☆9 鳥籠のカナリア様 倉崎はあるちゅ〜様 だいたい四人の公王様 Zeru様 峰風様 メロノス様
高評価ありがとうございます!
前回の更新で9月11日の日間ランキングで10位に乗ったそうです。
正直ここまで行くとは思ってませんでしたが応援ありがとうございます!
四年前、友希那さんの父親、友哉さんが音楽を辞めた事を姉貴から聞いた。
理由は自分で作曲した音楽をアレンジされた結果、《Future world fes》と言う音楽の頂点を決めるフェスでその曲でファンが離れ、その批判に耐えられなくなってバンドを辞めたらしい
それから友希那さんの音楽に対する取り組み方と性格が変わった。それまでは楽しそうに歌っていたのに苦しそうな顔で歌うようになったり、静かだったけど優しい性格から冷たくて近寄りがたい性格になった。
俺はそれが嫌だった。表情が読みにくくても楽しそうに歌っていて姉貴と楽しそうに音楽をしていた彼女が好きだったのに、真逆の方へ向かおうとする彼女が嫌いになる一番の理由だった。
「友希那さん、少しいいですか…?」
「…無駄な時間を取らせないでほしいのだけど、何か用かしら?」
「また…あの頃みたいに一緒に」
今思えば言い方が悪かったかもしれない
「今はもうあの頃じゃない…!それがわからないなら貴方一人で勝手にしてればいいわ、私は貴方に構ってる場合じゃないの」
「ごめんなさい…もう、いいです…」
「無駄な時間にさせないで、と言ったばかりなのだけど…はぁ、もういいでしょう」
胸が痛くなった。多分、俺にはどうにかできる物じゃない。そうやって諦めてしまって、孤独に歌う彼女の背中を見送る事しかできなかった。
ほぼ毎日スタジオに行って練習していた彼女を追って話せば昔の彼女に戻るかもしれないと思っていた。
でも話し掛ける前に、何も言えずに家に帰る事が大半だ。
姉貴に相談した事もあった。けど姉貴は友希那さんの味方で、相談しても大した意味は無かったし、なんか腹が立っただけだった。
そんな状態で中学生になってからは友希那さんと揉める事も多くなったり姉貴が彼女について行けなくなってベースを一度辞めた事もあって彼女を嫌いになったのだ。
その光景が薄れだして、いつもの天井が見えた。夢か
「あー…クソ、変な事を思い出した」
最悪だ。あんな事の後に昔の事を夢で思い出すなんてつくづく運がないと思う。最近あんまり寝れてないのに余計疲れが抜けない。
とりあえず身体を起こして学校に行く支度をする。今日の朝食は母さんが作る筈だからおとなしくリビングのソファーで待つことにした。
「そもそもエンカウント率高過ぎるだろ」
「いや、何の話よ」
独り言を母さんに聞かれていたらしい
「あー…最近妙に友希那さんと鉢合わせする」
「ふーん、最近仲悪いのに不幸ね」
物凄く雑な母である。
「不幸て…確かにそうだけどさ」
「そもそもカズと友希那ちゃんの仲が悪かろうと知ったこっちゃないわよ。それはそうと今日はアンタと友希那ちゃん二人で過ごしてもらうから」
いや、なんてタイミングで何言ってくれてるの?この悪魔
「ツッコミどころが多過ぎるから一つずつ聞く…何で!?姉貴は!?」
父さんと母さんは家を空ける事は少なくないからわかるけど、姉貴が帰ってこない理由がわからない。
「リサは友達の家でやる事があるって言ってたわね。帰って来るのはアンタは寝てる時間になるとか」
そんな時間まで何するつもりだよ…明日も普通に学校だろうに
「じゃあ次、何故友希那さんが出てくるんだよ…」
そもそも仲悪いのわかっててそうするって…この親、性格最悪か?
「湊さん家も朝早くから親が家を空けるからよ」
「別に一人で留守番させときゃ良いだろ。ガキじゃあるまいし…」
「いやー…私もそう思ったけどあの友希那ちゃんが一人で料理できると思えないし」
「…それでうちも朝早いから料理するやつが居ないと?」
「その通りよ」
母さんがしてやったりみたいな顔をしているあたりわざだという事がわかる、何が知ったこっちゃないんだか…
「俺、あの人の面倒見るの嫌なんだけど」
「諦めなさい、もうそういう話になってるんだから」
えぇー…適当に外食させれば良いだろ。そもそも今日オフ会に誘われてるから帰るの遅くなるし…
◇ ◇ ◇
「やべぇってやべぇってマジヤバい!」
下校時にゲリラ豪雨が発生して傘を持っていなかった俺はずぶ濡れになって走っていた。途中でタオルや着替え、それに傘を買って着替えてから、待ち合わせに指定されてた。ファミレスで待っていると見覚えのある女の子二人が近づいてきた。あことRoseliaのキーボードの白金燐子だ。
あことは面識があるせいか彼女はかなり驚いていた。
「カズさん何でここに居るんですか!」
「NFOのオフ会なんだけど?」
「あこ達もオフ会なんですけど、もしかしてカズさんって!」
「あー…HNイケナシエルです」
「「えぇーーー!?」」
二人して驚いていた。まぁ…そりゃそうかあこの方は面識あるけど白金さんの方は多分一方的に知っている位だろうし
「…まさか、あのリサさんの弟がNFOをやっているだなんて」
「まぁ…とりあえず座りましょうよ」
二人が向かい側の席に座ってから軽い自己紹介をした。
「世間狭すぎない?ネトゲのオフ会で全員地元が一緒で一応接点があったとか」
「…あの、一つ聞きたい事があるんですけど、良いですか?」
白金さんがちょこんと手を挙げた。
「姉貴の事ですかね?」
「…あ、そっちの方じゃなくて友希那さんとの事なんですけど…」
そっちか…あんまり話したくはないんだけどな…
「あこも気になります!」
「そう言われてもな…幼馴染だけど仲悪いし会うと喧嘩ばかりするだけだし…」
そんなの向こうも知ってるだろうしなぁ…
「でも、友希那さんもリサ姉も話してくれないし…あこ達それがわからずにRoseliaが解散なんて嫌だよ」
「それ、俺関係あるの?」
なんとなく落ちは読めてるけど、話を逸らすために乗っておくけど
「…今のRoseliaの状況ってわかりますか?」
「解散しかけてるって言うのは姉貴から聞きましたけど…それ以外は特に」
後は昨日会った、友希那さんが何か悩んでそうではあったけど
「Roseliaの雰囲気が悪くなったのってカズさんの話題で友希那さんと紗夜さんが言い合いになったのがきっかけで…」
続く話を聞くとそこから徐々に雰囲気が悪くなった時に、友希那さんが一人だけフェスのオファーを受けていた事で喧嘩別れの様な状態になってしまっているらしい。
「なるほどな…でも、これって俺の事がわかっても変わらないだろ」
「…確かに…逆にカズ君はどうすれば良いと思いますか?」
Roseliaの事なんてあのライブ位しか知らないしな…メンバーの事も紗夜さんと白金さんの事は特に知らないし
「まず、二人がどうしたいか。じゃないですかね…」
そこがわからないとアドバイスのしようがない。
「あこはRoseliaでまた集まって音楽がしたい!」
「…私は、私を変えてくれたあの人達ともっと音楽をやりたいです」
じゃあそうすれば良い。って言うのは違うよなぁ…根本的な解決になってないし。言葉でどうにかなるなら解散間近になんてなってないだろうし
「それを何か別の形で伝える…とか?」
「…っ!それだ!それだよ!カズさん!」
急に立ち上がって俺を指さすあこ、周りの人がこっちガン見してるから止めなさい。
「いや…何が?」
「あこがRoseliaに入る時にりんりんが言ってくれた事!」
「あ…音で伝える…それなら」
白金さんがスマホを取り出して一つの映像を見せてくれた。
その映像はRoseliaの全員がスタジオで演奏している映像だった。
映像の中だと姉貴は今までに無い位楽しそうだった。
他のメンバーも良い顔をしていた。あの友希那さんさえも
「これをRoseliaの皆に!」
何か解決しそうで何よりだ…
「じゃ、お悩み相談は終わったみたいだし俺は帰るとするか」
オフ会と称して来たもののRoseliaの話をされても困るし、逃げるが吉だ。
「あ、カズさん待ってくださいよ!まだ友希那さんとの事聞いてないです!」
こっそりお金を出して帰ろうとしたらあこに止められた。やっぱ覚えてたか…
「はぁ…話せって言ってもな…あんまり気持ちの良い話じゃないし…俺から話す事じゃない気が…」
「でも気になりますよー!」
これは…話さないと帰らせてくれなさそうだな…
「俺は…友希那さんの事が嫌いな事は確かだよ…四年前位からだけど…」
「…何で四年前?」
そういえば、裕司以外にこの話をするのは初めてか
「元々姉貴は友希那さんの歌に合わせる為にベースをやってたんだけど友希那さんが中学生になってから色々あってベース辞めた、って言うのが丁度その頃。後は友希那さんの性格が変わったのもそれ位の時期」
そう言うと二人が若干引いていた。あこに関してはお姉ちゃん居るからわかると思ったんだけどな。
「あの…それ友希那さんが嫌いになった理由、ですよね?」
「そうだけど?」
「…じゃあ今井さん…リサさんがベースを辞めたから…でも、今はRoseliaでベースやって…」
白金さんが良くない事に気づこうとしていた。止めてくれ、その話に持っていかれたら俺は
「どうしたのりんりん?」
「…何でもないよ、あこちゃん。質問を変えますけど…友希那さんって元はどんな人、だったんですか?」
絶対感づかれてるだろ。これ…変な汗がさっきから止まらないのは気のせいだと思いたい。
「…それは…昔はもっと歌う事を楽しんでいたというか…もっと優しい人だったというか…」
「えー?友希那さんって昔からクールな感じじゃなかったんですか?」
「別に…そういう感じじゃなかったと思うけど…」
あの頃の友希那さんは…いや、あの頃は姉貴も友希那さんも友哉さんも皆楽しそうだったな…
「…っ」
「…どうかしましたか?」
また一つ嫌な事を思い出した。違う、俺は彼女が嫌いなんだ。あの頃を否定した。あの人が!
「いや、何でも…ちょっと冷や汗が止まらないかなーって位で…あと、雨直撃して来たから…もしかしたら体調悪くなってきたかも」
若干服が汗ばむくらいには汗が止まらない。というか何か空調効きすぎじゃね?寒いんだけど?
「体調悪いのに来たんですか!?というかそれなら今日は中止とか連絡してくれれば良かったのに!」
「いや、今日家に帰りたくないし…」
家に帰ったらあの人の世話しないといけないのは物凄く嫌だ。裕司の面倒を見た方がマシだ。
「…そんな事言ってる場合じゃないと、思うんですけど…本当に汗凄いですし…帰った方が良いと思います」
やめろ、体調悪いって自覚が芽生えるとそっから一気に崩れるんだから…あー、ボーっとしてきた。
「じゃ、じゃあお言葉に甘えて…お金置いて行きますね…」
千円札を置いてファミレスから出るまではまだ普通に歩けたけど、そこから若干ふらつきながら歩いて帰ると家の前に友希那さんが居た。彼女の顔を見た途端に緊張で体調不良が気にならなくなった。昨日あんな事になったのになんでこうなるかな。
「遅かったわね…」
「何してようが俺の勝手でしょう、どっかのボーカルさんみたいに」
「…良いから、鍵を開けなさい」
乗ってこないか、何かあったんだろうか
「言わなくても開ける」
ったく、一々イラつく言い方をする。
玄関の鍵を開けてとりあえず荷物を置いてリビングに降りた。
「勝手にくつろいでて、俺の部屋に入らなきゃ何してても良いから」
「言われなくても入らないわよ…」
雨で濡れた服を洗濯する為に、洗面所の洗濯機に車を詰め込んでいると寒気が増してきた。多分気のせい
「シャワー、浴びておくか…」
給湯器のスイッチをオンにして別の着替えを部屋から取ってきてから洗面所に行こうとした時視界が揺らいだ。
「…いって」
「カズ…?」
結構下の段からだけど階段で転んだ。立ち上がろうとしても何か力が入らない。
友希那さんが近くによって来て、肩を揺らしてきた。
「…何でもない」
「顔色が悪いように見えるのだけど?」
「…気のせいだろ」
何とか立ち上がってまた洗面所に足を入れた時また転んだ。今度は立ち上がれそうにないかもしれない
「…っ!?カズ!」
やたらドタバタと音を立てて友希那さんが近づいて来るのはわかったけどそこで意識が途切れた。
次回第一章最終回の予定です。
第一章が終わったら番外編をやるつもりなので感想や私の活動報告にリクエスト箱が置いてあるのでリクエストがありましたら、そちらにお願いします。
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