暁新伝《BORUTO編完結》   作:モリッチ

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血肉躍る

 今、僕は数千の忍に囲まれていた。数分前の状況と何も変わらない。敢えて違いを述べるとするならば、敵の方は自らの常識では理解できない存在に完全に怯えている事だろう。

 

 そして、僕の方はチャクラの残量がかなり少なくなってきている事だ。

 

 血継淘汰に血継網羅。どちらも莫大なチャクラを消費する。特に後者のレベルの術を発動しようと思ったなら、輪廻眼や尾獣のバックアップは必須になる。

 

 だが、あいにくその類の代物は持っていないし、僕のチャクラ量自体も決して多いとは言えない。

 

 一般的に忍のチャクラは肉体エネルギーと精神エネルギーで構成されている。リオンの場合、精神の方はともかく肉体エネルギーが著しく低いのだ。

 

 それは、彼の肉体が成熟し、チャクラ量が急激に増大する青年期前ということもある。しかし、一番の原因はそもそも彼の身体が傀儡であるということだ。

 

 よって、少年は己のチャクラコントロールのみで戦わなければならなかった。それに対して相手は・・・

 

 一向にチャクラの減っている様子が見えない。幾度となく、葬った。岩の忍達も土影もダンゾウも。

 

 いや違う。消費はしている。奴がイザナギを使った直後。その一瞬だけ疲労が見える。何らかの方法で回復していることは間違いない。

 

 そして、そんなことが出来るのは万華鏡写輪眼か輪廻眼の固有瞳術しかない。現在、ダンゾウが明らかにしている固有瞳術は三種類。

 

 一つは無限のチャクラ回復。二つ目は別天神。三つめはドントさんを縛った呪印。

 

 最後の呪印が輪廻眼の瞳術ということは、ドントさんのおかげで判明した。つまり、最低でも一つ以上はまだ万華鏡写輪眼の能力を隠し持っていることになる。

 

 これらの対処が出来ない限り勝ち目はない。

 

「溶遁・石灰槍の術!」

 

 黒ツチの口からセメントの槍が連射される。土影の名を背負っていただけに、剛撃にして速撃。僕を貫かんと風を切る。

 

「この程度、散々見てきた」

 

 最小限の動きで縫うように躱す。ただ躱すだけじゃない。韋駄天で急加速し、一気に距離を詰める。

 

 まさか迫りくる槍に向かって真横にではなく、真正面から高速で突っ込んでくるとは思わなかったのか、黒ツチの目は驚愕に見開かれた。

 

 だが、彼女も並の忍ではない。即時に拳を岩化し正拳突きを放つ。直線的に攻撃してくる相手の迎撃手段としては、最適。僕の顔面に肉薄する拳。

 

 チャクラ糸が迸る。

 

 コンマ数秒の間。その僅かな間に拳の主導権を奪い取る。黒ツチは明後日の方向に向かっていく拳にひきずられ態勢を崩す。

 

 今だ。

 

 彼女の腹に手を当てチャクラを的確に流し込む。

 

「解」

 

 土影の瞳に光が戻る。幻術の解除に成功した。これで少しは楽になるか。そう僕が思ったのも束の間。彼女の姿が空に溶け込む。

 

「溶遁・石灰凝の―」

 

 蠍の尾を一閃。印を組む間もなく迎撃された黒ツチは土遁で防ぎつつ後退した。普段なら雷遁を纏わせ土遁ごと薙ぎ払うはずの尾も、今は何も纏っていない。

 

 でも、迎撃としてはこれで十分。これ以上ダンゾウ以外にチャクラを使っていれば、どんどん形成は悪くなる。

 

 自軍が壊滅した時や自身が死亡した時に使うならともかく、たかが土影一人の幻術が解除されただけで、イザナギを使い無効化してくるとは。

 

 一体何個写輪眼をストックしているんだ。その上、ダンゾウはチャクラの回復手段まで持っている。対して、こちらのチャクラの補給手段は渦遁で敵の術を吸収するしかない。

 

「「土遁・開土昇掘」」

 

 黄ツチと黒ツチの声が響く。大地は揺れ、盛り上がる。跳ねるようにして飛びのくと同時、四方から岩の山が隆起していた。元岩の忍達が一斉に手を突く。

 

「「「「土遁・岩石崩し!」」」」

 

 岩山が炸裂し岩塊となって宙を舞う。当然、それらは重力に引かれ僕に向けて飛来した。側転、前宙、バク転。体を捻りながらジグザグに回避する。

 

 こうして回避をしているだけでも、確実に僕の体力は削られていく。かと言って、吸収してしまうのも悪手だ。

 

 なぜなら、渦遁は血継網羅。この程度の術の吸収に使うには、チャクラの消費が大きい。回復量より術による消費量の方が大きいからだ。採算がとれない。

 

 持久力で勝負したら・・・負ける。短気で決着を付けたい。だが、相手もそれを踏まえている。

 

 だから輪廻眼を持っておきながら、自分の配下ばかりに襲わせ時間稼ぎに走っているのか。

 

 思考中。僕の傍に岩石が落ちる。ちらりとそれを見て次の回避行動を取ろうとした時、視界の隅に起爆札が映りこんだ。

 

 チッ。回避は間に合わない。チャクラを使うしかないか。

 

 僕がチャクラを練り上げようとした、その時。

 

「飛簾」

 

 岩石が起爆札ごと両断された。もちろん起爆札は不発に終わるが、それより有るはずのない援護に僕は驚いた。

 

 誰が。

 

「大分、苦戦しているようだナ」

 

 背後から聞こえる声にまさかと思いながら振り返ると、やはり七草のロウが立っていた。どうやって、木ノ葉から脱走したんだ?いや、それ以前に何で助けてくれたんだろうか。

 

「どうして・・・」

「ジャシン教のゴタゴタに乗じて逃げタ。気まぐれで、もう一度お前に賭けてみたくなっただけダ」

 

 僕に何を賭けようとしているのかは知らないが、助けてくれるならありがたい。この際動機はどうでもいい。

 

「俺もいるぜ」

「吾輩も助太刀に来ました」

 

 バオさんに、ゲンナイさん。聞きなれた声に純粋に喜びを感じる。今すぐ助けに対して感謝の礼を述べたい所だったが、どうしても気になったことがあった。

 

「雫はどうしたんです?」

 

 僕の言葉に二人の顔が曇る。それで察してしまった。心臓を鷲掴みにされたように、苦しくなる。

 

「申し訳ない、リオン殿。突然現れた、ひょろ長の僧侶に連れ去られてしまいました。無力な自分が情けないです」

 

 恐る恐る僕の表情を見る彼。そんなに気を使わなくてもいいのにと思いながらも、僕自身彼の瞳に映っている自分の表情が、嫌に凪いでいるなと思った。

 

 ダンゾウめ。人質を取る気か。でも、だったらとっくに利用しているはず。待てよ。

 

「ひょろ長の僧侶と言いましたね?」

「ええ。頭部がやけに縦長で、不気味な男でした」

 

 ・・・あの時、僕が消し飛ばした奴か?僕の記憶には、その特徴と一人合致する人物がいた。初任務の際に、ドントさんが変化した実の一員。そして、彼はたしかに僕が殺した。あの瀑布で。

 

 きっと、僧侶と人質にされた雫は一緒にいた。なら、なぜ彼女は僕の前に出てこなかったんだ?

 

 そんな僕の思考をロウの声が切り裂いた。

 

「そろそろ敵も仕掛けてきそうダ。積もる話は後にしロ」

 

 そうだ。今は全てを切り捨てて、ダンゾウを止める時。私情は後だ。僕は三人に振り返り言う。

 

「一分でいいです。時間を稼いでください。それまでに決着を付けます」

 

 次の瞬間。リオンの身体がぶれた。電光石火。ダンゾウの頭上に躍り出る。右手に纏うのは虹の渦。

 

「天津禍津!」

 

 虹の一筋。空を切り大地を裂く。熱で融解した全てが金色にドロドロと輝き飛び跳ねた。だが、紙一重でダンゾウは躱す。

 

 “輪廻写輪眼”

 

 その観察眼に見切れぬものなし。

 

「血継網羅からは逃げられない」

 

 超高熱の光線は森羅万象を貫く。たとえ射線上に居なかったとしても。回避に成功したダンゾウが印を結ぼうとした刹那。彼の身体が溶けるように燃えだした。

 

「なるほど。この光線、回避したとしても周囲の気温の上昇で結局焼かれるか」

 

 血継淘汰同様、血継網羅もチャクラの配分次第でいかようにも性質を変える。リオンの場合は渦遁だ。その本質は全てを吸収し逃がさないこと。

 

 天津禍津の仕組みはこうだ。まず、虹の渦の中で火遁と水遁のチャクラを混ぜ光遁を創る。光遁は文字通り光速で逃げようとするも、虹の渦に引っ張られ逃げ出せない。

 

 そして、ギリギリまで引き絞られ光はバラバラに引き裂かれプラズマのような粒子状のチャクラとなる。その圧力が臨界に達した瞬間、一気に解放。だが、これだけではプラズマが爆発するように吹き出し拡散するだけで終わる。

 

 そこで、土遁と雷遁で磁遁を創り。バネの様にぎっしり巻かれた磁場を形成する。そこを地大量のプラズマが超高速で通る際に細く絞り込まれ、極限解放される。

 

 結果として生まれる光速のジェットは圧倒的な熱量を持って、射線上だけでなく周囲の空間の温度まで急激に上昇し溶かし尽くす。

 

 つまり、回避不能にして防御不能。

 

 ダンゾウは跡形も無く消え去った。だが、

 

「イザナギ」

 

 男は虚空に再び現れた。避けれないなら、防げないなら、無かったことにすればいい。不利を夢に、有利を現実に。それが写輪眼の究極瞳術。

 

 体がふらつく。立っていられない。やはり渦遁はチャクラを使いすぎる。使えても後数回。膝を地に付けている僕とは対照的に、ダンゾウは遥か空中に浮かんでいた。

 

「小僧。お前ではわしは倒せない」

 

 男は漆黒の外套を脱ぎ去った。現れたのは白い袴を纏った、老人。体は窶れ、今にも枯れ果てんばかりであったが、その眼はその輪廻の瞳にだけは確かに強靭な意思が宿っていた。

 

 ダンゾウはガバリと袴を開き、胸をさらす。その皮膚は真っ白。不気味なまでに白いその肌に浮かぶのは男の顔。

 

「この顔は初代柱間様のお顔だ。わしは、輪廻眼とこの大量の写輪眼に適応するために体の全てを取り換えたのだ」

 

 だが、僕が最も身の毛がよだったのは彼の腹に、背に、胸に、頬に、額に。そして、柱間という男の目に埋め込まれた大量の写輪眼だ。

 

 ここまでして、ここまで人間を捨ててまで世界を支配したいのか。この男は。ギョロギョロと蠢く赤い目が一斉に僕を見る。

 

「わしはこの忍界を変革する、唯一の者だ」

 

 ダンゾウが印を結んだ。空が急激に暗くなる。仰ぎ見ると隕石。巨大な隕石が無数に降り注いできた。

 

 地上に居る忍達は蜘蛛の子を散らすように逃げ惑う。僕一人、回避することは出来ない。僕の為に時間を稼いでくれている人を守らなければ。

 

 残り少ないチャクラを振り絞って、虹の渦を形成する。口から何か漏れ出てきた。

 

 血?

 

 拭った指に付いた赤いそれを見ながら、思わず笑みがこぼれた。自分の血を見るなんていつ以来だろうか。生身の核の部分が限界に近いという事実に、何故だか恐怖は感じなかった。

 

 思えば戦いばかりの日々だった。

 

 目覚めて一分でドントさんに殺されそうになり、初任務で二人の土影に消されそうになり。

 

 ただの護衛任務のはずなのに、人柱力と死闘をして。木ノ葉に行ってからも、ジャシンに挑み。

 

 帰ってからも風影に命を狙われ、師を父親を殺めることになる。

 

「でも、血肉躍る戦いは今日が初めてだ」

 

 虹の奔流が隕石を粉砕していく。だが、隕石が止むことは無い。当然だ。敵のチャクラは無限なのだから。それでも、勝機は見逃さない。見逃せない。

 

「今‼」

 

 全ての隕石とダンゾウが一直線になったこの刹那。全てを切り伏せる!

 

 超爆発。

 

 虹の通り道を隕石の吹き飛ぶ極光が連鎖的に彩っていく。天は焼け爛れ、世界から音が消えた。

 

   *

 

 引き裂かれていく隕石の中。ダンゾウは思った。

 

 愚かな事だ。地上にいる仲間を守った所で、意味はない。むしろ害悪ですらある。あの小僧が取るべき手段は、仲間を見捨てて空に逃げる事。チャクラを温存する事だ。

 

 この輪廻眼写輪眼には小僧のチャクラがよく見える。血継網羅を使えば使うほど、目に見えてチャクラが減っていくその様が。

 

「風前の灯火とはこのことよのう」

 

 小僧が最期の力を振り絞ったのか、隕石が全て切り裂かれていく。どうやらわし諸共消し飛ばすつもりのようだが、こちらにはイザナギがある。

 

 無駄だ。

 

 直ぐに、ダンゾウの視界は虹で埋まった。しかし、次の時には先ほどと何ら変わりなく宙に浮かんでいた。

 

 眼下には地に倒れ伏している、赤髪の小僧が見える。

 

「これで終いだ」

 

 青緑色のチャクラが一気に噴きだす。顕現するのはチャクラの巨人。須佐能乎だ。その手に握るのは波打つ刃。

 

 大巨人は大地を揺らして歩みゆく。

 

 輪廻の瞳を得た自分にここまで食い下がった相手に、敬意を表し最大級の一撃で屠ってやろう。

 

 大切断。

 

 彼は完全に真っ二つになった。いや、消し飛んだ。と言った方が適切であろう。どちらにせよ死んだのだ。

 

 ダンゾウが。

 

「馬鹿な」

 

 ダンゾウは再び宙に現れる。イザナギを使っている限り彼は不滅。死ぬはずは無い。何も動揺する必要は無い。それでも、彼は動揺を隠せなかった。

 

 何故だ。確かにあ奴はチャクラが切れて地に伏していた。とても須佐能乎ごとわしを切り伏せるチャクラはもう凝っていない筈。

 

 思慮に思慮を巡らすダンゾウの頭上に、人の気配を感じた。赤髪の小僧だ。

 

「何故だ!」

「イザナミだ」

 

 少年の言葉と同時に爆ぜる虹の極光。紙一重で回避。だが、咄嗟の事で須佐能乎を出すのが間に合わず、周囲の高温に耐えられない。

 

「グアァ」

 

 熱で焼失した体は勿論、蘇る。宙に現出した彼は眼下の小僧に向かって、隕石を雨あられと降り注いだ。

 

 でも、その全てが虹に貫かれる。次々と破壊されていく隕石を尻目に男は叫んだ。

 

「馬鹿な、こんな筈は―」

「イザナミだ」

 

 次の術を繰り出そうと印を結んだと同時、彼の視界は虹に埋め尽くされた。

 

 次にダンゾウが目を覚ました時、赤髪の少年は地上で倒れていた。今度こそ、確実に仕留めるため須佐能乎での刀での攻撃は避ける。

 

「八坂ノ勾玉!」

 

 濃密なチャクラの勾玉が数珠型に並ぶ。言うなれば巨人の手裏剣。四方八方から小僧の命を狩らん。

 

 虹の架け橋が地上から天に跨る。神撃の一振りがダンゾウを一太刀に切り伏せた。

 

「イザナミだ」

 

 男は繰り返した。何度も、何度も繰り返した。しかし、どうやっても少年を仕留めることが出来ない。それどころか、毎回同じような展開の後自分が殺される。

 

 いよいよ、認めざるを得なかった。

 

 わしはイザナミの術中にいるのか!?そんなはずは無い。そんなはずは。

 

 “イザナミ”

 

 それはイザナギと対を成す、もう一つのうちはの究極瞳術。イザナギは自分の都合のいい現実を選び取る術。それに対して、イザナミは本当の現実を選ばせる術。

 

 例えば、ある人が二股に別れた道に立っていたとしよう。左は家への道。右は落とし穴への道。

 

 ある人は最初に、右を選んだ。当然、彼は落とし穴に落ちる。

 

 イザナギはこれを無かったことにする術。つまり、右を選んだという事実を無かったことにし、左の道を選んだ事にするのだ。

 

 イザナミはその逆。彼が書き換えた現実の方を無かったことにして、本来の道を選ばせる術。

 つまり、ある人が落とし穴に落ちたなら、彼が落とし穴への道を選ぶまで永遠に道を選ばせ続けるのだ。

 

 ダンゾウの場合。本来は隕石諸共、渦遁によって死んでいる。だから、彼がいくらイザナギで死んでなかったことにしても、イザナミが彼を隕石と共に死ぬ瞬間に連れ戻すのだ。

 

 永遠のループ。これを抜けるには彼が本来自分は死んでいたという事実を受け入れて、死ぬしかない。

 

 この術の発動条件は、複雑怪奇。行動の任意の瞬間における自分と相手の身体を写輪眼の瞳力によって記憶し、それと似た状況をもう一度繰り返すこと。

 

「だが、わしはいつの間に?」

「最初に天津禍津で須佐能乎ごと切り捨てた時と、隕石ごと切り捨てた時です」

 

 赤髪の少年が頭上から、虹の光を振り下ろした。今度こそ須佐能乎でガードしようとするも、やはりそれごと溶け消える。

 

「不可能だ!イザナミの使用には体の接触と、写輪眼を犠牲にする必要がある。そのどちらも、お前では満たしようがない。第一、どうやってうちはでも無い貴様が、イザナミを知った!?」

 

 ダンゾウは叫びながら、隕石をむやみやたらに落とし続ける。その一つも赤髪の少年に届くことは無い。

 

「簡単な方から応えましょう。この情報はサスケさんに貰った巻物に載っていました。僕がダンゾウと戦う事を知った彼は、うちはの写輪眼について記した巻物を僕に託してくれたんです」

 

 思い出せるのは火影室。僕が単独でダンゾウを暗殺すると言った際、不敵に笑いながら巻物を投げ渡したサスケさんの顔。

 

「そして、体の接触は天津禍津の光線で代用しました。僕はチャクラ糸で他人の体と接続するのが得意でしてね。まあ少々威力の強いチャクラ糸でしたけど、僕とあなたは二度光線を通じて接触した」

 

 ダンゾウは驚愕した。初めて、眼下にいる少年がとんでもない存在だと気づかされた。

 

 こやつどこまで。本来人の身でありながら、血継網羅の高みへ到達する事すら人智を超えた所業だというのに・・・それを、チャクラ糸の如く制御するだと!?

 

 化け物だ。こやつこそ正真正銘の化け物。もはや、人間のチャクラコントロールの域ではない。まさに、神業。

 

「写輪眼は、写輪眼はどうした?これを犠牲にせねばイザナミは発動しない筈!」

 

 暁の外套を纏った少年は、全てを見通すような碧い瞳を輝かせ指さした。

 

「あなたのですよ。僕は血継網羅使いである前に、傀儡使いだ。体の接続さえ成功すれば、その人の身体を使って術を行使できる」

 

 理論的には、リオンが木ノ葉でイワベエの身体を乗っ取り、土遁を行使した事と同じである。

 

「あなたの身体を操りイザナミを発動し、あなた自身に掛けたんですよ」

 

 まさか、そんな。ダンゾウは畏怖した。今まで幾度も、幾度も才能のある忍を見てきたが、ここまでとは。ギリギリと歯ぎしりをする。

 

「やはり、天才か・・・大した忍だ」

「ところで、あなたは沢山の写輪眼を体に持っていますが・・・どれを犠牲に選んだと思います?」

 

 男は気づいた。自身の視界がおかしいことに。右半分が無い?何故・・・ま、さか。ダンゾウは慌てて右目を触った。

 

 開いて、ない、だと。

 

 赤髪の少年が妖しく笑った。

 

  *

 

 シトシトと降るの雨の中。熾烈を極め原形の欠片もなくなった大地の真ん中で、リオンは両膝を突いていた。

 

 倒した。倒したんだ。イザナミの犠牲にはダンゾウの右目を選んだ。つまり、別天神は封じた。

 

 直に皆目を覚ますだろう。

 

 一切のチャクラを無くした僕は血反吐を吐きながら倒れ伏す。意識がもう持ちそうにない。でも、ダンゾウは―

 

「死んだと思ったか」

 

 右目を失い、左手を失くし、全身こそ焼けただれていた。それでも、男は立っていた。志村ダンゾウ、その人は、立っていた。冷徹な眼差しで。

 

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