遭難する天空の魔女   作:Kaisu

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トライフォートが新人にも最高レアの星7を確定1体入手にしました。
リセマラして、リヴァシンズ>>蝶夜・ユーディント・ミルシェ≧エルヴィのいずれかを当てればゲームスタート可。
他の確定枠は地雷ですどうぞよろしく。
問題はリセマラにスマホなりタブレットなりが2台いることだが……

















今は古き嵐たち

 飛行艇プロテウス。

 

 大型の木造プロペラ船であり、上昇用のプロペラを多数持つ冷気や水に関わる魔力に対する親和性が高い専用パーツを持つ。

 しかしこの船の強みはそこではなく、調達コスト及び建造難易度が大変安価かつ平易で、通常ひとつないしは無しである船体下部の拡張パーツを2つ装備できることが大きな強み。

 

 登場当時はこれが画期的な機構であり、もともと存在するプロペラに加えて下部に2つの下帆を装備することで操舵性を劇的に向上させることができ、また追い風時には燃費も向上させられる。

 画期的であったプロテウスの2つの下部拡張パーツ機構はエスメラルダの設計にも反映されている。

 

 戦闘力においては目立つところのない船ではあるが、安全な航路をよく利用する層から見れば安く燃費良く操縦性よく調達しやしくそこそこの積載重量も併せ持つ欠点のない飛行艇であり、ベターといえる存在。

 飛行艇そのものの戦闘力に期待するよりも数が揃えやすいことを長所と見ているのか、雨龍防衛軍と空賊フォボス両部隊に散見される。

 

 この手の戦闘力に劣るが安価な量産型機に対して最も警戒すべきことは昔から相場が決まっている。

 可燃物爆発物を満載にしたラムアタック、飛行艇自体を犠牲にする自爆特攻。

 

 大型飛行艇に格納される小型飛行艇であれば半誘導弾で軽く爆砕できようものも、プロテウスはエスメラルダのおおよそ0.8倍ほどの大きさで、仮に爆発物搭載がなくともラムアタックを受ければそれなりの質量攻撃となり無視できないダメージとなる。

 当たりどころが悪ければ航行不能程度にはなるし、爆発物搭載で使い捨てにまでするならば、エスメラルダ級の高性能戦闘艦でも轟沈させることも可能。

 

 練度を上げずとも使える手だけに、どちらかといえば正規軍より空賊側が採ることの多い戦術である。

 乱戦に持ち込んでから旗艦級に爆破工作船を向かわせる手は艦隊戦における常道のひとつ。

 

 

 アセロラのエスメラルダを三角錐の突端に据えた突撃型陣形を組んだ雨龍防衛軍において、それら爆破工作船からエスメラルダを守る役割を担うのは、飛行艇プルマス。

 

 雨龍軍において正式採用されている中型戦闘飛行艇。

 木造主体の船体を金属で補強しつつ、ウイングやフェザーと呼ばれる布製の独特な帆と補助翼で船体を半ば覆うように広げており、速度はそこまで出ないが操縦性と挙動の軽さは特筆すべきものがあり、木と布を多く使用している割には耐久性に優れてもいる。

 工学的空気力学的設計よりも魔力による制御を主として設計されている飛行艇であり、プロテウス同様冷気や水に関する魔力と親和性が高い。

 

 プルマスのさらに後方には往年の名機が雨龍軍を底支えする。

 飛行艇ペナルダン。かつて支援戦闘艦といえばこの飛行艇を指しており、帝国ラファエル朝末期の傑作機である支援戦闘艦ファフニールに駆逐されるまであらゆる艦隊戦の後方にはペナルダンが鎮座し、矢継ぎ早に支援魔法を撃ち放っていた。

 

 これも木造船で、船体上部には風防状の布のドームと槍状の細長いブリッジ、船体下部には大きなラダー、側面には3枚の小ぶりな翼。艦尾にはデュアルラムジェット。

 プロテウスから発展して設計された飛行艇ではあるものの面影は薄い。

 

 元から最前線で撃ち合うようには設計されておらず、基本のコンセプトは「落とされない」「支援能力を高める」の2点。

 火砲の類は豆鉄砲もいいところだが、レーダー観測能力は現在の主流戦闘艦と比較しても遜色はない。

 特に戦闘艦の魔力砲中和シールド を補助する能力で右に出る支援戦闘艦はいまなお存在していない。

 ただし高性能なブリッジは希少な材料を大量に使用するためコストが嵩み、ブリッジ無しで運用されることも多かった。それでも十分に強力な支援艦たり得たのだが。

 火砲こそ豆鉄砲ではあるものの、風および雷系の魔力に対する親和性は極めて良好であり、そのエンジンは帝国の大型雷撃機クラウソラスに部分的に継承されている。

 

 

 

 エスメラルダを槍の穂先とした雨龍軍は生き生きと支援魔法を放つ。飛来する砲弾を叩き落とし、魔力誘導弾を迷走させ、あるいは中和し、相手の突撃艇は近寄らせないうちに打ち払う。

 エスメラルダが魔力砲全砲門を解放して掃射を開始してから5分。

 早くも空賊団フォボスの左翼は総崩れになりつつあり、最低5隻は中型以上の戦闘艦を撃墜している。小型飛行艇の撃墜数は多すぎて不明。

 ユウヅキさんが報せてきたところによれば、本日の艦隊戦の撃墜数のおよそ7割が既にアセロラのエスメラルダが記録したものであるらしい。

 

 どれだけ攻撃力ないんだ雨龍軍。

 そこに火力の飛び抜けたエース艦が加われば支援のし甲斐もあろうものか。

 

「とはいえ、怖いものは怖いですけどね。あちらさん明らかにエスメラルダ狙い撃ちしてますし。防いでもらってはいますけど」

「この船の動きさえ止めれば、雨龍軍の部隊は打つ手がなくなることは敵側も理解しているでしょうから。ですので、流れがあるうちに制圧していくべきですね」

 

 よし、とユウヅキさんが腕まくりしてやる気を出し始めた。

 

「あの、なにをするおつもりでしょうか?」

「そろそろ私の攻撃魔法の射程に相手が入るので、1発大きなものをお見舞いしてあげましょう。風防の魔法かけて頂いても?」

「それはいいですけど、届くんですか? この距離で、この弾幕の中で」

「まあ見ててくださいな。私の魔法攻撃後、エスメラルダの攻撃も合わせてください。きっと相手の隊列が乱れますから」

 

 そう言うが早いか、ユウヅキさんはさきほどアセロラが使った上部艦橋最上部への階段を昇ろうとする。アセロラは慌てて風防の魔法をユウヅキさんに付与した。

 

 空賊部隊への距離はレーダーを見る限りではまだ結構ある。獄炎の渦が届く距離ではない。

『こちらユウヅキ、支援部隊に通達。1分後大魔法を使います。攻勢準備』

 部隊内共通回線でユウヅキさんが宣言する。相次いで了承の返信が繰り返された。

 

『では参ります。業火の導き』

 

 エスメラルダの上端部から、一筋の火線が突き進み始めた。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

『敵エスメラルダより強力な魔力反応!』

『旗艦より緊急通達! 全艦衝撃に備えろ!』

 

 撃ち負けて戦闘能力を失いつつあるフリードの部隊左翼の立て直しを図っている最中の出来事だった。

 高速で飛来する光一閃、それはフォボスの艦隊の下を横に通り過ぎて行った。

 次の瞬間、部隊の下方の空間が炎上した。

 

「対象範囲はどうだ!」

「部隊全域!」

「ちぃ」

 

 フリードの部隊が火にかけられた鍋の底となった。

 魔力障壁がある以上すぐにこの炎が燃え移ることはないが、高熱は観測機器に悪影響を及ぼす。

 そうでなくても炎を浴び続けて良いことはない。これだけ広範囲で船が炙られ続ければ乗員が熱で死ねる。

 

 合わせるように雨龍軍が攻勢を強めている。フリードの旗艦ギガントも熱と魔力砲撃でごりごりと魔力障壁が削れはじめていた。

 

「ひとまずエスメラルダは捨て置け! 全艦炎上空域を脱することを優先して前に出るぞ! そのまま相手の中衛と後衛を食い破って脱出する!」

 転舵して後方へ逃れるよりは前進するほうが早い。遠距離砲撃戦でエスメラルダ一隻に撃ち負けているため離れてはジリ貧。

 

「左翼は炎上空域を脱したらエリアリカバリーしてついてこい! 現時点をもって洗濯船は放棄し離脱を図る!」

 実入りは少ないどころか大赤字だろう。これでもだいぶ時間稼ぎはした。

 左翼が崩れ切って逃げすら打てなくなる前にどうにかしなければ。

 

「煙臭い小娘ごときが過ぎたおもちゃを使いよって」

 炎の渦に撃墜されたフレスベルクの乗務員が若い女の魔術師を視認していた。

 撃墜されたあとの無線勧告も若い女のものだったという。

 

 それに手を焼かされているのは何処のどいつだ、フリードは自嘲した。

 太光のクソババアぐらいになってから向かってこい。

 さすれば逃げることなくぶつかり続けてやろうものを。

 

 

「フリーズスコールよ降り注げ、氷雨よ炎を冷ますがいい」

 旗艦に同乗する占星術師ステラが火を消しにかかる。

 氷の粒が霰となって降り注ぎ、冷えた豪雨が灼けた部隊を冷ます。

 

「外れたな、今回は」

「これも星の思し召しですわ」

「当たるも八卦当たらぬも八卦」

 

 星を視る彼女の航行術は得難いものだ。いるといないとでフォボスの夜間の移動能力は大きく変わる。夜戦能力もグンと差が出る。

 夜間移動の練達は夜襲に大きく影響する。常識外の移動による奇襲はフォボスの襲撃成功率を向上させている。

 ま、高空遥かまで雲に覆われれば休業だがな。

 

「者共、上昇気流に乗れ。ステラ、動きが重い船を持ち上げろ」

 広範囲の炎に冷水を叩きつけたともなれば、圧倒的な蒸気とともに上へと風が吹き上がる。

 得難い下からの猛烈な追い風を上昇能力へと変えて多くの飛行艇が高空へ浮かび上がる。

 

「私が道を照らしましょう。星辰の煌き」

 風に乗り損ねた、もしくは機器に不調を抱えた戦闘艦は、ステラの魔力補助を受けて追随してきている。

 

 発生した蒸気をブラインドに雨龍軍の前方かなり上空へと移動した。

 レーダーには観測されているだろうが、高所の優位は古今変わることはなく。

 

 フォボス旗艦でフリードも乗るギガント。

 迷彩柄の円柱のような金属製の船体は風雷の魔力の扱いに長ける。

 旧型となっており性能はフレスベルクに劣るが、無骨な艦体は古強者にこそふさわしい。

 

「殲滅の雷雲よ吹き荒べ、テンペストボルト」

 

 老境になってより、ステラに教わって扱いだした雷の魔法。

 それをエスメラルダを含む雨龍軍先頭集団に範囲攻撃として浴びせかける。

 

 魔法による空間範囲攻撃は回避が難しい。

 直前に察知することはできるが、大型飛行艇単位での回避は時間的制約でまず不可能。

 元来これらは艦隊戦において相手の船を墜とすために練達されている技術であり、大なり小なり当たることはほぼ確実である。

 防ぐ手段は、直前の察知の段階で対抗呪文を即座に用意するか、事前に貼った防御魔法で肩代わりさせるかぐらいのもの。

 

 局所的に暴風と雷雲を短時間発生させる、古典的にして、本職からすれば児戯に等しいものかもしれない我が魔法。

 新しい魔法は老人には難解過ぎる。消耗も激し過ぎる。

 この程度でちょうどいい。何事も使い方だ。

 

 エスメラルダが雷に対して強い耐性を持っていることは承知している。

 エスメラルダ以外には雷魔法は概ね等しく通る。エスメラルダには痛痒を与えなくとも、後ろに続く船は動きを鈍らせることができる。

 結果として、ほんの僅かな時間だが、先頭を行くエスメラルダが単艦で突出した。

 

「撃ち下ろせ!」

 瞬間的に守りを失ったエスメラルダに、フォボスの集中攻撃が降り注ぐ。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 雨あられと空賊団の砲火がエスメラルダに着弾する。

 被ロックオンアラートはさっきから鳴りっぱなし。

 回避運動は取っているし、比較的低速なものはロックオンからの砲撃で相殺もしている。それでも数が多過ぎる。

 いかに帝国製で頑強な装甲を持とうともこれが継続するのはよろしくない。

 

「ちょちょちょちょまずいまずいまずいまずい!」

 魔力砲中和シールドの展開位置を艦体上方に集め、艦橋部分は重点保護。

「魔導シールド割られますよ!」

「ちょっとー!?」

 

 魔力砲中和シールドが鎧であれば、魔導シールドは柵。

 幕のように部隊全体を覆い、放散される魔力を部隊内に留め、吸気による魔力の再回収を補う。

 副次的に空間の魔力量が増大し、外から来る魔力砲に干渉して阻害する。

 主には100のうち10か20の軽減率だが、極めれば40は軽減する。

 

 魔導シールドの維持は風船に似ており、密度が濃くなればなるほど、膨らめば膨らむほど干渉されやすくなり、削られやすくなる。

 割られるという表現も(つつ)かれすぎた風船に穴が空くようなもので、留められていた魔力が掌握された空間から逃げることを言う。

 システム的に貼り直されるので割られてもいきなり軽減率がゼロになったりはしないし、再度貯めることは可能ではあるが。

 

『上向け、アセロラ!』

「はいぃ!?」

『操縦桿引いて船体を上向けて。被弾面積を減らして。いつまでも弱い上面で受けたらダメ』

「ゴメン無理―!」

 

 アゲハさんの叱責にアセロラは背筋をビンとさせるも、それでどうにかなるものでもない。

 迫り来る攻撃に対処するだけで手一杯。本職でないアセロラには操縦までキャパシティが回らない。

 それを察したユウヅキさんが代理パイロット側に操縦権限を回し、すぐにエスメラルダが回頭して被弾面積を下げる。

 

『主砲リミッター外します!』

「当てなさいよ和葉」

『わかっています!』

 

 船体下部に存在するエスメラルダ主砲には、艦の魔力炉が安定運用値をオーバーした際に焼けつき防止の冷却を兼ねて極大の砲撃を放つための機能がある。

 威力、実に通常の300%増。

 

『女の敵には容赦しません。リミッター解除砲、フルファイア!』

 

 腹に刺さるような轟音と吸収し切れない衝撃がエスメラルダを振動させる。

 極太の魔力砲が3連射、それが途中でそれぞれ5本に分岐して飛んでいく。

 いくつかは既に放たれていたフォボス側の砲撃とぶつかりあって相殺されたり逸れたりしたものの、放たれた多くが蒸気の幕と相手の守りを貫いて大きな損害を与える。

 何隻かが高空より黒煙を噴きながら降下してきている。

 

 フォボスの攻勢が緩んだ。動揺したとも言えるか。

 

『すぐに高度上げろ。上下で挟め。いけるだろこの船なら』

「っていっても今出力落ちてますし!」

 

 リミッター解除砲によってエスメラルダ魔力炉の魔力出力は10%を割り込んでいる。

 すぐにここから高空へ伸び上がろうとするにはパワーが足りない。

 暖機とまではいかないが、出力を上げるために30秒足らずの時間が必要。エース級戦闘艦として、この空白の時間が戦況に与える時間は長い。

 元はといえば継戦能力よりも大艦巨砲主義のコンセプト艦であり、複数集めて運用されるべき存在。ワンマンアーミーさせるなら間隙は支援部隊が支えるべきこと。

 

『任せて!リバースフレイム!』

「イロハさんどこから!?ってすごっ!」

 

 魔力残出力がいきなり60%まで跳ね戻る。更には魔力砲中和シールドも一気に修復が進む。

 人力による魔力供給が行われたようだが、アセロラではここまで大規模には魔力供給を行えない。

 

『魔力機関室だよっ。えへへ、褒めて褒めて〜』

「ありがとうございます! ホンット助かりました!」

『上昇するんだよね、プルマージライズ!』

 

 エスメラルダエンジンの動作音が変わる。ウイングが風を切る音が変わる。

 伸び上がろうとするエスメラルダの加速にさらなる勢いがついた。

 

「なにしたの!?」

『上昇強化魔法だよー。魔力で羽を生やす感じ?』

「えらい! てか凄い!」

『えへへ』

 

 たぶん、イロハさんというのは魔力を使って空を飛べる系なのだろう。

 飛べるだけでもアセロラからすると羨望の理由になるが、大型艦の補助すら可能な出力となると相当なものがある。

 ましてや直前にエスメラルダへの魔力を相当な量供給したばかり。

 なかなか強烈な魔力と操作能力をお持ちらしい。

 

 魔法の補助を受けて、重力の鎖を振り切るべくエスメラルダエンジンが唸る。

 急角度の急上昇にアセロラたちは椅子の背もたれに軽く押し付けられた。

 なおも高空から砲撃は降り注いではいるが、修復が行われた中和シールドがそのほとんどを肩代わりする。

 

 雨龍の常識にない打撃力と機動力に、陣形を組んでいたはずの雨龍軍後続が追いついていない。

 編隊で構成する魔導シールドの範囲からも脱けた。

 なおも上昇を続けるエスメラルダは追尾弾を振り切り、フォボスらが隊列を構えた高度すらも通り過ぎる。

 

『広範囲攻撃で相手の頭抑えろ。上向かせるな』

「ユウヅキさんここ任せます! 私の魔法で蓋しますね!」

 

 アセロラは再度操縦席を飛び出して、今度の行き先は下部艦橋。

 相手の船を墜とすよりも広いダメージエリアをフォボスの部隊の上へ展開して、徐々にそれを下げていく。

 獄炎の渦よりも範囲を広く、焼き切る火力までは必要がない。

 エスメラルダより再び魔力支援を受け、イメージを構築しながら杖より術式を展開する。

 

「広く灼く!フレアテンペスト!」

 

 アセロラの杖より発せられた熱の魔法がフォボスの艦隊を襲う。

 下手な布では発火するような灼熱の風を用いた広範囲ダウンバースト。

 ユウヅキさんの発した魔法と効果範囲は大差ないが火を直接使わないのでダメージでは劣るだろう。

 それでも艦隊を押し下げるには十分。

 

 そうアセロラが思い、熱風の勢いを増そうとした矢先、冷ややかな魔力が眼下に広がった。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

『魔力反応確認! 規模は先ほどと同程度! 上方です!』

『旗艦より各艦、回避準備!』

 

 苦々しげにフリードは魔力探知のアラートを聞いていた。

 雨龍軍からエスメラルダを引き剥がすことには成功したものの、それで事態が好転したとも言い難い。

 乾坤一擲とまではいかずともそれなりにエスメラルダを抑えこめるかと思っていた策だが、それほど損害を与えずに終わってしまった。

 それのみならず逆撃を受けて流れを握り直されつつある。

 

「あれの相手はもうしない方がいいか」

 そう呟いたとき、瞬間的な気温の上昇と無重力感覚を得て、魔法の正体が判明する。

 部隊全域に叩きつけられる熱風の圧迫がギガントをやや下降させたのだ。

 操舵が不安定になったところに合わせるように下方からも雨龍軍が猛烈な一斉攻撃を打ち上げる。エスメラルダもさすがに下からのものに比べれば数は少ないものの砲撃を再開し始めた。

 

「熱風を打ち消せステラァ! 全軍で急降下して下方の雨龍軍を食い破る! 装甲厚い艦を前に寄せろ! 無人機爆破のセットアップ急げ! ステラの呪文に合わせて上方に障壁、衝撃来るぞ!」

 

 ダメージコントロールが済み切っていない状態でエスメラルダを追ってさらに上昇しようにも猛烈な下降気流に逆らうことになる。必然飛行速度が落ちるのだからいい的になってしまう。高度を保とうにもそれはそれでエスメラルダの圧に逆らう動きであり、上昇ほどではないにせよ速度は落ちる。

 上にも横にも活路なく、となれば下しかあるまいて。

 

『腕の見せ所だぞ貴様らぁ! 急降下から食い破って雨龍軍を盾にそのまま離脱するぞ!』

 

 上に陣取る大砲がいかに強くとも、味方を撃てはすまい。

 下降そのものの加速と下降気流の追い風で敵の目論見を外す。

 

「やれステラ! 押し負けてもいい!」

「スノーテンペスト!」

 

 灼熱の下降気流に、ステラが過冷却された雪雲の嵐で応戦する。

 魔力によって引き起こされた気象においてありえない衝突は、フォボス上部の大気を猛烈に攪拌する。

 その余波は高低の優位をもって上から下へ、さらなる強烈な追い風となってフォボスの背を押す。

 

「いくぞぉおおお!」

 

 フリードのギガントを先頭に、下方の雨龍軍へ自由落下以上の速度で突進する。

 迫る魔力弾が前面のシールドで弾けるが構うことはない。

 みるみる雨龍軍中衛の木造船ペナルダンが近づいてくる。

 

「なにかに掴まれぇ!」

 

 フリードは固定された椅子に掴まっていたが、それでもなお宙に浮くような衝撃と破砕音がギガントを震わせる。

 ぶつけられたペナルダンが中腹ごとウイング3枚をもぎ取られ、重量差に負けて弾け飛んだ。金属艦であるギガントでもシェルツェン1枚が弾けたが、それだけだ。

 複数の激突音が聞こえる。後続もラムアタック可能な艦は強引に全部隊が通り抜けられるだけの穴を雨龍軍にこじ開ける。

 

「無人機射出、後方で自爆させろ!」

 

 ぶつかって多少速度が落ちようとも加速が全て失われるわけではない。

 直接殴り勝てる木造船を狙ってぶつけに行っているし、ぶつけてもそれほど速度を落とさないぶつかり方はフォボス重装甲艦乗りの必修事項。

 あっという間に雨龍軍の中央を貫通して通り過ぎ、追撃を防止するべく敵陣中央に置き土産にされた無人機が無軌道に飛び散っては次々に自爆して被害を拡大させ、混乱に拍車をかける。

 

「全速で空域離脱!」

 

 指示を出しながらフリードはレーダーを一瞥する。

 上空の様子はわからない。異なる広範囲魔法が絡み合い、ジャミング空間が生じている。

 後ろを振り返って見上げれば、熱波と雪風は未だ互いを貪って荒れ狂い、灰色の雲を太く生じさせていた。その位置はレーダーのジャミング空間と一致する。あれではエスメラルダからもレーダーは届かず、こちらを目視もできまい。

 仮にエスメラルダが追ってきても、1隻だけならどうとでもなる。

 

 後ろを見るのを止め、レーダーに視線を戻すフリード。

 爆発的速度で接近する小型飛行艇の反応が1つだけ表示されていた。

 見返せば、灰色の雲に不自然な一筋の綺麗な溝。その隙間だけ天頂方向の青空が見える。

 

 最短距離で炎の切っ先が追って来ていた。




新キャラ登場(排出停止済み)の懐古継続。
だって入手したことないキャラだとボイスわからねえからキャラ掴めないしネタ拾えねえの!
ボイスをwikiに書いてくれる奇特な人は自分含めても最高3人ぐらいしかいねえの!
ボイス解放にポイント使うから雑魚船員だと育ててwikiに書く気にもならないという……


元ネタのある小ネタを全力でぶちまけボイスをねじ込みつつ整合性を取りにかかる。




今は古き嵐たち→アセロラ・フリード・ステラ
フレアテンペスト・スノーテンペスト・テンペストボルト、全員ごく初期実装の船員たちで全てかなり以前に排出停止されてます。
もう1人ストームテンペスト持ちがいる?ごめんねじ込むの無理だった。
ちなみに、ゲーム的にはユウヅキの業火の導きはフレアテンペストのほぼ完全上位互換である。


wikiより抜粋

ステラ(コスト20)
星読みを得意とする占星術師。夜空に広がる星の流れを読み相手の未来を導き出す。曇りの日が占いの休業日。
好き 星座を創作している時
嫌い くよくよ悩むこと

スノーテンペストは割と早期に駆逐されたゴミ寄りスキル。
しかしながら星辰の煌きは初期では貴重な前衛復活スキルとしてだいぶ長い間現役にいた。
https://wikiwiki.jp/craftfleet/%E3%82%B9%E3%83%86%E3%83%A9


イロハもようやく出番到来。
プルマージライズのプルマージの語源はプルマージュと思われる。フランス語で羽という意味だそうな。
出た当時は割と強力なスキルだったりした。



初期の天クラだとプロテウスが自爆するのは割とよく見かけた光景だった。
さらに言えば、セットアップ(スキル)→自爆(スキル)は黄金パターンですらあった。
そしてセットアップ自爆共に下方修正を食らった。
その後、自爆の修正前とほぼ同一の性能を持った三線奏葬というスキルが登場したが、そちらも環境をぶっ壊す勢いで大暴れした。
そちらはルール自体を変える方向で相対的弱体化を受けることに。



フルファイア!
というスキルも存在している。2017年6月の蒼き鋼のアルペジオコラボ船員の千早群像が持っていた。
レアリティ低めの割に第一線級の能力だった。
サポートの稀代の戦術眼というスキルは今なお現役採用されうるレベルにいる。
当時はもう戦術眼を見ない日はなかった。戦術眼をメタるためだけに過去の雑魚スキルが持ち出されたレベル。


魔導シールド
2019年1月現在深〜く環境に根ざす要素。すごく説明が面倒くさい。
これの実装によって非常に多くのキャラが時代遅れとなった。
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