ゾルザル村…………。
戦争によって得た領地であるが、管理出来る人材不足という致命的な問題に対し皇帝『おやじどの』が出した答えは俺への丸投げというものであった。いや、全部でないだけまだマシなのだが、それでも俺にやらせるってどうなんだよ? だがまぁこれも経験、いずれこの帝国を統治することになるのだからそういったノウハウは学んだ方が良いというわけだ。
それは仕方ない。これも偏に皆に愛される『ゾルザル』になるために必要なことだ。だからこそここは…………とても良い村にしてやるぜ!
と、意気込んでみたわけですが……元々知恵なんてない俺である。そりゃあぁもう大変ですよ。
俺だってノウハウはないのだから、四苦八苦するのは当然である。そんな中でまず最初に始めたのは当然村の復興。戦火に巻き込まれたこともあって彼方此方が壊れている。それらを直さないことには村人の住む場所がないという状況だ。それを直すのに村人は勿論のこと、俺等も手伝うのは当然である。
「殿下~~~、俺達いつから家職人になったんですかぁ?」
部下達からそんな悲鳴があがるわけだ。だがそれに関して俺の答えは決まってる。
「仮にも俺に仕えるっていったんだから文句を言うな。こういう役割がどういうわけか付いて回るようだからな」
「それはそうですけど、俺等一応騎士ですよ」
「何、俺と一緒にいる限り騎士兼便利屋だ。俺も含めてな」
ニヤッと笑いながらそう言うと部下達は文句を言いつつも仕事に精を出す。こいつらの良い点は騎士らしくないところだな。最初こそ騎士らしかったんだが、俺と連むうちに騎士なんぞクソくらえみたいな感じになっていった。まぁ、戦場で卑怯よろしくな手を使っていけば自然とそうなるか。一対一とか馬鹿がすることだって皆思ってるしな。
そんな我らゾルザル便利屋はまず村の復興の為に住居をどうにかした。その際に建てた家は木材と石材を使った簡易建築である。木材は木を切れば手に入るが乾燥させるのに時間が掛かり、石材は切断するのに労力が掛かる。なので間を取って中間点。壁の代わりに麻布を使って作るソレは家と言うよりもテントというのが近いだろう。まぁ、雨風をしのげれば最低限は何とかなる。どのみち財源も少ない現状ではこれでも精一杯だ。
そんなわけで住居の確保をしたわけだが、それで終わりではない。次に来るのは食料問題なわけだがそれは仮にも農村。食べる為にも保存食は隠し持っていたようだし、近くが森なだけに獣を狩ることで多少はしのげるらしい。とはいえそれも時間の問題であるし急がなければならない。『殿下』という立場もあって多少の金の融通は利くが、それでも限度はあるのだ。先行投資だと思えば安いものだが実入りが確実でないと失敗する。この年で借金はしたくない。
さて、衣食住のうちの食と住は何とかしたから今度は衣だけかと思えば答えはNO。生活基盤を最低限にしたのなら、今度は衛生管理がものを言う。この世界、魔法で色々出来るとはいえそれは魔道士だけだ。民間医療はそこまで進んでいない。多少の医療はあるのだが、酷い話が江戸時代レベル。この薬草は腹痛に効くだとか、この獣の角は煎じて飲むと心臓が良くなるとか、そんなのばかりだ。後は精々傷口を清潔な布を宛がっての止血とかになる。ここで科学的な知識があるのなら薬効成分を抽出して『ジン先生、ペニシリンが~~~~~』とかやってるところだが、生憎俺にそんな知識は無い。民間医療で言えば精々風邪予防が限界だろう。
とはいえそんな俺でも分ることがあり、これをするとしないとでは圧倒的な差が出ることがある。
それこそは『上下水道完備、および排泄物処理』である。
上下水道の工事には直ぐに取りかかった。何せ衛生管理に於いて綺麗な水が使えるかどうかは重要であり、また農業に於いても水の有無は激しいからだ。
「殿下~~~~」
「情けない声を上げるな。これも仕事だ仕事。後で酒でも奢ってやるから」
水道を作るために山の上流から綺麗な水を引くために溝を掘ったり竹に近い植物で流しそうめんよろしくに障害物を避けるようにしたりなどなど様々な事をして村まで水を引いていき農業水用、飲料用、汚物処理用と様々な用途によって分けていく。その為の工事であり、それを主導しているのがこの帝国の殿下であり領主である俺というのがまた笑えてくる。部下が弱音を吐く度にこうして発破をかけてやることを忘れてはならない。
「いいか、今の俺達は騎士である前に職人だ。この村の再興のために様々な職を行う玄人になるのだ。剣で家が作れるか、盾で畑が耕せるか。騎士なんてのは戦がなけりゃただの穀潰しになりかねない。そうならないためにも職は小まめに手に入れた方が良い。後に色々と役立つからな」
「そういう殿下は殿下じゃなかったらどうするんですか?」
「その時は街で食堂でも開くなりこの村で農家でもしてゆっくり過ごすさ。まぁ、生憎こんな状態じゃゆっくりは出来そうにないがな」
工事中にこんなことを垂れるのも一種にストレス解消だろう。こんな会話してる奴が騎士だとは思えないってくらい非常識なので、それが村人の緊張を緩和し友好的にこちらの指示に従ってくれる。部下達も貴族としての無駄なプライドも騎士としての傲りもない奴等だから、村人に遜色無く対応している。今のところそういう人間的なトラブルは無さそうだ。
そして同時に『排泄物処理』の為に動いた。基本的にこの村にトイレというものはあるにはあるが、帝国首都にあるものとくらべればお粗末としか言いようが無い。そこで再利用です。簡易的なぼっとん便所として作り出し、それを3日経ったらそれをくみ取り回収し村から少し離れた所に集める。そししてそれに藁やら土やら落ち葉やらを混ぜ込み発酵させて堆肥を作り、それを村の畑に蒔いていくのだ。
通常人糞は肥料として適さないというが、それでも『現代人』に比べれば科学物質が少ないのでまだ使えると思う。そしてこのくみ取り作業をするのは村人から募り、この職をする者にはより高い給金を出すようにする。誰だってやりたがらない仕事なだけに高給取りならやる者もいるはずだ。そこに更に村人に説明を入れる。
『この仕事は汚い。だからこそ、それを進んで行える者を俺は尊いと思う。自ら汚れる覚悟を持って行える者を見下し嘲る愚か者はこの村にいないはずだ。寧ろ尊敬されるべき偉業だと思ってる。皆がそうであることを俺は祈ろう』
汚物処理=尊敬される仕事という印象を与えることでマイナスイメージを払拭する。そうしないと変な差別が怒りかねないからな。
これがが出来てやっと一歩である。まだこの村はこれから更に発展していくのだから。
「村の為にこうしてムラなく(無駄なく)やっていこう!」
「殿下、決まり顔でそう言ってる所悪いですけど仕事して下さい。そして滑ってます、寒いです」
「部下の辛口が痛い……………」
ゾルザルはこの村を発展できるのか…………続く!