ハルケギニアの新生第三帝国   作:公家麻呂

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11話 始まりの調印 

トリステインとゲルマニアの何度目かの戦いが始まろうとしていた。

そして、リクセンブルクの頭角を現す戦争が始まろうとしていた。

 

 

トリステインとゲルマニアの関係が、悪化しつつあるこの時世において

トリステインの使者が、リクセンブルクを訪れた。

トリステインの使者は王宮勅使ジュール・ド・モット伯爵。好色中年の側面を持つ彼ではあるが「波濤」の二つ名を持つだけの実力者でもあった。

そんな、彼をしてもリクセンブルク公国の姿は異常の一言であった。小型の浮遊艦船にて降り立った公都リクセンブルクは自国の首都をはるかに超えた荘厳さを持っていた。彼の降り立った南側の空港には、そこからでも十分巨大な凱旋門が聳え立っていた。さらにその視界に納まる範囲に、トリステイン王宮と同等の規模を誇る護国卿官邸が視界に納まった。

 

歓迎式典は、彼の想定を超えるものであった。

南凱旋門から中央のライヒス・シュロム宮殿まで続くメインストリートには左右数列に並ぶリクセンブルク兵士達。そのすべてが微動だにせず、腕を斜め上に突き出す敬礼をしていた。リクセンブルク儀仗隊を先頭に、楽隊が音楽を奏でながら行進する。

 

ライヒス・シュロムに続く道中、リクセンブルク兵士達はずっと敬礼を続けていた。

 

ライヒス・シュロムへと入城した一行は、謁見の間にてトリステイン王国の勅使であるモット伯はリヒテンブルク公主であるフィアリアに勅命を下す。

 

「この度の、ゲルマニアとの戦いにリヒテンブルクは兵を率いて参加するべし。」

 

形骸化していた宗主権を行使した内容。

国力的には、ほぼ同列の対等な関係であるトリステイン王国とリヒテンブルク公国。実際に戦ったわけではないが軍事力ではこちらが上を行くはずだ。

 

目の前の玉座に座るリヒテンブルク公の目はガラス玉のように冷たく、横に控えるヒトラー護国卿は睨みつけるような視線を叩きつける様に感じられたのであった。

 

好意的なものを、一切感じなかった彼は勅令を断られることを予感した。

そして、リヒテンブルク公の口からゆっくりと言葉が発せられる。

 

「貴国が我が国に対して、宗主権を放棄するのなら・・・。」

 

現在の領土も国力もトリステイン王国と同等、いつまでも上下の関係でいるのはおかしい。

周辺各国や当のトリステイン王国でも、そう言った意見はあった。モット伯個人としては、リヒテンブルクの言に思うところはあった。そして、公主と護国卿の発する圧は無条件に頷かせられそうになる程であった。

彼はやっとのことで声を絞り出す。

 

「わ、私の一存では決めかねます。一度持ち帰り、陛下の判断を受けたいと思います。」

 

彼の目的は、あくまで勅を届け参戦を促す事。このような事を決める権限はなかった。

そして、今のトリステイン王国には老齢となりこの世を去ったフィリップⅢ世の様な戦上手ではない、現王フィリップⅣ世は戦下手ではないが、決して勇将でも知将でもない。ゲルマニアに勝つことは難しかった。

 

最大の同盟国であるアルビオン王国から、距離や時期の問題で助成を受けられなかった。そんなトリステイン王国は、リクセンブルクの参戦が不可欠であった。

 

トリステイン王国の方では、宗主権の放棄に関して話し合われた。

そして、以外にもあっさりと宗主権は手放された。形骸化した宗主権等不要であるとの意見が、ヴァリエール公爵やクルデンホルフ大公爵、財務卿のデムリ侯爵、陸軍元帥グラモン伯爵ら

国内有力貴族から多数出た為でもあった。

 

 

両国間の宗主権放棄及び軍事同盟締結の調印をするために、流石に王族の出席はなかったが、トリステイン王国からはヴァリエール公爵を中心とした有力貴族が調印団として、リクセンブルクを訪れる。調印式はフォルクスハレで執り行われた。

 

 

 

 

(視点がフィアリアに代わる)

 

調印式が終わり、私とアドルフらはトリステイン側のヴァリエール公爵らと足取りを同じくしてフォルクスハレの階段を下りていく。

フォルクスハレの前には、この歴史的なイベントを目にしようと、たくさんの国民が集まっていた。

フォルクスハレの階段には、ポツンとした島のような踊り場がある。これは演説台のための土台だ。

アドルフは、私に軽く目を合わせる。それに、私は頷いて応じると、速足で踊り場に立つ。

 

アドルフは、拳を胸に演説を始める。

 

「諸君!ゲルマニアとの戦争が始まる!諸君!!我々の闘争が始まる!!諸君!!!我々の歴史が始まる!!!我らがリヒテンブルクは、トリステインよりも多くの部分で国境線が接している!もはや、戦いは避けられないのだ!諸君!今日、この瞬間より我々の命がけの闘争が始まるのだ。それは辛く苦しいものとなるだろう・・・。だが、我々の闘争は今後何千年も何万年も語り継がれるのだ!!我々の手で歴史を作るのだ!!!」

 

アドルフが拳を振り上げるのと同時に聴衆の歓声が響く。

 

「「「「「「「「「「わぁあああああああああああ!!!!」」」」」」」」」」

 

彼の下に駆け寄る私は、彼の前に立ち声を上げる。

 

「私達の公国に勝利を!」

 

沿道整理や警備の兵士達が一斉にこちらを振り向き、腕を斜め上に突き出し声を張り上げる。

 

「「「「「ジークッ!!ハイルッ!!」」」」」

 

兵士達の敬礼に合わせて、聴衆たちもそれに倣い腕を突き出す。

 

「「「「「「「「「「「「「「「ジークッ!!ハイルッ!!ジークッ!!ハイルッ!!」」」」」」」」」」」」」」」

 

フォルクスハレに飾られたブルーベルの紋章が象られた公国の垂れ幕と百合の紋章が象られた垂れ幕が風に揺られている。

 

「「「「「「「「「「「「「「「ジークッ!!ハイルッ!!ジークッ!!ハイルッ!!」」」」」」」」」」」」」」」

 

そして、聴衆が手に持ったハーケンクロイツの旗が、聴衆の手で懸命に振られていた。

 

 

聴衆の反応にヴァリエール公爵らトリステインの面々は気圧されているようでした。

 

私とアドルフの耳には聞こえていた。

軍靴の音が、騎兵の掛ける音、戦車の重低音、砲兵の音、航空魔導士の音。

私達には見えていた。

燃え上がるゲルマニアの村々が、街が、都が。

 

 

 

 

 

 

リヒテンブルク公国参戦。

大国との戦争は今回が初めてであったが、周辺独立諸侯を飲み込み急成長を遂げた彼の国の強さは、未知数であった。しかし、各国が送り込んだ間諜や大使たちから齎される情報から分析した結果では、大国の武力に迫るとされており、今回のトリステイン王国・リヒテンブルク公国とゲルマニア王国の戦争は、ガリア王国・ロマリア連合皇国他の国々からも注目されるものであった。

 

 

「陛下、リヒテンブルクの参戦は確定です。」

「陛下、本当によろしかったのでしょうか。近頃の彼の国のありようは・・・。」

 

ヴァリエール公爵の報告に、トリステイン王国の枢機卿マザリーニは国王フィリップⅣ世に不安げに告げる。

 

「どうなのだ?ヴァリエールよ。リヒテンブルクは貴殿から見てどうであった。」

 

ヴァリエール公爵は、言葉選びに苦慮しながらも口を開く。

 

「少なくても、我々が想像している30年前のイメージは当てにならないでしょう。ここ、30年で公都はガリア・ロマリアに並ぶ荘厳さを得ていました。軍も、昔の様な追えば散るような存在ではないでしょうな。兵の士気は非常に高く、常備軍は我が国の魔法衛士隊を中心とした近衛並。沿道警備に出ていた兵士、恐らくは徴集兵でしょう。これらも我が国の正規兵以上の規律が維持されているようでした。軍を指揮するものとして、これほど理想的な兵はいないでしょうな。」

 

ヴァリエール公爵の言葉を聞いたフィリップⅣ世は暫し思案する。

 

「ヴァリエール公爵にそこまで言わせるか。此度の件が片付いたら、対策を練らねばならんか。二人とも下がってよいぞ・・・。」

 

「「っは。」」

 

フィリップⅣ世は、頭の片隅にリクセンブルクの件を置いておくことにする。だが、今は迫るゲルマニアの大軍である。それは、臣下の二人とて同じであった。

 

 

 

 

 

 

 

ガリア王宮ではガリア王ルイスは、二人の息子に意見を求めた。

王の御前に控える二人の王子は、それぞれに意見を述べる。

 

「トリステイン・リクセンブルクとゲルマニアの兵力差は歴然。戦場は例年通りサンクセン平野、リクセンブルクは程近いアインフェルト高原でしょう。どちらに地の利があると言う訳でもありません。となると兵力の差がものを言うものかと。」

 

「さすがはシャルル王子。」

シャルル王子の発言に周りの貴族達から、賞賛の声が上がる。

 

「うむ、そうか。軍の参謀たちも同様のことを言っておった。・・・して、ジョゼフよ。お主はどうだ。」

 

ガリア王ルイスに問われたジョゼフは、薄っすらと不敵な笑みを浮かべ問いに答えた。

 

「リヒテンブルクの一人勝ちに・・・。」

 

 

 

 




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この戦争は未消化試合です。原作開始前ですからね
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