ハルケギニアの新生第三帝国   作:公家麻呂

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24話 虚無とアインザッツグルッペ

 

「ガリアのジョゼフ陛下より話は伺っております。虚無の専門家だそうで・・・、我々の虚無捜索に全面的な協力をいただけると。」

 

「我が主より、貴国の虚無確保に全面的に協力するように命じられてまいりましたわ。」

 

ヘーヴェルの言葉にガリア王より派遣されてきた黒髪の女、シェフィールドは受け答えにどことなく東方の艶やかさを感じさせた。

 

「それはありがたいお話です。まぁお茶でも飲みながら・・・。ミーナ君。」

「はい。」

 

ミーナがカップにお茶を注ぐ、それを手にしたヘーヴェルは一口飲んでからシェフィールドに話しかける。

 

「ミス・シェフィールド。虚無のいる場所は予想出来ているのですか?」

「はい、もちろん。」

 

そう言って彼女はテーブル中央のサウスゴータ地方の地図のいくつかの村々に印を書き込んでいく。

 

「一つには絞れないのですか?」

「さすがに、そこまで詳細な情報は・・・ここからは実際に見て見ないことには・・・。」

 

ヘーヴェルとその副官ミーナは、友好国以上の親密国となりつつあるガリア王から直々に派遣されたシェフィールドに対して極めて友好的に努めた。

 

「そうですか。」

 

ヘーヴェルが息をつくとシェフィールドが、それに付け加え形で口を開く。

 

「それに、虚無を探すというのは秘密裏に行う必要があります。虚無はトリステインの聖女を発端に市井の人の口づてに注目を集めていますので・・・、少しばかり手間がかかりますよ。」

「それに関しては、問題ありません。中佐!入りたまえ!」

 

ヘーヴェルの声を出すと扉が開いた。

 

「フランツ・ケイユ中佐!入ります!」

 

その先にはナチスの髑髏の紋章を軍帽に付けた妖精の少年の姿があった。

 

「そう言った痕跡を消すのに彼らは非常に優秀と言っておきましょう。」

 

ヘーヴェルの言葉にシェフィールドは何も答えなかったが、その表情は既に納得していた。

彼女の前に立っているのは、悪名高きアインザッツグルッペの指揮官。アインザッツグルッペの起こす喧騒に巻き込ませれば虚無探しなど目立つことはない。

それほどの存在なのだ彼らは・・・。

 

 

 

 

「こりゃ大変だわ。」

 

ルイズとシエスタがロサイスについたのは、ハガルの月の第三週第四曜日の夕方であった。

アルビオンの治安の大部分を維持しているのは連合軍の指揮下に入ったアルビオン残存軍と傭兵、そしてそれらを動かしているのはアルビオンに戦力を置いているガリア、リクセンブルク、エアルラントだ。

エアルラントの戦力はその大部分を北部に集中させているために、この辺りへの影響力は皆無。ガリアとリクセンブルクで実効支配を進める傍らで、トリステインが食い込もうとしていると言った感じだ。

 

港町ロサイスには物資が枯渇するこの地域に物を売りに来た商人、一山当てようともくろむ山師、治安維持の兵、役人、人探しに来た人など、ハルケギニア中からやってきた人々で溢れていた。

 

「見つかるかしらサイトさん。っきゃ!?」

 

シエスタの前を馬もいないのにすごい速さの鉄の馬車が通り抜け、その後をクーシーと呼ばれる妖犬に乗った妖精兵士達が駆け抜けていく。

 

「だいじょぶかね?お嬢ちゃんたち?」

近くの露店の店主に助け起こされながら声をかけられる。

 

「はい、ありがとうございます。」

「シエスタだいじょぶ?なんなのあいつら!?」

 

「あいつらは、最近きたリクセンブルクの連中だよ。確かに戦争の後だってのに治安はいい方だけどね。楯突く奴らは皆殺し、おっかない連中だよ。お嬢ちゃんたちも関わらない方がいいよ。おっかないおっかない・・・。」

 

そう言って店主は露天に戻って行った。

 

「とりあえず、休めるところを探しましょう。」

「はい、ミス・ヴァリエール。」

 

そう言って二人はガリア艦隊が吹き飛ばした司令部の跡地へ向かって行った。

 

 

 

さらに数日が経過した。

 

キューベルワーゲンを先頭に数台のオペルブリッツ、周囲を狼騎兵で固めた集団が街道を進む。

 

 

助手席の妖精兵に地図を広げさせて、いくつかの村にバツを付ける。

 

「ここで、おしまいですな。シェフィールド女史?」

「そうですわね。」

 

「森の天使だか女神とやらは、どこにいるのだか。」

「そろそろ、着きますわ。中佐さん。」

「ウッド村か・・・、総員降車!」

 

ケイユとシェフィールドは近くの宿屋を貸し切って、拠点として兵たちに調査を命じる。

 

「おや、アルヴィーですか?変わったものをお持ちで?」

「ふふっ、少し違うわ。これは特別製なのよ。」

 

二人は宿屋の食堂でくつろいでいた。

 

時間は経過し、報告を受けた頃には日が沈み始め夕方と呼べる時間帯になっていた。

 

「中佐!そこの雑貨商が裏の奥にある開拓村にそれらしい少女がいるとのことです。」

 

部下の吸血鬼から報告を聞いたケイユは立ち上がり

 

「それは是非とも話を聞かなくては・・・。」

 

さらに、日が落ちた頃。

 

雑貨商の店主だった中年の男性は物言わぬ死体になっていた。

額に丸い穴が開き、その穴から血が流れていた。

 

体中に怪我があった、拷問の後である。

シェフィールドは杖を仕舞った、精神操作系の魔法を使ったからだ。

 

「ふむ、当たりでしたな。」

「えぇ、そのようですわ。」

 

「森の奥の孤児の村の事を、この村の人間はどれだけが知っているのでしょうかね?」

「さぁ、それはわかりませんわ。」

 

「それもそうですな。仕方ないお前たちマスクをしておけ・・・。」

 

ケイユはシェフィールドにガスマスクを渡し、部下たちにもガスマスクの装着を促す。

自身もガスマスクを装着する。

 

「本当は風上に行きたかったが、時間がもったいない。宿屋の二階の屋根裏部屋の窓からやるか。」

 

ケイユは宿屋に戻り、出迎えた宿屋の主人を腰の件で一突きした。

 

「さすがに、今は音を出すわけにはいかないからな。いや、サイレンサーを付ければよかったか。いやいや、持ってこさせる時間が手間か。」

 

ケイユは独り言を言いながら宿屋の屋根裏部屋まで階段を上った。

屋根裏の窓を開けて、そこから見える範囲にいる兵たちがガスマスクを付けているのを確認する。

 

「着け忘れているアホはいないな。水の聖霊よ・・・」

 

ケイユの杖から細かい水粉末が噴射される。水粉末はさらに細かく霧となり空中に消える。

 

「もう少し高いところか、風上でやりたかったのだが・・・。」

 

ケイユは手を軽く振り下ろす。

ケイユの部下たちがウッド村の家々に踏み込んでいく。

 

動物の鳴き声すら聞こえない。人間だって早々生きてはいないだろうが、万全は期した方がいい。

 

時折、単発の銃声が聞こえる。

かろうじて生きている人間もいたようだ。

念のため1時間くらい時間を掛けて確認させる。

住人が全滅したのを確認させながら死体を村の中央の広場に集めさせる。

その様子を見ていた影が森の奥へ消えていったことは誰も気が付けなかった。

酒瓶や煙草を片手にしている部下たちに対して、適当な態度でケイユが命令を出す。

毒霧は既に霧散し人体に影響のない段階まで下がっていた。ケイユも遅れてマスクを外す。

 

「あー、誰か火を、火を掛けてくれ。あいつが最後の仕事にしくじらなければアインザッツグルッペに引き抜いてやったものを・・・、こういうの得意だったし好きだったのになぁ。メンヌヴィルの奴め。」

 

ケイユが様子を伺うと、スっとシェフィールドが姿を見せる。

 

「そろそろ、森の奥の村に行きましょう。仕込みを済ませましたのでお先に・・・。」

 

そう言ってシェフィールドは再び姿を消す。

 

「森の中には小さな孤児たちが慎ましくも懸命に生きていると聞く。いやはや、実に悲しいことだ。虚無なんぞに関わったから死なねばならない。実に残念、悲しいことだ。クックック!」

 

ケイユは弑逆的な嗤いをニンマリと浮かべた。

ケイユは村長宅にあった小瓶の葡萄酒の栓を抜き一気に飲み干し、瓶を投げ捨てる。

 

「アインザッツグルッペ!隊列を組め!森の中には孤児の村がある。ガキばかりだ!少々退屈な任務だった。息抜きは必要だ!」

 

ケイユは部下のMP40短機関銃を受け取り上方に向けて引き金を引いた。

 

「楽しいの鬼ごっこをしようではないか!あ、そうだった!虚無の小娘は生かしておけよ!それ以外は皆殺しだ!ヒャッハー!進め!アインザッツグルッペ!やさしい妖精さんとして子供達と遊ぼうか!人生最後のお遊びをさせてあげよう!クハハハハッハハハハ!!」

 

 

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