後書きでは、解説を入れてあります。読み飛ばしていただいてOKです。
「Ⅽ2・ドラゴン」
龍が飛ぶ。超低空飛行で舞うそれは、空を切る音だけで対象の聴覚を奪う。並の忍にとってはどうあがいたって回避不能、迎撃不能、防御不能の代物だ。だが、相手は並の忍ではない。いつだって少年の相手は強者であった。
「最硬絶対防御・守鶴の盾」
笠を被った狸型の盾が立ちはだかる。大きさこそ本物には及ばないものの、一尾と和解しチャクラの繋がりを得た風影のそれはまさに鉄壁。
火力不足か。少年は瞬時に判断した。
片手印を組む。途端、龍が無数の小さな竜へと分裂する。小型になった分、速度が急激に上がった竜は盾を迂回するように避け、風影を囲んだ。
「喝」
一瞬の煌き。そして、大輪の花。視界いっぱいに広がる光は爆発の凄まじさを如実に表していた。
だがこれでやれたと思うリオンではない。追撃を仕掛けようと、両腕から杭を伸ばす。
動けない。
違和感の正体は足首を掴んでいた砂の腕。薄煙の向こうで崩れ落ちてゆく砂球が見えた。風影は竜が爆発する直前に砂のバリアを張ったのだ。
あの一瞬であそこまで完成度の高い盾を作るとは。いや、風影の視界は自身が創り出した盾に潰されていた。自分でやったんじゃない・・・オートガードか。
ほんの寸刻の間だが、冷静に敵の力量の分析をする。と同時に足元の対処も同時進行で進めていた。
杭を真下に射出し、爆破。砂腕は吹き飛んだ。
「獄砂埋葬」
足下が一瞬にして底無しの砂地獄と化す。その深さ凡そ二百メートル以上。どこまで深いのか誰にも見当もつかない。
先ほどの砂腕は足元を変化させるための時間稼ぎでしかなかかった。そう少年が気づいた時にはもう遅い。体は確実に砂に捕らわれていた。もし、底まで沈んでしまえば圧死は避けられない。
だが風影はそんな深くまで少年が沈むのを待つつもりはない。なぜなら肩まで沈んでくれればこの術で片が付くからだ。我愛羅は地に手を突いた。
「砂漠大葬!」
「土遁・地動核」
風影の術が地を伝いリオンに届く前に、少年の術が発動した。足元の砂が瞬時に固まり、彼自身を一気に押し上げた。
本来は敵の足下を不意に上下させることで、相手の体制を崩す術。それを、砂地獄からの脱出に使われたことに我愛羅は驚きを隠せない。しかし、忍界で最優の土遁使いを師に仰ぐリオンにとっては当然のことであった。
この意識の差が命取りとなる。完全に不意を突かれる形で上を取られた風影は砂を上方に飛ばす仕草を無意識に行ってしまう。
赤髪の少年の指が動く。ほんの僅かな動き。たとえ上忍でも気づけない些細な動作に反応できなのは、風影の兄が傀儡師であったからであろう。
「喝」
我愛羅の背後。背後の地面。それが盛り上がったかと思うと、電光石火の如く杭が飛んでいった。
「なに!」
少年が傀儡の術で何か仕掛けてくると直観しなければ、絶対に気づかなかっただろう死角からの一撃に驚嘆の声を上げる風影。
今彼を仕留めんとしている杭は、先ほどリオンが地面に射出したものだ。リオンは両腕から伸ばしたそれの一本は砂腕を破壊するために。もう一本は爆発に紛れ込ませて、地中に隠したのだ。
少年はそれを絶好のタイミングで操った。
大爆発。爆風は地動核で空に舞ったリオンを、さらに天井まで押し上げるほど。腕で顔を庇いながら、眼下に広がる火の海を覗き見る。
赤。それしかない地面に一点だけ茶色が残っていた。そこを中心として、まるで波紋のように膨大な砂が押し広がった。
「流砂爆流」
砂の嵐は火炎を呑みこみ、押しつぶし、追いやる。あれだけ燃え盛った爆炎は跡形も無く鎮火され、ただ黒煙が立ち昇るのみとなっていた。
「流石ですね」
「風影の名は伊達ではない」
腕組み仁王立ちしている彼は良く見れば先ほどの位置から一歩も動いていない。風影の想定以上の力量に僕は内心感嘆していた。
あの規模の砂を末端まで完璧にコントロールしている。攻守共に欠点が無い。ここまでするには相当の繊細さと判断力が必要だろう。あれを突破するには速さで上回るしかない。あの砂の絶対防御、自動防御を無視するだけの速度だ。
「韋駄天!」
リオンの忍足が火を噴いた。天井を焼け焦がすその加速は周囲の全てを置き去りにした。我愛羅の目も置き去りにされる。しかし、勝利を確信したのは少年ではなかった。風影の方であった。
何故か。それは風影には一度、中忍試験の時に圧倒的速度で体術を扱う忍と戦った経験があったからだ。つまり、当然対策はしてあるということ。
その時はオートガードが間に合わず、相手の攻撃を決められた。だから、彼はオートガードの速度を速めたのだ。単純な方法で。すなわち、軽い砂を扱うということだ。
我愛羅は目をつむった。どのみち見えない。そして自分が操作するまでも無く、砂の絶対防御が防いでくれる。
鋭い痛みが腹部に走った。一気に我に返る。より正確に言えば、肝が冷えたり焦りが生じる直前に起こる心臓が鷲掴みにされるような感覚に、我愛羅は陥った。
視線を下げると少年の右手から伸びる杭が自身の腹部に刺さっていた。幸い、常に身に纏っている砂の鎧のおかげで肉には達していなかったが、そんなことは二の次である。
なぜオートガードが突破された?
「喝」
我愛羅の腹部が爆ぜる。煙を上げながら吹き飛ぶ風影。だが、リオンは手を緩めない。
「さらにもう一発!」
今度は左手から杭が伸びる。韋駄天で加速した少年は爆遁で吹き飛ぶ我愛羅に容易に追いつく。
「グッ」
オートガードが働かないのであれば、自分でやるまでだ。そう風影は砂を操ろうとする。そして、気付いた。砂が動かない。いや、重い!
「ウオオオオ!」
我愛羅は宙に飛ばされながらも、重い何かを持ち上げるように両腕を強引に上げた。地盤が揺れた。そう錯覚するほどの衝撃と共に地面が消え去った。風影は広い訓練場の地面の全面を、こともあろうか垂直方向三百メートルまで砂に変えたのだ。
だけじゃない。
低面積は訓練場の床。高さは三百メートル。果てしない体積の砂の直方体をスライドした。つまり、砂の地面が天井までせり上がって訓練場を押しつぶしたのだ。
こんなことをすれば術者本人である我愛羅まで、砂に埋まり指一本の身動きもとれない。しかし、彼にとっては問題なかった。なぜなら、彼の術は印を組む必要がないからだ。
「砂漠大葬!」
我愛羅には当然リオンの姿は見えない。だが、彼の前方全てを押しつぶしてしまえば問題ない。今度こそ勝利を確信した。
着実に砂を圧縮している感覚が確かな手ごたえを彼に感じさせる。が、それは所詮は砂上の楼閣であった。あの赤髪の少年の涼しげな声が響く。
「磁遁・砂鉄界法」
砂が押し返される。砂と磁力。ただでさえ砂で密閉された空間が、内部でぶつかり合い相反する強大な力に耐え切れるはずも無かった。当然の結果として訓練場は弾けた。
四方の壁が崩壊し、溢れ出した砂は土の暗部の至る所に満ち満ちる。その発生源。言い換えれば元訓練場。そこでは我愛羅とリオンが向かい合っていた。
「それで、まだ続けます?」
「いや、よしておこう」
風影は疲れたのか砂地に座り込み、少年に問う。
「途中から砂が重くなったのは、お前がやったのか」
「ええ。土遁・加重岩の術です」
僕はなぜか殺気をひっこめた風影に内心訝しく思いながらも素直に質問に答える。どういうつもりかは知らないが、こちらとしてはこれ以上彼と戦っている時間はない。だから、話し合いに持ち込めそうならそうしたかった。
そんな僕の思惑をよそに彼は懐かし気に口を開く。
「昔、マダラと戦った時に三代目土影に軽重岩の術で援護してもらったことがあったが、まさかその逆をされるとは思わなかった」
「なぜ殺気をひっこめたんですか?まさか、見逃してくれるとか?」
そんな冗談で言った発言に我愛羅も不敵に笑い返した。
「そのまさかだ」
「・・・どういうつもりですか」
怪訝な顔をする僕に、今度は風影は真剣な表情をする。
「俺はこのアジトについてリークを受けた。だが、あれだけ捜索して見つからない情報がこう簡単に手に入るはずも無い。当然、罠だと思って来てみたんだがな」
それは違う。罠に掛けられたのは、どちらかというと僕たちの方だ。シンゲンは僕たちを始末するために風影を使ったんだろう。
「突入してみれば、お前と気の抜けた奴ら三人しかいないかった。それだけではなく、俺達五影が想定している黒幕らしき存在も見つからない。そこで嵌められたのは俺だけじゃないのではと思い始め、第三の目を使って周囲を探ってみれば怪しげな忍を複数発見した」
忍がアジトを囲んでいる?なんのことだ・・・ここには雫、ゲンナイさん、バオさん、僕の四人しかいないはずだ。そして、外の忍が風影の手の者ではないとなると奴らは僕が死ななかった時の保険か。
「その様子だとやはり、外の連中はお前とは関係ないな。つまり―」
「つまり、僕と風影様は別の勢力から命を狙われている。そして、その勢力の頭はシンゲンでしょう」
我愛羅は意図せぬタイミングで黒幕への情報を得て、眉をひそめた。
「シンゲン?」
「ええ。あなた方が想定している黒幕だと思います。きっと外では何か大きなことが起きてる。僕は一刻も早くここを出て、それを止めなければならない」
僕の言葉に風影は力強く返事する。その眼差しは火影と同じく、背負う者のそれであった。僕は何度もこの目を見てきた。土影からも、スケアさんからも、火影からも、ボルトだって見せた。そして、敵であるロウも、世間からはテロリストの扱いを受けているドントさんも見せた。
「なら、行け。ここを囲んでいる忍は俺が引き受ける」
「感謝します」
やはり影の名を冠す者はただ者じゃない。何も知らずに敵のアジトに来たのに、いつの間にか状況を把握し、最適な選択肢をつかみ取る。・・・でも、気付いていたならなんで戦闘を仕掛けてきたんだ?
そんな僕の疑念が顔に出ていたのか、風影は淡々と説明した。
「リークしてきた奴は砂の暗部の忍だ。身内ですら敵の息がかかっているか漏れない状況で、お前と腹を割って話し、なおかつ敵に気づかれずにお前をここから外に出すには、周囲を砂で覆われた状況を作る必要があった」
なるほど。敵を欺くなら味方からという事か。それに、こんなに大量の砂で妨げられては中で何が起きても分からないだろう。
「演技の割には、死にかけたんですが」
「この程度で死ぬならそれまでだ。お前は俺より強いみたいだから安心して任せられる。むしろ、そっちこそ殺す気だっただろう」
「そんなつもりはありませんでしたよ」
「どうだか」
さて、あまり長居もしてられない。申し訳ないが、ここは風影に任してドントさんと合流しよう。周囲は砂でいっぱいであったが、勝手知った暗部の抜け道の一つや二つは知っている。問題ない。
そのまま、立ち去ろうとして立ち止まる。そう言えば、彼はなぜ初対面の自分を信頼するのだろうか。興味本位で尋ねてみる。すると、風影はこう答えた。
「ナルトが信頼できる奴と言っていたからだ」
*
リオンと風影が土の暗部で戦闘している頃、第五次忍界大戦の初戦が開かれていた。それは後の忍界史には載っていないが、間違いなく初戦である。
当初、帝国は雨隠れの中心で風・火の両国と激突する予定であった。しかし、帝国の進軍をいち早く察した、木ノ葉のスパイが里に連絡。七代目火影は雨隠れが蹂躙されるのを嫌い、現地及び周辺地域にいる木ノ葉の忍を旧岩と雨隠れ国境の警備にあたらせた。火影はあくまで警備と、帝国の進路上の人々の避難を最優先とし、あらゆる戦闘行動を禁じていた。砂隠れも火影の要請を受けて、風影が不在の為少ないながらもカンクロウの後押しもあり忍を派遣した。
だが、長らく戦争をしてこなかった世代にとって帝国の大群が迫ってくる様子は彼らを非常に神経質にさせた。さらに、場所も悪かった。雨隠れは岩・火・風の三国に囲まれており、第二次、三次忍界大戦と長年に渡って焼け野原にされた歴史がある。よって、雨隠れの人々は親族を誰かしら戦争で命を落としており、それゆえに異常なまでに外敵に敵愾心と恐怖心を抱いていたのである。
そんな雨隠れ・木ノ葉・砂隠れの忍連合で構成される、およそ五百人の三個中隊は帝国軍六千人と対峙した。ちなみに、第四次忍界大戦で各隠れ里から出兵した忍は平均五千五百名とされており、その十一分の一にもなる戦力がただの警備隊だとは帝国軍の忍も思えなかった。
双方の緊張が極限まで達した時、ついに事件は起きる。帝国軍の斥候を興奮した雨隠れの忍が殺傷してしまったのだ。それを端に開戦となり、五百対六千の忍が激突することとなる。
その初戦は、雨・木ノ葉・砂の連合軍は全滅。帝国軍は死者・負傷者共に零名という結果に終わった。
戦闘の序盤は連合側が優勢。ただでさえ帝国の忍は数で勝り慢心していた上に、負ければ故郷が蹂躙される雨の方は死に物狂いで戦ったからだ。加えて、帝国軍の中には戦争を知らない世代の忍もいる。戦火の中に居れば容赦なく命を落とす事実を前に、あっけなく戦意喪失。連合軍は帝国を撤退させるのではと思われた。
しかし、あわやという所で帝国の忍が命を吹き返したのだ。正確には死体が掻き消え、生者として現れた。帝国の忍は殺しても殺しても復活するのである。なのに、連合の忍は死んだら終わり。自らが死ぬことは無いと理解した帝国の忍達は嬉々として、忍術や忍具を振るうようになり、一方的な蹂躙を行った。
戦闘の後半では帝国の忍の間で敵の殺害の数を争って競争が起きる始末。結果として、木ノ葉や砂の忍装束を着た死体の山が築かれて戦闘は終了した。
まず、第四次忍界大戦の忍連合軍の総数は八万人。うろ覚えですが、これは恐らく間違いないです。白ゼツ10万体と戦ったわけですし、多分あってるかと。
では、なんで各隠れ里が5千500人しか出していないと解釈したのかというと、ナルトの忍者登録番号が012607だからです。つまり、ナルトの世代までで木ノ葉は約1万3千人程度しか忍がいないと判断しました。
後は単純にナルトが七代目火影なので、1万3千を7で割ります。大体一世代1800人と出ましたので、戦争に出れる世代は年齢的に三代分。つまり、1800×3で約5千500人と判断しました。足りない分はきっと、滝とか草とか侍が埋めたのでしょう。
ただ、第二、三次忍界大戦の際当然人口は減ると考えるのが自然であり、ナルトの世代でベビーブーム的に増えたと考える方が自然なので、ぶっちゃけこの計算方法はがばがばです。
さらに考察するなら、文明レベルの発展したボルトの世代ではさらに人口が増加していると考えるのが自然であり・・・すいません。これ以上は勘弁してください。
帝国軍が復活したのはイザナギです。この術は術者の死を回避する術じゃなくて、不都合な現実を改変する術なので、他人の死でも大丈夫です。実際、イタチの回想の中でこういう使われ方がされていました。(千手一族vsうちは一族のやつ)
風影は有能。