暁新伝《BORUTO編完結》   作:モリッチ

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五影会談

 呆れを隠せないドントの前でリオンは正座していた。一輪の桔梗の花のみが、この部屋の癒しとなっていた。

 

 「すいませんでした」

 「俺は後、何回お前の謝罪を聞けばいいんだ?」

 

 やってしまった・・・・・・ついゲンナイさんとの研究に夢中になって気づいたら朝だった。というか、このアジトの構造がいけないんだ。外の様子さえ見えたら、朝までやることはなかっただろう。

 

 「お前。反省してないな?」

 「してます。これ以上ないくらいに」

 ここでドントさんの機嫌を損ねれば、この先待ち受けるであろう修行がより一層苛烈なものになるのは想像に難くない。ここが正念場だ。

 

 しっかり彼の目を見て謝罪するリオン。だが、僕の反省に満ち溢れた眼差しも彼には違うように映ったようだ。

 

 「段々、お前の本性が掴めてきたぞ」

 やばい、完全にばれている。ここはひとつ誠意を示さねば。

 

 「申し訳ございません。何でも致しますので。お許しください」

 

 一瞬、ドントさんが不敵な笑みを浮かべた気がした。

 

 「そうか。なら一つ頼まれてくれないか?」

 珍しいな、ドントさんが頼み事なんて。まあ、お世話?になっている分、恩返しするか。

 

 「もちろんです!」

 「あの任務の受付嬢を覚えているか?」

 

 確か、縦ロール。いや、そんなものじゃない。ドリルみたいな髪型の子がいたな。

 

 「あの、綺麗な青い髪の女の子ですか?」

 「そうだ、あの目つきの鋭い女だ」

 

 あの人への態度がとげとげしいな・・・・・・何かあったんだろうか?

 

 「あいつは、有能なんだが少々ピリピリしているやつでな、自分でもよく分からないが苦手なだけだ。理由は無い」

 

 最近、彼に思考が読まれつつある⁉でも、意外だな。ドントさんにも苦手な人がいるなんて。まあ、そんなことより頼みっていったい?

 

 「で、彼女がどうかしたのですか?」

 「彼女の護衛を頼む。一年に一度、暗部や傭兵団そして裏組織などの代表者七人が集まる寄合がある。通称、七草と呼ばれているが、それに毎回彼女は行っている」

 

 そんな物騒な寄合があったのか。待てよ、それに行く代表者ってシンゲン様じゃないのか?

 

 「あの子、僕らの代表だったのですか⁉」

 驚愕の事実に仰天している僕に対して、ドントさんは疲れた声で言った。

 

 「本当の代表者が行くわけないだろう。殺されたらどうする。雫は暗部の管理人のような存在だから、代理として適任なんだ」

 「管理人?・・・・・・ああ、受付嬢と言う意味でですか」

 

 任務の受付と言う事務的作業を任される彼女なら、寄合などの会議に出るのも納得だと腑に落ちる僕に対して、直ぐに修正が入った。

 

 「いや、彼女はこの暗部に関する情報をほぼすべて記憶している。任務内容だけではない。流石に、最高機密はシンゲン様しか知らないが」

 

 暗部に関する情報と言うと、任務内容以外なら構成員の情報とか勢力図、協力者や財務情報とかだろうか。いまいち腑に落ちないな。

 

 「どういうことですか?」

 「彼女は天才でな。見たことは大抵すべて記憶して全てを使いこなせる。だから、暗部にまとめられる忍術や秘術も大抵は知っているんだ」

 

 それって半端なくないか?暗部には構成員が任意に公開している術だけでなく、任務中に戦った忍の術なども保管してある。他にも独自に様々な術のデータを収集するのが暗部だ。その全てを使えるなんて・・・

 

 「護衛いります?」

 

 そんな、当たり前の質問にドントさんは真剣な顔で答えた。

 

 「・・・・・・彼女は病を患っている。過剰チャクラ錬成症といって、術の発動に必要な量以上のチャクラを練りこんでしまい、術が行使できないというものだ。通常は莫大なチャクラを持つものが陥り易い症状のはずなんだがな」

 

 ドントさんはそこで、言葉をいったん切った。

 

 「彼女の場合、チャクラは平均並みなのに練りこみすぎてしまう。それこそ、体内のチャクラを使い果たすほどに。だが、彼女はその天性の才能でチャクラ分量を誤っても術は行使できる。その日はもう忍術は使えないが」

彼女にそんな事情があっただなんて。それにしても、そんなハードそうな頼みごとをしてくるとは。正直、ドントさんの飲み物を注いであげるとか腰を揉むとかそんな所だと思ってた。そもそも、裏組織の代表者達とか物騒すぎる。

 

 「安心しろ。殺しなんか普通はない。殺れば、殺られるのが裏の常識だからな。それに、昔は既得権益のぶつかり合いで殺しも有ったが、今は七人でなく実質四人しかいないからぶつかることも滅多にない」 

 

 約半分消えたのか。殺されたのか、自然消滅したのか、まあどちらにせよ・・・

 

 「時代の流れですかね」

 

 「まあな。一人は裏社会の大物で死の商人と呼ばれる武器商人なんだが、本人は用心深いのか姿を現さない。唯一現れるのは、子飼いの忍びを賭けて戦わせる胸糞の悪いコロシアムだけだそうだ。二人目は後継者争いで殺し合い、組織が分裂し弱体化したため、発言権はそれほどない。三人目の組織も別の組織と抗争だとかで、暫く姿を見せていない」

 

 なるほど。そういうことなら、この話は安心して受けられるかもしれない。とは思えないな。三人とも物騒すぎるだろう。・・・・・・でもまあ、寄合にいないことには変わりないんだし何とかなるか。それに、なにか芸術的な景色が見れるかもしれない。

 

 「了解です」

 「では、詳しい話は・・・・・・ああ、まだ名前を言っていなかったな。雫という名前だ」

 

 雫。綺麗な響きだな。まあ、あの鋭さだと雫よりつららだな。

 

 「あいつは、勘が鋭いぞ。気をつけろ」

 僕はドントさんの鋭さが怖い。

 

 「いつ出立ですか?」

 「次の立秋の三日前だ」

 「まだ、一週間ありますね。それまでは自由という訳ですか」

 

 さらりと自分の自由時間を確保しようとしてみたが、あっさりと看破されてしまった。

 

 「何を言っている。修行だ。もちろんツーマンセルも含めてな。お前は、どうも体術が他と比べて鈍いな。無駄が多い。それと、お前のチャクラ性質も調べないとな」

 

 ぐっ、確かに僕の体術は拙い。基本的に傀儡や爆遁は遠距離だから、今一番僕に大切なのは体術かもしれない。

 

 「よろしくお願いいたします」

 こうして、リオンとドントの地獄の一週間は幕を開けた。

 

 

    *

 

 リオンが地獄の一週間を過ごしている間。動き出した者たちがいた。

 

 いつの時代でも忍五大国最強はどこかと聞かれれば、必ず名が挙がったのは火の国。その最大の理由となった隠れ里もまた、木の葉隠れで有り続けた。そんな木の葉のシンボルである、火影の顔岩の真下に火の文字を冠する建物がある。その一室に忍の最高戦力の一角が集結していた。

 

 招集された人数は総勢五名。まず一人目は雲隠れの五代目雷影・ダルイ。彼はかつて四代目雷影・エーから右腕とまで呼ばれた程の男である。二人目は、忍刀七人衆の一振り大双剣ヒラメカレイの所有者にして、六代目水影・長十郎。三人目は砂隠の長である五代目風影・我愛羅が来た。彼は第四次忍界大戦では前線指揮官をその圧倒的カリスマ性で勤め上げ、一尾の守鶴の人柱力でもあった。四人目は今回の突然の招集を要請した本人である四代目土影・黒ツチ。最後の一人はまだ到着していないようだ。

 

 

 「それで、はるばる雲隠れから俺を呼びつけて何の用だ」

 けだるげに、すすき色の髪を掻きながらダルイは言った。

 

 「まあまあ、そういわずに雷影さん」

 と、いらだつ雷影を理知的に諌めるのは水影の長十郎。

 

 「ちょうどいい機会だ、俺も皆に話しておきたいことがる」

 毅然とした態度で我愛羅は腕を組んだ。

 

 「にしても、火影の奴はいつ来るんだよ‼」

 黒ツチは苛立ちが頂点に達したのか、バンッと机を叩き立ち上がった。

 

 「すいません。火影も、もう間もなく来ると思います」

 額に汗を浮かべながらしかし、ほんの若干面倒くさそうな様子で謝罪するのは、木の葉の重役であるシカマル。

 

 「さっきから、そればっかじゃねえか‼」

 その時、扉が開いた。

 

 「すまねえ、新しい忍具の開発部との話が長引いちまった。待たせたか?」

現れたのは、七代目火影にして今代最強の忍び・うずまきナルトその人であった。

 

 「ああ、とってもな」

 黒ツチはなおも苛立った様子だったが、理性が勝ったのか大人しく席に着いた。火影は早速本題に入ろうと口を開く。

 

 「それで、土影。今回の緊急会議の理由はなんだってばよ?やっぱり、岩のホテルの爆発事故と何か関係が?」

 

 単刀直入に聞かれた土影は苦虫を嚙み潰したような表情を浮かべた。

 

 「もう火影は、そのことを掴んでいるのか。ああ、そうだ。だが、事故じゃない。テロだ」

 「そんな小さなテロごときで、俺を呼んだのか?俺は忙しいんだ」

 岩のゴタゴタに介入する必要はないと判断したのか、雷影は席を立ちあがり帰ろうとする。だが、我愛羅の諌めるような視線にため息をつき、席に戻る。

 

 「・・・・・・これは、極秘なんだが」

 黒ツチがジレンマを抱えているような顔で押し黙る。

 

 「極秘だがどうしたんですか?土影さん」

 なかなか言い出すことのできない黒ツチにそっと尋ねる水影。覚悟が決まったのか土影はポツリと話し出した。

 

 「土の国の老中が暗殺され、さらに先代オオノキも意識不明の重体にされた」

 「⁉」

 

 会議室を衝撃が襲った。誰もが事態を呑みこむことが出来ず、固まった時間がただ流れる。硬直した会談を進めようと、黒ツチが話を進めた。

 

 「そしてその主犯として、実という組織が持ち上がっているが恐らくは―」

 「暁」

 我愛羅は土影の話を遮るつもりはなかったが、自身でも意外な声量で思わず呟いてしまった。

 

 「暁だって⁉そんな馬鹿な。暁の構成員は全員死亡したはずです」

 影に徹していた、シカマルが思わず叫んだ。話の流れをいったん見守ることにしたのか水影、雷影、土影は押し黙る。必然的に風影が返答した。

 

 「ああ、だが約一週間前砂隠れの北の国境が襲撃された。そこには、赤砂のサソリのアジトがあったんだ」

 

 我愛羅の言葉を引き継ぐ形で、黒ツチが続きを喋った。

 

 「そして、数日前に岩隠れが襲撃された。それもたった二人でな。どちらもかなりのやり手だった」

 

 「具体的にはどれほどの?」

長十郎が冷静に質問をする。今からはなす忍に遅れを取った土影はよほど腹立たしいのか、苦悶の表情で回答した。

 

 「一人は異常な土遁の使い手で、赤ツチを含む手練れ五人をあっさり倒し、恐らくまだ何か手札を持っている。もう一人は一般人を傀儡の術かなにかで遠隔操作し、ホテルのブレーカーを爆破。さらに、土の老中の護衛に向かわせた精鋭四人を老中含め爆殺し、戦闘中のあたしを仲間ごと鳥型の爆弾で爆破しようとした。最後には岩隠れの高層ビルのほぼ全てを爆破してどこかに消え去った」

 

 「そんな⁉無茶苦茶だ」

 「それだけじゃない、じじいも、いや三代目も二人のどちらかにやられた可能性が高い」

 「いくらご高齢でも、あの塵遁の使い手がそう簡単にやられるなんて俄かには信じられません」

 長十郎にとって先代の血継限界を超える、血継淘汰を使いこなす人物がたった二名に遅れをとったことは、どうしても疑わざるを得なかった。

 

 「いえ、水影様。もしそれが暁の奴らならやりかねないでしょう」

 だが、シカマルが客観的に意見を述べ、それに風影と火影も賛同した。

 

 「俺も、もう一人の忍びのやり口は経験したことがある。そいつは、デイダラのやり口と同一のものだな」

 「傀儡の術ってのも、気になるってばよ。サクラちゃんが戦ったサソリって奴と何か関係があるのかもしれねえ」

 

 いよいよ、ことが重大になってきたと判断した雷影が事態の収拾について切り出した。

 「それで、どう対処するんだ」

 「雷影様の言う通りです。今優先すべきは実及び暁への対策を練ることです」

 

 シカマルが提示した建設的な話題に、水影も乗っかることを決めた。

 

 「実の方なら、聞いたことがあります」

 「本当ですか⁉水影様」

 

 思いもよらぬ方向からの情報提供に、驚きを隠せないシカマル。

 

 「ええ。僕らの里は、血霧の里と呼ばれていた時代から変わりました。しかし、まだ忍が中心となっているやくざ紛いの暴力組織や、黒い裏組織が残っている。これは、それを規制していくうちに掴んだ情報なんですが・・・・・・」

 

 あまり明瞭性に富んだ情報ではないのか、歯切れの悪い長十郎に雷影が噛みつく。

 

 「なんだ。もったいぶらず早く言え」

 「・・・裏の中でも特に規模の大きい組織間で行われる意思決定機関があるみたいです。通称七草」

 

 「七草?」

 

 聞き覚えの無い組織名に火影が説明を求めた。

 

 「裏組織の活動範囲の決定や、各組織がスパイして得た情報の共有などをしているそうです。そして、残念ながらかつてはうちの里の暗部も所属していたそうです」

 

 

 なかなか、話が見えてこないことにいら立つ土影。

 「だから、その七草と実になんの関係があるってんだ」

 「最近、七草の構成組織の一つが別の組織に潰され、変わったそうです」

 「まさか・・・」

 「その組織こそ実」

 

 とうとう点と点が繋がったことで、風影が結論を出した。

 「なら話は早いな。その七草に乗り込めばいい。単純な話だ」

 

 今すぐにでも、部隊を派遣したい黒ツチは水影に詰め寄る。

 「それで、七草はいつ行われるんだ?」

 「立秋です。しかし、並の忍びでは危険すぎます‼問題は実だけではありません、他の七草も相当な手練れと予想されます」

 

 自身が掴んだ情報だけあって、一番正確に敵の能力を把握しているのか長十郎は必死に黒ツチを諌めた。にっちもさっちもいかない、事態に火影としてナルトは言い放った。

 

 「よし、俺が行くってばよ」

 「あたしも当然行く。これは、岩の問題だ」

 

 だが、ここでシカマルが止めに入った。

 「待ってください。火影様も土影様もまだ若いでしょう。これからの里に必要な存在です。もし、実が暁と関係しているなら危険すぎる。奴らは大抵初見殺しの能力を持っていることが多いんです」

 

 「だがなあ火影の側近さんよ。影達以外でこれが務まる奴は存在すんのか?」 

 雷影が当然の疑問を呈する。会議室は重い沈黙に包まれた。

 

 「ならシカマルには悪いが、やっぱり俺が―」

 その時、会議室に新たな来客があった。銀髪にマスクの忍びだ。思わず、ナルトは叫んだ。

 

 「カカシ先生‼」

 「話は聞いたよ。シカマルの言う通り、これからの時代には君たちが重要だ。もしもの事があったら、忍びの世は再び混迷の世界となる。その点、俺なら大丈夫だ。前の世代の俺ならね」

 飄々と現れた、六代目火影・カカシに対して我愛羅が忠告した。

 

 「前か、後かは関係ない。影の名を背負った者、背負う者。誰がいなくなっても世界は混乱する」

 そんな心配の言葉にカカシは笑って返事した。

 

 「大丈夫ですよ風影。この世界にはナルトがいる。君たちもいる。次の世代もいる。きっと大丈夫ですよ」

 

 もう覚悟を決めた様子の六代目火影に我愛羅も諦める。

 

 「・・・・・・分かった。だが、一人ではだめだ。カンクロウを連れていけ、あいつはサソリと闘ったことがある」

 「礼を言いいます」

 

 早急に事態を纏めるために、水影もカカシを援護をした。

 「では、私は潜入のバックアップをします。ただ、水の暗部の後釜として座った男には本当に警戒してください」

 「どういうやつなんですか?」

 「鬼灯バトラ。表向きは貿易商として名をはせていますが、実際は他の商船を襲い奴隷にするか・・・・・・」

 

 又しても、押し黙った水影を雷影が急かす。

 

 「どうしたんだよ?」

 「食べてしまうそうです。噂によると人知を超えたチャクラを持つ、海の妖魔と呼ばれる存在と契約して生贄にしてしまうとか」

 「分かりました、そちらの方も探ってみます」

 

 そうカカシが会談を締めくくった。

 

 

 

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