ゾルザル~ン戦記   作:nasigorenn

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久しぶりなので感覚が良くわからず申し訳ないです。


第11話 ゾルザルは恋愛が出来ない

 さて、唐突ですが俺は何をやっているのでしょう?

 

 クイズ形式で始まりを告げる訳なのでまずは状況という名のヒントを与えよう。俺がいる場所は大きな部屋で華美な装飾品が部屋を彩り、素晴らし美術品が目立つ位置に飾られている。座ってる椅子も目の前に広がる大きなテーブルもかなりの業物であり、職人が如何に本気で作ったのかが窺えるものである。

 次に目の前に置かれている紅茶だが、皇族だからこそわかる。これはかなりの上物だ。それこそかなり上の貴族でも無い限り飲めない程の高級品。ソレを入れられているカップも金の美しい装飾がなされている素晴らしいものだ。

 そして対面に座るのはニコニコと素敵な笑顔を浮かべる俺よりも更に年上の落ち着いた雰囲気のあるご老人。

 では答えを聞くとしよう。ここまでヒントが出たんだからわかるよな。そう答えは…………

 

 『素敵なお茶会!』

 

………という名の正直皇族の権力争いよりも真っ黒な交渉です!(笑)

 いや、本当にマジで勘弁願いたいくらいなのだがこれも偏にお仕事です。ほら、前回の話で商会始めたって言っただろ。

 あれから時間も更に過ぎ、ウチの商会も世間様に認識される程にはなりました。お陰でジャガイモの認知度も上がって来ています。お陰で今では少しお高めの料理店なんかに行けば食べられる程には成った。ちょっと予想外なのだが、やはり料理人達はこの食材が素晴らしいものであると気付いたのだ。そのお陰もあって広まったのはよいのだがどういうわけか高級食材の分類に入ってしまっているのだ。その所為でまだまだ臣民達の食卓には並ばない。なので俺としては臣民の食卓にいつもあるような、そんな身近な位置にまで持って行きたいのである。その為にはさらなるジャガイモの生産、そしてより知名度を上げるためにこうして他の商会や貴族やなどの権力者に鋭意売り込んでいるわけである。

 既に村の復興にかけた金は回収しておりそれ以上の収入を得ているわけなので商会を続ける理由はないのだが、コレが何のかんのといって結構面白かったりするのだ。

 この場にいるのは帝国の皇子『ゾルザル』ではなく、商会の人間として周りが見てくれるというのもあるし、それに俺自身自由に出来る金が増えるというのが上手い。皇子として使える金というのはどうしても帝国の皇族というものがついてくるため何かとややこしかったりするのだが、コレで得た金ならばそんな束縛はない。自由度が高い分様々な事に投資できるのは明らかな強みだろう。帝国は弱肉強食主義ではあるが、それとは別に金があればあるほど権力を得られるという部分もある。まぁ、正直に言えばこんな俺についてきた部下達に少しでも給金良くしてやりたいだけなんだけどな。少し前までは俺と部下の親衛隊達でやっていたが、あれから商会も規模を大きくしているわけであり、臣民から雇うことも増えてきた。だから従業員の給料を払うためにもこうして俺は今も頑張っているわけである。

 以上、それが今の俺の現状。そして向かいに座るのは帝国でも有数の大商人。この界隈にかなり顔が利く人であり、帝国にも品を卸すことが許されている凄い人だ。そんな人と今から始めるのが様々な商品の交渉である。良い値で売るか買うか、利権や販売交渉やらなんやらと色々と細かいのが商談というものである。

 この数年で俺もかなり揉まれたものだ。

 

「ではお仕事の話をしましょうか。ハザマ商会のハンスさん」

「はい、こちらこそよろしくお願いします。良い仕事に成ってほしいものですな」

「それはお互いに歩み寄ってこそですよ」

「そうですね。お互いに(利益をどちらが勝ち取るのかの勝負)良い話し合いが出来ればよいですね」

 

 不敵に笑う俺に向こうは微笑ましい笑みを向けるが俺にはわかる。おいアンタ! その目、まったく笑ってないだろ。薄ら開いた目に光がまったく入ってないんだよ。闇をそのまま落とし込んだような目をしやがって。

 さぁ、これから始まるのは皇族なんかよりも余程厄介で悍ましい程に恐ろしい魑魅魍魎の口戦だ。互いに己の手札を上手く使いつつ相手を騙し、より利を相手からもぎ取る為の戦である。下手に出れば飲み込まれ、一気に全てを失うことになる。商人という者達は皇族よりも余程性質が悪い。獲物に対し粘着的に攻めていき相手の財という財を全てかっ攫うのである。そうされないためにも此方もそれ相応の準備をしなくちゃならない。時に権利であり、また時には直接的武力であったりと様々だ。だからこそ、俺は商談の度に肝を冷やすしぞっとする。

 まぁ、それでもそれがまた醍醐味なのも事実。俺もすっかり商人という職に染まったものだ。だからこそ、敢えて笑みを深めながら相手を見る。そしてこう口にするのだ。

 

「さぁ、商いを始めましょうか」

 

 

 

「あぁ~~、マジ怖かった。何あのじいさん、本当にじいさんかよ。ありゃなんかの化け物じゃないのか。あんなおっかないじいさん、皇族にだっていねぇよ。寧ろまだ皇族や貴族連中の方が厳かだよ。あぁ~~~~~~~~~」

「殿下、お疲れ様でした。毎回同じ台詞で飽きませんね」

「町中では殿下じゃなくて旦那と呼べと言っただろうが。毎回同じ台詞がでても仕方ないくらいしんどいんだよ。代わりにお前が今度してみるか?」

「ご冗談を。この商会の長である人を押しのいて私がそんなこと出来るわけないじゃないですか。それに正直精神によろしくない。こんな綱渡りが出来るのはそれこそ殿下みたいな鋼の精神がないと無理です」

 

 商談が終わり町中にある飲食店にて軽い食事と茶を挟みながら本日のお付きである親衛隊隊長に文句を垂れる俺がそこにいた。

 商談も無事に終わり相手にも此方にも利になる良い話で締めることが出来た。それは実に喜ばしいことなのだが、その度にこうして精神を摩耗させるのだから溜まったものではない。

 

「あぁ~、癒やしが欲しい。具体的にはピニャに会いたい」

 

テーブルでぐだぁとしながらそう漏らす。いや、だってピニャの可愛い姿ほど癒やされるものはないんだって、マジ。おいソコ、シスコンって言ったな? シスコンで何が悪い! あんなに可愛くて将来は美人な可愛い妹だぞ! 癒やされない訳がない。

 

「殿下は何かある度姫様のことばかり口にしますな」

「そりゃ可愛いからな。他の弟も手が掛かったが、特にピニャは純粋に育ってるからな。色々と気が気じゃないんだ」

「親馬鹿ならぬ兄馬鹿ですか」

「褒め言葉として受け取っておこう」

「褒めてませんて」

 

そう話しながら料理を口に運ぶ。お、この肉美味いな。後で料理人に話を聞こう。

 そんなこと考えながら部下と苦笑しているわけでが、ここで部下からある話が飛び込んだ。

 

「そういえばそろそろ姫様も社交界に出るお歳でしたか」

「そういえばそうだな。きっとピニャのことだ。ドレス姿も素晴らしく美しいに違いない」

 

ピニャのドレス姿を思い浮かべてほっこりするわけだが、ここであることに気付いた。

 

「あれ? そういえば俺って社交界とか出たこと………ない?」

 

そう、よく考えてみたら俺はそういう宴会に出たことないな。思い返してみても出陣式とか戦勝会とか、後はいつも書類仕事に雑務全般に追われ、さらにはこうした商談で精神をすり減らす日々…………あれ?

 

「なぁ、何で俺にそういった話がこないんだ?」

 

これでも帝国にはそれなりに貢献しているとは思ってる。戦争なら確かに手柄は立ててるし、商会としても帝国には色々と援助はしているつもりだ。だというのに改めて思えば俺、もうちょっと報われても良くないか? 更に言えばこの歳まで恋愛のレの字もないことに今更ながら気付いた。

 そんなことに驚愕している俺に対し、親衛隊隊長はあぁといった様子で思い出しながら答えた。

 

「あぁ、それは皇帝のお達しです。何でも『第一皇子ゾルザルは帝国のために日夜様々な事に取り組んでおり多忙である。故に彼奴にはそちらの方を優先させる』とのことで。だから殿下には社交界よりもこっちも方を優先して欲しいらしいです。大方少しでも帝国に金策をしたいと言ったところでしょう」

 

それを聞いてマジかと俺は顔を顰めた。まさか皇帝の所為で俺は出会いがなかったのか。

 

「殿下、今更過ぎる話でしょうに。まぁ、私達の隊の中でもその話は当然挙がりましたが、殿下のあの常人離れした仕事量をみれば皆納得してました。色恋に目を奪われる暇も無いほどに殿下は忙しい」

 

そう言われ俺もあぁ、と納得してしまった。確かに忙しくて毎日が目まぐるしい。充実した日々なのは認めるわけであり、そんなことを考えている暇なかったな。それ以前に今こうして話しているのに恋人が欲しいとか、『ニャンニャン』がしたいとか、そんなことはまったくそんなことは思わない。それよりもこれから帰って他の部下達と会計の書類やら何やら、他の商売にも手を出すかどうか、なんてそんなことばかり考えてる。

 

「そうか、俺はいつの間にか社畜になってたのか」

 

自分で言ってすんなりと理解する。急がし過ぎて仕事中毒になっていたらしい。

 

「殿下、少しは羽を伸ばしてはどうでしょうか」

 

そう言って俺を心配する隊長に俺はニヤリと笑って反す。

 

「冗談いうな。まだ仕事は腐るほどある。そして俺がやらなきゃ誰がするんだ。俺はハザマ商会のハンスだぞ。商人なら、この一時でも稼ぐべく考えを巡らせないとな。何、この後菓子を買ってピニャの所に行く予定だ。それで癒やされればそれでいいさ」

 

俺の言葉に隊長は呆れ返ったが、それでも笑って俺に返した。

 

「それでこそ我らがついていくと決めた殿下です」

 

こうして俺は色恋のいの字も感じることなく仕事にもどっていく。俺としては今がクソが付くくらい忙しいが楽しいのでそれでいいと思ったんだ。

 

 

 

 それがまさか、色恋だの情欲だのなんだのという俺にとってどうでも良くなりつつあるものがとんでもない問題を起こすとはとは、この時の俺は思いもしなかった。




ハザマ商会とハンスというのがゾルザルの商会名と彼の偽名です。
さて、これが何かわかる人はいるのだろうか?
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