ハルケギニアの新生第三帝国   作:公家麻呂

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08話 血と土と夜と霧

ヒトラーの稲刈り、諸侯統一戦争が終わり。独立諸侯の大半がリクセンブルク公国の下へ組み込まれていった。

南部トリアー領を中心とした南部アンシュルス都市国家群を吸収し、東部のマジャルザーク領やトランシルダキア領を公国直轄地として組み込んだ。ベーレン領とメーレン領は保護領として間接統治をしている。

また、護国卿アドルフ・ヒトラーにNo2の座を譲ったマリー・ド・ルクセンシュタインは現ルクセンシュタイン領にリュクサンジュール領とプルセニド領を所領に加えた。

そして、リクセンブルクの国政を一気に担うこととなった。護国卿アドルフ・ヒトラーは公主フィアリアから、褒賞を何がよいか聞かれた際に、国内のいくつかの小領地を求めそれを別荘とした。ヒトラー自身は公都リクセンブルクに留まり執務を継続している。

 

護国卿アドルフ・ヒトラーは、就任直後に任免権を発動し組織を改編した。

武装親衛隊は第三帝国軍政教導顧問団と呼称を改め、ハインリヒ・ミュラーは公国軍参謀と第三帝国顧問団全体と政治の長官に、軍事の長としてヴィルヘルム・モーンケ親衛隊少将が就任した。

ターニャ・デグレチャフ准将も念願の後方事務職としてヒトラー、ミュラー、モーンケ他重要役職者の下で執務をこなすことが増えた。

 

また、熱心なるナチズム信者であるマリー・ド・ルクセンシュタインは、内務卿の管轄から独立した司法保安部門の長、司法卿に就任した。彼女は司法局、政治警察、刑事警察、秩序警察を統括し、政治警察の一部局である秘密警察。通称ゲシュタポを組織した。

 

軍務卿プディング・カスターと財務卿エリザベス・パブリーナ、内務卿メアリー・パールは留任した。ただし、内務卿の管轄からいくつかの部門が独立し、その権限はだいぶ減少した。

そして、外務卿ヨーク・グリーナは解任、後任にマリーの推薦でリップル・ドロップス男爵が就任した。そして、内務卿から分離独立した国家宣伝と国民指導、文化・芸術・報道方面の統制を担う文化啓蒙卿が新設されアストライア・アイシス男爵が就任した。

 

 

リヒテンブルク公国の各卿は、ヒトラーの護国卿就任を期にナチズム信奉者及び好意的なもの達で固められ今後40年以上に渡るヒトラー体制を形成した。

ヒトラーは、超長期的な首都改造計画を発表、これに着手した。そして、占領統治政策において、フェアリル及びホブゴブリン優遇政策を採用した。

 

通称、土と血の法。

リクセンブルク公国の土地(土)をフェアリル及び奉仕種族(血)民衆の血の源として保全するとして、占領地の農民たちから農地を没収し、リクセンブルク公国農民へ再配分するというものであった。一応占領地の農民は小作農としての道はあったが、土地持ちの農場主たちの反発は大きかった。

 

そして、司法卿マリー・ド・ルクセンシュタインが動く。

 

「国内の不穏分子をすみやかに拘束しなさい。国外に出すことは絶対にさせてはなりません!」

 

秘密警察ゲシュタポを中心とする警察組織は彼女の指示を受けて、国内の不穏分子の逮捕拘束が行われ、それは割と早期に終わる。公都に在住する前外務卿ヨークを中心とした旧体制派は逮捕された。家族や知人と言った関係者には情報は一切開示されなかった。収監者は密かに連行され、それに続き家族や親しい間柄の人物が、まるで夜霧のごとく跡形も無く消え去った。

 

配下の保安警察より、占領地のレジスタンスや土と血の法に従わない地主たちに対して、敵性分子狩り集団アインザッツグルッペを占領地の反乱分子粛清に投入した。

しかし、そのまま人狩りを行えば周辺国からの非難は必至だ。故に彼らは利用することにしたのだ。新教徒狩りを・・・。

当時ロマリアは新教徒の台頭によって苦境に立たされていた。ロマリアは新教徒狩りを各国に推奨していた。リクセンブルク公国はこれに便乗し、不穏分子を新教徒や共和主義者に仕立て上げ粛清していった。

 

彼らの粛清対象は、額面通りの新教徒と共和主義者はもちろんの事、国家政策に反抗的な地主や亡国の旧臣達が含まれており、それらをまとめて粛清していった。

 

 

 

指揮官であるフランツ・ケイユが部下の兵士達に不穏分子を、兵士によって壁に並ばせられる。

 

「うわぁあああ!!」

 

一人の不穏分子が兵士を振り払い逃げだす。

ケイユは腰のホルスターから素早く拳銃を抜き引き金を引く。

不穏分子は後頭部を撃ち抜かれ脳漿を散らして倒れる。

 

「まったく、手こずらせる。早く並ばせろ。」

 

先ほどよりも乱暴に、小突きながら不穏分子たちを並ばせる。

それを確認したケイユは号令をかける。

 

「弓構え!狙え!!!」

 

アインザッツグルッペンの兵士達が、クロスボウのハンドルを廻し弦を引き絞る。

 

「射れ!!」

 

ケイユの号令で、クロスボウの引き金が引かれる。

クロスボウ本体から矢が放たれ、クロスボウの鏃が不穏分子の頭蓋を食い破る。中には貫通し突き抜ける者もいた。

アインザッツグルッペンの兵士達は粛々と不穏分子たちを処刑していった。

 

「ケイユ少佐。」

「新教徒として、火を放って埋めておきなさい。」

 

アインザッツグルッペンは国家の敵性分子を刈り取る掃討部隊である。

しかし、その敵性分子に新教徒と言う罪を重ね掛けて、新教徒として処刑し、ロマリアへ媚を売ったのだ。ケイユ少佐は異端審問官の資格を持ち、異端狩り部隊の側面も持っていた。

 

穴に死体を埋めて、アインザッツグルッペンの兵士達は隊列を組む。

ケイユが乗るキューベルワーゲンを先頭に、妖犬に騎乗した騎兵が続く。

 

「諸君、次だ。」

 

 

 

 

都市計画が進む中、司法局の建物の一室では司法卿マリー・ド・ルクセンシュタインが判を押し、書類を裁可していた。

 

「ルクセンシュタイン司法卿、顧問団のハインリヒ・ミュラー様がいらっしゃっています。」

「丁重に、お通ししなさい。」

 

秘書官にミュラーを案内するようにを告げ、マリーは鏡の前でダークグレーの背広とミニスカートに皺がないかを確認し、軽く身嗜みを整える。

身嗜みを整え、執務机の前へ移動する。ノックをする音が聞こえ、入室の許可を求める声が聞こえ、それに許可を与えると扉は開き、ミュラーが入ってくる。

 

「ハイル・リクセンブルク。」

「えぇ、ハイル・リクセンブルク。」

 

挨拶も手短に、秘書官が運んできたコーヒーを片手に、対面式のソファーにコーヒーテーブルを挟んで向かい合うように座り、二人は仕事の話を始める。

 

「裏切り者のヨークは粛清したわ。今頃、肉骨粉になって畑の肥料よ。そっちは?」

「吸血鬼化を拒否した旧国防海軍の人間は海の底。恥ずかしながら人間でいたい等と言う妄言を吐いた奴が親衛隊からも出たのは恥だよ。連中には地獄まで引率してやったがな。」

 

書類数枚をテーブルに広げての相談会だ。ミュラーはナチスドイツ時代、ゲシュタポ長官であり、その経験を活かし顧問の立場でマリーにアドバイスをしていた。

 

「ユダヤ人、反ナチ分子、反独分子、エホバの証人、政治的カトリック、同性愛者、ソ連捕虜、常習的犯罪者、浮浪者、ロマ、労働忌避者、以前の世界では多くの人間を浄化した。彼らの中にはカトリックや浮浪者、労働忌避者に温情を与えようとする者もいて、バチカンや国際連盟などが外から口出しをしたが、こっちの世界では一纏めに新教徒と共和主義者で流れ作業だ。宗教権威が推奨したのは実にありがたい話だ。」

「えぇ、そうね。ヨークは共和主義者にしたわ。少々、危ない橋を渡ることにはなったけど。

大貴族階級でも慈悲も容赦もなく処刑した事に、ロマリアの教皇陛下はご満悦の様よ。信心深さに感心ってね。まぁ、私達の忠誠心のおかげで適当に誤魔化すことが出来なくなった。アルビオン王は苦渋の決断をすることになったみたいだけど。」

 

リヒテンブルク公国の積極的な新教徒狩りは、他国の新教徒狩り、異端狩りを一層進めることとなった。その過程で、エルフを妾に抱えていたアルビオン王弟サウスゴーダ大公モードをアルビオン王ジェームスは処刑した。掘り下げると、ジェームス国王は最初外交や金の力で解決を図ったが、類似事件(外務卿ヨークの共和主義者疑惑)の起こったリヒテンブルク公国が即座に該当者達を貴賤問わず処刑したために、アルビオン王国とリヒテンブルク公国二国がロマリアの教皇庁で比較され、アルビオンにロマリアから圧力がかかったと言う話である。

同じ異端と言う意味では、吸血鬼化した第三帝国武装親衛隊も同じであるが、正規の上納金と非正規な賄賂。現地枢機卿への懐柔工作、金額の大小が分かれ道だったと言うことだ。

 

アルビオンはロマリアからの評価が下がり、逆にリクセンブルクの評価は上がり、司法局の

アインザッツグルッペを中心とした実働部隊の指揮官の多くに、異端審問官資格が与えられた。

 

「それは、連中の問題だ。ガリアもゲルマニアもトリステインも多かれ少なかれ何かあるだろうさ。だが、我々の知ったことではない。」

「そうね。で、司法局つながりでトリステインの高等法院院長リッシュモンのお目付け役をして欲しいんですって、ロマリアもだいぶ私たちを信頼してくださっているわ。」

 

ミュラーは書類に目を通しながら、受け答えをする。

 

「あぁ、ダングルテールのことか。移民であり、異端であり独立志向が強い。それでいて、これと言った軍事力はない。殺されるためにいるような連中。」

「ロマリアは、新教徒に関しては神経質なのよね。ここはやっぱりアインザッツグルッペかしら?」

 

マリーの問いに、ミュラーは頭の中でアインザッツグルッペのケイユ少佐が、ロマリア好みの処刑方法を忖度してくれるだろうと想像してから答える。

 

「ケイユ少佐なら、安心だろう。向こうの掃除係とうまくやってくれるさ。」

「その辺りは心配してないわ。我が国の兵がトリステイン王国の領土に入ること了承するかしら?」

 

マリーの不安を聞いたミュラーは、彼女の不安を消すために、その辺りのことを説明する。

 

「非公式でいいだろう。ロマリアには話を付けておく。ロマリアもそこまでの無茶は言うまい。トリステインの方はリッシュモン院長の仕事、あの男は抜け目ない。最低でも事が風化するまでは隠し通すだろう。記録なんて残すわけがない、10年もすれば知らぬ存ぜぬだよ。」

「それもそうね。」

 

マリーが、その慎ましくも形の良い胸を撫で下ろすような仕草をする。

 

「ありがとう。ロマリアへは任せても?」

「構わないさ。ところで、今夜予定はあるかな?」

 

マリーは執務机の上に羽ペンと並んで置いてあった手帳を確認する。

 

「今夜?・・・空いてるわよ。」

「公城の近くの料亭で今夜、どうかね?」

「喜んでお受けしますわ。」

 

 

 

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