遭難する天空の魔女   作:Kaisu

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本編
さまよう魔女


 空に浮かぶ世界、ラモンド。

 その西側、一際大きな大陸級の浮島、リリバット。

 

 幼さの残るちんまい女性が最前線にまで指揮官として出て行く挙句、それが元老院制において国家元首になっているというなんとも不安が募る国家、共和国が存在する。

 それでも温厚でおおらかな気質の領民のため内乱の話は聞かれず、最近の課題は未確認飛行物体による襲撃被害であり、やれ幼国家元首がプールで遊んだだの、サンタになっただの、幕僚のためにチョコを作って慰問しただのがほんわかニュースとして流出する程度には概ね平和と評することができるだろう。

 

 方や東方、大陸ブロブデイン。

 帝政が敷かれて久しく、職人気質の領民が多く工業力も軍事力も高い国。

 だが10年ほど前に政変が起き、コンラッド皇帝が謀殺。新たな皇帝ラファエルが立った。

 

 そんな2大陸の狭間。

 両国共同で設立された空域管制組織、艦隊連盟。

 謀殺された帝国皇帝の忘れ形見である1人娘が帝国から逃れるように所属しており、総合管理職に就いていた。

 

 おそらく新皇帝は、前帝コンラッドの幼い忘れ形見が邪魔ではあったものの、害することは領民へのマイナス材料となることを懸念したのだろう。

 

 艦隊連盟にも王族である重要人物を配し、帝国に政変はあったが艦隊連盟への協力を惜しまないことへの建前を提示。

 と同時に、前帝の娘には冷遇していると受け取られない高級役職を与えつつ帝国中央部から遠ざけ求心力を落としにかかる。更に帝国の息もかかっている組織なので監視役の配置も楽。

 

 個人としての扱いで見ると教育を艦隊連盟に丸投げしたとも言えるし、若い身で重責や激務から身を壊せばそれはそれで良し。

 共和国の重要人物とのパイプも作ることができるだろうし、亡命したとしても新皇帝ラファエルにとってさほど痛くはない。

 

 なによりコンラッド朝時代に共和国の現国家元首アイリスと前帝の娘は親しくしており、必要かはともかく裏の連絡仲介役にも適任ではあった。

 将来的には艦隊連盟での経験を引っ提げ帝国の外交官にでもなれば見かけの上では丸く収まるだろう。

 

 

 

 しかし、再び帝国を政変が襲う。

 帝国の玉璽(ぎょくじ)と言える「クラウン」という一対の指輪の片割れが発見されてしまったのである。

 

 真なる帝を選定するその指輪は前帝が没した際のゴタゴタでどこかへ逸しており、新皇帝は偽物を掲げ帝位を継いでいた。

 あろうことかそれを発見したのがコンラッド様の忘れ形見であり、更には現在のクラウン所有者がコンラッド皇帝の弟で下野していたハインツ様の次男であり無自覚ながら帝位継承権を持ちうる者であるという、非常に面倒で頭の痛い事態になってしまった。

 この事態に、ラファエルは指輪の発見者である前帝の娘を所有者に親しく食い込ませたのちに指輪を簒奪する計画を立てることとなる。

 

 が、このタイミングで帝国でも共和国でも艦隊連盟でもない勢力の介入が起きる。

 カテゴリを「空賊」。

 帝国及び共和国空域において最強の航空戦力を抱える武闘派空賊団〈最果ての空賊団〉である。

 

 圧倒的カリスマを持つ首領以下、自警団として多くの居住可能な島を実効支配しながらも、無法な行いには比較的縁が遠く、賞金首としては特A級ながら同時に人気もある存在であった。

 その〈最果ての空賊団〉首領エドワードが未確認であったクラウンのもう片方を所持しており、さらには先立って判明していた所有者の兄であり、ハインツ様の長男でもあり帝位継承権を持ちうる存在であることも判明。

 ことここに至って、コンラッド様の娘が次男の方のクラウン所持者と結託し〈最果ての空賊団〉及び派生の空賊団である〈グランディリア〉の武力を背景に、現ラファエル朝に対しクーデターを決行する。

 

 

 さらに〈最果ての空賊団〉の勧誘に応じて他の空賊団も同調し、戦力を増大させながら帝国首都中枢部へ軍を進める。

 帝国首都本土決戦かと危惧されたところで、現帝政に不満を抱いていた帝国正規軍の帝国剣撃部隊第参隊までもが叛旗を翻し、本国上空の警備を放棄して反体制派を迎え入れる事態に。

 

 首都の守りにすら見限られたラファエルは子飼いの部隊を展開し、自国被害を省みない破れかぶれの反撃を開始。反体制派が市街を守るという逆転現象すら見られた。

 しかしその反撃も鎮圧され、ラファエルは空の底に散華し前帝の娘によるクーデターは成就した。

 

 

 そのまま前帝側に体制が戻る、かと思われたがそうはならず、真の皇帝を指し示す「クラウン」が次なる皇帝へ指名したのは〈最果ての空賊団〉首領のエドワード。

 在野の軍閥がそのまま帝国を乗っ取った形となった。元々の正規軍は解体されたが、再編された帝国軍に残った者もいる模様。

 

 宙に浮いた形となったコンラッド様の忘れ形見は、艦隊連盟を辞し冒険者として世界を巡っているという。

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 そんな穴が空くほど読み込んだ新聞のコラム記事を性懲りもなく読み直してしまうほどに、長い黒髪を2つにまとめた魔女、アセロラは暇だった。

 それもこれも絶賛遭難漂流中の身の上であるからして。情報に飢えていた。

 

 帝国が〈最果ての空賊団〉首領の名をとって俗にいうエドワード朝となって3年。

 指揮系統の変化や軍備の切り替え、体制の変化による影響もほどほどに落ち着き、帝国の代替わりの詳細な様子が明るみに出るようになっていた。

 

 たかが空賊の寄り合い所帯が大国家支配なぞと思うなかれ。驚くことに政治としては相当安定している。

 アセロラもその恩恵に預かった身。

 

 トップ中のトップが誤った方から正統な方にすげ替えられただけなので、多少動揺があっても帝国臣民からはそれなりに歓迎されていた。

 それなりの歓迎だったものから3年で確固たる支持を得て、現在の穏やかな治世となっているのは新体制の優秀さの現れであろう。

 

 

 特に帝国軍の再編において、エドワード皇帝が旧帝国軍を排してあっさり完全掌握したことは驚きであるし。

 優秀な元部下ではあったとしても、在野の空賊団である〈遥かなる空賊団〉及び〈グランディリア〉を丸ごと2つ登用して主力部隊にしてしまったことに対しての批判が内外から聞こえてこなかったという事実が恐ろしいまでの支持率の高さを物語っている。

 

 帝国軍に〈最果ての空賊団〉流のメスが入った結果、獣人であろうと実力者は登用され始めた。

 近接戦部隊の軍服もやや砕けたものになり、個々人が動きやすい改造を施すことも許されている。

 

 魔術師や魔法使いの運用に強みがあった空賊団〈グランディリア〉の成分を採り入れたからか、魔術戦部隊の育成と伸びも目覚ましい。

 官民問わずの実力主義登用も進められているし、軍団長級の若返りが猛烈に進んでいる。急激過ぎやしないかと感じるほどに。

 一匹狼の空賊だった〈狂戦士〉ガラシャを軍団長に押し込むとか、帝国出身の学生を学校から引き抜いて軍団長に据えるとか、なに考えてるんだとかどうやったらそうなるんだとか、思うところはいっぱいあるけど。

 

 ここまで順風な変化を遂げられたのは、アセロラから見ると国難と呼べる外敵に見舞われなかったからというのもあると思っているが。

 

 

 ともあれ、エドワード皇帝のヨイショ記事ではあるのだ。

 エドワード皇帝が当時非常に大きな活躍をしたのは事実ではあるものの、その実、この記事では扱いが小さく名前も出ていないエドワード皇帝の弟の方が騒動の中核を担っていたことは帝国及び共和国でも一般レベルで割と知られている。

 

 というか、新帝誕生記念の式典で思いっきり立役者的紹介されてたし。

 思いっきりVIP対応で王族側の席にいたし。

 共和国元首のアイリス様とも親しそうだったし。

 

 アセロラから見ればどこか頼りなさげな印象だったけど。

 弟の方はかなり若く、エドワード新帝が脂肪どこにあるのってレベルで筋骨隆々逞し過ぎるせいもあるんだが。

 

 そのエドワード新帝の弟も参加した割とガチめな飛行艇による模擬戦を一般席で見上げた限りでは、相当な飛行艇操艦技術と戦闘技術も有していて、騒動の中核もありえない話ではないかといったところ。

 

 その割に、この記事のように評価はあまり目立たない。

 たぶん意図的に薄めているんだろうなと思う。いずれ収まるところに収まるんだろう。

 

 帝国の庶民の最近の話題は、エドワード新帝が、元〈遥かなる空賊団〉首領で現八大軍団長の一角ジフィラか、元〈グランディリア〉首領で同じく八大軍団長マルテのどちらを本妻にするか、というところ。

 下世話なものである。

 

 またラファエルが駆った特殊な戦闘艦も記事内では伏せられている。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 帝国の軍備再編制でアセロラが受けた恩恵。

 ラファエル朝時代の戦闘艦の大規模更新が起き、旧式となった戦闘艦が払い下げられたこと。

 3年の間に政権評価が好意的に向いていた理由には、装備更新による軍需大増加でざばざばと金がばら撒かれた面も大きい。

 

 

 ラファエル朝以前から、帝国軍は一芸特化の戦闘艦を集めて編成される傾向にあった。

 弾幕を貼るには連続攻撃に長けた雷撃艦クラウソラスを集め、火力特化であれば重砲二連装艦エスメラルダを集め、といった様子で。

 

 それはそれで強力無比ではあったのだが、エドワード朝になってからはもうちょっとマイルドに、多機能艦クロスシリーズや高性能支援艦グラーツィアにシフトされた。

 

 ラファエル朝末期に製造された傑作戦闘支援艦ファフニールはグラーツィアのモデルとなりかつ低コスト化が図られ、量産型一般戦闘艦になって現役とか。

 その払い下げられたうちの一隻。旧式となったエスメラルダの更に初期型機を、アセロラはローンを組みつつも購入していた。

 

 

 エスメラルダ初期型機はラファエル朝のわかりやすい大失態であった。

 破壊力重視のカタログスペックはまあまあ優秀で、艦隊旗艦となることすら視野に入れて設計された船本体の建造はそこそこ容易に達成されたものの、装備されるはずだった専用強化パーツの製造が財源不足でまさかの全種間に合わずの事態。

 

 軍事演習での初飛行一般披露飛行を増加装甲も主砲も上下艦橋すらもない酷い有様で迎えることとなり、緑で直線的なボディから、「バッタ」「(緑の)バナナ」だの散々な言われようでの船出となってしまった。

 

 現場や軍部からの評価も散々で、専用装備が整っていない状態での運用を強いられた挙句に習熟に時間のかかる劣悪な操作性と燃費の悪さも相まって実戦投入が遅れに遅れ、こうなれば嘲笑の的にしかならず、ラファエル前帝をしてお手上げの様子で、エスメラルダを指して自嘲気味に「バッタ」と呼ぶ始末。

 

 後に専用強化パーツの供給が安定したものの、全帝国臣民から呆れられ馬鹿にされ嫌悪されたエスメラルダ初期型機の人気は取り返しがつかないところまで落ち込み、特に悪い意味で広まりきったビジュアルはもはや唾棄されるべき負の象徴でしかなく、皇帝トップダウンでデザインの根本的見直しによる大改装が行われたほど。

 

 

 そんなわけで、一般の目が届かない辺境空域等でひっそりと運用されていたエスメラルダ初期型機はエドワード朝になって一斉除籍。

 民間払い下げになるも件の経緯から買い手は帝国内にあるはずもなく、見ただけで指さされて笑われる域にある不人気艦の悪名は既に帝国を飛び出しており、見栄えを気にする空賊にすらそっぽを向かれ、売り値は下落も下落。

 仮にも性能は旧帝国軍の一線を張っていたレベルの大型戦闘艦であるのに、ローンとはいえ一個人の、それも稼ぎがそんなに良くはないアセロラが買えるほどに価格は落ち込み、厄介払いの投げ売り同然になっていた。

 

 そんな悪名高いエスメラルダ初期型機をアセロラが購入したのは、ひとえに自身の目的に必要な性能を満たしていたことにある。

 旧帝国軍艦として非常に強力な火砲を持つことはアセロラには重要ではなく、重視したのは船本体の雷耐性の高さである。

 

 アセロラの目的、それは膨大な魔力を蓄えた幻の黒雲を見つけ自らの力を強化すること。

 が、幻なのでそんな簡単に見つかるわけもなく。

 黒雲を見つけては飛行艇を突っ込ませ、高確率で雷に打たれるということを繰り返していた。

 それで飛行艇の機器を壊したこと数知れず。

 

 その修理代が毎度シャレにならず、一念発起して高い雷耐性を持ったエスメラルダ初期型機を購入したのである。

 

 もともと複数人で動かすことを想定した艦内は広過ぎで、一人では持て余すなあと思いながらも、もう家を引き払ってこの船に住み込むかと思うほどには設備は充実している。

 雨水、というか雲に突っ込んで吸気して水を回収する機能もあるし、バスルーム(ルームというには広いが)もあるし、魔力炉主機の余剰熱でお湯も出せるし、冷暖房も帝国製できっちり完備。

 

 軍用機の民間払い下げによる技術流出を防ぐため軍事機密に関わる機器類は取り外されているものの、飛行システムそのものは1人でも操縦できるよう簡略化されている。

 そうでもしないと一般人には動かせないし、買い手がつかなかったという話でもあるのだが。

 

 砲室や武器庫を多少改装すればいくらでも部屋は捻出できそうだし、重い武器弾薬を詰め込むことを想定しているだけあって、積載可能重量や主機(もとき)の馬力も一般艦船とは文字通り桁が違う。

 つくづく、船の性能自体はそこまで悪くはなかったんだなあと思う。軍採用の過程に擁護できる点はひとつもないのだけれど。

 

 

 大きな買い物の結果はすぐに現れた。何度雷雲に突っ込んでもまるで意に介した様子がない。

 雷を受けても機器にノイズひとつ走らない。劇的なレベルの差であった。

 さらに強風に対する安定性も高いためダウンバーストや乱気流にも強く、非常に快適な空の旅をアセロラに提供してくれた。

 

 それで気が大きくなって、遭難状態になったのだが。

 

 共和国から東へ東へ、高機能レーダー頼りに黒雲探しながらの移動を続けたところ、今どこにいるのかわからなくなってしまったのだ。

 速度もアセロラが以前使っていた一般量産機のオラージュとは比べものにならず、調子に乗ってかっ飛ばし、空図すらないどこかに迷い込んでしまった。

 救難信号を全チャンネルから発し続けているものの、未だ応答はない。

 

 ほとんど最後の手段で、飛行艇に搭載が義務付けられている大陸魔力探査装置に望みを託している状態。

 一定以上の大陸と呼ばれる浮島が発する波長のようなものを感知し増幅、1番近い距離の大陸を指し示す装置。

 遭難した際に動力が足りているうちにいずれかの陸地にたどり着くためのもの。

 

 

 にも関わらず、ここ2日ほどは陸地はおろか障害物となる浮島や岩すら見えない有様。

 ひたすらに雲と雨と晴と雷の繰り返しでは飽きもしよう。

 水はどうとでもなるし食糧もまだあるとはいえ、さすがに危機感は覚える。

 

 アセロラにできたことは、なるべく速度を上げつつも効率の良い燃費を意識して、針路を大陸魔力探査装置が指し示す方角へ設定して、あとは自動操縦にお任せ。

 起きている間は広い艦内の掃除に精を出し、早期警戒警報が鳴ったら艦橋に戻り、寝ている間は低速クルージングモード(にしないとうるさくて眠れない)で距離を稼ぎ、微妙に食糧も食い詰め、と過ごすこと7日目。

 

 情報が隔離された状態で1人が続くと狂う。

 掃除をしている間は焦燥感はあったけれどもまだよかった。

 しかし悲しいかな中古とはいえ購入したばかり。掃除するべき場所はさほどなかった。

 広さからくる手間はあったものの、それだけ。

 

 現在のエスメラルダの装備は、艦首に雷雲探知用の「雷鳴の電探」、艦橋は専用の「エスメラルダ艦橋」、船体底部には、同じく専用の「エスメラルダ下部艦橋」と「エスメラルダ主砲」。

 船体尾部にはエスメラルダ専用の動力源兼操舵の「エスメラルダ主機(おもき)」。船体側面にはこれまた専用の「エスメラルダの翼」と、翼の保護に「エスメラルダの壱ノ盾」「エスメラルダ弐ノ盾」、雷耐性をさらに強化する「雷聖の大楯」を2枚装備。

 

 初期型ゆえ専用のパーツは既に廃盤であり壊れたらもう替えがない。

 それでも一揃えできるだけの数はあったのだがアセロラの財布が悲鳴を上げたため最低限度で整えた形。

 エスメラルダ新型機とのパーツの互換性もあるが、エスメラルダ新型機は民間落ちしていないので望み薄。

 もとよりエスメラルダの特色である攻撃性能の高さはアセロラが求めるところではないからこれでもいいのだ。

 

 

 

 

 遭難8日目、大陸接近の反応が機器にあった。

 無人大陸ではさすがにないよね?と一抹の不安を感じながら艦橋から船外を見るも、分厚い雲の塊が眼前を覆っている。

 天気が悪いことが幾多の雷雲に突入した経験から感じ取れる。

 

 大陸の周囲には大小の岩石からなる浮遊物(デブリ)があることが予想されるし、有視界飛行は天候のせいでおそらくできない。

 未知の場所の航路のない場所を、そんな状態であまり飛びたくはない。

 一度大陸の底まで降りて外縁沿いから上昇していこうかと下を見やれば、飛行艇の飛行能力が失われる空の底まで雲が届いていると思われた。

 

 ならば大陸上空から降下するべきか。そのために底部に装備した下部艦橋でもあるし。

 として高空を目指して飛行艇を上昇させれば、これもまた高度限界を超えて分厚い雲が伸び上がっている。

 というかハッキリ言って異常である。あまりにも雲の高さがあり過ぎる。

 

 

 通常、目一杯高度を上げれば一般機でもほぼほぼ雲の上に出てクリーンな空を飛べる。有視界飛行を保てるのでその方が安全でもある。

 エスメラルダは仮にも元軍用機である。民間払い下げの際に帝国に牙を剥かないよう主機(おもき)の出力にリミッターがかけられ、船本体の高高度維持能力にも意図的に制限が加えられているが、それでもなお上昇能力は高い。

 それをもってしても雲頂と思しき高度は遥か彼方にある。帝国の最新鋭機でも届く高さなのだろうかとすら感じる。

 

 ならば横は?と高空から左右を見渡しても、横にも長大な雲海が広がるのみ。

 雲は横に動くことはなく、ただ下から上へゆっくりと雲全体が上昇しており、もはや雲の壁か間欠泉。

 これが大陸を覆っているのだとするととんでもない話。

 

 雲に入らず周囲からレーダー探査を行えば、雲の中に浮遊する巨岩がゴロゴロしている。

 機体をぶつけずに内部へ向かうには相当面倒なことになりそうだ。

 

 一方で、その巨岩から作為的ななんらかの規則に基づいて構築されているであろう魔力反応も見かけるので、人がいない大陸ではないらしい。

 遭難した身としてはちょっとだけ生存確率が上昇したことになる。友好的かどうかは別として。

 

 

 再び飛行艇エスメラルダを上昇させ高度を稼いでから雲に侵入する。大陸本体に横からぶち当たりたくはない。

 手動操縦に切り替えエンジン出力も絞った。

 雷鳴の電探を対物モードに切り替え、ゆっくり、ゆっくりと斜めに降下、巨岩と巨岩の隙間をすり抜けていく。

 巨岩は微妙に動いているらしく、船体自体が非常に大きい部類でもあるのでなかなか気が抜けない。

 そうして1時間ほど神経をすり減らしながら飛行したころ、アセロラは巨岩と雲の壁を抜けた。

 

「わぁ……」

 そこには陽の光に照らされた新緑の大地が広がっていた。

 

 そして。

「今入ってきた帝国船、エンジンを切り停船せよ。従わない場合は武力行使も辞さない」

 数多くの砲船がこちらに照準を合わせレーダー照射を行なっていた。

 被ロックオンアラートがけたたましく艦橋中に鳴り響く。

 

「ちょっとー!?」

 アセロラは慌ててエスメラルダを停船させると艦橋の窓を開け、外に飛び出して全力で白旗を振った。




主人公、アセロラ。
https://wikiwiki.jp/craftfleet/%E3%82%A2%E3%82%BB%E3%83%AD%E3%83%A9
キャラ説明:膨大な魔力を蓄える幻の黒雲を探す魔女。それらしい雲を見つけるたびに飛び込んでいくため、よく感電している。
好き:夢あふれる物語
嫌い:雷、雷鳴

本家ゲームから提示されているアセロラの情報は、上記に加えてボイス7種。しかもどれも短い。喋り方の参考にしかならない。
ゲーム内ストーリーには登場していないため、マジでここからキャラを組み立てることになる。
つーことで、限りなく限りなくオリジナル主人公に近い出来になります。

なお、★5かつ、インフレに置いていかれて2年前に排出停止されたキャラで、現状の入手方法はユーザー100人ががりで苦行してようやく出るかぐらいの確率でしかありません。
理論上獲得することはできますが、最高レアリティ当てるより何倍も難しいことです。事実上無理です。当てたところで餌か観賞用にしかなりません。

さて、どこまで話を膨らませられるかな?




開幕即本編ネタバレ、というか原作がニッチすぎるため、ゲーム本編のあらすじ(自己流)からスタートする。
そしてそれをまるっと活かさない。
ゲームシナリオというか、世界観を掴むことの助けとなれば幸い。


2018/11/11文章ちょい圧縮気味に修正。
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