ハルケギニアの新生第三帝国   作:公家麻呂

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12話 アインフェルト高原の戦い

この度の戦争において主な戦場は3つ。サンクセン平野、アインフェルト高原、ベルサラビア高原である。

リクセンブルクは地図上の地域区分においてはルクセンシュタイン領、ベーレン・メーメン領、スラヴィア・カルパト領、トランシルダキア領がゲルマニアと領境を接している。しかしながらその大半は小高い山脈に守られており、相当な準備をした山脈越えでもない限り越境はあり得ないものでした。

その為に、当初主戦場はトリステイン王国領境サンクセン平野とリクセンブルク公国領境アインフェルト高原、2つに絞られるのでした。

 

ゲルマニア側は、王国の勝利を持って昨今の反発する諸勢力を押さえつけんと、戦力の大半を動員したのであった。自国の常備軍に徴集兵、諸侯の領民軍、雑多な傭兵は勿論の事。北方のヴィスリンク大公国のハッカペル騎士団、東部のジェチポスポリタのフサリア騎士団やウーラン騎士団、ゲルマニア東部の独自傭兵コミュニティであるコサック軍とかなりの規模であった。サンクセン平野へは30000が、アインフェルト高原には20000が布陣することとなった。

対するトリステイン王国は常備軍に徴集兵、諸侯の領民軍、傭兵団総勢10000。リヒテンブルク公国は国軍及び領主常備軍を即座に動員。国軍と領主常備軍の詳細であるが、国軍は公主直轄の近衛軍と、ナチス軍事顧問団の兵力を統合再編させた国家社会主義公国武装親衛隊(以後親衛隊、または武装親衛隊)の事を指しており、領主軍常備軍は各領主領に所属する準軍事組織国家社会主義公国突撃隊(以後突撃隊)を転用したものであり、この突撃隊は有事の際に国が各領主に貸し出す兵とされた。この時すでに領主の私設軍は制度上消滅していた。領主に求められるのは指揮官としての存在のみであった。これら新編成の軍勢はアインフェルト高原へ動員された。その兵力は5000でまだ余力を残していた。また、護国卿アドルフ・ヒトラーはリヒテンブルク義勇軍フライコールの召集を決定。国家労働奉仕団を中心とした各組織より選抜が始まっていた。これ対してゲルマニア王国は、さらに動員兵力を増やし、新たな増援5000をアインフェルト高原へ差し向けた。

サンクセン平野にはトリステイン王国軍10000、ゲルマニア王国30000。

アインフェルト高原には、さらなる貴族領突撃隊の援軍と動員されたフライコールの5000を加えた10000とゲルマニア王国軍25000が相対していた。

 

アインフェルト高原上空では妖精兵で構成された航空魔導軍団を率いたターニャ・デグレチャフ准将が指揮をしていた。

 

「メーベルト少佐、開戦と同時に砲撃開始だ。敵の砲よりもこちらは距離火力共に優勢だ。敵の砲兵陣地を優先的に破壊、それと敵の重装甲戦力ゴーレムも片っ端から潰していけ。我が軍のトップからNo.4までがそう望んでいる。砲兵で敵を恐慌状態にさせて、安全に歩兵達の実地訓練をしたいそうだ。」

 

ターニャの命令にメーベルトは許可が欲しそうに質問する。

 

『准将、敵の前線指揮所や本陣も射程に入っていますが当てていいですか?』

 

「前線指揮所は好きにしろ。だが、本陣はダメだ。敵が早々に帰ってしまうからな。」

 

『残念です。こっちに来てようやく派手に打てると思ったんですがね。』

 

「近々、そういう機会もあるだろう。その時まで取っておけ。メーベルト砲兵指令官。」

 

ターニャに付き従う、ロルフ・メーベルト少佐。

サラマンダー戦闘団時代からの付き合いの彼も、今や出世して此度の軍の砲兵全体を統括する砲兵指令官だ。

 

「アーレンス少佐、貴官はまだ予備戦力だ。我慢してくれよ?機甲の活躍の場は、トランシルダキア側の連中に譲ってやれ。今はな・・・」

 

『残念ですが、了解しました。』

 

メーベルト同様に出世した、機甲の司令官アーレンスもサラマンダー戦闘団時代からの付き合いだ。そんな彼も戦意旺盛なので、念のため釘押さしておかねばならないか。

 

「軍務卿、こちらからはトスパン大尉をお貸ししますので存分に使ってください。」

 

『あ、あぁ・・・。そうさせてもらう。』

 

地上の主兵力である前線の歩兵や騎兵はリヒテンブルク公国軍務卿プディング・カスター将軍が指揮することとなった。これは、司令階級者が旧ナチスSSで埋め尽くされるのはいかがなものかと言う政治的配慮と、昔よりかなりマシになったとは言え、ターニャ自身のトスパンに対する信頼度の問題もあった。

 

ターニャは自軍の本陣の方を見る。

そこには、我が国の国家元首であるフィアリア・ド・リクセンブルクが戦車の上に仁王立ちして前線の様子を、双眼鏡で見ている姿が見える。

戦車の横にはキューベルのボンネットで吸血鬼化したナチスの士官や妖精士官達と打ち合わせしている。我らが総統閣下、今は護国卿閣下の姿があった。少し離れたところにアーレンスたちの機甲部隊が待機しているのが見えた。

閣下が、ここまで来ていると言うことは絶対勝てる戦いと言うことだ。万が一にも失敗は許されない。本来なら気を抜いてしまう戦いだが、逆に気合を入れて挑まなくてはな。

 

そう言えば、公主様が乗っている戦車はNbFzノイバウファールツォイク多砲塔戦車。あの、プロパガンダ専用戦車・・・持ち込んでいたのか。IV号対空戦車ヴィルベルヴィントとオストヴィントに守られた多砲塔戦車。見た目だけはいい。敵将も大いに目を引き付けていることだろう。

 

『聞け!リヒテンブルクの優秀なる兵士達よ!』

 

ターニャは通信機越しに聞こえてくる公主演説をBGMに銃器の確認を始める。

 

『30年前、我らの長きにわたる辛き時代をもたらした連中が、目の前にいる!今こそ、奴らを殲滅し!ツケを払わせる時が来たのです!!奴らの数は昔同様に多く、我々は領土を拡大しましたが、兵力はいまだに劣ったままです。ですが、30年前とは違うものがある!!』

 

フィアリアは小銃を掲げる。

 

『我々には新たな力がある!!奴らに思い知らせることが出来るのです!!矢は放たれた!否!弾丸は放たれた!!奴らに鉄の味を教えて差し上げるのです!!』

 

兵士達が小銃を掲げ、雄たけびを上げる。

 

「「「「「「「「おぉおおおおおおおお!!!!」」」」」」」」

 

兵士達が土嚢の影や、塹壕へ入っていく。

ゲルマニア王国側の演説も終わり、支度を整える。

 

『准将、前方より敵影。ゲルマニア軍の竜騎士隊です!』

別任で不在のセレヴリャコーフ大尉の代わりに付いた妖精士官のチェリー・コーンウォリス中尉から連絡が入る。

 

「了解した。航空魔導士全隊、散弾術式用意!!・・・・・・撃て!!」

 

滞空していた自身の士気兵力である800の妖精航空魔導士の小銃から、散弾術式が放たれる。

散弾によって3割ほどの竜騎士が落ちていく。遠くからではわからないが、恐らく今いる中でも負傷者はいるはずだ。だが騎士たちは、そのまま突っ込んでくる。

 

「総員!突撃せよ!敵竜騎士へ突撃せよ!」

『シュトゥルムアングリフ!!准将に続け!!』

 

私に割り当てられた妖精中隊に続いて、チェリー中尉の隊が続き他の隊もデルタ隊形で敵部隊に突入していく。

各隊が、敵竜騎士に対して空戦を開始したのだった。

 

 

地上においても、圧倒的優位に立って戦闘を展開していた。

 

「撃てー!」

 

塹壕や土嚢から頭と銃口を出して一斉射を行う。

自軍砲兵の砲撃によって巻き上げられた土煙は、両軍から視界を奪った。

リヒテンブルク軍の士官たちは塹壕から出ることはせずに、絶え間なく銃撃を続けた。

 

ガガッガッガガガガガ!!

 

リクセンブルク軍に貸与されたMG34機関銃から途切れることなく弾丸が発射され続け、盲目の状態で突入してくるゲルマニア軍の兵士達の死体を量産し続けた。

メーベルト砲兵団が射撃を開始する直前に、見えたのはリクセンブルク軍を一飲みにしようとしたゲルマニア軍の兵士達。全体の半数近い数が突入したのは見えていた。

 

砲兵の攻撃でゲルマニア軍の砲兵陣地や銃射手や弓兵が壊滅したのは想像がついた。

飛び道具の反撃が散発的だから、だが突撃したゲルマニア軍は状況を理解していないようでリヒテンブルク軍の塹壕まで迫ってきた。

 

「撃て!撃ち続けろ!」

 

前線指揮のプディングすらもが拳銃を抜いて応戦し始める有様であった。

「後方へ援軍要請を出すべきです!」

「早くそうしてくれ!」

 

トスパンの言葉に早くするように促すプディング。

 

他の塹壕では、塹壕に侵入したゲルマニア兵とリヒテンブルク軍の白兵戦が発生し始めていた。

「着剣急げ!」

 

サーベルを抜いた士官妖精が、ホブゴブリンの兵士達に着剣を急がせる。

 

「「「うわぁああ!!」」」

 

ゲルマニア兵が塹壕に侵入してくる。

 

「応戦!応戦だ!」

 

銃剣を装備したホブゴブリンとゲルマニア兵が剣や槍、銃剣とスコップで白兵し始める。妖精士官もサーベルで戦っている。

 

 

後方では、フィアリアが各所の塹壕に侵入を許したという報告を聞いて、ある決断をする。

 

「アーレンス少佐!機甲部隊を前進させなさい!!」

 

フィアリアの命令を受けたアーレンスはビシリッと腕を斜め上に突き出して応じた。

 

「ハイル!!ヘルツォーギン!!パンツァー!!フォー!!」

 

アーレンスのIV号指揮戦車を中央に10両のIV号戦車とIV号駆逐戦車が続く、最後尾にIV号突撃戦車ブルムベアが付いていく。

 

アーレンスの機甲の前進に伴い、メーベルト砲兵団の砲撃が止む。

土煙が晴れて状況が理解できるようになる。

後方の友軍は壊滅、突撃していた自軍も壊乱。最悪の状況を理解したゲルマニア軍が潰走状態になる。

 

生き残りの兵士達を戦車が追い回す。

状況が有利と分かった兵士達は塹壕から出て追撃に加わる。

一部の塹壕がゲルマニア軍に落とされたものの、この状況は覆らない。他の兵たちがゲルマニア軍を塹壕から一掃する。

 

 

すでに壊滅状態のゲルマニア陣地にアーレンスの戦車隊と騎兵部隊が、止めとばかりに突入する。

もはや死体の山でのミンチ作業の様なものだ。ゲルマニア軍を25000が壊滅した。

 

 

 

そして、もう一つ。

当初の予想を裏切り、リクセンブルク公国軍はトランシルダキア領より進軍を開始。

ヴィルヘルム・モーンケ親衛隊中将率いる軍勢が、トランシルダキア領ブロドジャより侵攻を開始。旧ナチス親衛隊を再編成したヨアヒム・パイパー准将率いるパイパー戦闘団、オットー・スコルツェニー中佐率いるスコルツェニー猟兵大隊、マテウス・ヨハン・ヴァイス中佐が指揮代行する第203航空魔導大隊がトランシルダキアよりゲルマニアへ越境した。

 

目標は、ゲルマニア黒海沿岸最大の資源採掘場オルデッサ。

 

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