ハルケギニアの新生第三帝国   作:公家麻呂

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30話 信仰する物

リクセンブルク大公国護国卿官邸

紫の神官服に高い円筒帽、ハルケギニアの宗教組織の最高権威、聖エイジス三十二世ヴィットーリオ・セレヴァレ。

 

「大公は席を外しておりまして、私が代理として失礼させていただきます。教皇猊下、即位式ぶりです。」

 

その地位は、ハルケギニア王侯貴族の上に君臨する。ヒトラーは彼を上座に迎えた。

 

「即位の際は、多大なる寄付は教会としても感心しておりますよ。」

 

三十二世の後継争いの際にリクセンブルクはヴィットーリオの対立者の支援をしていた為、ヴィットーリオ即位の際は関係修復のために大きな額が動いたのであった。

 

「我々としても猊下には世界の平穏の為、日々ご尽力していただいておりますので幾何かのお力添えをさせていただき光栄です。」

 

教皇の行幸はトリステイン行幸が決まった翌日であった。

この時すでにフィアリア大公はガリアとの外交交渉のために国を発った後であった。

 

アルビオン戦役がひと段落付き、つかの間の平和の庶民たちが謳歌する一方で国の中枢は蠢動していた。

 

「貴国は先代の頃から教会への貢献は多大なものです。以前は貴国の将官が審問官であったことがあるくらい信頼関係もありました。」

 

先代時代の事を織り交ぜることでリクセンブルクに釘を刺そうとしている事をヒトラーは察した。

 

「貴国は大きな力を持っているようですね。争いを収める力をお持ちだ。ですが、我々も形こそ違えども大きな力を持っています。」

 

「虚無・・・ですかな?」

 

「はい。偉大なる始祖ブリミルはその強大なる力を四つに分けました。担い手も四人とし力の均衡を保たせました。ブリミルはこうも言いました。『四つの四が集いし時、我の虚無は目覚めん』」

 

ヒトラーは眉をわずかにひそめる。

 

「猊下、大変失礼ですがリクセンブルクに何をお望みなのです。」

 

「フェアリルは昔から人間に近しい亜人でした。勿論友好的な意味でです。平民たちが読むようなおとぎ話や少々眉唾な戦場譚にはフェアリルが時の英雄や勇者を時に助け時に支えました。フェアリルは勝利を導くなどともいわれていますね。」

 

「猊下、フェアリルが勝利を持ってくるわけではないのです。フェアリルは本能で強者を理解しその庇護の下に入り込む。そういった種族です。無論その対象に十分報いてくれますがね。」

 

「そうですね。彼女たちはまるで奉仕種族です。でも違いますね・・・。彼女たちは既にゴブリン種の奉仕種族がいる。彼女たちは彼らのやり方を器用に真似ているのでしょう。彼女たちは色んな意味で器用な種族ですから・・・。」

 

「・・・・・・・。」

 

「ですが、私が教皇に即位することを当てられなかったように、完ぺきではありません。」

 

ここで、ヴィットーリオは軽く伏し目がちに悲しそうな顔をして続ける。

 

「貴国は、また過ちを犯そうとしています。強い力を持つものは問いに見誤ります。」

 

「力を持つものは道を誤ることがありましょうな。ですが、猊下?猊下、そこまでご理解いただけるのでしたら我々よりもガリアを見た方がいいのでは?信仰無き輩の中に我々も入りかけているようですが、一言言わせて頂けば・・・我々はエルフや翼人が信奉するような精霊も大して信奉しておりませんよ?ですから、人間とエルフが互いに野蛮と見てはいるようですが、我々は別にどちらも野蛮とは思いません。そういった者たちがいるのだなくらいにしか思いませんよ。」

 

ヒトラーは視線をそらさずに見返し、さらに続ける。

 

 

「信仰が厚いわけでもないですが、無いわけでもないのですよ?隣人が信奉する神が大らかで寛大ならばその傘の下にいたいのですよ。猊下・・・我々は弱者なのです。強者たる人間の庇護から抜ける愚は犯しはしませんよ。」人間が強者であり続ける限りは・・・な。

 

 

ヒトラーとヴィットーリオの会談は、穏便に終わりヒトラーはヴィットーリオを馬車まで見送った。

 

「貴方方に始祖ブリミルのご加護を・・・。」

 

ヴィットーリオはそう言ってから馬車に乗り込み、馬車の扉が閉められる。

馬車は賓客用のホテルに向けて走り出し、曲がり角を曲がり姿が見えなくなるまでヒトラーは見送った。

 

「我々が必要な傘は神である必要もないし、只強大であれば何でもよいのです。それに・・・神は死んだよ。猊下・・・、だから我々は造るのです・・・神を。」

 

 

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