ハルケギニアの新生第三帝国   作:公家麻呂

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31話 ヨルムンガンドとレドラー

 

 

ガリア王国サン・マロン。

ガリア空海軍の一大根拠地であるここは鉄塔の様なフネの桟橋、レンガ造りの建物がいくつも立ち並んでいた。

その桟橋に止まるフネの中で、リクセンブルクの飛行船が悪目立ちしていた。その停泊場所から、リクセンブルクのブルーベルが絵が描かれた大公の馬車を先頭に大型の荷馬車が車列を為してサン・マロンの街道を進んでゆく。

 

サン・マロンの衛兵達は息をのんでいた。

妖精の国の王が、ホブゴブリンや獣人の兵士達を連れて街道を抜けていく様子を見ていた。

一人の衛兵がふと口を開く。

 

「エルフの次はフェアリルか。うちらの王様は何を考えているんだろうな。」

「あぁ、この実験農場が出来てからおかしな連中ばかりが来る。」

 

別の衛兵が振り向いた。

サン・マロンの港からも見える幌布に包まれた怪しげな実験農場が見えた。

 

 

 

 

実験農場の入り口で、フィアリアはジョゼフの出迎えを受けた。

 

「大公殿!よくぞこのような場所まで来てくださった!歓迎しますぞ!」

 

そこでジョゼフは両手を広げて歓迎の意を示し、その横に立つ黒髪の女性ミョズニルトンことミューズは頭を下げて出迎えた。

 

「王様、御自らのお出迎え感謝いたしますわ。」

 

ジョゼフはフィアリアの横に並び肩を叩きながら、話しかける。

 

「フィアリア大公に是非見せたいものがあるのだ。モリエール夫人にも見せたのだが反応がつまらなくてなぁ。」

「それはそれは、良いものが見れそうですわね。」

「期待してよいぞ?あれは中々に良いものだ。」

 

ジョゼフとフィアリア達は煮えたぎった鉄が流し込まれた炉や実験器具が怪しげな煙を上げる中を気にした様子もなく進んでいく。

膨大な量の鉄板が積み重なっている。近くの開けた場所には人に近いフォルムのゴーレムが分厚い鉄板の鎧を付けて立っている。この鉄板は表面焼き入れが施されており、鎧そのものも増加装甲の意味合いを持ったフリューテッドアーマーであり、リクセンブルクの技術提供が伺われた。

 

「あら、あれがそのよい物かしら?」

「そうだ。ヨルムンガンドと呼んでいるのだ。」

 

そのヨルムンガンドを取り囲むようにゴーレムが3体現れる。

そのゴーレムも通常の物より良いものだと解る。

 

「西百合花壇騎士団の精鋭が作り上げたスクウェア・クラスのゴーレムだ。弱いわけではないのだぞ?」

 

ジョゼフはその3体を指さした。

3体は大砲を抱えて動き出す。

 

3体の大砲を受けてもヨルムンガンドは物ともしない。さらに何発かは避けている。

すごい機動力と防御力だ。

旋回力はリクセンブルクの戦車以上かもしれない。人型ゆえに道具を使いこなしている。

格闘能力は土ゴーレムを握りつぶし、剣や槍を使いこなす。

土ゴーレムの使っていた大砲を使いこなし、反撃し砲弾を命中させる。

 

「これは、すごいですね。この硬さと言いスピードといい、ゴーレムはおろか粗方の幻獣を圧倒出来ましょう。」

「うむ、余の玩具は遊び甲斐があると言うものだ。」

 

ヨルムンガンドは武器をバリスタに持ち変えて最後の1体を射抜いた。

 

「ジョゼフ王、ヨルムンガンドは何体お造りで?」

 

ジョゼフは顎髭に手を当て勿体ぶって答えた。

「モリエール夫人は10体あればハルケギニアを征服できると言ったが、10体では見栄えが良くない。騎士団を作れる程度・・・50あるいは100、200もありか。」

 

ジョゼフは顎をしゃくり上げてから、フィアリアに促す。

 

「フィアリア大公は余に見上げを持って来てくれておるのだろう?見せてくれないか?」

「あらあら、わかりましたか?ヨルムンガンドをお見せいただいた後じゃあ見劣りしてしまいそうで恥ずかしいですわ。」

「大公の土産が下らん物のはずがあるまい見せてみよ。」

 

フィアリアは小さく笑って部下に指示を出す。

 

「カムラー長官、あれを・・・。」

「っは!」

 

巨大な四つ足のドラゴンの石像が馬車から現れる。

 

「ガーゴイルか?」

「はい。ジョゼフ王、先の騎士たちに命じて・・・そうですね。ガーゴイルを10数体程出していただいてよろしいかしら?」

 

ジョゼフは手を軽く振って西百合騎士団の騎士たちに合図を送る。

騎士たちはガーゴイルを作り出し、ガーゴイル達は剣や槍に弓を持って動き出した。

うち2体程はドラゴンを模した形をしている。フィアリアの土産に対抗意識を持って造ったのだろう。羽のあるガーゴイル達は羽を動かし飛び立ち始める。

それを見て、ミョズニルトンは関心を示した。

 

「あのような、巨大なガーゴイルをあそこまで滑らかに動かすなんて・・・。」

「核に魔導宝珠を使っています。」

 

カムラーは技術部門の長でありフルネームはハンス・カムラー、ナチスの秘密兵器や絶滅収容所の建設などに携わった人物であった。

彼は、ニヤリと口角を釣り上げ西百合騎士団の騎士たちを一瞥し、指示を出す。

 

「やれ!レドラー!」

 

カムラーの声に応じて飛びあがる。レドラーと呼ばれたそれは素早く飛び上がった。

翼と爪に魔力を纏い魔力刃を展開した。公国魔導士が用いる魔力刃と同じものである。

 

レドラーは両翼の魔力刃でガーゴイル達を切り裂いていた。ドラゴンのガーゴイルが放った火球を軽く躱し切り裂く。空の敵を片付けたレドラーは四つの爪で地上のガーゴイル達を破壊していく。もう一匹のドラゴン型のガーゴイルを四つの爪で掻き削り、バラバラに切り刻んだ。

 

「すばらしい、土産だ!フィアリア大公!」

ジョゼフは手を叩いて褒めたたえる。

カムラー長官は、フィアリアとジョゼフにナチ式敬礼で返す。

 

「これをいただけると・・・?」

ミョズニルトンの問いにカムラーはにこやかに答えた。

 

「もちろんですよ、ミョズニルトン女史。貴女方が提供してくださったガーゴイルを中心とした技術は我々の技術と融合し新たなるステージに至りました。これはその御礼です。」

「ジョゼフ王よ。受け取ってくださいな。」

 

カムラーとフィアリアはジョゼフとミョズニルトンに礼を伝える。

ジョゼフはそれに笑顔で応じる。ジョゼフは心底面白そうに応じた。

 

「妖精の女王よ。余がこれからやろうとすることをある程度把握している様だな。その様子だと邪魔をすることはなさそうだ。だが、一緒に舞台に上がってくれそうにないのが残念よ。」

 

ジョゼフの言葉にフィアリアは口元を扇子で隠しつつ妖しく嗤う。

 

「ふふふ、私達は私達で演目の支度がありますの。ですからメインキャストは御遠慮しますわ。ですが、ジョゼフ王の用意された演目もとても面白そうですわ。ですから、花を添える舞台装置やエキストラは差し上げますわ。あら、ご覧になってくださいまし。」

 

フィアリアの言葉に応じてジョゼフは実験場の方を見る。

 

「おぉ!竜騎士ではないか!貴殿のレドラーに余のヨルムンガンドが跨っておる!そうだ!あれを余のフネの周りにおいて奴らに見せつけよう!あれを見たら他の連中は佐々驚くだろうよ!強力なゴーレムの軍団なぞ他国にはない!ハルケギニア初のガーゴイル騎士団の誕生ではないか!!!はははっははははは!!!」

 

 

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