ハルケギニアの新生第三帝国   作:公家麻呂

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22話 バトル・オブ・アルビオン 後編

 

アルビオンにおいて北部から南下をしようと攻勢を強めるリクセンブルク軍他の連合軍第二集団、それに抵抗するアルビオン賊軍。

 

シティオブサウスゴータのトリステイン・ゲルマニア連合軍は撤退を開始、シティオブサウスゴータを引き払い軍港のあるロサイスまで撤退した。

 

そして、一人の少年が迫りくるアルビオン賊軍を単騎で押し返すという大戦果を挙げ見事に連合軍を逃がしたのであった。

 

その話を聞いたルイズは色を失った。全身から血の気が引いていく。それは才人だ。彼は自分を気絶させ、今乗っているこのフネに乗せたのだ。そして、アルビオン軍に向かって行ったのだ。

 

「サイトー!」

 

ルイズはフネの柵に駆け寄り絶叫した。

その異常に気が付いたメイドのシエスタや友人のギーシュやマリコルヌは無理にでも降りようとする彼女を取り押さえる。

 

「おろして!お願い!おろしてよ!あそこにはまだ!まだサイトがいるの!」

 

ルイズの絶叫が遠ざかるアルビオンに響いた。

 

 

撤退する連合軍第一集団を追撃していたアルビオン賊軍はロサイス奪還した。

賊軍首魁のクロムウェルはロサイスのレンガ造りの司令部に入り、そこでイライラと爪を噛んでいた。

 

「なぜ、ガリアは兵を寄こしてくれないのだ。二国で挟撃すればシティオブサウスゴータの連合軍なぞ一撃、北部連中も一蹴できるというのに。」

 

その理由をシェフィールドに尋ねたかったが、先ほどから姿が見えない。

クロムウェルは不安で潰れそうであった。己の部を越えた今の地位が恐ろしくてたまらなかった。思わず震えそうになった瞬間。

 

窓の外から歓声が響いてきた。

 

ガリア艦隊であった。

 

「ガリア艦隊より伝令!閣下にご挨拶がしたいとのことで位置を知らせてほしいとの事です!」

「ああ、なるほど。あのお方は律儀な御方だ!王も律儀なら艦隊司令官殿も律儀であったか!よし、玄関前に議会旗を掲げてくれ!」

「了解」

連絡士官が退室していき、ほどなくして議会旗が上っていく。

 

百近い戦列艦が、その高い練度を誇る様に見事な機動で並んでいく。

まるで観艦式のような光景であった。

 

クロムウェルは嬉々として艦隊を見つめる。

百近い戦列艦の舷門が、一斉に光った。クロムウェルの人生で一番美しい光景であった。

 

何千もの砲弾がクロムウェルのいるレンガの指令所を襲った。

一瞬で発令所は、瓦礫の山と化した。

 

 

この一連の戦争はガリアの参戦と言う形であっけなく終わってしまったのであった。

 

南下を指示したリクセンブルク軍であったが、なんか開始から1日で停戦命令が出されることとなる。

 

 

地下司令部で指示を出していたヒトラーも、アルビオンの戦争終了を聞き片手で払うように部下たちを退出させる。

 

「まったく、ガリア王め。なかなかの食わせ物ではないか・・・。秘密協定締結の翌日にこれとは・・・。アルビオンの利、撤退したトリステイン・ゲルマニアは論外としてもガリアに掻っ攫われるのは避けたいものだな。」

 

ヒトラーの横に座っていたフィアリアは心配そうに尋ねる。

 

「アドルフ・・・?ガリアの動きは私たちの計画にとって手痛い物なのかしら?」

 

フィアリアの不安げな態度にヒトラーは彼女を安心させようと口を開く。

 

「まさか、所詮は劣等種の浅知恵だ。今のリクセンブルクはアルビオンを毟らなくても問題ない。しかし、払った血に見合う見返りは欲しいではないか?」

 

「その通りではあるわね。と言っても利益分配の会議は来月よね。」

 

「そう来月だ。ガリアの青髭は未だに舞台の演出家気取りと言うのは気に入らんが、前座くらいはさせてやっても良いだろう。本番はこれからだ。」

 

 

 

 

 

 

 

アルビオンの共和主義者の反乱が集結し、ハルキゲニアは僅かな平和を享受した。

ただ、この平和は次の戦争のための準備期間でしかなかったのであった。

 

 

多くの者たちは故郷に帰り家族と会い、酒場で再開を祝した。

 

ある酒場での一幕。

 

「戦争は終わったってのになんで銃や銃の弾をあんなにたくさん作り続けてるんだ?」

作業着の妖精が疑問を述べる。

 

「んなこったぁ!気にしなさんな!戦争は終わったんだ!今日は飲もう!」

 

「「「いぇーい!」

 

作業着の妖精も周りの喧騒に飲まれて疑問のことなどすっかり忘れて酒を飲み踊り出した。

 

 

 

ある一般家庭。

 

「ただいま!」

 

「おぉ!帰ってきたのか!」

少年妖精の言葉に先に戻ってきたのであろう初老の妖精が応じる。

 

「ハントは?」

妖精の少年は幼い弟の名を呼ぶ。

 

「なに?」

 

兄の妖精は弟を見受け顔をほころばす。

 

「お土産だぞ!アルビオン軍の騎士の小盾だ!」

 

「にぃたん、ありがと~。」

 

平和で穏やかな時代がすぐそこまでやってきている誰もがそう思っていた。

 

 

 

国境間で築かれる砦、国営工廠の武器弾薬生産は戦時体制のまま。

 

 

国営工廠。

 

ヨアヒム・パイパー准将は同階級のターニャ・デグレチャフ准将と共に国営工廠の視察に訪れた。

 

「では、私はここで。」

「あぁ、またあとで。」

 

二人とその副官はそれぞれ敬礼し、案内の工廠職員の後に続いた。

二人の目的地は違う。

ターニャの方はオルデッサ鉱山占領後より安定供給されている赤い鉱石。

品質低下の粗悪品から脱却してから、何度も演算宝珠の改修が行われていた。

その性能はエレニウム式には及ばないものの前の地球世界の大戦期にようようされていたものに限りなく近い性能の物が再現できるようになっていた。

それら演算宝珠や航空魔導士の標準装備の視察が彼女の目的であった。

 

一方のパイパー准将の方は、工廠内の演習場平成案内される。

 

「パイパー准将、これが我が国初の国産戦車です。」

 

演習場を走行する2両の戦車。

 

「あれは、軽戦車と・・・豆か。」

 

「えぇ、Sd Kfz 201エルヴィラ豆戦車。Ⅰ号戦車をモデルに開発されたリクセンブルクの国産戦車です。そしてもう一つがSd Kfz 202ツェルリーナ軽戦車、チェコスロバキアのLT-35 やLT-38軽戦車の資料とドイツ軍のⅡ号戦車をモデルに開発したものです。60年掛かりました。」

 

「長かったな。」

「再現するだけでも、これほどの時間を要する。ハルケギニアがいかに停滞し硬縮しているかが伺えますな。」

 

「それでも、他国よりはましだ。それで、これらの生産体制は?」

「来月には生産ラインを整える予定です。勿論、現状でも生産は続けますが。」

 

パイパーはニヤリと嗤いながら副官と案内職員に話しかける。

 

「前にゲルマニアに我々が侵攻した時。戦車は鉄の地竜と呼ばれたそうだ。少々小さいがその鉄の地竜が大集団で攻め寄せてきたら彼らはどう思うんだろうな。くくくくはははは!」

 

 

 

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