ゾルザル~ン戦記   作:nasigorenn

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とっとと原作開始しろという意見をもらいましたが、自分だって勧めたいんです。でもまだ下積みが出来ていないんで無理なんですよね。


第10話 ゾルザルは商会を始める

 Q第一皇子、ゾルザル殿下についてどう思われますか?

 

A、彼奴は今までに無い変わり者よ。だがそれ故に面白い。実際彼奴が成すことはこの帝国にとって利になることばかりだしな。なので彼奴の好きなようにさせている。皇族にしてはおかしいくらい野心がないくせに、その割に国の為になることをする。それで国の為かと問うてみれば、『いいえ、ただ単に興味でやってるだけです』と答える。彼奴の親衛隊も騎士らしくない所も見受けられるが、その分練度や連携密度は凄まじく、下手な騎士団なんかよりも余程手強い。特に生き汚いところが凄く、卑怯千万何のその、といった精神が根付いている。騎士としては最低かもしれんが兵としてはこれ以上無い程に『強い』。それこそ意地ばかり張っている役立たずな貴族連中なんかよりも余程な。まだまだ王位を渡す気はないが、彼奴にならいずれは譲っても良いとは思っている。それまでは私の好きにさせてもらうがな。何、彼奴だって好き勝手にしてるのだから私がしても良いだろう。まぁ、今のところ彼奴は今のままにしておくつもりだ。何せその方が『面白そう』だからな。

 

 Q第一皇子、ゾルザル殿下についてどう思われますか?

 

A、え、ゾルザル兄様についてか? そうだな、まず凄いお人ということだな。幼い頃から秀才であり様々な事に精通しており、その上武もしっかりと鍛えておられる。智と武双方併せ持ちながらも穏やかなお人であり争いを好まない。常に臣民のことを気にかけており慈悲に溢れておられる。それにその………私のことをかなり可愛がるからな。別に嫌なわけじゃないぞ! 兄上に頭を撫でられるのは気持ち良いし、兄上が持ってきてくれるお菓子は美味しいし。ただその……うん、もう少し妾を大人として扱って欲しい所もある。これでも既に騎士団の長を務める身、それ相応の扱いというものがあるというもの。だというのに兄上は『騎士なんて人でなしのロクデナシなんて辞めた方が良い』と言ってそれ以上に妾を可愛がるのだ。可愛がってくれるのは嬉しいのだが、それでも少し思うことがあるわけで………それでも敬愛している兄上である。

 

 Q第一皇子、ゾルザル殿下についてどう思われますか?

 

A、あれが同じ人間とは思えない! アレはなんだ、同じ血を持った人間か? 巫山戯るな、巫山戯るなよ! どうして誰も気付かないんだ、どうして誰も分らないんだ! あんな不気味なものが人間であるはずないだろう! あれが何をしたのか分ってるのか? 幼子の時分ですでに天才、周りから認められ戦争に出れば相手に大打撃を与えて絶対的な勝利を確約し、誰もが疑わない英雄性。おかしいだろ、どう考えても。俺達だって陛下の血を引いているんだ。だというのに何故あんな化け物が生まれるんだ。俺達だって条件は同じはずなんだ。だというのに誰一人アレと似ることがない。姉弟達の誰よりも抜きん出た才能、そして既存の常識を破壊する異常性。それらをまとめ上げる英雄性。アレが次期皇帝になることは決まっている。陛下はアレの事を大層気に入られているからな。だがその後のことは考えておられない。アレは下手をしたら俺等を駆逐し始めるぞ。何せアレは………平民に寄りすぎているから。

 

 

 

 

「へっくしょん!!」

「殿下、風邪ですかい?」

「いや、多分違うだろ。大方誰かが噂でもしてるんだろ」

「誰か覚えでもあるんですか?」

「さぁな。それよりも目の前の議題の方が問題だろ。こっちに集中だ」

 

さて、つい鼻がむずかゆくなってくしゃみをしたゾルザルです。

 あれから月日は経ちましてそろそろ一年が経とうとしている。ジャガイモの生産は今のところ上々であり、備蓄は良く溜まり村の食糧難には見舞われなくなった。

 じゃぁこれでやっと村の復旧は終わりかと言えば…………NOである。

何故か? 簡単です。

 

『金がない』

 

これに尽きた。

 確かにジャガイモのお陰で食糧難は逃れた。食う分には困らないという農家ならでは現状は問題無さそうに見える。

 だけどそれだけで終わりではないんだよ。ただ村を復興させました、てだけで帰れるわけないだろ。あの親父(陛下)のことだ。その程度で終わりにするわけがあい。無茶ぶりをするのがあのオヤジである。今まで以上にしないと文句を言われそうだ。それに俺もこの村の復興のために色々と金を使ったからな。それ以上に稼いで返さないと何を言われるのかわかったもんじゃない。

 詰まるところ………まだこれからが本番なのである。

いや、他所様から本編始めろとか電波がきたりするんだが、そりゃそうだと俺だって思う。でも現状時間的にもだがこれを解決しないと俺達は帝都に帰れないの。物語始まらないの。時系列を無視できるほどご都合主義ってわけにはいかないの。

 そんなわけでもう少しまって欲しいものである。おっといかんいかん、少しばかり電波を受信しすぎたな。話を元に戻そう。

 村の復興は終わったんだが今まで通りでは駄目だ。より発展させなければならない。その為には金がいる。ここまではいいか? そしてその為の弾は用意出来た。味良し、保存性良し、利便性良しと来た最強野菜。だがここで悲しいかな、その知名度は皆無である。この村に広めたお陰で村人からの信用は分厚いのだが。

 そんなわけで知られていないこのジャガイモを他の街、強いては帝国に広める為に行動しなければならないのだ。

 そんなわけでこうして村長や農家の各人、それに親衛隊の中の隊長や副隊長を呼び出して会議を行っている。

 そこでああだこうだと意見は出るのだが、正直どれもぱっとしない。村の特産品として作ったのだからそれにちなんだ名物料理などを作るのはいい。またそれに伴い簡単に食べれるお手軽な料理……所謂屋台で販売するお菓子のような軽食を作るのも賛成だ。だがそれもこれも味を知っていてこそであり、正直時間が掛かる。帝国の人間の悪い点の一つに未知なものに関して臆する傾向がある。要は真新しいものは受け入れられ辛いのだ。

 ではどうするのかと言えば市場に売りに出せば良いがそれでもさっきの問題が付きまとう。では知名度をあげるのはどうすれば良いのか?

 答えは料理店に押し売りして気に入ってもらうしかないのである。未知の食材というのは料理をする者として胸が高鳴るものだが、それでも例の問題が食いつく。料理屋でも商売なのだ。客が買わないかもしれないものに金など出さない。

 さて、どうしたものだろうか。俺の身分を使ってごり押しするなんていう案が部下から出た辺り、本当にこいつら騎士としての矜持をドブに捨てたな。まぁ、それでこそ俺の部下だと言えるのだが。

 その案は正直駄目だ。確かに俺が勧めていると喧伝すればそれなりに売れるだろう。だがそれは『俺』という効果があってこそであり、真の意味で売れているわけではない。それではジャガイモが広まらないのだ。

 村おこしの意味合いもあるジャガイモの流行。それを成すためにどうすればよいのか……………。

 その結果がというと……………。

 

『と、いうわけで………これから俺等は商会を始めようと思う』

 

様々なものを商う商会を始めることとなった。あぁ、なんでこうなっちまったんだろうなぁ。まずは商う商品にジャガイモは勿論だがそれに食料品、消耗品に美術・装飾品、それ以外にも情報なんかも扱うことにしよう。商業のイロハは一応本なんかで読んだが現場では通用しないだろう。戦争なんかより余程難しい。

 あぁ、ピニャ、お兄ちゃんはまだ帰れそうにないです。可愛い可愛いピニャに癒やされたいよう。


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