ハルケギニアの新生第三帝国   作:公家麻呂

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16話 吸血鬼の王 ※加筆しました

 

公都リヒテンブルクの衛生医学局の一室。

そこで、吸血鬼少女エルザは目を覚ます。

 

数人のグール擬きと妖精が周囲で自分の様子を見ていた。

「何を見ているの?」

 

威嚇の威を込めて、彼らを睨みつける。

しかし彼らは、一切動じた様子はなかった。

 

彼らの中で、一番偉そうな男が歩み出る。

「お目覚めの様だね。あまり怖い顔はしない方がいい。君がいくら吸血鬼であるからと言ってこれだけの数に勝てるとは思わんだろう?幸いにして、我々に敵対の意志はないのだよ。無理にでも争いたいと言うのなら、悲しいが・・・」

 

グラヴィッツ親衛隊大将は手を振りかざそうとしたが、前にエルザは返事を返した。

 

「わかった、貴方達に協力するわ。貴方達が私を助けてくれたみたいだしね。」

 

グラヴィッツ大将は軽く眉を寄せて笑顔を作る。

 

「大変結構、純粋なハルケギニアヴァンピールで我々が接触できたのは君が初めてだからね。」

 

「…?どういうこと?」

 

エルザの疑問にこたえるべく。グラヴィッツ大将は答える。

 

「我々は、元人間と言うことだよ。エルザ嬢。」

 

「グールってこと?それに私の名前・・・。」

 

「君の名前は村で聞いた。ザビエラ村だったか。それと、我々はヴァンピールだよ。確かにグールの特性も持ってはいるが吸血鬼だ。種族としてアーリアヴァンピールを名乗っているよ。」

 

エルザの中でヴァンピールを名乗っていた彼らが、グールの要素を持っており不完全な存在に思えた。

敵対しておらず類似した種族であった為に、お互いの情報交換を兼ねて色々な話をした。

途中で、血を抜かれたりして不愉快な思いもしたが概ね友好的だった。

 

衛生医学局での生活が数日経過した。

応対役がグラヴィッツ親衛隊大将から、その部下ギュンター・シェンク親衛隊大佐に代わった。

 

リヒテンブルク公国、最初のハルケギニアヴァンピールである彼女だ。

応接役であるシェンク大佐は、予定通り公都リヒテンブルク各所を案内しエルザとも良好な関係を築いていた。

だいたい、1週間程経過した。

 

「今日は、どこに行けばいいのかしら?」

 

シェンクが用意したワーゲンに乗り込んだエルザはシェンクに尋ねた。

専属運転士に運転を任せ、シェンクはエルザの隣に座る。

 

「今日は、フォルクスハレの方に行く予定だ。護国卿の演説があってな。我々もこれに参加する。」

「そうなの?難しいことは、よくわからないわよ?」

 

シェンクは柔らかい表情で、エルザに答えた。

 

「心配ないさ。護国卿の言葉は、わざとらしい難しい文言を並べただけの下らないものではない。あの方の言葉は世の真理、この世界に生きるものならば問題なく理解できるさ。」

 

エルザが若干の好意を持って接するシェンクであったが、人間の中で気付かれない様に暮らしていた彼女だ。シェンクの表情に僅かに見えた恍惚とした表情にエルザは眉を寄せていた。

 

フォルクスハレ前の演壇、広場に並べられている椅子。

多くの国内からの列席者が、席に座っている。離れたところには国民の妖精達が、公主と護国卿の姿を見ようと押し寄せているのが見えた。

 

用意された席に座ると、司会者が司会進行を始める。

国歌斉唱が始まる。全員で国家が歌われ、音楽が止む。

 

件の護国卿の演説が始まる。

 

「今後の公国では、眉目秀麗で容姿端麗な男女が生まれることだろう。」

 

エルザは、精霊魔法が使える吸血鬼。

それも、俗に言われている初歩的な魔法ではなく。中級程度にいくつか使えるものがある程度には優秀だった。シュバリエのガリアの魔法使いと張り合えたのが証拠だろう。

 

「そして、猟犬のごとく俊敏で、皮のように強靭で、鋼の硬さを備えた存在となろう!必ずや!我らは新たな支配者として君臨するだろう。そして、我らは世界を創造する。」

 

故に気が付いてしまった。

この護国卿の恐ろしさに・・・。

 

「そして、その時は近いと確信している。リヒテンブルクのすべての国民が、我々の一員となり、我々国家社会主義の手に入れたものを、我々と共に歓呼で迎える!それは新しい公国!大いなる力と誇りを持った国家だ!!」

 

彼が口を開く度に霧散する。水の精霊魔法。

霧のように空中へ霧散した水の精霊魔法は、周囲の空気に溶け込み自然と私たちの体に入ってくる。

 

「「「「「「「「「「ジーク!ライヒ!ジーク!ハイル!」」」」」」」」」」

 

聴衆が、酒や麻薬におぼれたかのように狂乱する。

 

「突撃隊万歳!親衛隊万歳!」

 

 

「「「「「「「「「「ジーク!ライヒ!ジーク!ハイル!」」」」」」」」」」

 

ヒトラー護国卿の言葉に皆が皆、一心不乱に腕を突き上げ、一心不乱に唱和する。

 

 

「壮麗な時代は目前だ!我らは遂に覚醒し、我らの手でそこに至るのだ!!」

 

精霊魔法でも系統魔法でも、水の魔法は癒しや他の魔法を補佐するイメージが、世間一般に知られる。そして水の魔法にはもう一つ、人の心に作用する精神操作系の魔法が存在する。

 

 

この男は、禁忌とされる精神系魔法の天才だ。

1人や2人を相手にするような、しょっぱい物ではない1000や2000それ以上を洗脳する脅威の力。吸血鬼史上最強の存在、グール擬きばかりの国でたった一人の吸血鬼。違う。グールの要素をもった吸血鬼、それを完全に掌握している。

通常吸血鬼は1人に付き1人のグールを制御化における。この男は1人で1000や2000のグールを、10000や20000それ以上の妖精達を操った。

 

「我らと公主様の国家社会主義の軍隊は、あらゆる障害を薙ぎ払い!国家の真の姿を世界に示すのだ!!」

 

吸血鬼の王。恐ろしいお方、私は手を組んで自然と祈る。

偉大なる吸血鬼の王よ。世界に夜を、暗い闇の様な夜を・・・と・・・。

 

「ジーク!ライヒ!ジーク!ハイル!」

 

普段は、冷静沈着なシェンクですら狂ったように手を突き出し叫んでいる。

太陽が夕日となって沈んでいく。

 

エルザは頬を染め、恍惚に浸る。

 

「あぁ、我らが夜の王・・・。あの方なら・・・あの憎き太陽の火を・・・消せる。」

 

グール擬きの吸血鬼たちも解っているのだ。

あの方こそが夜の王、闇の支配者であることを…!!

 

 

 

 

 

 

「エルザ、ついてきたまえ。」

 

手招きするシェンクに黙ってついていく。

ライヒス・シュロムと呼ばれるこの国の国主の城へ案内される。

宮殿の奥の部屋、恐らくは偉い人と対面するための部屋。村育ちの自分では、到底価値など分かるわけがない高そうな物が、並べられた部屋だ。

 

その部屋には漆黒のドレスを纏った妖精の女王、その隣には我らが吸血鬼の夜の王たるあのお方が座っておられる。

 

「リクセンブルク大公フィアリア様の御前である。控えよ。」

 

黒い制服の親衛隊兵士が声を上げ。私達は手と膝をついた。

 

「構いません。顔を上げなさい。アドルフ、些事は任せます。」

「あぁ、任せたまえ。」

 

妖精の女王から、引き継いだ彼こそ吸血鬼の王、アドルフ・ヒトラー。

 

「エルザ嬢、こうして出会えたことは僥倖と言えよう。」

 

頭を上げた先に見えるは、偉大なる御方。吸血鬼と言う種族が持つ本能的なものが、彼を崇めよと訴えている。

吸血鬼と言う種族は、人間に比べれば紅潮したり動悸が止まらなくなるなんてことはまずない。だが、彼女はそうなっていた。

アドルフ・ヒトラーと言う存在が、かの者の存在は言うなれば神。宗教持たず、種族としての信仰の存在が無かった吸血と言う種族に、王が、神が降臨なさったのだ。

 

「エルザ嬢、公国のため私の下に下る気はないか?」

 

ヒトラーの問いかけに対して、彼女は一も二もなく答える。

 

「も、もちろんでございます!偉大なる御方!」

 

歓喜ゆえの即答であった。

エルザの様子にヒトラーは、顎に手を当てる。

予想以上の好感触に、踏み込んで話を聞いてみることにした。

エルザの姿は、親衛隊の中でも特に狂信的な者達特有の物を感じ取ったからだ。

 

「エルザ嬢、君に私はどう見える。」

「許されるのであれば・・・神と・・・偉大なる御方。」

 

顔を紅潮させて、声を震わせる彼女を面白そうにしてさらに話しかける。

 

「神か…。フィアリア嬢、私は吸血鬼の神だそうだ。」

ヒトラーの言葉に、フィアリアは黒い羽根扇子で口元を隠しながら、にっこりと笑って答える。

「フェアリルである私達から見ても、護国卿は英雄ですわ。同族から見たら神と言うのも相違なしと言うものですわ。」

 

そう言って、ヒトラーに肩を寄せようと知る妖精の女王に、初めて感じる嫉妬の感情。

この御方の注意を引きたい。

 

「他の吸血鬼たちは、なぜ神の下に来ないのだ?」

 

「そ、それは、同胞たちが御方を理解できていないが故です。その御姿を見ればヴァンピールの本能が御方を理解するでしょう。」

 

ヒトラーは、観察するような視線をエルザに向ける。

 

「私は、先ほどのように世間の目に触れているはずだが?確かに公言はしていない。だが、視察を通して辺境にも顔を出している。君のように見てわかるのなら・・・と思うのだが?」

 

ヒトラーの疑問に対して、エルザは吸血鬼の種族的な説明をする。

大して、しどろもどろなることなく応対する彼女に対して、ヒトラーは内心感心していた。

報告では、死にかけの状態で衛生医学局に運ばれたらしい。かなりの、修羅場を越えたのではないだろうか。

 

「私達、吸血鬼と言うのは最大でも家族単位のコミュニティしかないのです。私自身、家族以外の同胞は両親が生きていた頃に2・3人、顔を合わせただけです。ご希望とあらば、なんとか、その2・3人に連絡を付けてみますが・・・。いかがでしょうか。」

 

上目遣いで、こちらの様子をうかがう彼女をよそに、ヒトラーは後方に控える衛生医学局局長グラヴィッツ大将に視線を向ける。

 

「我々の捜索網に掛からないところを見るに、彼らハルケギニアヴァンピールのコミュニティは相当に小さいのでしょう。彼女の言っていることは、間違いないでしょう。正直このまま、調査を継続するよりはエルザ嬢の伝手を使って、そこから少しづつ広げていくのが最良の手段でしょう。」

 

一応、確認の意味で医務官のシェンクにも視線を向ける。

 

「医局長と同意見です。」

 

軽く、思案したヒトラーは彼女を組織に取り込むことを決める。

 

「グラヴィッツ大将。ハルケギニアヴァンピール関連のことはエルザ嬢と協力して事に当たるべきだろう。関係各所と協力してハルケギニアヴァンピールとの関係構築及び取り込みを進めるように。」

 

「「ジーク!ハイル!」」

 

 

 

 

 

 

 

ハルケギニアヴァンピールとの、接触交渉や取り込みはエルザの伝手を使って集められ、そこから多くのハルケギニアヴァンピールが集まることとなる。その功績を持って、エルザは軍内で確固たる地位に上り詰めることとなる。

 

 

 

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