33話 第二次ゲルマニア侵攻
ガリアでのリクセンブルクとの晩餐会が終わり、リクセンブルクの来客がガリアを去りその幾人かが各々の所領に戻った頃。
ガリア王国では東薔薇騎士団団長バッソ・カステルモールを中心とした反乱が発生した。
しかし、この反乱は即日鎮圧され大勢に影響することはなかった。
その数日後、ロマリア教皇の即位三周年記念式典がロマリア・ガリア国境付近の街アクイレイア、リクセンブルクのフィアリア大公の到着が遅れる中、ヴィットーリオ教皇、アンリエッタ女王。そしてルイズとティファニアの二人の聖女がすでにその場にいた。
ヴィットーリオ教皇はルイズの使い魔である才人をワールドゲートで送り出すことで、ルイズに対してヴィットーリオの理想に誓約を誓わせ、ロマリアの駒として手中に収めた。
サイトと別れたその日から、ルイズは1日のほとんどを祈りに捧げた。
そうしていないと心が潰れてしまいそうだった。まるで遠い世界の事のように感じられた。しかし、何度祈ろうとその心は静まらない。
「やっぱり、耐えられそうにないんです。」
ティファニアとアンリエッタに自分の胸の内を吐露する。
彼女は決意した。
「だから、私の中からサイトの記憶を消して欲しいの。」
己のサイトに関する記憶を消すと言う決断を・・・。
一方でリクセンブルクの使節団の到着は遅れていた。フィアリアはガリアから直接アクイレイアへ向かわずリクセンブルクに一度戻ってから向かうと言うギリギリの行程を辿った。
ガリアよりの秘密情報で反乱軍に偽装した両用艦隊がアクイレイアを襲撃すると言う情報を得ていたからであった。
リクセンブルクの使節団はアクイレイアへ向かうためにロマリア領にすでに入っていた。
フィアリアは馬車の席で外を眺めていると、前方から伝令兵が走り護衛隊長に何事かを伝える。護衛隊長は表情を変えて馬車の横で待機している近衛士官のトリエルに伝え扉を開け報告する。
「虎街道にて!ロマリア・ガリア開戦!!」
「そうですか。戦況は?」
「詳細は不明です。」
「トリエル、リクセンブルクに戻りましょう。ヨルムンガンドとレドラーを相手にロマリア軍はどう戦うのでしょうね。」
また、リクセンブルクではフィアリア不在の間の采配を護国卿アドルフ・ヒトラーが握っていた。
「ガリアが動いたか。トリステインやゲルマニアの支援があろうともガリアの勝利は揺るぐまい。あのゴーレム竜騎士団は既存の軍では対処できまい。」
「ですが、ロマリアに寄りそう連中を考えますに、数で押されるのでは?」
ヒトラーの言葉に、軍務卿プディングが問うた。
「その通りだな。軍務卿、ガリアとの協定もある我々も手札を切るべきだろう。」
ヒトラーは周囲の親衛隊員や軍務卿ら軍高官に向けて鋭い視線を向ける。
「護国卿閣下、御命令を・・・陸海軍はいつでも動けます。」
プディング軍務卿はヒトラーの指示が発せられるのを待つ。背の妖精特有の薄羽が僅かに震えた。
ヒトラーは視線の鋭さそのままに周囲をぐるりとひと回りし、壁面のハルケギニアの地図に体を向ける。
ヒトラーは彼らに背を向けたまま、地図を見続けて
やってくるいる。
総統官邸は息詰まるような沈黙に包まれた。
その沈黙が続く中、召集が掛けられていた軍務卿以外の四卿や重臣たちがやってくる。
彼らはこの空気に触れ、黙ったまま各自に用意された席に着く。
彼らはフィアリアより全権を委任されているヒトラーの言葉を待った。
秘書官のオットー・ギュンシェが何事かをヒトラーに耳打ちする。
それを聞いたヒトラーは少しだけ口角を緩めたように見えた。
そして、大きく息を吸ったヒトラーは沈黙の中で声を響かせた。
「先ほど、ゲルマニア兵が国境を侵し我々の領土であるベーメンに侵入した。現在、ベーメン・メーレン保護領総督であるアリエス・パラトエアム男爵が、これに対抗しているとのことだ。ロマリア・ガリアのごたごたで我々の領土をかすめ取ろうとする泥棒に鉄槌を下さねばならん。現時刻を持ってゲルマニアに対し反撃を開始する!!」
ゲルマニアのリクセンブルク侵攻はほぼほぼ言いがかりであった。
ロマリアとの国境とそう遠くない位置にあるベーメン領は、ロマリア救援にいち早く動いた東南部諸侯の先遣隊の行軍の関係上、リクセンブルク領ギリギリを通過する。
ヒトラーはこれを曲解し、宣戦布告とみなしたのであった。
ゲルマニア東南部諸侯とリクセンブルク北西部諸侯が小競り合いを開始した。