V's If-Story:ScalePowder of WhiteMoth   作:よしおか

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一号機のプラモデルを買う。

ブンドド言いながら弄って遊んでいるうちに改造したくなって色々考える。

ついでにそのオリジナル機体が活躍する話を書きたくなって更に色々考える。

似たような機体が公式外伝で登場して呆けた後、落ち込む。

周囲との相談の結果、開き直ってプラモの改造とSS発表に踏み切る。

大体こんな経緯で考え付いた話です。


第一章 はじまりの日
プロローグ 白のヴァルヴレイヴ


「ふざけんなぁ!! 何でテメエ達にケータイ渡さなきゃなんねーんだ、あぁ!? 放せよ、この野郎ォ!!」

 全校生徒のうち、ほぼ半数以上の人間が集められた高等学校の体育館に、リーゼントの少年の怒号が木霊する。目の前の悪行を止めようと奮いつつも数人がかりで体を抑え付けられ、怒りに柳眉を逆立てる少年の視線の先では、彼と同じくこの学校に通う生徒達が、白い制服に身を包んだ男達に自分のスマートフォンを差し出していた。

 現代の若者にとって必須のツールである携帯端末を他人に差し出すという行為に誰も納得していないことは、一様に怯えの表情を浮かべる学生達の顔を見れば察することは出来るだろう。整然と居並び、学生達を威圧する白服の男達に強制されなければ、誰がそう易々と、個人情報の塊であるスマートフォンを見知らぬ他人に渡すものか。

 目の前で行われる不当で一方的な行為に、学園の番格を自称するリーゼントの少年は猛然と異を唱える。状況が見えていない故の蛮勇ではあったが、自分や友人達の通う学校に土足で踏み込んだ男達の所業を見過ごすなどということは、彼には到底無理な事であった。

 誰が屈しようと自分だけは屈するまいと抵抗する少年の行動は、讃えられて然るべきであろう。誰もが、この状況を打開してくれる“誰か”が現れることを期待していた。

 しかし、蛮勇は所詮、蛮勇なのだろう。

 何故なら―――

「この学校は俺がシメてんだよ……この、ドルシア野郎! テメエ達なんかに好き勝手させ―――がはっ!?」

 

 白い軍服に身を包んだ男達が、正式な訓練を受けて銃を携行する本物の軍人である限り、ただ喧嘩が強いだけの高校生が暴力に訴えて勝てる要素など、どこにも存在しないのだから。

 

「きゃああっ!」

「山田くん!?」

 兵士の一人が、少年……山田ライゾウの後頭部を背後から銃のストックで殴りつけ、ついでとばかりに背中を蹴って床に倒す。目の前で行われた暴力の行使に、周囲の学生達から悲鳴が上がる。

 完全に不意を突かれたライゾウは、打たれた頭を抱えながら視界を揺らす痛みに悶える。だが白服の兵士たちは、口元に嘲笑を浮かべながら倒れ伏すライゾウを蹴りつける。

「がっ、ぐ、ぅう……!」

「無駄な抵抗だ。ジオール本国は既に無条件降伏した!」

 硬い軍靴で背中を踏みにじられ、苦悶の声を漏らすライゾウの姿に、学生達は息を呑む。その注目の中、白服の兵士たちの中でも年配の男が、良く通る声で言った。

 自国の無条件降伏。その言葉に、体育館に集められた学生達の背筋を冷たいものが走り抜ける。それは即ち、彼らをこの暴虐の中から救い出してくれる筈の自国の国防軍が、既にその戦力と、それを行使するための全ての権利を失ったことを意味する。

 彼らを助けてくれる者は今、この世界のどこにも存在しなかった。

「降伏って……」

「攻撃はここだけじゃなかったのか?」

「私たち、どうなるの……?」

 最悪の現実にざわめく学生達を一瞥して、この学校を占拠した部隊の指揮官は大声で告げる。

「平和ボケした君たちにもう一度言おう! ジオールという国はもう無い。ここは、我が大ドルシアの属領なのだ!」

 一切の配慮も慈悲も無い言葉に、一部の生徒達からは不安と不条理に耐え切れず、啜り泣く声が漏れ始める。

「また、ジオールの秘密兵器と言う機動兵器についても、既に我々の本隊が鹵獲し、パイロットも捕えられている!この建物の調査と合わせて、今君たちの生殺与奪は我々が握っていることを忘れるな!」

「っぐ……ふざっ、けんな……! 誰が……テメエ達なんかに……」

 足元から聞こえてきた声に、指揮官の男は微かな驚きを抱く。視線を向ければ、痛みに歯を食いしばりながらも指揮官の男を睨み上げるライゾウの姿があった。

 一周回って感嘆すら覚えるその諦めの悪さに周囲の兵士たちは動揺するが、指揮官の男からすれば、未だ闘志を失う事の無いライゾウの瞳は、激しい苛立ちを覚えるものだった。

 

―――戦争も知らない国のガキ如きが、この状況でまだ無駄な抵抗を続けるか!

 

 苛立ちに任せて、指揮官の男はライゾウの頭を蹴りつけると、完全に沈黙して力なく横たわるその頭に銃を突きつける。

「……丁度いい。属領となった以上、君たちもこれからはドルシアの国民だ。国家の剣たる連邦軍に楯突いた国家反逆者がどんな末路を辿るのか、教訓としてその目に刻むが良い」

 周囲から、一際大きな悲鳴が上がる。しかし、それも一瞬のこと。騒げば次は、その銃が自分に向けられると本能的に悟ってか、学生たちはシン、と静まり返る。

 もはや恐怖で泣き声すら出ない学生たちに見せつけるように、指揮官の男がゆっくりと引き金を―――

 

 

「待ってっ、待って下さい!」

 

 

 引く寸前、学生達の中からその人影は飛び出した。

 何事かとそちらに目を向けた兵士たちが一瞬だけ、ほう、と間の抜けた吐息を漏らしてだらしなく鼻の下を伸ばしてしまったのは、致し方ないことだろう。

 そこに居たのは、シンプルながらも露出の際どい競泳用水着によってスタイルの良さを際立たせた、妙齢の女性だった。

 一瞬、女性の豊かな体のラインに目を奪われてしまう指揮官の男だったが、鉄の意思で己の職務を思い出すと、不穏分子の処刑を邪魔立てしたその女性に向かって怒鳴りつける。

「な、なんだ貴様は!貴様も我々に歯向かうのか!?」

 なぜ、捕虜の中に水着姿の人間が居るのかと一瞬混乱する指揮官の男。しかし考えてみれば、別働隊が作戦を開始した時刻は高等学校の放課後に当たる時間だ。大方、部活動か何かに参加していたのだろう。見れば、彼女が飛び出してきた辺りには、同じく水着姿の女生徒がちらほらと見える……高等学校の生徒にしては多少、この女性は肉付きが良すぎる気がするが……いかんいかん、誇り高き連邦軍指揮官の肩書きを忘れてはいけない。

 指揮官の男が内心で葛藤していると、先ほど怒鳴られた女性は、しかし気丈にも目を逸らすことなく男に訴えかける。

「その子に……生徒達には乱暴なことはしないでください! みんな、混乱しているんです。少ししたら落ち着きます、ちゃんと言うことを聞きますから……」

 言葉も身体も震えてはいるが、言葉だけはしっかりと言い切る女性。しかし言いたいことを口にして緊張の糸が緩んでしまったのだろうか、見る見るうちに顔を俯かせてしまう。

「その物言い、貴様はこの学校の教員か?」

「……はい、実習生ですけど……お願いします、私がそちらに行きますから、その子を放してください」

「七海先生!?」

 自分が身代わりになると女性が言い切ると、周囲の生徒達が息を呑んで女性の名を呼ぶ。

 なるほど、周囲の生徒達からも慕われているようだし、彼女が自ら人質になると言うのなら、未だざわめく学生達も抵抗する気は起きないだろう。

 それに……これだけ魅力的な女性が自らこちらの近くに来るのであれば、多少は“そっち”の方面も期待できる。なにも強制するわけではない。彼女が生徒の安全を願って、自分個人に交渉を持ちかけたことにでもすれば或いは……

 朧気ながらも脳裏をちらつく“戦利品”に自身の頬が緩むのを抑えつつ、指揮官の男はライゾウの背から軍靴をどけて、女性に向かって手を伸ばす。

「良いだろう。貴様が我々と行動を共にすると言うのであれば、こちらにも拒む理由は無い」

 言って、指揮官は女性の肩に触れようと手を伸ばす―――

 

 

 その、瞬間。

「てっ、敵襲!敵しゅ―――ぎゃああああああっ!!」

 体育館の外から聞こえてきた悲鳴から数秒遅れて、ズドォン! という轟音と共に、地面が大きく揺れた。

 

 

 

 揺れに足元を取られて数歩たたらを踏んだ指揮官の男だったが、すぐに慌てる部下たちに声を掛ける。

「何事だ!」

「て、敵襲です!外にあの“人型”が……特一級戦略目標、『ヴァルヴレイヴ』が!」

「んなっ……何だとぉ!?」

 部下の口から飛び出した有り得ない言葉に、指揮官の男は目を見開く。

 そんな馬鹿なことがあって堪るかと内心で零しながら、指揮官の男は蹲る女性を押しのけて体育館の外へ向かう。

「馬鹿な、あれはカイン大佐の特務隊が鹵獲したはずではなかったのか!?」

「ち、違います!特務隊で鹵獲したのは赤い機体で、今こちらに向かっているのは……っ!?」

 言いさした部下の兵士が、その言葉を半ばで噤む。爆発の熱風と砂煙に顔を撫ぜられた故のことだった。

 通用口から体育館の外へ飛び出した兵士たちは、自軍の装甲車両が上から押し潰され、爆発炎上する瞬間を目にした。

 砂煙が収まった時、燃え盛る装甲車両(だった物)が何かに掴み上げられる。一トンは下らないであろう重量のそれを軽々と地面から引き剥がした“それ”の姿を認めた兵士たちは、一様に動きを止めた。

「あ、ああ……」

 呆然と、指揮官の男は目の前に立つその姿を見つめる。

 さながらそれは、黒い着物の上に白い鎧を纏う、旧き時代の武者の姿。炯々と輝く緑のツインアイは、高い位置から兵士たちを睥睨していた。

 人のような四肢を持つそれは、淡い光を放つその右手で装甲車両の残骸を握り潰そうとしている。ギギギギギ、と鉄が軋む音に合わせて、赤黒い液体が残骸から滴り落ちる。

 一際大きな音と共に、巨大な『掌』で小さくプレスされた装甲車両が見えなくなる寸前、そこからはみ出していた物体が人の腕だったと理解した指揮官の男は、自身の死を予感する。

 

『お前ら……出て行けぇっ!』

 

 外部スピーカーから聞こえてきたのは、声変わりも迎えていない少年の怒号。その巨大な姿にはあまりにも似つかわしくない声が、兵士たちの恐怖を余計に駆り立てる。

 

『俺達の学校から、今すぐ出て行けぇえーーーーーーーーーっっっ!!』

 

 この場にある筈の無いジオールの兵器が、既に制圧したはずの場所で、厳しい訓練を積んだ自軍を蹂躙している。その現実が受け止められず、兵士たちは只々硬直するばかり。

 それは、白と黒のツートンカラーに彩られた巨大な人型兵器が巨大な拳を高々と振りかぶっても変わることは無かった。

 何故か唐突に、故郷の景色を思い出した直後。

 人の形を保つ事すら許されず、指揮官の男は巨大な拳に叩き潰された。

 




 物書きのリハビリも兼ねて久々に投稿です。よろしければ感想、評価等お願いいたします。
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