00話 これは運命の出会い
リヒテンブルク公国。ここハルケギニアにおいては非常に珍しい亜人の自治権が認められた国だ。
亜人と言っても、エルフや吸血鬼やオークやコボルトと言った全部の亜人が含まれるわけではない。これは私たち妖精に限った事です。
基本的に、周辺に存在する国家は全て人間の国であり亜人種に対しては排他的だ。今は、トリステイン王国の庇護下で存続が許されている状態だ。外交関係的にはトリステインとの関係が最も親密と言ってよいでしょう。
ですがそれも、雲行きは妖しくなってきました。
つい先年行われたトリステイン王国とゲルマニア王国の戦争によって、公国含む周辺国は荒廃してしまったのです。
発端は重要ではないので省くきますが、大国ゲルマニアが中堅国トリステイン王国含む周辺弱小国家に宣戦を布告。圧倒的な兵力で弱小周辺国を飲み込んでしまいます。ですが、最後の最期でゲルマニアは弱小国家連合軍を率いるトリステイン国王フィリップⅢ世との決戦にて、逆転され現在に至るわけです。
この決戦で、両国及び弱小諸国は壊滅的な被害を受けることとなります。公国のように国土が戦場となり荒廃するのは、まだましな方で酷いところだと国土の荒廃に加え当主や跡取り、もしくはその両方の戦死。国土荒廃によって増加した山賊に、そのまま占領されてしまう弱小国なんて言うのすらありました。
そして、一応の戦勝国で盟主であったトリステイン王国も一定の荒廃に加え国王フィリップⅢ世の戦傷で公務が滞り、国内は大混乱。弱小国に援軍を出す余裕はなく、一部の貴族がそういった弱小国を占領しようと兵を動かす始末。一方のゲルマニアも決戦で大敗し多くの戦死者を出し、多くの貴族家が跡取り問題に苦慮する事になった上に、当代国王が急死。後継者争いが始まり空白状態がつつくこととなる。後に当時の正統な王政が倒れアルブレヒトなる人物が皇帝として君臨することとなる。有力第三国のガリア王国も代替わりにおける新王派とそれに叛意を持つ派閥が争っている。ロマリア連合王国も国教において新教徒の台頭が始まっていた。
全体的に不穏な空気を放っていた。
我が国の現状も良くも悪くもと言ったところで、幸いにして女王である私は幸いに五体満足です。ですが、戦火に晒された国土は荒廃し復興政策に追われています。
公国内では外部からの策謀を受けたのか。公国古来からの妖精系住民と人間系移民の対立が始まっています。
復興政策の視察と領地の巡察を兼ねて、護衛と回っている時に彼らは現れました。
「へ、陛下!?町の大手門に正体不明の武装集団が!?」
「な、なんですって!?すぐに兵隊を集めて!!私たちも門へ行きましょう!!」
そうかっこよく言ったものの、10代前半程度の体格の私たちでは人間が不逞の輩であったらと思うと体が震えてしまいます。
私が、大手門に着いたときにはすでに兵士たちが集まって、謎の武装集団に槍を向けていました。
一方で謎の武装集団は、鎧の類を付けておらず全く飾り気のない兜を付けている兵士が多数、私の知識にある銃とは違うが、銃と思われる武器を持っています。
服装も奇妙な形をした鉄帽を被った真っ黒もしくは深緑の制服を着ている。また、軍関係ではなさそうな非戦闘員もちらほら見える。ほんとうに何の集団なのでしょう?
と、とにかく目的を問いたださなきゃ!?
「あ、貴方はいったい何者なのですか?目的は何ですか?」
私は震える声で彼らに問いただす。
返事はない。沈黙が流れる。
恐怖で膝をつきそうになるが何とかこらえる。
そして、何分経ったのでしょうか。
向こうの方から返事が返ってくる。
「私はナチス第三帝国総統アドルフ・ヒトラーである。我々には敵意はない、外壁の向こう側に陣を敷くことと、一部将校のために宿を提供願いたい。」
一人だけ違う服装の小柄な男が軽く手を上げて訴え出てきた。
私には彼が傭兵のリーダーや雑多な兵士ではないことがすぐ分かった。
この人間の持つ人としてのオーラとでも言うのでしょうか?
何か大きな事を為す偉大な人物になるであろうと言うことが直感で解りました。
なんて、神々しいのかしら!?
「お困りの様ですね。宿を貸しましょう。」
「おお、ありがたい。感謝しますぞ、女王陛下。」
この総統と呼ばれる男に付き従う兵隊の規律の良さは、今まで見たこともないほどに整っている。この男が指示を出さない限り直立不動だ。すざまじい手腕だ。
彼らに対して、興味が湧いてきました。
「総統殿?よろしければお城の方にいらっしゃいませんか?いろいろとお話をお聞かせいただきたいですわ。」
「ほぅ、それはこちらとしても興味深い。喜んで招待を受けましょう。」
私は驚かされた。
全身全霊を掛けて敵に穢されたこの大地では、何物も生存できぬようにすべての社会基盤を破壊しようと努力した。しかし、旧体制にしがみ付く愚か者どもは私の予想以上に邪悪であった。故に我々は体勢を立て直すべく南米に向かう潜水艦の中に我々はいたはずなのだ。
しかしなぜだ?気が付けば我々は全く知らない土地に流れついていた。
将校や士官たちはここがどこなのか。地図や機器を片手に必死に思考を巡らせている様だ。
とは言え、我々は今ここに生きている。
そして、私にはわかるのだ。ここが地球ではないことが!
理論やら科学的な理由ではない!そう、これは以前も経験した感覚だ。
欧州大戦の際に、神の啓示を受けた時と同じ感覚。
この世界で事を為せと神は言っておられる。
「諸君!新天地である!!何もかも手探りとなるであろう!!しかし、この苦難を乗り越える事こそ!第三帝国の再興への最短距離であると私は信じている!!」
辺りを軽く見渡せば、多少離れたところにノイシュヴァンシュタイン城もかくやと言った荘厳なる美しい城が見えた。将校らはあれが見えなかったのだろうか。
「諸君、あれに見える城へ兵を進めよ!!」
「「「「「ハイル!ヒトラー!」」」」」
我々は城へ向かって進軍する。
途中で見かけた村や構造物は損壊したものばかりで、美しく見えた城も近づくにつれ損壊しているのが解った。
「あ、貴方はいったい何者なのですか?目的は何ですか?」
そして我々は、出会ったのだ。
美しい白い肌、純粋無垢差を孕んだ幼い少年少女の様な容姿。
そして、彼彼女たちが人ならざる者であることを示す。日の光に反射し虹の様な、七色の輝きを見せる美しい羽根の存在である。
「私はナチス第三帝国総統アドルフ・ヒトラーである。我々には敵意はない、外壁の向こう側に陣を敷くことと、一部将校のために宿を提供願いたい。」
私の頭の中で、妖精と言う言葉が過る。
我々のような高潔なアーリア人のみが、並ぶことを許される子供の姿をした美しい自然の体現者。
ここは異世界、胸の高鳴りを感じる。
おぉ、子供だ!子供は未来だ!未来である彼彼女らにこの様な仕打ちをするとは・・・。
この世界も大概に腐っておるようだ。
「お困りの様ですね。宿を貸しましょう。」
王冠を被るこの少女は、この私の要請を快諾してくれた。
やはり、真なるアーリア人である我々は、この純粋無垢なる存在に敵意なく受け入れられたようだ。
「おお、ありがたい。感謝しますぞ、女王陛下。」
「総統殿?よろしければお城の方にいらっしゃいませんか?いろいろとお話をお聞かせいただきたいですわ。」
なんと、彼女たちの方から声をかけられるとは、これはもはや運命か。
神が、我々に道を示しているとでもいうのか。なれば・・・
「ほぅ、それはこちらとしても興味深い。喜んで招待を受けましょう。」