ヤンデルモンスト〜書いたら出るを添えて〜   作:千銀

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妲己3体目。


略奪之刑(妲己)

 

 

 

 

「あっつ〜…。」

 

雨上がりの猛暑。湿度が高まっている中、真夏の太陽は追い討ちをかけるようにじりじりと輝き続ける。

 

 

「なぁなぁ〜クーラーつけて〜♡」

 

「ダメ。夜になってから。」

 

「えぇ〜‼︎」

 

ほぼ裸の状態でうちわを仰ぐ彼女の名は妲己。街のはずれにある人気のない神社で、俺が置いたお供え物の大福を食べているところを見つけ、それから何かとつけまわされている。

 

 

「そんなに言うならデパートにでも行って涼んでくればいいだろ。」

 

「いやだ!外に出ると暑いし涼んできても帰ってくるとき暑くなるから!クーラークーラークーラー‼︎」

 

やかましく騒いでいた彼女だが、窓の外を見るとピタリと騒ぐのをやめた。

 

 

「なぁなぁ。あれ見ろ、あれ。」

 

「なんだよ……。」

 

外を見ると、大学の同級生2人が仲睦まじく歩いていた。そう言えばあの2人は付き合っていると言っていた。

 

 

「…あの2人がどうかしたのか?」

 

「はぁ〜。あの2人は夏を謳歌していると言うのに…。お前は家の中で寂しくお勉強…。」

 

「いいの!他所は他所!うちはうち!」

 

そう言って勉強に戻ろうとした俺をあざ笑った。

 

 

「出たwww童貞の十八番セリフwww」

 

(あぁん!腹立つ‼︎)

 

「うるせぇ!お前みたいな糞ビッチといるこっちの身にもなってみろ‼︎」

 

「何?興奮してんの?wwwもしかして勃っちゃってんの?www」

 

「はっ!外に出ただけで公然わいせつ罪で捕まった奴が何言ってんだ!それでずっと引きこもってんだろ?」

 

「は⁉︎そんなわけ無いでしょ!妾の手にかかればね?刑務所の人間なんて一週間で全員オトせるし!」

 

「早口になってますよ〜。捕まるの怖いですね〜。」

 

「「はぁ……はぁ…。」」

 

お互いに言うことがなくなり、あたりに蝉の鳴き声だけが響いた。

 

 

「馬鹿馬鹿しぃ……。結局さらに暑くなっただけかよ…。」

 

「もう疲れた…。妾は出かけてくる。」

 

「何処行くんだ?」

 

「川。あそこならずっと涼しい……。」

 

「ああそ……。飯までに帰って来いよ。」

 

「分かってる。」

 

 

 

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夜になって眠っていると、なにやらへんな呪文を唱える妲己がいた。

 

 

「……何してんの?」

 

「ん〜?お前をモテなくさせる呪文。」

 

「そうか…好きにしてくれ。」

 

眠くて反論する気にもなれなかった。

 

 

「一生童貞〜。一生童貞〜。モテ期も来な〜い。」

 

(呪文ってか悪口だな。)

 

これが俺と妲己の1日だった。

 

 

 

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ある日、妲己は彼の帰りを待っていた。今日は早く帰ってくるので寿司に行こうという約束だった。

 

 

「〜!遅い‼︎」

 

イライラしていると玄関のドアが開き、上機嫌な彼が帰ってきた。

 

 

「遅いぞ!」

 

「いやぁ〜ごめんごめん。」

 

彼の顔はニヤニヤと笑っており、気味が悪かった。

 

 

「なんだニヤニヤして。気色悪い。」

 

「あっ!分かる?ていうか気色悪いって言うな。」

 

「事実じゃないか。なんだ、千円でも拾ったか。そんな浅ましい行動をするから……。」

 

「いや違うから。交番に届けるから。いやぁね。今回はね。とっても素晴らしいことだよ。」

 

「な…なんだ。遂に親の金に手を出したか。お前はそんなんだから……」

 

「なんでさっきから金ぐるみなんだよ!違う違う、この度、彼女ができた!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………………え…?」

 

 

 

「いやぁ前から気になっていた人でさ。ほら、お前紂王をオトしたときの手口話してただろ?それをやってみたらいけちゃった。」

 

「いやぁ良かった。あ、今日は寿司出前にしたから。いいやつ買ってきたんだ。」

 

「……………………。」

 

「どうした?早く食おう。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやぁやっとか‼︎妾は心配していたぞ。お前みたいな醜い顔の男に果たして恋仲はできるのかと。」

 

「そんなにか⁉︎そんなに俺は醜かったのか⁉︎だが残念だったな。できたぞ。」

 

「いやぁ本当に………残念だ……。」

 

「よし!飯だ飯。お前の好きなやつも買ってきたんだ。今日は沢山食え。」

 

「ああ……。」

 

高いだけあって寿司はとても美味しかった。ただ口に合わないものがあったのか妲己はあまり食べなかった。

 

 

 

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二週間後に、お互いの大学の休みがとれて出かけることになった。ただ一つ心配な事が…。

 

 

『用事があるので神社に戻る。』

 

朝起きると、この書き置きがあった。まあ特に気にすることもないだろう。前にもこんなことはあった。

 

彼女と何処に行くかを話し合うのはとても楽しい時間だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして当日、あの日から妲己はずっと帰ってきていない。もしかしたら妲己は俺に彼女ができるまで見ているだけだったのかもしれない。

 

 

(まぁいいや……。誰かに移ったのなら大助かりだ。)

 

(…………あいつの部屋にあるものどうしよう…。)

 

少し早めに待ち合わせ場所に来て、彼女がくるのを待っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかしいつまで経っても彼女は来ない。日も暮れて来たので帰ることにした。

 

 

 

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「おーお帰り。」

 

家に帰ると、妲己がアイスをかじりながらテレビを見ていた。

 

 

「それ俺のアイスなんだが…。」

 

「どうだった?」

 

「聞けよ。あ〜……なんか来なかった。」

 

それを聞いた妲己は大笑いした。

 

 

「来なかった⁉︎いやぁ残念だったなぁ〜。フられちゃったなぁ〜。可哀想だなぁ〜。」

 

「ガッツポーズしてんの分かってるからな。あとまだフられてないから。」

 

「で?こんな時間になるまで律儀に待ってたのか?やっぱりからかわれただけだったな〜。」

 

「はぁ〜。もう好きに笑え。」

 

その後もさんざん笑われた。

 

 

 

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「来ていない?」

 

翌日大学に行っても彼女はおらず、彼女の友達からも連絡が取れないと聞かされた。

 

さらに彼女の母親からも連絡が取れないと聞かされた。

 

 

「ま、そのうち帰ってくるだろ。ほかの男ふっかけてるのかもしれんしな。」

 

「それをやるのはお前だけだよ。」

 

妲己には興味がなくなったのだとさんざんからかわれた。しかし彼女は一週間経っても連絡が取れなかった。

 

妲己は朝早くから出かけに行ってしまった。

 

「マジでどこ行っちまったんだ……。」

 

「はぁ…掃除しないと……。」

 

掃除機をかけていると、ふと妲己の使っている部屋に目が止まる。

 

そう言えばここは一度も掃除をした事がない。妲己がやっているのは分かっているが最近は全然掃除をしていないように見える。

 

 

「…やっといてやった方がいいか……。」

 

そう思って妲己の部屋に入る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

最初は目を疑った。彼女が椅子に縛り付けられ猿轡をされていた。

 

「お…おい!嘘だろ!」

 

縛り付けられている縄を必死に解く。彼女は酷い姿だった。足の腱が切られ、爪は剥がされ、破れた服から覗く腹部には青あざがあった。

 

「待ってろ!今病院に……」

 

連絡を入れようとしたところで意識が遠ざかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目が覚めると俺はベッドの上で裸で寝転んでいて、布団が被せてあった。脇目には彼女が猿轡をされたまま何かを叫んでいる。

 

 

「おお。起きたか。」

 

「…………。」

 

妲己が顔を覗き込む。声を出したくても声が出ない。

 

 

「薬が効いているからそう簡単には動けんよ。」

 

全身に感覚がない。異常な怠惰感にのまれている。

 

 

「だっ……き…」

 

「回復早っ!もう喋れるようになったのか。」

 

「なんだ……これ…」

 

「…………オシオキだよ〜オ・シ・オ・キ♡」

 

「は……?」

 

「妾のものを奪ったオシオキ♡妾はなぁ…奪うのは大歓迎だが奪われるのは絶対に嫌だ。」

 

「なぁ…お前は妾の今までで一番のもの

だ。復讐に身を置き、女としての誇りも純潔も捨てた妾が初めて本気で恋をした男だ。でも……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この女がっ‼︎」

 

 

 

 

 

妲己が包丁で彼女の急所を外して何度も何度も刺した。

 

 

「こんなッ‼︎有象無象のッ‼︎女にッ‼︎」

 

「ん〜〜っ‼︎ん〜〜っ‼︎」

 

今すぐにでも飛び出して妲己の首をへし折ってやりたい。しかし彼女がどんなに叫び声をあげても俺はただ見ていることしかできなかった。情けなくて涙が出てくる。

 

 

「いいなぁ……お前はこいつに涙を流してもらえて……。妾はそんなこと一度も無かった。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「腹が立つ。」

 

「ああああッ‼︎腹が立つ腹が立つ腹が立つ‼︎」

 

妲己が髪を掻き毟り怒りをあらわにする。こんなにも取り乱す妲己を初めて見た。

 

 

「でももう良い。奪われたのなら奪い返してやる。でも……」

 

妲己が彼女の首筋に注射器を刺し、中の液体を入れる。

 

 

「お……おい………何………だよ…それ…。」

 

「ふふふっ。今にわかる。」

 

 

 

 

 

 

「……ゴボッ………。」

 

彼女が苦しみだし、口から血を吐き出した。

 

 

「妾が作った毒だ。」

 

「〜〜〜〜〜ッ‼︎て……めぇ‼︎」

 

必死に彼女へ手を伸ばそうとする。どんなにやっても体は動かない。

 

妲己が服をはだけ俺の上に誇ってきた。

 

 

「なぁ醜い女よ……見ているがいい…。お前のものを妾が奪うところを。」

 

「う………あ……。」

 

涙を流す彼女に向かって手を伸ばす。しかし妲己がそれを抑え俺は妲己からの快楽を味合わされる。

 

 

(俺は………………最低だ……。)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

互いの絶頂と共に彼女は事切れた。

 

 

 

 

 






狂気度が足りない気がした。(小並感)

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