Bumpy ride heart
何故か周辺地域に女子校ばっかりなせいで、電車で数十分掛けて行く筈の所をとある理由で徒歩か自転車で来てるよ、アホか。
こうなった理由は入学当日に我が家の暴君、もとい覇王の母から言った事が原因だった。
「アンタ、電車禁止で通学ね」
「え? マジ?」
「マジよ、その代わり月5万は小遣いをくれてやるわ」
バイトしなくてよくなるな……ありだな
「マジ?」
「え、その話乗るの?」
姉貴に心配された、まぁ、運動不足解消されそうだし大丈夫だろ。
「母さん、そのお金は誰が出すのかな?」
「そりゃ勿論、父さんよ」
「だよね。うん、知ってた。なぁカズよく考えてみろ? あの母さんの言う事だぞ」
お金を出すのが嫌なのか心配で言ってくれてるのか……だがしかし、自分の妻をあのとか言うのか父さんよ。
「確かに、お前は今井家の中の蛙だから「カズ」って名付ける母さんだけども」
「え、そんな理由だったの?」
マジか……と母の方を見るとケロっとした顔をしていた。
「忘れた」
「こ、い、つぅ……まぁいいや、やるよ」
この後死ぬほど後悔した。
そんな感じで高校生活、初見電車禁止縛りが始まってしまった。
初日は大丈夫だろうと高を括っていたが登り坂がものすごく多いし信号待ちも多いしでものすごく後悔したから母に敗北宣言しようとしたら。
「お前が電車禁止を辞めるのは勝手よ。けどそうなった場合、誰が代わりに電車禁止をすると思う?」
「代わりとかあんの?」
「父さんよ。父さんは今回の件でお前に負い目を感じているはずよ。だからお前がやらなきゃ、自分から手を挙げるでしょう。けど、今の父さんじゃ年波には勝てない。そうなれば、会社の連中はよってたかって遅刻する父さんを責める。お前がやるしかないのよ」
なんつー理屈だ、別に父さんそこまでしないよ。
「あと言った事は曲げるんじゃないわよ、男でしょ」
とか言われたのでお金を出してくれる父さんに申し訳なくなるので続ける事にした。
閑話休題
「はぁ、学校が巨大ロボットに変形して地元に来てくんないかな」
「お前……そんな事ある訳ないだろ」
「うっせぇ! お前に何がわかるって言うんだ!」
教室で項垂れて戯言を口にしてると前の席の《浅川裕司》がツッコミを入れてきた。
「まぁ……お前が生まれてきた土地が悪い。それよりさ、昨日買ってきたこれ見てくれよ!」
顔を上げて裕司が出して来た物を見ると今話題沸騰中のガールズバンドグループ《Roselia》の特集が組まれた雑誌を広げていた。そいや、最近姉貴がライブやるとか言っていた。
「んで、そのRoseliaがどうした?」
「最近知った事なんだけどよ、ライブが隣町であるみたいでな」
「それで? 行きたいと?」
「そうだよ、察しが良くて助かる。どうだ? チケットは2つあるんだ」
「お前さ、俺が断ったらどうするつもり?」
そもそも、何で2つ用意してあるのか? そう訪ねると、裕司はfxで全財産を溶かしたような顔をした。
「中学卒業まで付き合ってた彼女と別れたから一枚余ってんだよ! クソが! お前の鼻に綿菓子詰め込むぞ! だから断るなよ……マジで、頼むよぉ……マジでぇ」
可哀想になってきた。でも、姉貴から来るかどうか聞かれて断っちゃったんだよなぁ……そんとき興味ないから良いやとか言っちゃったし。
「どうどう……別に嫌とは言ってないだろ、だけど俺はバンドには興味はないからな」
「よし、じゃあ次の日曜日な」
切り替え早いな……とツッコもうとしたら授業が始まり教師が教室に入ってきた。
◇ ◇ ◇
放課後、ある意味ここから俺の戦いが始まるのかもしれない。
部活にはまだ入るかどうかも考えていないから適当に勧誘を断って自転車で自宅に帰る、この時にはもう疲れきって部屋でゴロゴロしたいのだけど。
「ただいま」
「あぁ、カズ、丁度良いところに帰ってきたわね」
「おつかいしろと?」
「あら、もう順応してきたかしら?」
高校生になってからほぼ毎日これである、家に帰ったら即買い物を頼まれるので別の服に着替えて家を出た。
「流石に慣れたとは言えこれはなぁ……」
ぐだぐだと商店街を歩く生鮮食品とか冷凍物を頼まれる事はないので帰りにゲーセンとかに行っても全然怒られないのだが買い物中に近所の女子高生とエンカウントするのが最高に嫌いだ。
「カズ、最近この道で貴方を見るのは気のせいかしら?」
会いたくないランキング一位でお隣さんでバンドRoseliaのボーカルの湊友希那にエンカウントしてしまった。
「買い物、親に頼まれただけなんで……」
正直に言えば友希那さんの事は苦手だ、彼女が音楽活動を始めてから雰囲気変わったし姉貴もそれに付きっきりになったり……まぁそれだけの事なのだが。
「そう……学校にも行っているか怪しいとも聞いたのだけれどそれはどうなのかしら?」
どっから沸いた嘘なのだろうか、そもそもな話学校行ってるんだが?
「は? 何それ?」
「噂に聞いたら朝早くに出掛けて家に帰るのも遅いと言ってたわ」
段々と友希那さんの顔が険しくなる、確かに学校に行ってないと言う所以外間違いじゃないけどかなり理不尽な勘違いだ! しかもこういう時って話聞いてくれないし……今度姉貴に文句いわにゃならんか
「姉貴に確認取ればわかる事でしょう」
「リサは……貴方を庇うわ、それでは意味がないわ」
うわ、面倒くせぇ。
「俺、買い物あるんで」
「待ちなさい!まだ話は……!」
「俺に構う時間で練習したらどうなんですかね、というか構わないで結構なんで」
そう吐き捨ててゲーセンの中に入る、某ロボット2on2対戦ゲームはここには二台しかないので取り合いなのだ、今日はも相方待たせてるし申し訳ないが話すのは今度にしてもらおう。
「……何であの人の前で態度悪くなるのかな、俺」
「何の話だ?」
ゲーム筐体の席に座ったら今日は空いていたらしく隣の筐体に相方のいっちーさんが座っていた。
「お隣の姉貴の友達がうるさいって話…あ、乗るのはいつもので」
「ふぅん、お前何かやったのか? 不登校児って噂立ってるみたいだけど」
二人でやる時に一番上手く行きやすい組み合わせでネット対戦に繰り出す。
「あー、それね。普通に学校行ってるぞ俺は」
「じゃあ私服で朝早く家を出るって言うのは?」
「俺の通ってる学校私服ありなんだよ」
「帰るのが遅い、のはこれやってるからか」
「お前のせいぞ」
「違ぇわ! ま、お前が不登校じゃないなら良い」
「お、ツンデレか?」
「はぁ!?」
いっちーさんがゲーム内でガードに失敗するしてそのまま倒された。
「おいおい、頼むぜいっちー覚落ちしないのは良いけどさ」
ニヤニヤしながらいっちーに足を蹴られつつ相手の着地を狩ってそのまま無事にゲームには勝利した。
「お前のせいだ! お前の! 後ツンデレじゃねぇ!」
「痛い痛い! ゲーセン内での暴力はやめれ」
「ったく! 心配してたんだぞこっちは」
「リアル引きこもりに心配されたかねぇな」
「ほっとけ! 後もう引きこもりじゃないぞ? 同じ学校のやつとバンド始めたからな、学校にもちゃんと行ってんだからな!」
そう、いっちーさんは引きこもりで最低限しか学校に行ってない様だ、たまたま俺が休みでいっちーさんがサボりの時にゲーセンで出会ってこうして週3位でゲームをやるに至る訳だ。
「どいつもこいつもバンドって流行りなの?」
「さあ? 知らんけどライブやる時呼ぶからな」
「空中分解しなきゃなー」
「喧嘩売ってんのか!?」
こんなやり取りをして連勝上限で強制ゲームオーバーになったので解散になった。
時刻は19時そろそろ姉貴が帰って来て飯の時間になるのだけど、それまでは数十分だけど寝る。週の半分はこの生活になる。最近は本格的に授業も始まってそれなりの課題も出てるし終わらせないと。
「あー、だる……課題とか全て消え去れ」
課題に手を着けてから数分後、部屋のドアがノックされた。
「どうぞー」
「あ、起きてた。ちょっとお姉ちゃんお話があるんだけどいい?」
「どうせ、友希那さんの事でしょ。熱々だねぇ」
「そういうの良いから……友希那が怒ってたんだけど何かしたの?」
二重の意味でやっぱりその話題かと思い微妙な顔をする。
「心当たりあるんだ……」
「何か俺ってこの街だと不良的な噂立ってるらしいんだけど、姉貴から友希那さんに説明しといて」
姉貴は庇うとは言ってたけどあの人が姉貴の言う事は無下にはしないだろうし、どうせ俺から説明しても信じないだろうから。
「えー、嫌かな」
「何でさ」
「んー、自分で考えな。それより今度のライブ、ホントに来ないの?」
姉貴が少し考えた後断られた、多分考えた振りだろうな……
「んあー、それ……学校の友達と行く」
「え? ホントに!? 何かあったの? 前にバンドの話題出したら凄く嫌そうにしてたのに」
「友達が彼女と行く予定だったのに別れたと聞いて悲しくなったから」
「それは……まぁ、置いといて。そっかー……カズが来るのかー」
何でそんなウッキウキなんだよ。
◇ ◇ ◇
──Roseliaのライブ当日のCiRCLEにて
裕司にペンライトを渡されてから思い出した、今日ゲームのイベント日やんけ!
「なぁ、裕司」
「何だ? トイレなら済ませておけよ?」
「ちげーわ、俺やっぱ帰って良いか?」
「お前この期の及んで言う? Roseliaの事になるとお前露骨にテンション低くなるけど何かあんのか? そういやベースの今井リサと名字が同じだけどもしかして……」
今か、今気づくか? それ。
「違う、かんけーねぇよ。ただただバンドってのが好きじゃないだけだ」
「ふーん、じゃあ何で今日来てくれたんだ?」
「それは…まぁ、誘ってくれた訳だし」
そう言うと裕司は呆れたのかにやついてるのかよく分からない顔をしていた。
「何だよ、その顔」
「ツンデレさんめ」
「誰がツンデレだ! 誰が!」
「はいはい、そろそろ始まるから黙っとけ」
くっ、少しだけいっちーさんの気持ちが分かった気がする!
確か最初の曲は──
「それでは一曲目、BLACK SHOUT」
その後、アンコール含めて9曲程の演奏だった。アンコール前のトークのせいでキーボードの人がパンにマーガリンを塗りながら魂のルフランを演奏していた。
アレは何だったのだろうか。
それはともかくとして裕司が感想を語りたいと言い出したので適当なファミレスで飯を食うことになった。
「裕司、ホントにこのファミレスで良いのか?」
「別に有名チェーンだしハズレとか無いだろ、てかもうドリンクバー頼んじゃっただろ」
なったんだけど、このファミレスは嫌だったな!ここは姉貴からの連絡で打ち上げをここでやるから来ても良いと聞いたのでエンカウント率がとても高いのだ。
「ま……いっか」
「おう、じゃあドリンクバー取ってきてやるよ」
「変なの入れてくんなよー」
裕司がドリンクを取りに行ってる間に親に今日は飯はいらないと連絡を入れておく。
「よいしょっと、さて感想を語ろうぜ!」
「あー……うん、カバー多かったな」
あとはちらちら姉貴がこっち見てたなぁと何でバレた。
「だよなー、多分アレはりんりんかあこちゃんの趣味だ! 俺個人としてはりんりんの趣味であって欲しい」
こいつ、知らないとはいえそのメンバーが居る中でよくもそんな事が言えるな。
「メンバーの話かよ、曲の話しろよ」
多分本人らもそっちの方が嬉しいだろうし。
「曲かぁ、マーガリンが良かったよなぁ」
「それ、ホントに曲の話か?」
魂のルフランのアンコールじゃなくて茶番みたいなもんだろ。
「良いだろ、メンバーが居てこそ曲が奏でられるんだからさ!」
「まぁ、その通りなんだけどさ……」
はぁ、とため息をついて少しだけ顔を横に向けたら少し離れた席に姉貴が居て、目が合ってしまった。
「推しが悩ましいなぁ、クール系の友希那さんと紗夜さん、大人しい系のりんりん、元気っ娘のあこちゃん、ギャル系のリサさん……あー、でもリサさんはちょっとなぁ」
あ? 今お前なんつった?
「は?」
「え?」
自分でも予想してなかった程低い声が出た。
「いや、続けろ」
「あー、えーと、リサさんはアレだよ、お前が原因で推しにくい」
「悪い、足が滑った」
無性にイラついたので裕司の弁慶の泣き所を全力で蹴った。
「あがひゃ!?」
「で、俺が何だって?」
「お、お前……大したことじゃないけど、ほら友達と名前が一緒のアニメキャラが出てくると何か変な気分になるだろ? それと一緒だよ」
「なるほどな、一理ある」
俺もそのせいで見るの止めたアニメとかあるし。
「あ、もしかしてお前、リサさん推しか? お前ああいうのよりツンデレっぽいのが好きそうな気が……あだだだだだだ!?」
「それ以上言ったらお前の弁慶の泣き所を凹ませるぞ」
「そんなに!? まぁ、お前の推しはいいや」
そういえば元々来る予定だった元彼女にこの話題をするつもりだったのだろうか?
「俺からしたら、メンバーも曲もどうでもいい……」
「えー、つまんねぇの……はぁ」
ため息をくきながらコーラを口に含む裕司、ため息をつきたいのはこっちだ。さっきついたけど。
「いや、俺は元々興味ないって言っただろ」
「そうね、興味の無い人間に聞いて貰う程、Roseliaの歌は安いものじゃないわ」
「ぶほわっ!?」
いつの間にかこちらの席に近づいてわざわざ文句を言いに来たらしい友希那さんを見て裕司がコーラを吹き出して、全部俺にかかった。
「……俺は余ったチケットで来ただけでわざわざ来てやる程じゃないっつうの」
何で無視してくれれば良いのに近寄ってきたかな、お互いイラつくだけだろ。こんな時に姉貴はどこに…あ、席に居ないしお手洗いか?
「なおのこと来て欲しくないわね」
「あっそ、じゃあ近づくな、隣町でライブでもやってろ」
俺はエンカウントすらしたくないんだ。いっそのこと国外でやってくれ、頼むから。
「ちょ、ちょっと、何でカズも喧嘩腰になってんだよ。お互い落ち着いて」
「貴方は黙ってて、大体貴方みたいのが居るからカズがこうなるのよ……!」
「裕司は別に──」
「いや、カズは関係ないでしょう?」
「……え?」
急に裕司の声色が低くなった、少し呆気に取られた。
「俺とかカズとか関係なく貴女個人に何があったか知らないけど、貴女がカズの事が嫌いなだけでしょう!」
「……っ! ……それは……」
裕司は友希那さんが怯んだ隙を逃さなかった。
「ほら、店の迷惑だしもう出るぞ!」
そのまま彼に首根っこ捕まれ、会計を済ませ店員に二人で頭を下げて店を出た。
「なぁ、裕司……その……」
「ん? あー、悪いな。今タオル渡すよ」
「いや、そうじゃなくて……タオルはありがたく使わせて貰うけど」
受け取ったタオルで濡れた所を軽く拭くだけで済ませておく。
「全く、友希那さんがあんなだったとはなあ、場所を考えろって話だよな」
「なぁ、裕司、何も聞かないのか?」
「何の事だ?」
「そりゃ……俺と友希那さんの事に決まってるだろ」
詮索されないのはありがたいけど、俺一人だったら多分もっと酷い事になってたし……
「やっぱそれ? 聞くだけなら良いぞ」
「助かる、ちょっと適当なとこで座って待ってろ」
近くの自販機で飲み物を2つ買って片方を裕司に渡して公園の滑り台に座る。
あーあー、話すつもり全然っっっなかったのになぁ。
「さて、話すとしたらまず俺とRoseliaの話をしようか」
「……あんまり長いと寝るぞ?」
「……ぶっ飛ばすぞ」
「さっきのしんみりムードはどこに!?」
「俺な、今井リサの弟なんだよ……それで友希那さんはお隣さん」
缶コーヒーを一口煽って様子を伺う。
「あ、そっち? ……てか何でそれ先に言わないんだよ!」
「お前がRoseliaの話題を振ってこなきゃいつかしてたわ」
「そうか……で揉める原因は?」
「俺、何か不良と勘違いされてるみたいなんだ、理由は知ってる通りだけど」
「あー、ここから朝早く時間掛けて来てそれで部活無しで帰るんだっけか」
「でも、多分これが要因だけど切っ掛けじゃないと思う」
これだけであそこまで怒るのは何かおかしい気がする。
「まだ何かあんの?」
「友希那さんは元々一人で音楽活動しててそこからRoseliaが結成された訳なんだけどさ……」
「それで?」
これ話したくないんだよなぁ、絶対弄られるし。
「それをRoselia結成前から姉貴が友希那さんを心配しててさ」
「お、おう? 何故リサさん?」
「あんまり俺に構ってくれなくなったんだよ」
「ぶほっ!」
裕司が吹き出した、本日二度目だ。
笑いを堪えて肩がピクピクしてるのが目に見えてわかる
「お、お前さ……それマジ?」
「……口縫い合わすぞ」
「いやいや、いや……姉ちゃんが構ってくれなくなったからその原因に冷たくしてそれであそこまで拗れるってお前……草しか生えんぞ、マジ」
「一つ言っとくがな、別に友希那さんに取られたからって訳じゃないからな!」
「手遅れ! 思いっきり手遅れ! てかアレかさっきお前、リサさんの話題出したら蹴ってきたのって……」
お互い飲み物を飲み終えてるのを確認して行動に移った、まずは滑り台から飛び降りて足払いで裕司の足を持っていき腕を掴んで胸に当てて
「腕挫ぎ十字固めじゃボケぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
「アーッ!!!」
この後散々シスコン呼ばわりされて解散した。
これはジャブです
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