ゾルザル~ン戦記   作:nasigorenn

1 / 11
気分転換に始めたのでいつエタるか………読んでいただけば幸いです。


第1話 どうしてゾルザルになった。

 最近二次界隈で流行と言えば『異世界転生』だろうさ。此所ではないどこか、自分達が知っている常識に囚われないまさに夢のような世界。そんなあるはずがない世界に思いを馳せるのがここ最近のオタク達のブームである。確かに良いよね、異世界転生。そこで更に特典もらって俺つえぇして最強でハーレムなわけでウハウハなわけだ。うん、男なら………童貞なら誰もが憧れるな、こいつぁ。

 そんなわけで俺も異世界に転生することとなったわけだ。え? 異世界に転生する切っ掛けとか説明しないのかって? そんなもんを読者が望んでるとでも思ったのか? 読者が読みたいのは転生した後の世界での活躍であって原因なんてもんはどうでもいいんだよ。やれ突然死んだだのトラックに撥ねられただの、後悔しながら死んだだの。人間なんだから後悔するのは当たり前で、死因がどうであれ死んだことに変わりは無い。それを神が何かしら手違いがあったからって死んだって事実は変わらない。人間死んだら終わりなんだよ。その瞬間意識なんてないんだから、ある意味寝るのとかわらないさ。それにだ、神ってのは皆が思ってるより寛大でもなければ仕事もしてない。そういう類いってのは人間と感性が違うらしい。要は気まぐれで事を起こすだけで大概は何もしない。宗教の意味合いの神なんてのは精神の拠所でしかないからな。

 ぶっちゃけだから俺は神になんて会ってない。その姿形も何も見てないし、更に言えば自分が死んだ記憶もない。自分がどんな人間だったのかなんていうのは、はっきり言って自分でしか分からない。自分の性格なんてのは本人が一番理解しているからな。だから俺は『生前』とでも言える記憶がない。いつ死んだのかとか、何で死んだのかとか、まったく記憶にない。それどころか自分がどこの誰なのかすら分からないんだから。分かってるのは俺が今『ここ』で生まれ、『ここ』がどんな世界なのかっていうことだけだ。ある意味それが『転生特典』って奴にあたるんだろうさ。具体的には生前の『知識と自分を除いた記憶』、そして『この世界について』だ。『この世界』が小説原作の『ゲート 自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり』の世界だっていうことは何となくだが分かった。わかってしまった。

 よくよく考えれば輪廻転生っていう考え方は魂をリサイクルする際にそれまでに溜まってきた汚れ(その人物の記憶や人生)を真っ新に落とした上で新たな『生物』にするということだ。それなら自分の今までの記憶やら何やらがないのも納得出来る。その中で残っている知識や自己の全て以外の記憶というのが残っているのだから特別だろうさ。個人的にはもっとさ、『最強のお兄様』とか『野菜人』とか、色々あると思うんだがねぇ。まぁ、無い物ねだりはしょうがない。変に動かなきゃ命の危険はないだろうさ。炎龍に出くわすとか野盗に襲われるとかさ。だから慎ましく生きていきたいと思ってる。

 

 だというのにだ………これは無いんじゃないだろうか。

 

 

 

 では改めて自分こと俺の事を話そうか。俺が生まれた瞬間にして運命が決まりかけた最悪の瞬間のことを。

 

「おぉ、この子が………そうか、そうか………」

 

 最初に耳にしたのはこの言葉だった。そこから視界が広がり目に入ったのは金髪をした男。精悍な顔つきに野望を秘めた目が印象的な男であり、そんな男が俺を持ち上げながら感慨深く俺を見つめていた。正直辞めて欲しい。その目が怖いんだって、マジで。

 そんな事を思いながら自分の身体がおかしいことに気がついた。

 自分が何歳だったのかということはわからないのだが、それでもこう簡単に持ち上げられる程に軽かっただろうか? それに声が出ない。何か言葉を発しようとするのだが、どういうわけかそれが喉から出ない。出るのは何とも言えない泣き声のような声だけだ。そんなわけで自分が異常事態にあることを察した俺は…………正直困惑した。

 それに身体の動きもおかしい。正直動かし辛い。まるで筋肉がうまく機能しないかのようだ。力が満足に入らないのである。お陰で立ち上がることはおろか手を動かすことすら重労働である。そして感情の処理が追いつかなくなってきて…………。

 

「おぎゃぁああぁぁあああああああああああああああああああああああああ!!!!」

 

 盛大に泣いた。

 それはもう年甲斐もなく(歳がわからないのに)恥も何もかも捨てたかのように、見事なまでの大泣きを披露した。それも自分の意思ではなく、身体が勝手にそうしているようだ。それが更に混乱に拍車をかけ、身体はそれに反応し更に泣く始末。正直勘弁して欲しい。マジで恥ずかしいんですけど………。

 そんな風になってしまった俺に男は驚いているようでどうして良いのかわからないらしい。そんな男に優しい声がかけられ俺もそちらの方を向く。

 

「陛下、落ちついて下さい。赤子は泣くのが仕事ですよ。まずは私に」

「お、おぉ、すまぬ」

 

 男はそう言って声の主に俺を渡す。

 渡された俺が見たのはとても綺麗な女性だった。そして同時に察した。あぁ、この人が俺の『母親』なのだと。

 何故分かったのかはわからない。本能的にそうだと思ったんだ。そしてそれを証明するようにその女性に抱かれると何故か凄く落ち着いてきた。それに伴い身体が泣き止む。

 やっと落ち着くことが出来た自分は改めて自分が置かれている状況を察し、そしてその答えに行き着いた。

 

(俺…………赤子になってるっ!?)

 

 驚いて見せたがそれですぐ落ち着いた。何となく身体がその結果を受け入れたというべきだろうが。精神が肉体の状態を正常だと判断したからだろうか。

 だからこそ、母親のに抱かれながら眠気に誘われウトウトし始めてしまう。

 まぁ、所謂赤子らしい反応と言えよう。

 だが……………そんな俺を打ちのめすような言葉がこの後出てきた。

 

「陛下、この子の名は何としましょうか」

 

 母親の優しい声に父親だと思われる男は少し悩んだ後に意思強くこう告げた。

 

「よし……この子の名はゾルザル。我が帝国の第一皇子、ゾルザルだ!!」

 

 おい、待て! その名は…………・。

 まさか俺は………『ゲート 自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり』の『ゾルザル・エル・カエサル』になったのか!? ってことはつまり…………盛大な滅亡フラグの始まりじゃないか、やだぁ! 誰が好んであんな馬鹿皇子になってんだよ! 行き着く先は滅茶苦茶酷い死じゃねぇか! 嫌ですよ、爆乳自衛官に半殺しにされるの。

 

 

 こうして俺は『ゲート 自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり』の『ゾルザル・エル・カエサル』になった。なってしまったのだ。

 ならもう、なんとしても……………フラグを回避するしかねぇ!!

 

 

 

 ゾルザル~ン戦記、はっじまるよ~。

 

 




頑張れゾルザル、目指すはアルスラーンですね(笑)

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。