土隠れから遥かに離れた上空を、粘土でできた一羽の鳥が飛んでいた。
「まさか、百個もの起爆粘土をビルの屋上に設置するとはな。上からだと本当に里が消し飛んだように見えた。どうやって起爆粘土を設置した?」
「傀儡の術で一般人を操りビルの屋上に設置させました。それらを一斉に爆破した光景は、知らない人には本当に里が爆破したように見えたでしょうね」
浮かない声で僕は説明する。
「・・・お前は良くやった。確かに土影との戦いでは直接の援護は出来なかったかもしれない。だが、リオンの介入がなければ俺は今頃塵になっていた」
いや、あの戦闘では僕は本当に無力だった。僕に力があれば罪のない一般人を巻き込むことはなかった。
「お前の考えていることは何となくだが分かる。わざわざ一般人に屋上まで爆弾を運ばせなくても、威力の高い爆弾を上空からばら撒くだけで事は足りた。だが、そうしなかったのは無人の屋上で起爆すれば人命への被害が減ると思ったからだろう」
そんなものは僕の自己満足でしかないし、それに、
「もしビルの瓦礫が落ちたところに人がいたらその人はきっと―」
「死んだだろうな。どちらにせよ、お前は人殺しだ。いつかその罪の報いを受ける時は来るだろう。しかし、それは今じゃない。あまり考えすぎないことだ。忍なら誰しも一度は通る道だ」
なら、それを考えずにはいられない僕に、忍は向いていないのかもしれない。どこまでも、沈んでいく思考。不意に頭をぐしゃぐしゃ撫でられた。何だと思って手で触ってみるとドントさんの手だった。
「焦る必要は無い。お前がその罪の重さを背負えるようになる時まで俺が背負ってやる。俺は背負い慣れてるからな」
思わず彼を見上げるといつもの険しい顔じゃなく、月明りのような優し気な笑みが浮かんでいた。だが、なんでそんな表情が出来るのか僕には理解できなかった。彼だって師匠と戦ったはずなのに。
「ドントさんは、その何も感じないんですか?師匠だったんでしょう?」
「それほど何も感じなかったな。妻になるはずだった人と子供を亡くした時に、何かも一緒に無くしてしまったんだろう。まあ、少しは感じたが色々な感情が混ざってて自分でもどんなものか説明できん」
そんな言葉通り、彼の顔は憂を含んだようにも微笑んでいる様にも怒っている様にも、そして、寂しそうにもみえた。
「ところで・・・・・・この鳥は爆発しないんだろうな」
「もちろん」
彼はトントンと粘土のフクロウを叩いた後、ドサッと上に寝転がった。
「とんだ初のツーマンセル任務だった」
「でも、任務は成功したでしょ?」
じろりと睨まれた。
「・・・お前にはツーマンセルとは何か叩き込む必要があるな」
「すいませんでした」
確かに、今回は単独行動をしすぎたかもしれない。
「今、カリキュラムを組んでいる。期待していろ」
「・・・・・・お手柔らかにお願いします」
反省の意を示すためにしゅんとした態度をとってみたが、むしろ眼力が強まった気がする。
「それと何故、命令違反をした。援護には来るなと言ったはずだ」
「すいません」
ここで、心配だったとか言ったらまた怒るんだろうな。そんなことを考えていると朝日が地平線から顔を出し始めた。あんなに色濃く、くっきりとした満月はもうぼやけ始めていた。
「まあいい」
「え⁉そんな軽くでいいんですか?」
頑固で厳格そうな彼にしては、随分とあっさりな発言だ。
「今回はツーマンセル初日だ、お前の初任務でもあるしな」
「そういえば、そうですね」
いや待てよ・・・・・・初任務に土影っておかしくないか?初任務がSランク相当だなんて聞いたことが無いぞ。むしろ、僕が怒っていいんじゃないか?ここは一つガツンと・・・
「帰還したら、俺はシンゲン様に今回の任務を報告しに行く。お前は、俺が返ってくるまで反省しているんだな。何だ?不満でもあるのか?」
「すいません。反省しています」
*
赤ツチは見るも無残なホテルの上層部を捜索していた。大きな瓦礫をどかしながら、周囲をくまなく見渡す。
「黒ツチ~無事ダニか~」
もしかするとここに埋まってるのではないのかと不安になり始めたころ、瓦礫の山の下から声がした。
「赤ツチ、ここだ」
「黒ツチ‼」
赤ツチが懸命に瓦礫をのけると、黒ツチが這い出てきた。
「黒ツチ、無事だったダニか」
安堵の余り厳しい状況下にもかかわらず、つい笑顔になる赤ツチ。
「おい、プライベートじゃないんだよ。四代目と呼べ」
黒ツチは八つ当たりだとは分かってはいたが、苛立ちを抑えることが出来なかった。
「ごめんダニ」
「そんなことより、被害は?老中様は無事なのか?あと、じじいは」
自身の傷などお構いなしに、里の心配をする土影に、黒ツチは痛ましげな顔をした。
「奇跡的に一般人は最初の爆発の後のすぐに避難を開始させていたから、全員無事だったダニ。でも、老中様以下五名は死体すら発見できず、オオノキ様は意識不明の重体ダニ」
黒ツチは床を叩いた。拳から血が流れるのも関係なく床を叩いた。赤ツチはその姿に何も言えずに、黙り込むしかなかった。
「絶対に、捕まえろ」
「でも、どうやって?」
「ホテルに向かう前に得た情報だと、実という連中らしい」
聞きなれない名に首をかしげる。
「実?」
「ああ、他の隠里にも連絡しろ」
「分かったダニ」
「それと、実とかいう組織が暁と関係があるとも伝えるんだ」
赤ツチはまさかの名前に驚かざるを得なかった。
「暁ダニ⁉なんで今更そんな・・・・・・」
「あの、赤髪の忍び・・・・・・間違いなくデイダラ兄の術を使った」
「そんな、まさか」
赤ツチと黒ツチを重い沈黙が襲った。
*
一方その頃、砂隠れの忍びカンクロウは、砂漠の中に佇んでいた。
「なんもねえじゃん」
「おかしいですね、確かにこっちの方角から般若の面の奴はきたんですが」
そう言って、ヨメはふてくされた。
「しっかりしてくれじゃん」
「まあまあ、ヨメさんだって一生懸命探してるわけですし」
と砂隠れの医療忍者トマトは言った。彼はサソリのアジトに設置されてるかもしれない毒のトラップ対策のために、カンクロウに選出されたのだ。
「だいたい、暁っていう組織がそんなにすごいなら目に見える所にアジトなんかないですよ」
「・・・・・・それもそうじゃん」
「そうですよ‼こんなどこにあるのかも分からないアジトなんかよりシラの方が心配です」
ヨメがわーわー叫ぶ。
「あ~!うるせいじゃん!」
カンクロウは叫びながら、地団駄を踏むと足元がへこんだ。
ガガガガガガ
音と共に砂漠に暗い穴が開いた。
「わ!わ、わっ」
「あらま。当たりみたいね」
「とにかく確認するじゃん。口寄せの術!」
煙と共に、現れたのは赤髪の傀儡。
「なんですこの傀儡⁉まるで、本物の人間みたい」
「これは、暁の一人サソリだ」
「サソリって、傀儡だったの⁉」
「ああ、サソリは自分ですら傀儡に変える天才傀儡師だった。俺は死後、穢土転生されたサソリ自身に自分の傀儡を託されたじゃん」
「へえ~」
「じゃあ、入るぞ」
*
「それで、アレは使えたか?」
怒り狂う阿吽像の間にシンゲンは立っていた。
「はい。想像以上でした。きっとあいつは私よりもっと強くなると思います」
「そうか」
シンゲンは深く頷き、息を吐いた。
「遂に老中の暗殺はなったか。だが、三代目土影まで始末するとは望外の結果だな」
「この後は、どのように行動しますか?」
「少し、無茶をしすぎた。一連の騒動で流石に五大国も動く。暫し小休止といこう」
「かしこまりました」
シンゲンは
「ところで、奴は爆遁を使ったそうだな」
「はい、やはり例の技術は完成していたようです」
「これで、わしの計画も一歩前進か」
シンゲンは杖を突きながら阿吽の門を通り暗い寺院に消えていった。
*
カンクロウとヨメ、そしてトマトは覚悟を決め、飛び込んだ。
穴に飛び込み着地した瞬間、三人に向け無数の針が飛来した。
「
サソリの傀儡の腕部が開きチャクラが放射状に拡散される。
「何なんだ⁉」
「すごい、全部防いでる!」
「ヨメ、トマトはここから出るんじゃないじゃん。この針は確実に致死毒が仕込まれてる」
「は、はい」
暫くして、針がやんだ。
静かになった空間を観察すると、そこには無数の傀儡と、薄水色の液体が張られたガラスの実験器具が並んでいた。
「どうします?」
「どこに仕掛けがあるか分からない。慎重に捜索するじゃん」
暗がりの中、カンクロウ達は恐る恐る捜索を開始した。
「なんだ、これは?」
「うえ~傀儡が一杯です。今にも動き出しそうで怖いです」
「そんなことを言うな」
青い液体でいっぱいのガラス瓶の中を確認すると、細い管が浮いていた。
「何ですか?これ」
「恐らく、経絡系ですね」
医療忍者のトマトが冷静に分析する。
「経絡系⁉なんでそんなものが」
驚くカンクロウであったが、これが専門分野であるトマトはもっと驚いていた。
「しかもこれは培養されているものかもしれない。一体どういう原理で・・・・・・」
気分が落ち着いたのか、カンクロウは自身の推測を話し始めた。
「サソリは人を傀儡にできた。それもただの傀儡じゃない、その傀儡は生前の忍術を使うことすら可能だった」
「そんな事って」
そう言うヨメの声は震えていた。
「普通じゃ考えつかないようなことをする、それが暁だ」
「もう出ましょうよ、こんな所」
いよいよ本格的に気味悪くなったのかヨメが周囲を急かす。だが、無情にも男二人に受け入れられることは無かった。
「私はもう少し調べたいです」
「俺もじゃん、最後まで調べる」
薄暗いアジトを進んでいくと最奥に部屋があり、二人はその中に踏み込む。部屋の壁にはびっしりと、人体の図や経絡系、傀儡の足や腕の図が張られ、いくつもの未知の機械装置の模型が置かれていた。
「何です?この部屋?」
「恐らく隠し部屋だったんだろう」
「だった?」
ヨメがキョトンと首をかしげた。
「何者かに荒らされた形跡がある」
「そうですか?」
「これは、重要な情報だけを抜き去っているな」
「それって、あの般若の」
「間違いなく」
「あれは、何です?」
トマトが何かを指さした。
「何だ?」
そこにあったのは、棺のようなものがあった。
「あけるぞ」
すると、ヨメは飛びのいた。
「な、なんですか急に⁉びっくりするじゃないですか」
ヨメの突然の行動にびっくりしたトマトが不満の声を上げる。
「だって、怖いんですもん」
部下二人の間の抜けた様子に頭痛を覚えながら再度警告した。
「はぁ~じゃ、あけるぞ」
カンクロウは慎重に蓋をのける。恐る恐る、中を覗き込むヨメとトマト。
「なんだ~、ほっとした~。空みたいですね」
「ほっとした、じゃないじゃん。とりあえず、いったん帰還して報告にいくじゃん」
やはり誰に先を越されていたことに唇を噛むカンクロウ。
「やった~!ようやく帰れるんですね!」
「気を抜くな。どこに罠があるのかわからないぞ」
二人は、恐る恐るアジトから抜け出した。
*
僕はドントさんと自分の部屋でぼーっとしていた。
「遅いな~ドントさん。何してるんだろ?」
今回の任務は反省点だらけだ。確かに今回は起爆粘土に頼りすぎた、他にもっと上手いやり方があったかもしれない。土の里の爆破だってそうだ。相手は明らかによぼよぼの年寄なのに体術を仕掛けることが出来ず、術での戦闘に持ち込まれてしまった。そして、最終的にあんなテロ紛いの手段しか残らなかった。やっぱり、新しい傀儡を作って自分の手札を増やさないと。
思案に暮れるリオンの脳裏に凄まじい爆発音が割り込む。
「わっ、なんだ!」
混乱する頭を無理やり冷静にすると、確か以前ドントさんに暗部を案内してもらっていた時に、右隣の部屋が爆発していたことを思い出した。
「ぬあ~また失敗‼」
リオンは無視することにした。ドントさんが帰ってきたら、僕のチャクラ性質は何なのか確認したいな。
コンコン
後は、傀儡の制作に取り掛かろう。
コンコン
とすると、素材は―
コンコン
あ~もう‼うるさいな!リオンはついに部屋のドアを開けた。
「ごきげんよう」
立っていたのは、無残でぼろきれのような白衣?を着て、ゴーグルを装備した初老の男だった。頭は白髪でぼさぼさと言うより、爆発していた。扉を閉めたいという本能を理性で押さえつけ、尋ねた。
「どちら様ですか?」
「これは、失礼。吾輩はゲンナイというものです。博士と呼んでくれてもいいですよ」
肩まで伸ばした波打つ白髪の先を焦がしている、ゲンナイに非常に危ういものを感じながら、リオンは渋々答えた。
「リオンです」
「そうですか、リオンですか。良い名前ですね」
ゲンナイはそう言いながら、リオンの周りを鑑賞するようにぐるぐる回る。少し、不快になった。
「どういった、ご用件で?」
「ずばり、君は傀儡なんですってね?」
いよいよ、不愉快になったリオンは扉を閉めようとする。しかし、ドアの隙間にゲンナイは足を挟み、指をねじ込む。
「あ~待って下さい、すまなかった。別に怒らせる気は無かったんです」
「何なんですか、あなたは⁉」
「吾輩はチャクラを使わない技術に激しく興味を持っていまして」
「チャクラを使わない?」
リオンは少し興味を持ちドアを閉める力を緩める。ドアの隙間からゲンナイは目を覗かせた。
「そうなのです。チャクラを使わない装置には二種類ある。一つは、装置自体にはチャクラを要するが、使用にはチャクラを使わない物。所謂、科学忍具ですね。二つ目は、使用するのはもちろん装置自体にもチャクラを使わない物です。どちらにも共通することは、使用者にチャクラが無くても良いということ」
興奮した、ゲンナイは扉の隙間に顔を突っ込み、目をギラツカせ言った。
「だから、君を分解したい、お体に触りたい、あなたの体が欲しい‼」
バン‼
リオンは扉を閉めた。ミシッという音が聞こえた気がしたが、気にしない。しかし、なお彼は諦めなかった。
「リオン君!今のは言葉のあやってやつですよ。・・・・・・それは少しは本音も有りますが、本当に体を欲しがる科学者なんて、今時いませんよ」
本音も混ざっているのか。まあ、研究に熱心な証拠でもあるし、話だけでも聞いてみようかな。若干不信感は残るものの、ゲンナイを部屋に通すことにした。
「それで、具体的に僕に何を求めているんですか?」
「吾輩の研究を手伝ってもらいたいのです」
研究と言うと、科学忍具とやらの事だろうか。
「僕なんかに出来ますかね?」
「出来ますとも、何せサソリ氏はその道のプロフェッショナルと言っても過言ではない‼そして、その彼の知識を受け継いだ君に出来ないはずがない‼」
胡散臭い人だとは思ったが、サソリの残した情報は少し手に余るところもあるしな。もしかすると、傀儡造りの素材をもらえるかもしれない。
「そんなに言うなら、僕でよければ」
「おお‼承諾してもらえましたか。では、さっそく吾輩の研究室に招待しましょう」
僕は手をグイグイ引っ張っられ、連行されていった。
*
爆発したところを除き、意外に整理整頓されていると思った。複雑な図面の描かれたホワイトボード。色鮮やかな液体の入ったフラスコや、人体実験でもしそうなベッド、ガラスで囲われた小規模な実験用空間。以外にも机の上は紙でぐちゃぐちゃという訳ではなく、代わりに電子機器が数台置いてあった。特に気になるのが、被せられた布ごしにも分かるごつい何かだ。
「どうです?吾輩の実験室は?」
「ちゃんとしていますね」
予想以上に充実度した研究室に少し興奮してきた。
「そうでしょう、そうですとも」
「それで具体的にどうすればいいですか?」
「吾輩の目的は先ほど言ったとおり、チャクラ無しに使える装置の実現ですが、いかんせん実用性に欠けるものばかり発明してしまって」
チャクラ無しに使えるというだけで十分に画期的なのに、そんな使いものにならない物を開発してしまったのか。
「どういうことですか?」
「お見せしましょう」
興奮状態に陥ったゲンナイは、奥に設置してある何かの布をバサーッと引きはなった。現れたのは、予想通りごつい三つの機械。
「・・・・・・なんかごついですね」
「何を言いますか⁉この洗練されたデザインがわからないのですか」
「そもそも、これは何ですか?」
一つ目は、でっかいブースターがついた馬鹿でかいリュックサック。二つ目は、腕の形をした籠手。こんなのを付けたら重すぎて二度と腕を持ち上げられないだろうが。最後のは超巨大な立方体型の機械で、時折不気味に青く輝いている。
「よくぞ聞いてくれました!まず一つ目、これはずばりジェットパック‼チャクラを持っている忍でもなかなか出来ない飛行をチャクラ無しでも可能にした画期的マシーン」
「でかすぎて、的になりません?持続飛行時間は?」
僕の質問にゲンナイさんは石の様に固まった後、何事もなかった様に動き出した。
「二つ目は、クナイ・手裏剣等の口寄せ・連続発射機能を内包した籠手‼」
「絶妙に行動を阻害しそうな大きさですね。直線発射しかできないなら、むしろ複雑な軌道で投げられる手での方が・・・・・・」
彼はまるで弓矢に射られたかのように、胸を押さえた後、やっぱり何事もなかった様に動き出した。
「三つめは、チャクラ貯蔵器‼これにチャクラを溜めることで、チャクラが無い人でもチャクラを使うことができる」
「少し大きいですね。どれくらいの量を貯蓄出来るんですか?」
二人の間に沈黙がおりた。
「・・・・・・分かってます。どれも実戦では使い物にならないなんてことは。しかし、吾輩は成し遂げなければならないのです。どんなに馬鹿げていると言われようとも」
「いや、馬鹿げてなんかいませんよ」
狐につままれたかの様なゲンナイ。
「はい?」
「このジェットパック飛行機構自体は非常にコンパクトな造りとなっている、ここまで大きくなってしまうのはエネルギー源が問題だからですよね?」
「そうなのです、人が飛行する為のチャクラ貯蔵器を装着するとこの大きさに・・・・・・」
よっぽど行き詰まっているのか、彼は自分の頭をガリガリと掻きむしりだした。確かに、チャクラを人体の中に溜めるのではなく、容器の中に溜めようとするのならこの大きさになるのも無理はない。でも、可能性があるとすればこの方法ならあるいは・・・
「では、チャクラを固体化するのはどうでしょうか?」
気の抜けた声がゲンナイさんの声から漏れる。
「固体化?」
「ええ、水を除けば、物質の体積は通常の場合、気体、液体、固体の順で小さくなり、密度はその逆の順で大きくなる」
最初は唖然とした様子の彼であったが、提案の内容が飲み込めてくるにつれ瞳が輝きだした。
「なるほど、考えてもみなかった‼通常は気体のような状態をとるチャクラを圧縮すれば」
「小型の容器でも大量のチャクラの保存ができるかもしれません。しかし、どうやってチャクラをそこまで圧縮するか・・・・・・」
ぐるぐると研究室を回るゲンナイ。それは彼の頭脳が高速回転を始めたことを表していた。
「実験しなければ分かりませんが、通常の物質と同じならば、コンプレッサーで圧縮しながら、その過程で生ずる熱、つまり固体化への阻害要因をコンデンサーで冷却する。さらに冷却することで固体化へ必要な加圧を下げ、固体化を促進すればいけるかもしれません‼」
なるほど、それならばいけるのか?でも、まだ足りないかもしれない。僕もゲンナイさんに意見を述べる。
「いや、チャクラが全く通常の物質と同じと考えるのは少し不自然かもしれません。おそらくチャクラの形態変化の原理も組み込まないといけなくなるかもしれませんね」
自身がついに理解者兼協力者を手に入れた事実に、ゲンナイは涙を流した。
「やはり、吾輩が見込んだ通りです‼君は!」
「他の機械も一緒に考えてみますか。僕もゲンナイさんの作品を見て、作ってみたい物もできましたし」
「是非とも‼」
こうして、リオンとゲンナイは時間を忘れて研究に熱中した。
*
リオンとゲンナイが研究に夢中になっている頃、自室でドントはぼーっとしていた。
「リオンのやつはどこに行ったんだ?」