眠り姫は安らかに眠りたい   作:冬月ことね

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交戦

メンタルモデルの起動率上昇。

感覚器官の感度最大。

身体アクチュエータ稼働率最大。

烙印システムの銃器シンクロ率上昇。

 

視界が広がり、身体が軽くなる。

メンタルモデルの処理能力は大幅に向上し、体感時間が長くなる。

構えているG11小銃の残弾数、重量、射撃時反動、あらゆる情報が烙印システムを通じて流れ込んでくる。

それらの情報をG11はすべて使いこなすことが出来ていた。

 

彼女は、世界で最もこのG11小銃を使いこなすことの出来る少女なのだ。

 

 

 

 

 

動いたのはG11からだった。

構えた状態からノーモーションでの三点バースト射撃。

鉄血人形の胴体部分を狙ったその射撃は、先ほどG11が破壊した砲身を盾にして防がれた。

 

舌打ちを一つ。そのままG11は射撃を続行し、三点バースト射撃を連続して放つ。

鉄血人形は砲身を盾にしつつ乱数回避を行う。数発が身体に当たるもその動きは微塵も鈍らない。口角を釣り上げて嗤い、G11を睨みつける。

ボンッという発砲音。身体の後ろ側に回された砲身から、上空に向かって榴弾が放たれる。それは正確にG11のいる場所へと放物線を描いて落ちていく。

 

G11は榴弾が発射された時点で既に動き出していた。近くにある遮蔽物に向かって全力で走り出す。

鉄血人形はその行動を見て、搭載された機銃でG11を狙い撃つ。だが機銃の射線を見極めたG11は空中側転で回避、それと同時に鉄血人形へと射撃を行う。だが側転中のため精度が低下しているせいか、命中弾はなかった。

 

遮蔽物へ飛び込み、その数瞬後に榴弾が地面に激突して着発信管が作動。爆発と共に衝撃波と破片をまき散らす。

だが遮蔽物のおかげでG11に破片が届くことはない。榴弾によって地面にクレーターが作られ、辺りの建物には破片と銃弾によってつけられた傷が無数に付けられた。

 

「はははははは!いいなお前!さっきまでの奴らとは一味も二味も違うぜ!」

 

鉄血人形は嗤う。その顔は、声は、歓びに満ちていた。

爆発と銃弾によって破壊された砲身を投棄し、まだ無事な砲身に次弾を装填する。

次にG11がいつ動いてもいいように、機銃はG11のいる場所へと向けられたままだ。

 

G11はマガジンを交換する。4.73x33mmケースレス弾が50発装填された弾倉。今回の任務のためにG11が持ってきたマガジンは全部で10本。これからのことを考えるとあまり撃ちたくはないが、敵を目の前にそんなことを言ってもいられない。

それにG11自身も、長時間の戦闘は得意ではない。通常の戦術人形と違って大幅に戦闘能力を向上させることのできるG11は、その代償として全力で戦闘出来る時間にかなりの制限があった。

あらゆる支援が期待できない今、目指すは短期決着だ。

 

「次で、決める。」

 

給弾クリップを回し、初弾を装填する。

目をつぶって大きく息を吐き集中する。

 

敵の動きを感じ取れ。予測しろ。反撃を許さず叩き潰せ。

私は敵を斃す機械。正確に速くやれ。

 

「さあ出て来いよ!楽しもうぜ!」

 

遮蔽物から勢いよく飛び出す。

相変わらず楽しそうにこちらを見て嗤う鉄血人形に、G11は突撃を開始した。

 

 

 

 

Kar98Kは物陰に隠れて二人の戦闘を見ていた。

これまでの自分の常識が破られる異次元の戦闘。

あの榴弾使いの鉄血人形は圧倒的な火力と、堅牢な防御力を兼ね備えている。それはまるで鉄壁の要塞のようなものだ。

それに対して単身で、鉄血人形の攻撃をいなしてダメージを与えている戦術人形の少女。

 

少なくともKar98Kの常識では、戦術人形にあんな動きは不可能であった。

銃弾を見切る視力と、それを見て躱すだけの身体能力。さらに高レートのバースト射撃の反動を制御しきるだけの射撃技能。そのすべてが彼女の知っている戦術人形の能力を上回っていた。

 

「一体何なの、あの子は…。」

 

だが少なくとも敵ではない。私の部隊を全滅させたあいつを、倒そうとしてくれているのだから。それだけで彼女にとっては十分だった。

なら、私は私に出来ることをやろう。

 

自分の銃、Karabiner 98 Kruzを見る。外装が多少傷ついているが、機関部はまだ動く。

ボルトハンドルを引き、弾丸を一発入れ、ボルトを戻す。

物陰から遠くに見える鉄血人形を睨み、Kar98Kは銃を構える。その直後、銀髪の少女が鉄血人形へと突き進んでいくのが見えた。

 

狙うは不意の一撃。一発では倒し切るのが難しいかもしれないが、鉄血人形の意識を少しでも惑わすことが出来れば、あの少女の力になれるはず。そう自分に言い聞かせて、狙撃に意識を集中させた。

 




『烙印システム』
戦術人形と、その人形の武器に特殊なつながりを持たせることが出来るシステム。
これを用いることで、戦術人形は専用の武器の性能を大幅に引き上げることが出来る。

公式にこういう設定があったので使わせてもらいました。
これペルシカさんが開発したらしいですね。ペルシカさんぱねーっす。



書いてて思ったけど感覚器官の感度最大って、なんかえろいね。
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