ゾルザル~ン戦記   作:nasigorenn

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第3話 ゾルザルの良き皇帝への手始めに

 計画が始動しまず最初にすべき『根回し』はまぁ、取り敢えずは順調といったところか。転生する前の自分が何歳だったかなんて分からないが、それでもこの根回しがかなりの羞恥プレイだってことはしてみれば嫌でも分かる。だが、それも全ては『綺麗なゾルザル』になるため。その結果が出始めてる昨今、俺の宮殿内での評判は悪くない。

 

『明るく優しく甘えたがりな可愛い皇子』

 

それが俺の現在の評判である。基本我儘を言うことはあっても無茶難題ではなく、子供らしい可愛らしいものを言うようにわざとしている。小さい時から分別が良い子供というのは得てして大人しい、言い換えるなら性格が暗い人間になりやすい。だからある程度の子供らしさを演出するには歳相応の振る舞いをすることで将来が楽しみになるような、そんなことを思わせるように行動していた。

そんなわけで実に『子供らしい』幼子なゾルザルくんなわけだが、ここ最近それとは別に夢中になっているものがあった。

 

 

 

「あ~~~~、うぁ~~~~~~」

 

目の前にて言葉にならない声を上げるのは、ちんまりとした存在。やっと生え始めたであろう赤毛に可愛らしく笑顔をこちらに向けてくる。

 

「はぁ~~~~……もう、まったく可愛いなぁ、ピニャは」

 

自分でもどうかと思うくらい目の前にいる赤子に俺はメロメロだった。

いや、だって仕方ないだろ。何せ目の前にいるのは俺にとって初めての『妹』なんだから。

 

『ピニャ・コ・ラーダ』

 

アニメにおいて帝国で一番の重要キャラ。帝国第三皇女で第10位の皇位継承権を持つ。彼女の存在こそがある意味鍵だ。何せこの先帝国は彼女を通して日本の自衛隊と接していくことになるのだから。この先あるであろう主戦派と講和派という帝国を二分する事態になったとき、彼女は講和派として帝国を率いていくことになる。つまり作中でもかなり重要な人物なのである。まぁ、それはおいとくが………ともかく可愛い! え、別に弟とかいるだろって? ディアボとか。いや、そうなんだけどさ。確かにこれまで姉弟はそれなりに生まれてきた。姉は美人だし弟は可愛いってことは胸を張って言える。将来において皇帝の座を争う血生臭い関係になるかもしれないが、それは今後の俺の頑張り次第かもしれない。だが、それとは無縁に近く、しかも初の妹なのがピニャだ。姉弟と妹、どちらも可愛いといえるがどちらかと言えばやはり妹の方が可愛い。

だからなのか、うん…………ピニャが可愛すぎて仕方ない。

腹違い? いや、そんなことは関係ない。可愛いは正義という言葉は真理である。そこにそのような不純物は必要ない。何よりもこの子が将来あのような美女に成長すると分かってるだけに、その可愛らしさの一塩だ。

 

「ゾルザル、お前はピニャが大好きだな」

「はい、ちちうえ。だってはじめてできたいもうとですから」

 

ピニャが生まれたことで度々様子を見に来た皇帝に俺は笑顔でそう答える。そんな俺を見て皇帝は珍しく暖かな眼差しを俺に向けてきた。

 

「お前は余と違い兄弟が好きなのだな。いずれ障害になるかもしれぬというのに」

 

どうやらこの父親は皇帝の座について色々とあったらしい。詳しく聞く気はないけどね。大概どこの御国もそういった問題は抱えているものだし。

だから逆に思うけど、何でそんな問題になるような関係を築こうとするんだろうねぇ、王族ってのはさ。確かに継承者が一人しかいないともし死んだりしたらそれで王家や皇族が滅ぶのはわかる。だからすこしでもその可能性を避けるために跡取りを多くつくるのは対処法の一つと言えよう。だが、その結果が血生臭い継承問題になるわけだ。

でもおかしくないか? そもそも何故皆王や皇帝になりたがるのか? 絶世の富と栄誉が欲しいから? 自分が最高の存在だと思いたいから? ぶっちゃけ国を思うようにしたいから? これは想像の話だが、もしかして今までの王族や皇族連中はそんな『幼稚な表側』しか見てないんじゃないだろうか? 国を守るためにすべき数えるのも億劫になるほどの苦労も、国をよりよく繁栄させるための知恵も、そういった本当に大切なものを見てきてないんじゃないだろうか。それはこれまで皇族として育てられてきた俺だからこそはっきりと言える。蝶よ花よと育てられ、自分は皇族なのだからと特別視されながら優越に育つ。その結果もっと持て囃されたいとか偉くなりたいとか、そんなものを抱きながら大きくなっていく。だから争いが絶えないんだよ。この部分で言えば、ある意味王も皇帝も馬鹿だとしか言い様ない。

いいか、もし本当にそういった問題を解決するのなら、それこそ自分達の子供達である継承者に国のトップとしての苦労や苦悩、それ以外にも様々な『裏』を教える必要がある。それを学んだ上でトップとしてやっていくのかどうか、それを考えさせる必要があるんだ。その結果、が騒乱になるというのなら、それはそれで仕方ないと思う。だが少なくとも、こうすれば継承問題のゴタゴタも少なくなるだろう。王や皇帝にはトップとしての背筋を、そしてそれ以外に割り振られるであろう役職でもそれ相応の責任があるのだから。

だから俺は皇帝のその言葉にニカッと笑ってこう答える。

 

「だいじょうぶですよ、ちちうえ。だってぼくたちがみんなでがんばってこのくにをよりよくしていくんですから」

「……………そうか」

 

何せそのために既に手を打っているからな。ディアボも他の兄弟達ともよく遊び、そしてとても良い兄弟仲を築いているのだから。皆からは頼りがいのある立派なお兄ちゃんだと。そう慕われるようにね。


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