暁新伝《BORUTO編完結》   作:モリッチ

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vs土影

 時はリオンと四代目土影が出会うより少しさかのぼる。ドントの襲撃を受けた直後、岩隠れの護衛の忍達は老中を連れてホテルの内部を通り、地上を目指していた。明かりが落ちたため、辺りは真っ暗闇で何も見えない。総勢四人の忍と老中は慎重に先へ進む。編成は老中を中心として、前に二人。後ろに二人。

 

「何があったんじゃ。何故、明かりが落ちたのだ?」

 老中は顔を真っ青にして護衛に聞く。

 

「何者かに襲撃されました。下手人が地下のブレーカーを落としたからだと思います」

「こんなに真っ暗じゃ何も見えん。そなたら忍であろう?外の壁を伝い一気に降りようぞ。それか早く、明かりを灯せ」

 冷静に対応する忍に反し、老中は完全にパニックになりながらまくし立てた。 

 

「確かに廊下は暗くて何も見えませんが、それは敵も同じこと。むしろ、明かりをつけた方が危険です。敵にこちらの位置を知らせるようなものですから。同様に外も危険なのです。襲撃犯と赤ツチ様が戦っておられるのですぞ。こちらには感知タイプの忍もおりますゆえ、どうかご安心ください」

 

 老中はその言葉にひとまず落ち着きを取り戻したが、そこに前方から少年の声がした。

 

「Ⅽ4」

 忍達は一斉に老中の傍に跳ね飛ぶ。

「馬鹿な、何故我々の位置が・・・」

 だが、声はするのに少年の姿は見つけることが出来ない。必死に周囲を見渡すが闇があるだけ。頼りの感知タイプの忍びは敵の位置ではなく、別の情報をもたらした。

 

「なにか、奇妙な粒が大量に迫っている気がする」

「粒だと?何も見えないぞ」

 

 すぐにその粒を探すが、そんなものはどこにもない。

 

「いや、目に見えないくらい小さな粒がどんどんこっちに」

「なんじゃ、何がどうなっているんじゃ」

 半狂乱になる老中の心情が伝播し、護衛達の心にも怯えが走る。

 

「よ、よし。今すぐ後退するぞ」

 正体不明の見えない粒子からの逃走を決定。迅速に行動に移した。だが、背後から奇妙な音が鳴り響く。

 

「この音は何だ。カタカタと騒々しい。もうどうせ敵に位置はばれとるんじゃ。明かりを灯さんか!」

 老中の意見も一理あると判断した護衛の一人が印を組んだ。

 

「火遁・灯篭の術」

 忍びの手のひらから飛び出した鬼火が、廊下が一瞬にして照らす。だが、この場にいる全員が後悔することになった。そこに映っていたのは何十体もの赤髪の傀儡。それら全ての腕が変形してゆく。

 

「何かしてくるぞ!」

 隊長格の忍の警告と同時に、傀儡から放たれたのは毒針の雨。その一つ一つは掠るだけで、対象を死に至らしめる。土遁使いの忍が前に出た。

 

「土遁・土流壁」

 岩の壁は致死の奔流を弾いていく。火花が飛び散り、針は舞い散る。

 

「何故、気付かなかったのじゃ!」

 老中は頭を抱えながら蹲り、感知タイプの忍を叱責した。

 

「申し訳ありません。前方から流れてくる粒子が囮であったと気づきませんでした。さらに、本命の傀儡はチャクラが流れておらず感知が遅れてしまったのです」

 

 土遁使いの忍が叫んだ。

「そんなことより、前と後ろどっちに―ガフゥッ」

 これが、彼の最期の言葉となった。バチバチと青白く放電する蠍の尾が、土流壁ごと彼を貫通したからだ。

 

「前じゃ、前に行くしかない」

 老中が前方に走り出す。

「仮にその粒子とやらが、毒だとしても息を止めて一気に駆け抜ければ問題ないはずだ。行くぞ」

 隊長格の忍びの怒号と共に全員が駆け出した。これが彼の人生最大のミスとなる。

 

  「喝」

 少年の声がした。少しして、ホテルの廊下には阿鼻叫喚の声が響く。

 

 塵と化してゆく老中達を見ながら僕は呟いた。

「Ⅽ4はナノサイズの爆弾を散布する術だ。mmに直すと0.000001mmにあたる。息を止めただけで、体に入ることを防ぐことは出来ない」

 

 老中が死んだのを冷静に確認する。非戦闘員を殺めてしまったことに、手が震えそうになるがぐっと拳を握りしめ、己が次にすべきことを考えた。

 

「さてと・・・今すぐ、ドントさんを助けに行きたいけど保険は用意しておくべきか」

 僕は高速で印を組む。

 

「赤秘儀・百機冴攻の操演」

 チャクラ糸を四方八方に伸ばした。

 

 

     *

 

 そして、時は再び戻る。リオンと四代目土影が向かい合う。

 

 今からこの土影を相手にして殺し合いをするというのに、まるで緊張感のない赤髪の忍の様子に、ますます黒ツチは警戒感を強める。

 

「寝言は寝て言え。老中の保護には土隠れの中でも特に先鋭を送ったんだ」

「では、目的を達成したので帰らせてもらいます」

 この人が土影。確かに、普通の忍とは明らかに持っている圧が違う。出来れば戦闘を避けたいところだけど。

 

「させるかよ!」

 黒ツチのチャクラが吹き荒れ突風が巻き起こる。

 

「もう少し、捕らわれたふりをしようと思ったが」

 突如、ドントさんの姿が煙とともにキノコに変わり、本物が岩の影から出てきた。

 

「なに⁉」

 瞬時に、黒ツチは狭い部屋で二人に挟まれた状態を危険と判断し、印を組む。

「土遁・大地震」

 

「うわっ」

 リオンは、まるで天変地異かという激しい揺れに窓から振り落され、ドントも立っていられず床を転がる。

 

「今‼溶遁・石灰凝の―」

 黒ツチは高速で印を組むも、突然崩れた壁からの月明りが途絶えたことに嫌な予感がし、外の方を見た。

 

 彼女が目にしたのは不気味で面妖な造形をした白い鳥だった。

 

「これは、デイダラ兄の―」

「Ⅽ2」

 

 もはや原形の無いスイートルームに、巨大な死の鳥が飛び込む。極光と共にホテルの最上階は吹き飛んだ。その輝きは束の間のあいだ、辺りを真昼の太陽の如く照らした。まるで火山が噴火した様になっている、ホテルを見ながら息を吐く。

 

「さて、ドントさんを回収してさっさと帰るか」

 僕は任務の達成を確信し、乗り物代わりに粘土で作った白いフクロウを爆炎に包まれたホテルに寄せていく。

 

 それにしても、4代目土影といっても案外大したことはなかったな。これなら、保険を用意しとく必要は無かった―

 

 何だ⁉

 

 熱センサー、光学センサー共に異常を感じ無理やりフクロウを後ろに引く。コンマの差で、甲高い音。と、同時に目の前を幾何学的な図形が通過していった。

 

 今のは⁉

 謎の白く輝く図形がホテルを掠った地点を見ると、そこは跡形もなく消え去っていた。

 

「随分好き勝手やってくれおって、何者じゃぜ貴様」

 ハッと上を向くと、首回りが赤い緑のマントを羽織った忍が宙に浮いていた。何も乗らずに宙を浮いているなんて、しかもいつの間に僕の上を取ったんだ。まさか、こんなよぼよぼのおじいちゃんが これをやったのか?

 

「黙っとらんで、わしの質問に答えんか小僧!」

 忍びの手のひらと手のひらの中央に、激しく光る立方体が出来上がる。

 

 拙いっ!

 

 とっさに回避行動をとる。紙一重で光の軌跡を躱しながら、右手から龍を飛ばす。

 

「Ⅽ2ドラゴンッ」

 でっぷりと太った龍が羽ばたき風を切る。

 

「やはりデイダラの術か」

 

 忍びの深く老いた声とは裏腹に、円錐形の光は非自然的な音を響かせ空をつんざく。それが龍を貫く寸前、僕の印が間に合った。

 

 太った龍が小さな竜に分裂し散開する。空しく虚空を通り過ぎる円錐。

 

「ふん。それでわしの術を躱した気か」

 

 円錐が円柱と形を変え、さらに細く絞られたかと思うと一気に360度回転した。射線上の竜全てが塵に帰ってゆく。しかし、それでもなお光線は止まることなく接近してくる竜全てを無に帰さんとす。

 

 だが、僕の指の操作に合わせて竜もそれらを躱していく。

 

「三代目土影を舐めてもらっては困るんじゃぜ」

 

 このおじいちゃんが三代目土影!?四代目とは全く比べ物にならない。

 

 円柱が土影の手の上で、元の小さな立方体に戻ったかと思うと、再びギュインと巨大化し網目状になって宙を塞ぐ。

 

 なるほど、あの網目の大きさではこのサイズの竜では通れないな。ここまで細かく形態変化を行えるなんて、次元が違う。でも、

 

 羊の印を組む。

 

 竜がさらに分裂し小さくなる。百にも及ぶ竜を正確に操作し網目を突破。小竜達が風切り音を立て三代目土影に飛来する。

 

「なるほど起爆粘土の操作はデイダラよりも巧いようじゃの。じゃが、わしの恐ろしさはこんなものじゃないわい」

 

 正方形が超巨大な立方体となり、範囲内の竜を一掃した。後に残ったのは宙に浮く土影とフクロウに乗るリオンのみ。

 

「その歳にしてここまで術を操れる忍びは珍しい。小僧名はなんじゃ?」

「暗殺しに来た忍びが名を明かすとでも?」

「では、質問を変えよう。何故、今のご時世に暗殺なんぞ行う?」

「任務だからです」

 

 即答する。何のために?ドントさんの命令であり任務だ。これ以上の理由なんてあるわけがない。道具はただ付き手の為に機能するだけ。

 三代目土影オオノキはその皺だらけの小さな体で言った。

 

「なるほど、そなたはまだ己を拾っていないようじゃな。いや、見つけていないといった方が正しいかの」

「言っている意味が分からないですね」

「まあ良い。今から己とは何か嫌と言うほど教えてやるわい!」

 

 再び立方体が形成された。

 

 あの術・・・相当厄介な代物だな。術の速度、範囲、威力全てにおいて桁違いで、ここまで連射が出来るということは術のコストもそう高くはない。Ⅽ3以上は起爆にかかる時間が掛かりすぎて、敵の術の速さに完封されるか。

 

 あえて、弱点をあげるとするなら術の形状から攻撃の範囲が分かりやすい点と、周囲の物を巻き込んでしまうため場所によっては、むやみに撃てない点といったところか。冷静に形状を見極めないと、命取りになる。

 

 円錐形に変形した!

 

 フクロウを捻るようにスピンさせぎりぎりで躱し、今度は蝙蝠の様な形状のⅭ1をばら撒く。月夜に映える蝙蝠もこの数いれば、もはやおぞましい。それらが、僕の姿を隠すように土影へ一斉に群がる。

 

「喝」

 Ⅽ1が連鎖爆発し煙幕の役割を果たす。

 

「市街地に逃げる気か」

 オオノキは黒煙を突っ切りリオンを追う。黒煙を抜ける寸前、彼の視界に白い物体がちらついた。

 

「爆煙に紛れ込ませていたかっ」

「喝」

 

 爆炎が黒煙の中で炸裂し新たな黒煙を作り出す。鳥上でそんな光景を見ながら僕は一息ついた。

 

「やったか」

 だが、そんな安い安堵の言葉では勝利を確実な物にすることは出来なかった。

 

「塵遁・限界剥離の術‼」

 

 いつの間に背後にっ!完全に僕の不意を突かれた。あそこまで読まれていたのか!?

 

 慌ててフクロウを操作するも光線の速度が上回り、Ⅽ2は完全に両断された。爆発するフクロウの衝撃をもろにくらい空中に投げ出される。

 

「しまった」

「空中では身動きがとれまい」

 

 立方体が操作されリオンに迫る。

 

 拙いっ。避け切れない。殺られる―

 

「土遁・軽重岩の術」

 硬く、それでいて人を安心させる深い声が聞こえた。

 ドントさん!

 

 彼が僕を抱え宙に飛んでいた。

「遅くなった」

「4代目土影は?」

「あいつは完全にのびてる」

 

 会話に割り込むように塵遁が飛んでくる。しかし、ドントは一瞥もせずに上下左右に躱していく。

 

「どう突破する気ですか?」

「もうわかっているとは思うがオオノキ、いや土影の塵遁は全てにおいて既存の術を大きく上回っている。だから、術者の不意を突くことが最も効果的だ」

 

 確かに、あれは一度出したら直ぐに術を中断することは出来ない。完璧に躱すことが出来れば、カウンターを入れられる。それに、恐らくあれは一種類のチャクラ性質で構成されるような単純な物じゃない。集中力を乱せば、必ず術に粗が生まれるだろう。あの、保険を使うしかない。

 

「では、僕がその隙を創り出します。一分ほど時間稼ぎ出来ますか?」

「良いだろう。土遁・軽重岩の術をかけておいた。お前も空を飛べるはずだ」

「では、上空に行きます。頃合いを見てドントさんも来てください」

「分かった」

 

 僕は空にドントさんは土影のもとに飛んだ。塵遁は容赦なくドントを狙いすますが土遁が構成要素にある限りあてることはできない。

 

「ひょろひょろした坊主のくせに、わしの十八番を使いおって」

 

 ドントは拳を引き絞り加速。

 オオノキも覚悟を決めたのか加速。

 

「土遁・拳岩の術」

「土遁・拳岩の術」

 

 堅牢にして強大な剛腕が激突する。ビシビシと大気が震える。

 

「土遁・加重岩の術」

「土遁・加重岩の術」

 

 剛腕が重みを得ることで巨人のそれになる。衝撃波が空気だけでなく、辺りのビルの窓まで震わせ、割っていく。オオノキは高齢でもうほとんど動けないからだにも関わらず何故か笑みを浮かべた。

 

「土遁・超加重岩の術‼」

「土遁・超加重岩の術‼」

 

 全く同タイミング、同レベルの術がぶつかるとどうなるか。

 

「当然、若さが勝つ」

 

 土影の腕は砕け散り、体はビルに吹き飛んでいき、次にビルを貫き、最後に地に激突した。ドントは腕を下ろし。用心深く下を確認する。

「じゃが、老いが勝つ場合もあるんじゃぜ」

 

 男の背後から皺枯れた声が響く。すぐさま振り返ったがもう時すでに遅かった。

 

「塵遁・限界剥離の術!」

 

 完璧のタイミングで極限まで高められた一撃は何人も避けることは出来ず、森羅万象は塵と化す。そのはずだった。

 

「菌遁・限界融合の術!」

 

 円錐と円錐が鍔競り合う。永遠とも一瞬とも分からぬ間その拮抗は続いたが、全てを消すはずの光はその効力を発揮することはなかった。

 

 三代目土影オオノキは眼前の光景を信じることが出来ず、驚愕のあまり暫しの間沈黙せざるを得なかった。

 

「・・・塵遁を打ち消せる術がこの世に存在するはずがない。あるとすれば六道の力かあるいは」

「血継淘汰ぐらいしかないな」

 ドントは当たり前のことを言うように言った。

 

「まさか、お前は」

 僧侶の姿をした忍はオオノキの呟きを無視し上空へ飛び去る。

 

「待てっ。わしはどうしても確かめる必要がある。確かめねばならんのじゃ!」

 オオノキも後を追う。焦る気持ちを抑えきることが出来ず上へ上へと昇り雲を突き抜け、遂に里全体が一望できる高さに至った。

 

 満月の夜空で二人と一人が向かい合う。

 

「これ以上、上に逃げることはお互いに出来ん。決着をつけようぞ」

「決着をつける?そんなものに付き合う義理はない」

「わしはこれまで多くの過ちを犯してきた。じゃが、先の大戦でようやっと心の底から正しいと思える事を成せた。そして、あれが最後の戦いじゃと思っていたが・・・」

 

 限界などとうに来ている老体に鞭を打ちすぎたのか、息も絶え絶えになったオオノキは右手に最後の輝きを灯す。

 

「もう数年いや、数か月もない余命になってまだ命を懸けるものがあったとは、本当に長生きはしてみるものじゃぜ。なあ、ドントよ」

 

 二人を遮るものは月明りの他には何もなかった。流れる雲すらも彼らを避けてゆく。

 

 煙と共にドントの姿が、奇妙な僧侶の姿からがっしりとした体躯の男へと変わる。

 

「やはり、お前であったか。ドントよ。生きておったのだな」

「二度と師の姿を見ることはないと思っていたのだがな。だが、先ほど先生を殴った時少し感じたよ。師を傷つける達成感と喜びをな」

 

 そこにいたのはオオノキがかつて自身の血継淘汰を伝授した、かつての愛弟子の姿そのものであった。土影は喜びとも悲しみともつかぬ表情を浮かべた後、血を吐くかの様に言った。

 

「今こそ、師が弟子に引導を渡す時。そして、赤髪の小僧よ。見た目も性格もあのクソガキには似ても似つかんが、ついでにおぬしにも己とは何かを示してやろう」

 

 右手の輝きを両手で包み、そして開く。

 

「いくぞ‼」

 

 凄まじい効果音と共にオオノキの両手に展開された立方体は、彼の忍びとしての全てを籠めた究極の最後の一撃であった。

 

 ドントの重ねられた両手にも同様の立方体が創造される。

 

「塵遁・超限界剥離の術!!!」

「菌遁・超限界融合の術!!!」

 破壊の極光と創造の極光がぶつかり合う。

 

「はあああああああああぁぁぁ」

「ぐぅぉあああああああぁぁぁ」

 

 血継淘汰と血継淘汰。分解と結合。その二つの中心では常に相反する現象が同時に引き起こされ、時空すら歪んでしまうのではと言うほどの力が発生し拡散した。結果として、二人の戦いは他の一切を寄せ付けず隔絶されたものとなっていた。

 

 そんな壮絶な光景の前に僕は手を出すことが出来ず、ただ見守る事しかできなかった。

 

「ドント!貴様は道を踏み外した。確かにあの時、桔梗をわしは見殺しにした。愚かだった。里の為ならどんな手段でも取ることが影の使命であると信じて疑っておらんかった」

 

 老いの余り、薄くやせ細った髪と腕を振るわせオオノキは力の限り叫ぶ。

 

「俺は道を踏み外したわけでは無い。桔梗が死んだときに悟っただけだ。幾つもの里や隠れ里が存在する限り俺たちとお腹の中のあの子の幸せは存在できるはずも無かったということをな。この一撃の重みは俺の思いであり、耐え忍ぶことの出来ない全ての人々の思いだ!」 

 

 ドントもまた普段とはかけ離れた気迫で返す。彼の菌遁がオオノキの塵遁を押し込めていく。オオノキは腕ごと体ごと押しつぶしてくるような重さに押しつぶされそうになっても叫んだ。

 

「それでも、そなたは耐えるべきじゃった。過去の痛みを知るからこそ、どう先へ繋げていくのかを最善かを考えることが出来る!」

「ふざけるなっ。そんな綺麗ごとで、これまでの、今の、未来の痛みを知る者が救われることはない」

「耐え忍ぶ者。それが忍びじゃぜぇっ!!!」

 

 オオノキの塵遁が一気に勢いを取り戻し、菌遁を圧倒し、ドントを消し飛ばさんとす。

 

 そんな、おかしい。明らかにドントさんの方が練っているチャクラ量も連度も高い。なのに、押されている。チャクラや技術の他に術を構成する要素が他にあるとでも言うのか!?僕は、僕は、どうすればいい。このまま、ドントさんが消え去るのを見ればいいのか?そんなことは、絶対にさせない。己?耐え忍ぶ?何を言ってるんだ。僕に己を見つけるすべを教える親も、ましてや耐え忍ぶ心すらない人形の僕にはドントさんだけが光なんだ。

 

 たとえ、どんな手を使ってでもドントさんを殺させたりはしない。僕はふたりに負けない声量で叫ぶ。

 

「土影!今すぐに塵遁を止めなければ里を消し飛ばす」

「何を馬鹿な。そなたはずっと上空におったし、地上にいたときはわしと戦っておった。そんな隙も暇も与えていないわい」

 

 僕は静かに印を組む。

 

「頼むから、その術を止めて下さい。今すぐに」

「止めん。たとえ、わしの命が尽きようともこの術が止まることは決してない。それが、この里を背負う者の責務じゃぜ」

 

 覚悟は決まった。きっとこの後、僕のせいで無実の人々が傷つく。死ぬかもしれない。でも、それでも、僕は選ぶ。その他大勢の命よりドントさんの命を!

 

「喝!!!」

 

 土の里が爆発した。

 




 突然のオオノキ弟子がいた説に賛否両論あるかと話思いましたが、逆に血継淘汰を黒ツチが受け継いでなさげなのを見て、これほどの術を途絶えさせることはないだろうと思いこの設定にしました。

 感想をいただければモチベーションが八門遁甲なので、ぜひ欲しいです(涙)。
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