ハルケギニアの新生第三帝国   作:公家麻呂

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04話 カプレン平野の戦い

ナチスドイツ軍が流れ着き、数年の月日が流れました。

ナチス武装親衛隊はリヒテンブルク公国の軍事教導顧問となり、公国軍を指導する立場となっていた。半ば強硬的に開発した後装式魔導銃を公国軍正式武装に採用し、一国だけ剣槍の戦場から銃と銃剣の世界に突入しているのです。

 

国家としての規模は周辺の大国に比べれば、見劣りするものでしたが軍備はナチスドイツ軍の知識を吸収し、公国軍は周辺国よりも強いという自覚がありました。

 

そして、遂に賊討伐やオーク鬼、トロール鬼と言った鬼人狩り以外の武装組織、トリステイン王国リクサンジュール候領と戦争の火蓋は切られようとしていたのです。

このハルケギニアにおいて亜人は総じて差別される存在。エルフや吸血鬼などは人間に比べて格段に強い存在であったために、この2種族は別枠として、それ以外の亜人は侮られる存在でもあった。

エルドラド鉱山から採掘された宝石資源や近年主要輸出品となった織物製品の輸出利益を、ロマリアへの献金として計上し、名誉人類として立場を維持していたが、人間からしてみれば、お金を払って媚び諂っている存在。所詮は自分たちより劣った劣等種と言う考えが蔓延していた。故に弱者への横暴が罷り通ったこの時代。リヒテンブルク公国を攻め落とし奴隷化しようと企む者もいた。その代表例がトリステイン王国リクサンジュール候ルロンと言う人物であった。

 

先のゲルマニア王国とトリステイン王国の戦いは両国を疲弊させ、一時的に出会ったとしても、諸侯の独断専行を許した。貴族諸侯の宗主としての統制力を失っていた時期であり、

豊富な資源や財源を持つ、リヒテンブルク公国を攻め鉱山地域などの価値のある地域を割譲させようと、リクサンジュール候ルロンは領境に兵を集め演習を行うなど挑発行為と小競り合いを繰り返し、何度目かの小競り合いが遂に両勢力の衝突へと傾いた。

 

これに仲裁すべきであったトリステイン王国は、リクサンジュール候が勝利した際の打算的収入と天秤にかけて静観。リクサンジュール候は自信の国内派閥の影響下貴族達にも兵を供出させたのです。

その侵攻軍の兵力、総数6800。対するリヒテンブルク公国、騎士爵を中心とする公国近衛軍1000とナチスドイツ軍1300(歩兵部隊)でした。

 

また、妖精と言う種族は全員飛べる上に魔法が使えるので有利に思うかもしれませんが、妖精が行使する魔法は攻撃魔法が少なく、どちらかと言えばコモンマジックの様な攻撃性の低い汎用的な魔法の方が得意で、人間で言うならドットメイジの及第点と言った程度でしかないのです。人間の平民と比べれば、それはこちらに軍配が上がるでしょうが平民兵3~5=妖精兵1と考えていただければいいでしょう。数で押されると負けると言うことです。

要するにそこまで強くはないと言うことです。

今までは、損害覚悟で領内に引き込んで地の利を生かして戦っていましたが、今回はそのようなことはせずに、領境で迎え撃ちます。

ナチスドイツの技術支援もあって、彼らにとっては原始的らしいのですが私たち妖精も航空魔導士としての装備を携え、近代化した戦闘を行えるのです。

少なくても、ドイツの軍事顧問はこの戦いは有利のうちに勝てると予想しているそうです。

 

ただし、今回は一部戦力は秘匿し続けると言うことで、武装親衛隊の機甲部隊や砲兵部隊は本拠に残しています。

 

領堺の守備隊を蹴散らしたリュクサンジュール候軍は、リクセンブルク公国直轄領カプレン郡の平野にて、公直轄の近衛軍とナチス軍事教導団の部隊と鉢合わせる。

 

敵リクサンジュール候領軍から見える範囲では、SS歩兵や公国歩兵、公国騎兵、SS航空魔導士と公国航空魔導士、少数の公国大砲隊が確認されているでしょう。

 

即席の土塁や瓦礫などで作ったバリケード、もしくは大盾兵の後ろに隠れて双方の歩兵が隠れてにらみ合いが続いている。

 

「公主様、全部隊所定の配置についています。」

 

ヒトラーの代理として私に随行ているハインリヒ・ミュラー親衛隊大将が、状況を知らせてくる。小声で何かを話している伝令兵にミュラー大将さんは指示を出している。

 

「リヒテンブルク公、歩兵砲及び迫撃砲も担当歩兵より配置についたとのことです。」

 

今までは、公国内諸侯の領民兵や自警団の寄せ集めを相手にして徐々に前線を押し上げていたリクサンジュール候軍、装備も見た目も全く違う公国常備軍が防護陣地を形成して迎え撃とうとしているのを目にし、進軍を停止リクサンジュール候軍と睨み合いをすることに・・・。

 

「公、公都へ援軍の要請を出すべきです。」

 

銃VS銃に関してはこちらに軍配が上がるし、白兵戦に至る前に敵の大半を倒せる自信もある。ミュラーが警戒しているのは人間が使う系統魔法、少なくても諸外国で流通しているマスケット銃や火縄銃を系統魔法は圧倒している。

公国軍の新式後装式銃やドイツ軍の小銃では、敵個々人の技量によっては系統魔法に威力や射程で劣ってしまうのではと言う不安がたびたび上がっていました。

ですが・・・。

 

「不要です。まだ途上とは言え軍は、SSの技術を吸収しています。砲兵はいませんが歩兵の旧式砲や携行砲で十分に敵には脅威を与えるはずですわ。突撃してくる敵の第一陣を粉砕し、そのままの勢いで敵陣を破壊できるはずです!国家社会主義の軍隊は、あのような有象無象など敵ではないはずです!」

 

全く、アドルフの軍隊の司令官のくせに弱腰とは腑抜けています。

我ら指導部に導かれた国家社会主義の軍隊は無敵です!

 

「了解しました。リヒテンブルク公、車両は後ろに下げますがよろしいでしょうか?」

「輸送車両を戦場においておくわけにもいきませんね。下げておきましょう。」

 

私達は敵の騎兵を片付けるために、敵にあえて先手を譲る戦術を選択した。

 

「公は兵力の出し惜しみをしておられる。敵兵など皆殺しにすればいいではないですか?」

「ハインリヒ大将、敵は弱卒なれど微細。全部潰すのは無理でしょう。ですが、たくさん殺すことに異存はありませんよ?今はまだ時期にあらず、ですよ。」

 

 

 

 

 

 

 

「突撃!」

「「「「「うわぁああああああ!!!」」」」」

 

騎馬に跨ったリュクサンジュール候軍の指揮官が突撃命令を下す。

リュクサンジュール候軍の騎兵たちを先頭集団に剣や槍で武装した歩兵達が勢いに任せてリクセンブルク公軍の陣に食い込もうとする。

さらにその後ろには弓兵部隊が有効射程まで移動し始めていた。

 

野戦で2倍以上の差、通常なら勝敗は見えている。通常なら・・・。

 

 

私は口角を歪めて嗤う。

 

「来た来た。これが始まり・・・リュクサンジュールは元々、500年前はリクセンブルク領だったのよ。もう、そろそろ返してもらいますよ。」

 

 

突撃してくる敵軍に機銃や小銃と言った銃火器の弾丸が、リュクサンジュールの兵士達を死体へと変えていく。

 

「あー、失礼しました。砲兵や機甲部隊は不要でしたな。」

「いえ。」

 

魔法使いは確かにいたが、辺境の領軍に強力なメイジはいなかった。

極稀に一矢報いるのはいたが、極稀でした。戦局に影響なしです。

ミュラーさんも、敵を過大評価しすぎたと恥ずかし気に謝ってきました。

 

パン!パパパン!と乾いた銃声。

壊滅した敵の第一陣。

 

「2倍程度の数ならば、覆せるようですな。公主様、攻勢に出ましょう。敵の数はまだ同数か少し多い程度でしょうが、掃討戦に移行しても良さそうです。」

 

自身の想定以上に事態が好転し、欲が出てしまいましたが、こういう状況なら仕方のないことでしょう。

 

「そうですね。欲を言えば、リュクサンジュール候の首が欲しいのですが・・・。」

 

私の言葉を聞いて、ミュラー大将さんは「おや?」とでも言いたげな表情を浮かべて私に話しかけてきます。

 

「公主様、強気ですね。でしたら、このままリュクサンジュール候領に攻め入りましょうか。公都に連絡して領内で徴兵すれば、統治には間に合うと思いますが?」

「そうですねぇ。たぶん、目の前のあれがリュクサンジュール候軍の中核戦力でしょうし、あれを蹴散らしてリュクサンジュール領に攻め入ることも可能ですよね。」

 

私の問いにミュラー大将さんは、丁寧に答えてくれます。

 

「現有戦力で考えるのならば、領堺の村々や関所などの軍事拠点の制圧ならば小隊や中隊に分ければ可能ですよ。一気に全土まで攻めあがるのも可能ですが、補給線を切られる可能性もあるので、お勧めはしません。」

 

私は少し考えてから、ミュラー大将さんに自分の意見を述べます。

 

「ミュラー大将。全土とまでは望みませんが、それなりに大きい街を制圧して侵攻拠点にしたいですね。」

 

ミュラー大将さんは「そうですか」と答えてから、リュクサンジュール候領の地図を広げます。偵察活動も十全にやっていたようですね。

 

「でしたら、このままマルロン地域へ攻め上がり領都マルロンを占領し、境界線が重なるバストーニャ地域の国境守備隊に周辺の村々の領民を徴兵させたものを加えて攻め上らせることをお勧めします。」

 

ミュラー大将さんは、私の方を見て僅かばかりに強めの視線を向ける。

 

「確認ですが、公主様はリュクサンジュール候領を公国にお加えになるおつもりですか?それとも、トリステイン王国に返還するおつもりですか?それによって、少々手順が変わりますので・・・。」

 

今のところ、先の戦争の傷が癒えないトリステイン王国は弱腰・・・。小国とは言えそれなりに強いリクセンブルク公国と戦争する気はない様子。だけど、貴族領まるごと攻め落とされて王政府が動くか動かないかは賭けになる。

 

「先に戦闘をしてしまっているけど、アドルフが話してくれたあれに似ているわね。」

 

私は、妖しく笑って見せる。

ミュラー大将さんは、愛想笑いで返してくる。

 

「あぁ、ラインラントですか。・・・まぁ、あの時よりは状況は良いですよ。」

 

妖精の士官が入ってくる。

 

「敵陣の制圧が完了しました!掃討戦に移行してもよろしいですか?」

 

私の中で次の行動は決まっていた。私は、振り返って士官達に命じる。

 

「掃討戦は不要。周辺の村々に刈り取り自由と伝えて、関所の兵と好きにやらせておきなさい。我々はそのまま、兵を進めます。リュクサンジュール候領に進駐します!」

 

軍事顧問のナチス士官と公国の士官達は、直立の姿勢で右手をピンと張り、一旦胸の位置で水平に構えてから、掌を下に向けた状態で腕を斜め上に突き出す。

 

「「「「「ジークヘルツォーギン!!リクセンブルク!!」」」」」

 

 

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