暁新伝《BORUTO編完結》   作:モリッチ

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七草の強者達

 8話

「では、まずチャクラ性質を調べるぞ」

「お願いします」

 

 僕の性質は何だろうか。僕は元々人間だったなら、爆遁と土遁そして、雷遁使いだったのか?でも、これで自分が何者なのか少しは・・・・・・

 

「この紙を使え」

 

 この紙はチャクラ感応紙と呼ばれ、使ったもののチャクラ性質に合わせて反応が変わる。風遁なら紙が切れ、雷遁なら紙がしわしわになる。

 

 恐る恐る僕は紙を持つ。しばらく持ってみたが、紙が変化することは無かった。

 

「あれ?反応しない」

「そんなはずはないんだが」

 

 ドントが確かめるためにリオンの紙をとろうとした瞬間、紙が爆発し散り散りに断ち切れた。

「熱つ‼」

 

  僕は慌てて手を離した。ドントは焼け焦げながらひらひら舞い散る紙を摘まんだ。それをよく見ると、爆発しただけじゃなく切断されている様にも見える。片っぽは爆遁だろうが、もう一方は風遁?雷遁じゃないのか?

 

「そういう事か」

「どういう事なんですか‼」

 

  一人納得している様子の彼に、僕は若干涙目になりながら訪ねた。

「チャクラ感応紙は対象の最も強いチャクラ性質を示してくれる。実は、お前を見つけたサソリのアジトには経絡系が幾つか培養されていてた。恐らく元々の忍びのそれをクローン技術で培養していたんだろう」

 

 その経絡系が僕に移植されており、

 

「それが、爆遁と風遁だろうということですか?」

 

 僕の推測を彼は肯定した。

 

「ああ。恐らくサソリはお前を傀儡にする際、爆遁と風遁の経絡系を移植した。結果、お前は一つの体に三人の経絡系を持つことになった。だから、感応紙が不自然な反応を示したんだろう」

 

「じゃあ、僕本来のチャクラ性質は分からないんですか?」

「そうなるな」

 

  思わず俯く。何故、移植したのか。何故、僕は傀儡なのか。何故、僕なのか。何故、記憶がないのか。

 

「ついてこい。そう言っただろう」

 

 負の感情に浸かり切った僕の心をドントさんが拾い上げる。

 

「俺の勘だが、答えはお前の中にある。お前が強い意志で雷遁を覚醒させたようにな。まあ、安心しろ。俺も手伝ってやる」

 

 確かに、数ある方法の一つが失敗しただけだ。気にすることはない。それにしても、爆遁と風遁・・・誰が本来の持ち主だったんだろう。まあ、考えても分からない事か。切り替えよう。

 

「じゃあ、次はどうします?」

 そんな、僕の質問に彼は即答した。

 

「体術だな。今回の修行の目標は接近戦に持ち込まれた際に、適切に対処をして、自分に有利な遠距離に持ち込み直せるようになることだ。もちろん最終目標は接近戦で敵を倒せるようになることだが」

 

  体術・・・こればかりは避けて通れないのか。覚悟を決めるしかない。

「何から始めます?」

「普通なら基本的な体作りからだが、体の方は傀儡だからな。そこは別の方法で底上げするとして、最初は体術の基礎を学ぶ」

 

 

   *

 

 そこは、最初にドントさんと闘ったコンクリートのトラウマ空間であった。土遁やら爆遁やらでボコボコになった穴はきれいさっぱり無くなっている。この空間に来ると胃が・・・・・・まあ、前回と比べて死の危険がない分気が楽だな。

 

 僕の目の前にドントさんが立った。

 

「まずは受け身から学ぶ」

 

  回避や防御、攻撃からじゃないのは分かるけど、なんで足さばきとかからじゃないんだろう?でも、ドントさんの言う通り頑張るか。

 

「練習中必ずお前は、回避も防御も出来ず吹っ飛ぶ。その際、上手く受け身が取れないとばらばらになってしまうからな」

 

 目の前が真っ暗になった。

 

 

    *

 

 あれから四日経った。一つ分かったことがある。ドントさんは鬼畜だと言うことだ。何度か腕が取れた。いや、比喩ではなく腕が取れたのだ。せっかく受け身が様になってきたと思ったら、急に容赦が無くなったのだ。やっとの思いで自己修理したら、「なんだ直るのか」なんて言って、頭を狙ってきたのだ。流石に死ぬと思って、爆遁を使ったら「これは体術の修行だ、忍術は使ってはいけない」などと笑って言うのだ。あれから、ドントさんとは口をきいてない。

 

「そろそろ、体術の基礎は身に付いてきたか」

「・・・・・・」

 

 僕の無言の抗議もそよ風の如く受け流し、彼は口を開いた。

 

「では、土遁・土矛を伝授しよう。これは攻撃力、防御力を底上げしてくれる優れものでな。俺も大変重宝している」

 

 土遁大好き人間だけあって、普段より楽しそうに話すドントさんに思わず不満がこぼれた。

 

「・・・それを先にしてくれればよかったのに」

「ん?」

「最初から教えてくださいよ。そうすれば、あんな痛い思いしなくても良かったのに」

 

 雷遁以外には絶対防御と言っても差し支えない、あの術があれば自分で自分を修理するなんて経験はなかたっだろう。しかし、そんな僕にしょうがない奴だなと言わんばかりの視線を向けた。

 

「人は痛みを知る事で成長できる。物理的な痛みでなくてもいい、大切なのはそれを受け止めて、考え、乗り越えることだ。むしろこの程度を遥かに超える痛みが蔓延するのが世界だ。中には絶対に越えられない痛みもあるがな」

 

 ドントはどこか遠くを見るような眼差しでリオンを見つめた。

 

「だが、いつの日か俺は変えたいと思っている」

 

 そんな目で見られたら、何も言えない。

「・・・・・・かなわないですね。ドントさんには」

 

「土矛の修練と共に、傀儡を含めた体術も修行するぞ」

「どういうことですか?」

「速度は置いておいて、回数だけで話すなら人は基本一度に一手しか攻撃できない。両手を別々に動かしても二手。だが、お前には尾がある。つまり一度に三手行動ができるということだ」

 

「いや、無理ですよ」

「何を言っているんだ。資料によると砂隠れ前相談役は、傀儡を同時に十体操り城を落としたと言われている。お前なんか百体もの傀儡を操れるじゃないか。腕の三本や、四本など朝飯前だろう」

 

 さも当然の事の様に話す彼を見て、この人には常識が無いんだなと思った。

 

「いや、普通腕は三本も四本も無いですからね」

「基本的には土矛を使った体術で全ての攻撃をいなしつつ、隙を見て尾の毒か爆遁で自分ごと爆破して仕留める。もちろん自分へのダメージは土矛で防げばいい」

「・・・・・・先は長いですね」

 

 もう何も言うまい。諦めよう。

 

「出立まで後三日だ。いくら危険が少ないと言っても、無いわけでは無い。七草の連中はどいつも癖が強いからな。今日はここまでにしよう」

「ありがとうございました」

 

 そう言って、リオンはとぼとぼ歩きだし、部屋を出た。

 

 トラウマ空間を出てもこの監獄風の廊下・・・・・・このアジトの設計者は美的センスがどうかしている。

 

 やっと、今日も地獄の一日が終わった。早く帰って寝よう。でも、ゲンナイさんとの開発が・・・・・・猛烈に眠い頭でたらたら廊下を歩く。

 

「ん?」

 

 ふと、気配を感じて前を見ると海色の少女が歩いてきていた。こんな至近距離になるまで気付かないなんて。受付に居た雫さんか。話しかけるか?いや、別に用もないのに話しかけるのもあれか。いや、でもここで話しかけないと無言の関係が固定化してしまうかもしれないし。それも、あれか。

 

「あの」

 

 クロワッサン髪の少女は無言で立ち止まった。

 

「ええっと、いい天気ですね」

 

「・・・・・・」

「・・・・・・」

 

 詰んだ。完全に。ここ何日も外に出ていない僕は今日の天気を知らない。

 

「そうね」

 

 返事が来た⁉今日は天気いいのか?少なくとも僕はここ数日一回も太陽を拝んでないぞ?・・・会話が終了した。

 

「あの、何しに行く所なの?」

「シンゲン様の所に行くの」

「ああ~シンゲン様の所に・・・・・・」

 

 今度こそ詰んだか。シンゲン様関連のことは、極秘に違いない。早くも会話の道が閉ざされた。

 

「肩もみしに行くの」

「完全におじいちゃんと孫の関係じゃん‼」

 

 どうやら僕は死中に活を求めることに成功したらしい。だが、安寧の瞬間は木端微塵にされることになる。

 

「・・・・・・孫じゃないわ。拾われた子だもの」

「・・・・・・」

 

 詰んでしまったか。地雷を踏んだ。

 

「気にすることないわ。そういう風に言ってくれて。シンゲン様は私のたった一人の家族だもの」

 

 どうやら、僕はまだ神に見捨てられてはいないらしい。

 

「な、なるほどねぇ~。僕も少し分かるかも。記憶の無い僕にとって、ドントさんは家族みたいなものだから。まあ、勝手にそう思っているだけなんだけどね」

 

「ふふ」

「どうしたの?」

 

 突然、笑い出した少女にただ困惑する。この子、こんな風に笑うのか。前回あった時には、ドントさんを一刀両断する姿だったから意外だ。

「似てるなと思って」

「ああ、確かにそうだね。似た者同士かもしれない」

 

 確かに、本当の家族とは違う人を家族と思っている僕たちは似た者同士だ。

 

「もう行くわ」

「そ、そうだね!僕もゲンナイさんの所に用があるし!」

 

 ゲンナイ。その言葉が彼女の耳に届いた瞬間、彼女の瞳孔がスッと細まった。

 

「あのごく潰しに何の用があるのか知らないけど、次ドアを爆破したら予算から引きって伝えといて。それじゃあね」

「うん。それじゃあ、また」

 

 早々と歩いていく少女を見送りながら、僕も歩き出そうとして、ふと自己紹介をしていないことに気づいた。

 

「あっ、僕リオンって言うんだけど、その・・・・・・」

「雫よ」

 

 そう言って、今度こそ彼女は去っていった。クロワッサンを揺らしながら。

 

「・・・完全に寝る気分じゃ無くなったな。今日はゲンナイさんと徹夜でもするか」

 

 

   *

 

「おお、リオン君今日は来れたんですね‼ドント氏にしごかれて、ただの屍になってると思いましたが」

 

 ゲンナイさんの中でも彼はそういうイメージなのか。

 

「ええ。そのつもりだったんですけね・・・・・・」

「それより、見てくださいよ‼とうとう出来ましたよ」

「あれが、出来たんですか‼ありがとうございます!」

 

 そう言って、ゲンナイは慎重な手つきで二種類の科学忍具を取り出した。

 

「いえいえ、礼を言う必要はありませんよ。色々アドバイスをいただきましたし、そもそもこの忍具はリオン君が設計した物じゃないですか」

「間に合うか怪しかったんですけどね」

 

 そう、出来れば七草に行くときに装着できればよかったのだが、厳しいかなとも思っていた新装備が出来上がったのだ。

 

 一つは、靴裏からジェットが出る忍足だ。これは、風遁チャクラによって、外部から効率的に空気を取り入れてジェットを生成し、その反作用を推進に利用するものだ。ちなみにジェットの生成エネルギーは僕の爆遁チャクラを使っている。もう一方は後のお楽しみだ。

 

「早速装備してみて下さい」

 急かすゲンナイに、僕も慣れた手つきで自身の脚部を開き新作を接続し装備した。

 

「いやあ、完成したての作品を試すときの期待感や不安感はたまりませんよね」

 

 リオンもゲンナイも満面の笑みだった。

 

「じゃあ行きますよ。3・2・1」

 

 

 

    *

 

 

 ドントは訓練場で一汗をかいた後、いつもゲンナイの部屋のドアは必ず足早に通り過ぎることにしている。今日もリオンをしごき、自分も訓練後ゲンナイの部屋の前を通りかかった。

 

「ん?この気配・・・・・・リオンのやつまた、ゲンナイの所か」

 

 一抹の不安を感じたドントは足に風遁チャクラを溜め、疾風の速さでドアを通りすぎる。そっと地面に着地した。ゲンナイの部屋のドアから2.5メートル。自室のドアまで後2.5メートル。ドントは一息ついた。

 

「そろそろ花の替え時か」

 

 ドントが一歩踏み出そうとした瞬間、廊下の壁が炸裂した。

 

 

    *

 

 水の国と火の国の間には巨大な海がある。その大海原を一艘の巨大な貿易船と、二艘の護衛の船が航行していた。

 

「後、四時間ほどで波の国に付けますね」

 火の国への輸出品を積んでいる、貿易船の乗組員は船長に言った。

 

「ああ、波も穏やかで天気もいい。風も良いのが吹いてるぜ」

 船長は今までの船乗り人生で最も快適な船旅に目を細める。そろそろ、船員に休息を出すか。そんなことを考えた瞬間だった。

 

 船が後ろから前へ大きく揺れた。完全に予期していなかった揺れに、船上の誰もが甲板を転がる。

 

 「何だ!?」

 船長は乗組員に確認を飛ばしながら、自身も直ぐに船から身を乗り出して海を見る。もし、座礁でもしようものなら里に多大な迷惑をかけてしまう。焦りを無理やりねじ伏せ目を凝らすが、そんな痕跡はどこにもない。

 

「誰か!今のが、何だったのか分かるか?」

 声を張り上げ、原因を探る。

 

「波です。急に海が盛り上がって、巨大な波が来たんです」

 乗組員の誰かが、そう叫んだ。波?この天気で?ここら辺の海域ではそんなことは起きない筈なんだが・・・

 

 そこまで考えた時、彼は気づいた。先ほどまで、吹いていたはずの風が消えていることに。穏やかだった波が、今や一切の揺れも無く鏡の様になっていることに。

 

「一体何が・・・」

 風が無くなった今。船は自前の動力で動くしかない。海を乱すものは船の動きだけになっていた。海面が船の後方から前方にかけゆっくり暗くなっていく。

 

「雲まで出てきたのか」

  船長は頭上を仰ぎ見た。何もない。あるのは皮肉なまでに明るい太陽とどこまでも澄み渡った青空。じゃあ、何で海は暗いんだ?

 

 じっと暗闇を見つめていると、それが蠢いた気がした。

 

「そんな、まさか―」

 彼が何かに気づいたときには、もう全てが遅かった。貿易船の甲板が真下から触手に貫かれていた。船が半分になって空を飛ぶ。真っ二つになったそれは海へ真っ逆さまに落ちる。いや、下は海ではない。巨大な赤い穴だった。数千本もの刃がびっしり並んだ口内だった。

 

 およそ全ての乗組員が飲み込まれていく中、船長だけは海中に落ちた。船の先端に立っていたために、落下先がずれたのだ。彼が目にしたのは、海上に向けて口を突き出している山の如きイカだった。

 

 それが、大木を何十本も重ねたような太さ触手で船を掴み直接口に詰め込んでいるところを彼は見た。

 

「鬼灯バトラ」

 

 これが船長の最期の言葉となった。

 

 

    *

 

 砂漠。風の国はほぼそれで覆われている。死の世界としてしられる場所であったが、腕のいい案内人と水の補給さえできるのであれば、絶好の交易ルートとなる。だが、この行商隊は不運にも別の理由で死に瀕そうとしていた。

 

「くそ、砂漠で行商をして早二十年。ここにきて賊に狙われるとは・・・」

 

 風の国の商人がラクダに揺られながらぼやいた。

 

 風の国から火の国へ、行商の列が細長く流れていた。その列を三つに分けるとするならば前と後ろは盗賊の列である。この商団は金品が狙いの賊に襲われ、頭と尻を挟まれアジトに連行されているのだ。

 

「護衛の忍があんなに役立たずだったとは。もう少しケチらず上等なものにしとくべきであった」

「うるせえな。それ以上ガタガタ抜かすようなら殺すぞ」

 

 商人の嘆き声がいい加減、鬱陶しくなったのか盗賊の一人がタガーを光らせる。

 

「こっちは、のどが渇いてんだよ。水気のねえこんな場所でこれ以上俺をイライラさせるって言うなら・・・」

 

 盗賊が口を閉じた。何だと思った商人は賊を見る。

 

「どうしたんです?」

「・・・・・・」

 

 盗賊はただ無言で地面を見つめていた。つられて、下を見ると自身の乗っているラクダの足が、赤い液体に浸っていた。

 

「何ですかね?これ。どっから流れてきたんだろう・・・ああ、後ろからか」

「分かんねえのかよ。これ血だぞ」

「・・・え?」

 

 さっきまではゆっくりゆっくりと流れていた筈の赤い液体が、もう小川の様になっていた。

 

「誰の?だって、私より後ろは全員あんたらの仲間の列じゃあ」

 

 そう言いながら、商人が下から顔を上げて後ろを見ると奇妙な光景が続いていた。首から上が無い盗賊たちが、馬やラクダに揺られてどこまでも列になっている景色だ。

 

「は?」

 

 今度は前方からも赤い液体が流れてきた。事態が現実離れしすぎて、よく分からない商人が身を乗り出して前を見ると、そこにも後ろと同じ光景が広がっていた。

 

「みんな。首から上をどこに置いて行ったんですかね?」

  商人が横を見ると、隣の盗賊の首も無くなっていた。

 

「置いていったんじゃナイ。風が運んでいったのサ」

 

 妖艶な女の声に商人が振り向くと、巨大な風魔手裏剣を背負い、緑の外套を羽織り、ミイラの様に全身を包帯で巻いた人間がいた。

 

 何故、人間と言い女と商人が思わなかったのか、それは包帯がまかれていない顔や腹や足などの部分が無色透明になっていたからだ。

 

「・・・透明人間?」

 

 それが、商人の最期の言葉になった。

 




誤解を招かないように念のため書いておきます。後半の海と砂漠の話は七草の代表者達です。次話でリオン達は七草へ出発します!
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