ゾルザル~ン戦記   作:nasigorenn

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久しぶりの更新に感覚がイマイチつかめないです。


第6話 ゾルザルの初陣

 兵達の士気を高め掌握した俺。皆の目には今まで以上の闘志と忠誠心が現れている。

その割に皆俺に話しかけるときはガチガチに緊張することなく気安さを感じさせながら話しかけてくれるので正直ありがたい。

 皇族なんで尊敬と恐怖心で緊張して話しかけられることが多い身としてはこういうフレンドリーでアットホーム的なものは嬉しいものだ。誰だって職場の雰囲気は良い方がいいよな。

 そんな訳で今まで以上に練度とコミュ力を高めた俺達の目の前にあるのは血潮の香り漂う怒号と悲鳴、そして金属のぶつかり合う甲高い音が響き合う戦場だ。

戦況は此方に傾き敵は敗走を始めている。このままいけばこちら側の勝利は確実だろう。

 そんなわけでこうしてトドメ役に俺達の出撃が決まったわけだ。

何せこの手柄で俺の初陣を飾るのだから当然なわけなのだが………やっぱりなぁ~、こうして目の前で人が死ぬ光景を見ていれば怖じ気づくのも仕方ないといいますか。正直さっきから怖さで身体が震えて仕方ない。

そんな俺を見抜いたのか、兵達の中でも結構仲良くなった奴が気軽な感じで話しかけてきた。

 

「殿下、どうかしましたか? まさかこの期に及んで怖くてブルッちまったんですかい?」

 

ニタニタと此方をからかう気満々な部下。これが普通の皇族だったら速攻不敬罪で処断されるであろう失礼な態度だが、俺は逆にこういうのがいいからそんなことはない。同じ飯を食って語り合った身としては気軽な感じで嬉しいものである。正直ムカツキもするがな。

 

「そんなことはない!………と声高らかに答えるのが模範解答なんだろうがな。正直怖いのは否定しない。お前等がそうな通り、俺だって初めての初陣なんだ。怖いもんは怖いさ。だが、ここで逃げ出すほどに腰抜けではいられない。だってお前達が命を賭けて戦うんだ。俺だって戦わなければな。家族の危機に立ち向かうのは当然だ」

「流石は殿下、そんなお方だからこうして俺達は付いていこうと決めたんですぜ。殿下のためにも手柄を上げるとしますか」

「期待はしてるが無理はするなよ」

「当然ですよ。だって誰だって死にたくはないですから」

 

 ニシシっと笑いながら答える部下に俺は苦笑しながらそうだなと答えた。

そう、誰だって死にたくない。だからこそ、俺はこの場にいる部下達の命を握っていると自覚する。俺一人の責任ではないと周りは言うだろうが、それでもその自覚は必要なんだ。死にたくないし死なせたくない。だからこそ、俺は自ら血を被るんだ。仲間を、家族を守るためにも、そして自身を守るためにも、俺は………殺すんだ。

 その覚悟を決めるや否や、俺は自分の後ろにいる部下達に向き合う。

 

「皆、どうやらようやく俺達の出番らしい。いやはや、随分待たされた事もあって皆飽き飽きしてた所だろう。でだ、そろそろここらで運動と行こうじゃないか。何、相手は劣勢に立たされて逃げ出してる連中だ。此方が侮らずに立ち向かえばまず負けることはない。ここらで派手に行こうじゃないか…………なぁ、お前等!!」

 

まるで某オル○ニキの様に皆を鼓舞すると、その声に応じて皆から雄々しい雄叫びが帰ってきた。流石は兄貴といったところだ。効果が凄い。

 そして俺は出撃体勢をを整えた皆を見ながら静かに剣を上に掲げる。その剣を皆が見つめる中、俺はそれを真上で止め、そこで一瞬だけ間を置き………………。

 

「ヤッッッッッッサシィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィンンンンンンッッッッッッ!!!!」

 

 予め決めてあった号令と共に皆が突撃を始めた。いやぁ~マジで気持ち良い。一度言ってみたかったんだよなぁ。

おいおい、命掛けの戦場でブルッてる時にそれはどうなんだって? いや、そうなんだけどさ、言いたいものはしょうがないんだって。

 皆が突撃し敗走している兵士達に斬りかかっていく。予めの打ち合わせで決めていた通り、二人一組になって確実に相手と一対二の状況に持ち込んで戦っている。普通の騎士から考えればまず卑怯だと言われる戦法に最初は勿論不満を言われた。

 だが、俺はこの戦法を敢えて推し進めたのだ。何故なら生存率が全く違うから。二人一組(ツーマンセル)にすることで互いに庇う事が出来るし視野も広まり警戒も行き渡る。何よりも敵からしたら同時に二人を相手にしなければならないのだ。手数が増えるだけでもそれは圧倒的な脅威になる。故に確実性を取った。

 これが普通に戦う場合なら状況によって変えなければならないものだが今回は追撃戦。相手が敗走しているので逃げる為に攻撃は控えめになっているからこそ出来る戦法だ。皆確実に敵を殺していく光景にホッとしつつも恐怖を感じる。

 だが部下達が自ら血を浴びているというのに俺が手を汚さないというのは絶対に行けない。彼等を家族だときめたのだ。俺達はこの戦場を供にする友であり家族だ。ならば俺もまた家族のために自ら進んでこの手を穢そう。

 故に俺もまた敵に向かって突撃した。馬に指示をだして走らせ、そしてすれ違いざまにその首に向かって剣を叩き込む。

 

「ッ!?」

 

剣が肉に食い込み刃が斬り裂いていく感触が手にかかり、ソレが終わると供に敵の首が真横に撥ねた。そして首から血を噴き出す敵の死体が俺がやった結果を物語り、そして俺は自身の内にある冷静な部分が冷血に告げる。

 

『おめでとう、これで君も人殺しだ』

 

分かっていたが、それでもやっぱりクるものがあった。怖気が酷くて吐き気がこみ上げる。自分がしてはいけないことをしたということに恐怖が湧き上がって仕方ない。正直泣き出しそうになった。だけど………それでもだ。

殺した相手には申し訳ないが、それでも俺はこう言う。

 

「俺は生きたい! 悪いとは思うが、お前等は死んでくれ!」

 

そう叫びながら俺もまたこの戦場の狂気に染まりつつ敵に斬りかかっていった。

 

 

 

 それから酷かった。

記憶もあやふやな部分が多くなったがそれでも身体に刻み込まれた恐怖や怖気は忘れない。俺は部下達を鼓舞するために叫びながら敵に襲いかかり、斬って斬って斬りまくった。何度も何度も返り血を浴びたし、逆に敵に斬られかけて傷を負ったりもした。その度に部下達に助けられ、俺もまた部下が窮地に陥れば率先して助けに行き相手を殺した。 その結果だろうか…………俺達は敵に大打撃を与えることになったのだ。

仲間の生存を優先しての戦いは継戦能力を高め、互いに助け合う戦いは確実に敵の数を減らしていく。

 俺達は一種の殺戮マシーンと化し、敵の部隊をかなり削ったのだ。ソレを知ったのは敵が完璧に自国に敗走するまで殺しまくった後だった。

 結果だけ言えば俺の初陣は大金星らしい。寧ろ予想以上の戦果に周りの貴族達は賞賛を送りまくり、皇帝陛下も喜んでいたとか。

 正直もう勘弁願いたいものだが、派手にやったのが悪かったらしい。その後も俺は戦争があれば駆り出され、家族となった部下達と一緒に様々な戦場に飛ばされ、その度に何度も死にそうな目に合いながらも皆で互いに支え合って生き延びてきた。

 そして気がつけば2年が経ち、俺は帝国で将軍並の戦略をもった武人だと勝手に喧伝されることになったとか。いや、俺は好きで殺し合いをしてるわけじゃないっての。

 以上、初陣から2年経った今での俺の評価だ。そしてあの時からの付き合いの部下達は今では立派な親衛隊。外面は真面目な振りをして如何にもな騎士をしているが、俺等だけの時は互いに冗談を言い合えるくらい砕けた関係になっている。それが唯一の救いだよ、本当。

 

 

 

 こうして俺は立派な人殺しになったが、同時に掛け替えのない戦友という部下を得たのだった。

 

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