした、その瞬間。

 

「砂漠柩」

 

 砂が舞った。たった一度の瞬きより早く、僕と雫の周囲は砂で覆われる。球状の砂牢に囚われた僕達には逃げ場がない。

 

「砂漠葬送!」

「喝!」

 

 砂球が爆ぜた。外からの圧縮。内からの爆発。砂では耐えられる衝撃ではない。だが、内部にいた者も無事ではない。通常なら。

 

 崩れ落ちる砂の中から、少女を抱いて全身が黒化したリオンは舞い降りた。土矛。雷遁以外に対し無類の防御力をもつこの術は、砂と爆遁から二人の身を守ったのだ。

 

 肩に積もった砂を払いながら、僕は尋ねた。

 

「ご用件は何でしょうか?」

「先の岩隠れ襲撃、七草での暗躍、ジャシン教の襲来の手引き。これらの嫌疑がお前達には掛かっている。大人しく投降しろ」

 

 そう言った忍はリオンと同じ赤髪であった。違うのはその出で立ち。少年が純白の外套を羽織っているなら、男の外套は風と刻まれていた。

 

 五代目風影・我愛羅。腕を組み仁王立ちするその姿は、風格だけで立場の違いを体現する。雫をバオに預けながら、彼と向かい合う。

 

「抵抗すると言ったらどうしますか?」

「止めておけ。ここは完全に包囲した。抵抗する場合、お前も含めて殺傷する」

 

 僕は油断なく、風影を見据えながら状況を把握する。

 

 何故ここがばれた。そもそも、どの事件も決定的な証拠は残していないはず。いや、あれだけ爆遁を任務で使っていれば推測ぐらいされるか。でも、場所まで割れるのはおかしい。

 

 誰かがここをリークした。誰が・・・シンゲンか。僕達は用済みとなった訳か。正直、風影と戦っている場合じゃない。今すぐドントさんと合流しないと。このアジトを捨てるってことは外で大きなことが起きているんだ。風影は気づいていないのか?

 

『バオさん』

『皆まで言うな。どうせ嬢ちゃんを連れて逃げりゃあいいんだろう。いつもこの役だよ・・・次こそ戦わせろよな』

『すいません。後、ゲンナイさんも連れて行って下さい』

『おう』

 

 ボウンと煙と共に姿をくらましたバオ。だが、我愛羅の余裕は崩れない。余程、ここの包囲に自信があるらしい。それだけ、部下を信じているということか。

 

「その爆遁の術とは少なからず因縁があってな。常々、決着を付けたいと思っていた」

「申し訳ないのですが、僕には興味がありませんね」

 

 今、この時、我愛羅とリオンは激突した。

 

   *

 

 旧岩隠れ、現帝国の最深部でダンゾウはホウイチと密談していた。もう夜だからか室内は暗く、彼の玉座の背後から差し込む里の光だけが光源だ。その光も、人々の営みの光ではない。戦争の準備のための光。クナイを打ち、刀を打つ為の光。

 

「我々、実に暗殺依頼を出して、さらに風影まで向かわせるとは・・・それほど、あの赤髪が恐いですか」

「時々、運命に導かれたように世界を動かす者がおる。六道仙人しかり、マダラしかりな。長年生きていると、そういった類のものが分かるようになる」

 

 ホウイチは感情を表に出さない微笑を浮かべて相槌を打つ。

 

「何故、彼がそうだと?」

「此度の戦・・・本当ならもう勝っていたはずだった。ジャシンにより、火影か木ノ葉かどちらかは死ぬはずだったからだ。それを奴は阻止した」

 

 さらに言葉を続けるようとするダンゾウであったが急に口を閉ざした。人が近づく気配がしたからである。ホウイチも察したのか時空の歪みへと消えていった。

 

「入れ」

 

 皺枯れているが、重い声で入室を促す。入ってきたのはドントであった。彼は跪き臣下の礼を取る。しかし、その口から出てきたのは疑念の声。

 

「シンゲン様。これはどういう事ですか?」

「そなたの働きの成果だ。今やわしは岩隠れを支配し、世界すら手中に収めようとしている」

 

 主の返答に、なおもドントは問うた。彼は安寧と秩序ある世界の為に闘ってきたのだ。決して、世界征服の片棒をつぐためではない。

 

「その先に平和があると本気で思っておられるのですか!」

「思う」

 

 男は立ち上がった。妻は子は戦争の為に死んだ。戦争を争いを無くす為に、争ってきた。それが、こんな結末になるとは。

 

「なら、俺はお前を殺す。それがせめてもの償いだ」

 

 ダンゾウは無表情になった。その瞳に映るのは失望。

 

 構えるドントと座ったままのダンゾウ。先に動いたのはドント。黒化した剛腕が皇帝の顔に迫る。風圧がダンゾウの顔を揺らす。

 

「お前もイタチにはなれなかったか。やはり、奴が最も忍であった。自己犠牲。それこそが、忍の本分・・・お前ならそれが分かると思ったが」

 

 ドントは後少しの所まで拳を伸ばしていたが、そこから先には進むことは無かった。それどころか、後ろに後ずさり片膝を突き首を垂れる。

 

 “別天神”

 

 その瞳術は遍く全てを屈服させる。輪廻の瞳を輝かせながら、ダンゾウは命じた。

 

「ドント。お前には木ノ葉に特攻してもらう。里の中心で菌遁を使い自爆するのだ。今、木ノ葉はジャシンに襲われ弱っておる。そこに止めを刺すのだ」

 

 そうして、ドントが下がるのを見届けてから彼は目を閉じた。

 

「特攻?自分でやれ」

「馬鹿な!」

 

 ダンゾウは聞くはずの無い声を聞いた。咄嗟に振りむこうとするも、男が手刀を振り払う方が速い。

 

 鮮血を噴き出しながら、皇帝の首は飛んだ。返り血を拭きながら二人目のドントは呟いた。

 

「頭は潰したが、戦争はもう止まるまい。なんとかして―」

「まさか、このわしの裏をかくとはのう」

 

 跳ねるように背後を振り向くと、ダンゾウの死体が消えていた。代わりに現れたのは、五体満足の皇帝。

 

「迂闊であった。お前はオオノキの弟子、すなわち二代目土影・無の孫弟子であったな。奴の分裂の術であれば、わしの輪廻写輪眼でも欺ける」

 

 そう。ドントはリオンの警告を聞き流してはいなかった。岩隠れに着くまでに戦争の事を知った彼は、分裂の術で自身の分身体を創り出したのだ。

 

 これは影分身と違い、どちらも本物。よって、確実に輪廻眼を欺けるはずであった。

 

 そして事実、欺きその首を刎ねた。なのになぜ・・・

 

「イザナギ。この術はわしに不都合な現実を書き換えることが出来る」

「洗脳に、現実の改変。随分、好き勝手だな。だが、分裂体では血継淘汰は使えない。ここで俺が自害すれば菌遁での特攻は不可能になる」

 

 ドントの命がけの覚悟をダンゾウは嗤って返した。

 

「見上げた自己犠牲の精神だ。だが、そういう奴ほど操りやすい。イタチがそうであったようにな」

「何を言っている」

 

 とても人とは思えない禍々しいオーラを放つダンゾウに、彼は悪寒を覚えた。聞くべきではない。ドントは印を組んだ。

 

「土遁・岩―」

「お前の娘の命と取引だ」

 

 男は我が耳を疑った。幻術でも掛けられたか。いや、奴の瞳は見ないようにしていた。では、現実?奴の言葉は現実のものなのか?そんなはずはない!

 

「お前の妻・・・たしか桔梗とか言ったの。林の国の般若集として忍をしておった。イタチもそうじゃったが、お前達は本当に肉親に弱い」

「なぜ・・・何故、妻の事を知っている」

 

 内心の動揺を必死に押し殺しながら、男は問うた。糾弾した。もうその声は動揺を隠せないぐらいに震えていた。

 

「戦時中も戦後も、岩隠れと木ノ葉は林の国を緩衝材として扱っておった。わしから見れば、三代目オオノキとその弟子であるお前。どちらかを崩せば岩は木ノ葉に手を出せなくなる事は明白じゃった」

 

 ダンゾウは真顔で真実を述べていく。その顔に一点の罪悪感も無かった。当然の事を当然の様に話しているのだ。

 

「オオノキは老体であったから、放っておいても死ぬ。だから、お前を狙ったのだ。お前が木ノ葉と岩の懸け橋として活躍する、桔梗と恋仲になっているのを把握した瞬間から策を弄したのだ」

 

 ドントは無意識に般若の面を触った。師であるオオノキから、妻の形見として貰った面だ。

 

「わしは桔梗が身重になったタイミングで、岩に木ノ葉との和平交渉を求めた。三代目火影ヒルゼンには無断でな。その際に場所を林の国とし、彼女に仲介を求めさせた。オオノキも特に断らなかった。流石に、裏切りを前提とした和平交渉だとは思わなかったのだろう」

 

 男には目の前の老人が化け物に見えて仕方がなかった。常人に、いや狂人でもこのような所業が出来るはずがない。

 

「そして、裏切った。桔梗は最後まで木ノ葉を信じていたようだがの。計画通り死んだ。誤算だったのは、死の間際に娘を生んだことぐらいだ。わしは血継淘汰使いを操る絶好の駒と思い拾ったという訳だ」

 

 ・・・・・・・・・怒りも湧いてこなかった。今までずっと、妻を殺めた男に操られてきたのだ。亡き妻への申し訳なさと不甲斐なさと悲しさ。それしかなかった。

 

「お前が木ノ葉を巻き込んで自爆してくれると言うなら、お前の娘、雫の命だけは助けてやろう」

 

 ダンゾウは嗤った。

 




分かりづらい点の補足。

ドントが別天神を回避できたのは、片方の分裂体を犠牲にしたからです。影分身と違いどちらも本物なので、輪廻眼では見切れません。分裂の術は二代目土影無様が使ってます。

ダンゾウは宣戦布告の直前で我愛羅に情報を流し、戦争が起きていると知らない我愛羅をアジトのリオンと交戦させる。共倒れすれば万歳。しなくても、実に止めを刺させて風の国とリオン両方潰すつもりです。

木ノ葉はバイオテロで崩壊させるつもりです。

戦力の補給問題は次回明らかに。

次に、ドントが雫の娘というのは、七草編で二点の描写から分かるようにしてありました。自分でも細かいといううか、ずるい伏線の張り方だと思うので、誠に申し訳ありませぬ。

一つは、ドントが父親のように乱雑に扱われる(あたりが強い)描写。一応リオンが、まるで父親の様だと雫とドントの様子を評価したシーンを入れときました。

二つ目は、雫の「生まれ故郷は林の国」という発言。これは557話でダンゾウの命でイタチとカカシが般若集を皆殺しにしているシーンを知っている方なら、林の国とドントの般若の面が結びつくかもしれません。

因みに、557話と桔梗の話は別物です。

・・・それにしても、ダンゾウを魔改造しすぎた。今までになくダンゾウが輝いている。スーパーアルティメットダンゾウ・シャイニングエンペラーバージョンと名付けよう。
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