ゾルザル~ン戦記   作:nasigorenn

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第9話 鉄腕ゾルザル2

 ど~も、此所最近殿下してないゾルザルです。え、じゃあ何してるのかだって? んなもん見りゃわかるだろ…………NOUMI………ごほんごほん、え~っと………領主(笑)です。

 さて、前回の話で住の確保と衛生管理に関して少し改善したわけだが、まだこんなのは序の口である。ここからは転生して手に入れた我が最強のチートで…………なんてなるわけないだろ。そんなものは夢見すぎの漫画やアニメの見過ぎだよ。そんな便利に事が運べるなどと思うなよ。現実は空想よりも辛辣である。一芸特化で全部片付くほど甘くはない。

 では何をするのかと言うと…………。

 

「あの、領主様………これは………」

 

ある作物を前に村人の一人がそう質問を漏らす。普通の貴族相手にこんな態度を取ろうものならそれだけで不敬だと言われ罪をかけられるものだが、生憎俺はそんな馬鹿ではないし、これは当然のことだろう。誰だって『初めてみる物』に対してそういう対応を取るのは仕方ないことである。

 俺が村人達に向かって差し出したのは。薄茶色をした不格好な丸い物体。初めて見る者にはこれが何か分らないだろう。そしてこの世界が西洋に近い食生活を基盤にしている故にこの物体が『食べられる』とは知らなかったのだ。

 え、俺が何で知ってたのかって? 一応知識はあったしあれば便利だと思って昔に手に入れておいた物を個人的に栽培していたんだよ。殿下だからって内緒の一つや二つはあるものさ。陛下(オヤジ)は俺の奇行に寛容だったから有難い。

 さて、そんな俺が持ってきた秘密兵器、それは…………。

 

「こいつはな………馬鈴薯(ジャガイモ)というんだ」

 

そう、手抜きでも丈夫に育ち収穫量が見込める農家の味方、ジャガイモです。

 西洋において根を食べる野菜というのはそう多くなく、日本のゴボウを見た人によっては木の根と勘違いしたらしい。そんなこともあってそれに近い食生活を送っているこの世界の住人にとってこのジャガイモは初めて見るもののようだ。

 え、そんなもんどこで手に入れたって? 原作はまだ始まってないんだからそんなものはないって? いや、実はこれがあったんだよ。正確には『ジャガイモに近い種類の植物』というのが正解かな。ぶっちゃけ違いなんて分らないし見た目は知ってる限り一緒、ちなみにその毒性も一緒、芽とか絶対食ったら駄目。だからジャガイモ(似)ってのが正解なんだろうが、ここでは敢えてジャガイモと呼ばせてもらう。味も同じだしな。ちなみに見つけられたのは偶然であり、偶々赴いていた戦地でふと目に入ったんだ。

 

『あれ、コレってもしかして………ジャガイモじゃね?』

 

 それで掘ってみたら見事に芋がなっていたってわけだ。現地の人達からしたら雑草にしか見えなかったんだろうさ。お陰でこっちは内心嬉しかったりする。これは俺個人的な考えだが、このジャガイモというのはかなり凄い作物だ。煮て良し焼いて良し、味に癖がないので食べやすく、その上保存も利くと来た。さらに栽培も楽であり、荒れ地でも十分な栽培が可能という。何コレ、最強じゃねぇ!? 

 まぁ、そんなわけで持ち帰った種芋を俺の住居の裏庭でこっそり育てていたってわけ。それを持ち込んだんだ。え? 何でそんなことを皇族がしてるのかだって? 所謂一つのストレス解消だよ。こっちは度々戦場にぶち込まれてきたんだ。そういうちょっとした癒やしが恋しいんです。ピニャに会うのも容易じゃないからな。そうなってくるとこういうちょっとしたこともでもほっこりするんだよ。

 そんなわけで俺の趣味の一つに家庭菜園というものがはいったわけだ。尚、この事を知ってるのは皇帝と俺の親衛隊達だけだ。当然親衛隊の連中はジャガイモの味も知ってる。俺が村人の前に出したときも『あ、あれかぁ~』って感じな顔してたしな。

 そんなわけで村人は初めて見るものに好奇心と未知への恐怖が半々と言った様子を見せる。まぁ、誰だって初めはそんなものだろう。

 

「そう怖がるな。まずはコレを食ってみろ」

 

そう言って皿を差し出すと村人は興味深そうにソレを見る。

 

「あの、これは?」

「これはさっき見せた奴を茹でたものだ。軽く塩を振ってある」

 

笑いながらそう答えると、おっかなびっくりとした様子で村人が皿に手を付け始めた。そして食べると供に驚いた様子を見せた。初めての感覚だが、それでも美味いと感じた証拠だ。

 この味を理解したのなら後は簡単だ。

 

「こいつを村の特産物にしないか」

 

その提案と供にジャガイモの特性を途端に湧き上がる村人達。まぁ、そんな手間が掛からず荒れ地でも育ってしかも収穫量も見込める、そして美味いとくれば盛り上がりもするだろう。今の復興中のこの村にまさにぴったりな作物なのだから。

 

「是非お願いします、領主様!」

 

そして盛り上がる面々。こうして食糧事情も解決…………って簡単な訳にはいかんのだよ、これが。

 

「盛り上がってるところ申し訳ないが、その馬鈴薯も完璧な作物ではないんだ。実は弱点がある」

「弱点………ですか?」

 

そう、実は性質だけ見れば最強かもしれないジャガイモだが、実はある弱点をかかえている。いや、これはジャガイモに限った話ではないのだが、今のこの世界にはその常識が無かっただけに知られていないことである。それは………。

 

「この馬鈴薯は冬の終わり頃に植え、そして夏の始まり頃に取れる。だがその後直ぐにまた植えようとしないでくれ」

「何故ですか? その後植えても取れそうな気がするのですが?」

 

そう、この世界には連作障害という知識がまだ伝わっていないのだ。まさか連続で植え続けるとその内その作物が取れなくなる、なんてことを知っているわけがない。普通に考えればその場で植えれば育つんだから問題ないと考えるからな。

 そのことを俺はこう伝える。

 

「実はそうでもないんだ。実は作物が育つにはそれに応じた『大地の恵み』が必要なんだ。例の堆肥はそれを補うことが出来るがそれでも完璧ではない。故に連続で育て続けるとその土はやがて枯れ果て何も育たぬ土となるわけだ」

「そ、そんなことが!?」

 

俺の言葉に驚愕する面々。どうもこの村を良くしようと頑張ってることが分ってくれているだけに俺の言葉に疑うということをしないようだ。それでいいのかと突っ込みたいが、下手に反感を抱かれても困るのでまぁいいだろう。何だか下手な詐欺宗教しているような気分になる。罪悪感が湧いてきそうだ。

 

「だからこそ、一年に一回だけ植える。そして夏以降は別の作物を育てる。と言ってもそいつは食用じゃない。牛や馬の餌用に育てるんだ」

「何故それを育てるのですか? それなら別の食べ物を育てる方が良いのでは」

「その植物には大地の恵みを地面に蓄える性質があるからだ。そのまま放っておいてもある程度は回復するが、その植物を植えると更に回復する効果がある。だからこそ、春に馬鈴薯を植え、秋にはその植物を植えようと思う」

 

ちなみにその植物というのは日本で言うシロツメグサのことであり、此所ではそれに近い種類の事と言っておこうか。連作障害を食い止めるのに結構役立つらしい。

 

「わかりました! 領主様ならばこの村をより良く出来ると信じております。だからこそ、その栽培、皆で頑張っていこうと思います」

 

 皆がその声に再び盛り上がる。この村の住人は皆お祭り騒ぎが好きらしい。希望も見えてきたしやりがいもある、そして何よりも楽しそうだ。いいねいいね、こういう感じ。無駄に殺伐としていて絶望に打ち拉がれているよりもこっちの方が余程良い。

 そんなわけで俺は親衛隊の連中にニヤリと笑いながら声をかける。

 

「ってなわけだ。全員このまま鍬もって馬鈴薯植えに行くぞ。終わったら美味い飯でも作ってやる。全員やる気だしていくぞ」

「俺達もう騎士じゃないって感じですね」

「戦いしか役に立たない能なしのタダ飯ぐらいよりも余程マシだろ、騎士兼便利屋」

「それもそうですね。騎士首になっても殿下の元なら食って行けそうだし」

「まぁな」

 

 こうして俺達は皆騒ぎながら馬鈴薯を植えるのであった。これで食糧事情は多少マシになったと言えよう。後は村の発展だろうさ。あぁ、まだ道のりは長い。原作云々なんかよりも余程忙しいよ、本当。

 さて、ジャガイモ植えたら今度は…………書類の山と格闘だろうな。

 

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