眠り姫は安らかに眠りたい   作:冬月ことね

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かっこいい戦闘シーン描きたいけど難しい。。。
本家のG11や404小隊の面々と設定や口調が違ったりするかもしれないです。ごめんなさい。


アウトナンバー

G11が飛び出すと同時に、鉄血人形の機銃が火を噴いた。弾丸の嵐は地面を抉り、壁を破壊してゆく。

7.62mm弾に匹敵するであろう破壊力を持つ弾丸は幸いなことにG11には届かず、G11は鉄血人形に向かって疾走していく。回避に専念しているので射撃は出来ないが、鉄血人形との距離は確実に近づいていた。

 

だが、鉄血人形との距離が縮まると共に回避も困難になる。さらにこれでもかとばら撒かれる弾丸は、G11の身体にいくつかの傷を付けるに至っていた。

 

「っ!…しつこいなぁ…。」

 

激しくなる弾丸から逃れるために建物の影に隠れ、そこから射撃を行う。

鉄血人形の機銃のせいもあって正確に狙えず、命中弾はあるものの大した被害を与えられていなかった。

 

「隠れても無駄だ、ぜっ!」

 

声と共に放たれる榴弾。G11は急いでその場から離れるが射撃に気を取られていたせいで間に合わず、爆風の影響を受けて吹き飛ばされてしまう。地面を勢いよく転がり、傷と泥だらけになりながら身体を起こす。

 

正面から突撃すれば機銃の嵐、隠れれば榴弾による範囲攻撃。彼我の物量差からくる劣勢は覆し難く、この現状がまさにそれを示していた。

絶望的な状況。しかしG11は諦めない。諦める必要性すら感じていない。今彼女を支配しているのは、如何に敵を倒すかという思考であり、敵を必ず倒すという意思だった。

 

銃弾がいくつか身体を掠めたが、身体は動く。目も耳も問題なく聞こえる。銃も問題なし。それで十全。

意思の炎を燃やし、不敵に笑う鉄血人形を睨みつける。

 

「いいぜ、その眼。そういう眼をしたやつを殺すのが、最高に楽しいってもんだぜ。」

「…。」

 

G11は無言で突撃を再開する。

鉄血人形も機銃を向けて斉射を始めようとした。

その時、どちらのものでもない銃声が戦場に響いた。

 

「「!?」」

 

機銃の一つに大口径弾が直撃し、鉄血人形の姿勢が崩れる。

眼を見開く鉄血人形は、銃弾が飛来した方向を見る。自分を狙撃した者、自分が撃滅した部隊の一人、Kar98Kがそこには居た。

 

「てめぇ!!」

 

激怒した鉄血人形は装填した榴弾砲をKar98Kに向ける。

 

Kar98Kは急いで次弾を装填するが、恐らく榴弾が発射されるまでには間に合わないだろうと悟る。

だが時間は稼いだ。ほんの僅かな時間だが、あの少女ならものにすると信じて行った決死の一撃だった。

 

G11は一気に距離を詰めていた。走りながらフルオートで鉄血人形に向けて射撃を行う。

 

「ちっ!」

 

鉄血人形は榴弾発射を中断せざるを得ず、防御態勢に入る。

しかし、距離を詰められたためにG11が放つ弾丸が次々と身体に命中し、身体のあちこちが弾け飛ぶ。

無事な機銃をG11に向けるも、すぐさまG11の射撃によって破壊され無力化させられる。

 

「くっ…そ…!」

 

片膝をつく鉄血人形。

口からは体内を循環していたであろう液体があふれ、まるで人間が吐血したかのような有様になっている。

身体は至る所が破壊され、もはや移動もままならずに朽ち果てるだろうことが見て明らかだった。

 

「終わりだよ。鉄血人形。」

 

G11は壊れかけた鉄血人形の頭部に照準を合わせながら近づき、言い放つ。

 

「はぁ…変な横槍のせいで負けるなんてな。」

「戦場では生きるか死ぬか。それが全てだよ。」

「…そうだな。くく…。」

 

鉄血人形は嗤う。

 

「あなたには聞きたいことがある。なぜ私を知っていたの。」

「…さあな。って言うところだが、俺を倒したんだ。少しだけ教えてやるよ。」

 

「なんでお前を知っていたか。簡単だ。お前たちをこの榴弾で撃ったのが。この俺だからさ。」

「!!」

 

驚愕に目を見開くG!!。沸々と沸く感情のままに、鉄血人形に叫ぶ。

 

「皆は!私の仲間はどうした!」

「さあな。お前が俺の攻撃でやられてその辺に転がってたあと、俺は残りの奴らを追った。だが逃げ足が速くてな。他の仲間が奴らを追ったが、どうなったかは知らねぇよ。」

 

鉄血人形は疲れたように、身体の力を抜いた。もう抵抗する力も残っていないのだろう。

力なくG11を見ながら、口を動かす。

 

「むしろお前が無事だったことが意外だ。最初の不意打ちで殺れたと思ってたんだけどな。」

「…お前の仲間は、どこにいる。」

 

「そこまでは教えられねぇな。自分で探しな…と。」

 

ゴトリと音が響く。鉄血人形の榴弾砲に入っていた榴弾が、地面に転がる。

ハッと、G11が身を引く。

 

「敵と悠長におしゃべりなんかするもんじゃないぜ。あばよ。」

 

その言葉と共に、二人は閃光と、強烈な爆風に飲まれた。

 

 

 

 

「ハァ…ハァ…。」

 

Kar98Kは突然起こった爆発を見て、急いで現場に向かっていた。

あの少女が無事なのか、無事であってほしいと願いながら息を切らして走る。

 

爆発の中心部に着くと、抉れた地面とバラバラになった鉄血人形と、そして榴弾の破片が散らばっているのが見えた。G11の姿は見えない。

 

「そんな…。」

 

周囲を見回すと、あの少女が来ていた外套が見えた。緑色の分厚い外套は、いたるところが裂けていた。

そこにG11もいた。

Kar98Kは急いで近づいてG11の容態を見る。切り裂かれた外套を着て地面に転がるG11は気を失っているが、目立った外傷は見られなかった。

 

「はぁ、よかった…。」

 

自分の部隊は全滅し、司令部との通信もつながらない。

状況は変わらず絶望的だが、Kar98Kは一人ではない。それが今の彼女を支えているすべてだった。

ひとまずどこかに身を隠せる場所を探すため、Kar98Kは小柄なG11を背負って移動を開始した。

 

 

 

 

 

Einheit 3(三号機)がやられたみたいよ。」

「何?確かあいつにはグリフォンの部隊の殲滅を任せていたはず。あいつが手こずる相手だとは思えんが?」

「恐らく、あの小隊の生き残りでしょう。状況的にその可能性が濃厚かと。」

「…なるほど。まさかバラバラになった状態でそこまでの戦闘能力があるとは予想外だが。」

「でもあの小隊は指揮官があってこそ力を発揮するものよ。そう解析が出ているのでしょう?」

「ああ。そしてその指揮官は、我が手にある。恐れることなど何もないさ。手筈通りに頼む。」

「えぇ。それでは。」

 

二人の鉄血人形が会話を終え、片方は部屋を退出する。

暗い廃工場。その一室の中心には、寝かされた一人の戦術人形がいた。

 

「鍵はこちらにある。駒が足掻こうと関係ないさ。」

 

人形は嗤ってそう言い、闇の中へと消えていった。




鉄血人形 Einheit 3(三号機)

S04地区に現れたハイエンドモデルの鉄血人形。
Einheit 3は広範囲殲滅型の装備を持っている。
メイン装備は2門の大型榴弾砲であり、近接防衛用に2門の機関銃を搭載している。

遠距離から榴弾による一方的な攻撃が出来るように設計されており、遠距離攻撃に必要な広範囲の索敵能力を持つ。
だが重装備故に移動速度は遅いため、接近された場合は機関銃による火力掃討によって対処する。

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