大きな岩陰に身を潜め弓を構える。聞きなれたキリキリという音とともに弓の玄が引き絞られる。そして玄から手を離し風切り音と共に目標に命中する音が聞こえる。
「当たったか、しかし妙な所に迷い込んでしまったな。矢の数は残り894本、矢に最適な木材も無い、完全なジリ貧状態だな」
ふうとため息を一つ出し。岩陰から身を乗り出す。矢が命中した獲物から矢を引き抜く。こうやって出来うる限り回収しているが、回収途中で襲撃もあるため回収率はそんなに良くない。巨人が人類を支配する世界。ロードランの歪みに偶然飲み込まれた鷹の眼ゴーが流れ着いたのはそんな世界だった。
遠くから馬の蹄の音が多数響いてくる。そしてゴーが身を隠すよりも先に人間がゴーを取り囲む。ゴーは少し混乱する。馬よりも早く移動する人間などいるのか。ゴーが答えを出すより先にゴーの右手に痛みが走る。
(切られた、私に敵意などないというのに)
そしてゴーは右手を切った人物を左手で鷲掴みにする。
「人間よ、私に敵意は無い。ここは私の話だけでも聞いてくれまいか」
「!!」
周りを囲む人間から明らかな動揺が走るのをゴーは聞き逃さなかった。
「も、もし断れば」
「私もここで殺されたくない。この人間をお前たちに投げつけその間に逃げる」
「・・・・・全員、納刀。戦闘警戒を解け」
刀を納める音が聞こえ、ゴーは話をする。
「恐らく貴公らは度々見かけるあの巨人と戦っておるのだろう。ならば私も参加させていただきたい」
「その巨人が言っている事を誰が信用すると」
「いやでもするさ」
そういってゴーは背中に背負った弓を構え、矢を装填し放つ。風切り音と共に人間達の後ろから襲いかかろうとしていた巨人の首を撃ちぬき、沈黙させる。
「これで分かったろう。私も巨人から襲われる身だ、食事さえ用意してもらえば報酬以上の働きを約束しよう」
「ッ・・・・・・」
私が話していた人間から葛藤の声が聞こえ、そして返答はすぐに返ってきた。
「いいだろう、貴公の働きに期待する。私はこの兵団の団長キースだ」
「私は竜狩り隊隊長鷹の眼 ゴーだ」
「ずいぶんと大それた名前だな」
「竜を狩るのだ。それくらいならいいだろう」
「「ふふふふふふ」」
ひとしきり笑い終わった後キースは顎をさすりながら思案する。
「協力してくれるのはありがたいが、そなたを連れて壁に行くと混乱はさせられんが、しかたない」
「ゴー、私たちはこれから国へ帰るところだ。しかし知っての通り巨人は敵としてみられる。そこでゴーには、協力者の証として、王に身を捧げる敬礼と一度巨人を倒してもらいたい。構わぬか」
「私が捧げる王はただ一人だが一時の恩義を返す必要はあるようだ。私は一向に構わない」
キースはうなずくと笛を吹き、馬を呼び他の団員もまた馬を呼び移動を始める。その後ろを私は走って付いて行くのだった。