ロンドン警視庁 会議室
「範囲を拡大して捜査を……」
「目撃例が多数……」
「被害者の身元が不明……」
「死神犬の正体について専門家は……」
ロンドン警視庁は未曾有の事態に一晩中踊らされていた。
捜査を担送しているアバーラインは現在会議室のひとつを外部記者向けの会見場に拵えている。
ロンドン・タイムズほか、様々な記者、報道陣からの質問に、この男は表情を変えず淡々とそれらに答えていた。
――不気味な男だよ。
ロンドン警視庁に何度も出入りする記者たちは、口を揃えて彼をそう評価する。
捜査官にとって一定の冷静さは不可欠なものである。
それでいてなお、彼の会見中の説明は一切の感情が感じられない、ある種コメンテーターやリポーターとしてその姿は完全であるが、その実多くの人間がテレビに移る彼の姿に言いようもない恐怖を感じていた。
そして、彼自身にその自覚はある。
今どき時代遅れもいいカメラのシャッターを何度も押して、時折レンズから目を離しては目の前の被写体を肉眼でも見比べる。
首にかけられたIDにはこの国で最大のマスメディアを示すロゴマークがプリントされている。
「凶悪事件のスポークスマンはいつもあの男だ。何者なんだ?」
記者のひとりがつぶやく。
「一度密着取材を頼んだが、断られたよ。長官の話では優秀な捜査官らしいが、一切の素性が不明と」
「あの仏頂面が逆に社会不適合者みたいで恐ろしいよな」
「おいおい、マスメディアにとって不適切な言動が聞こえたが?」
「実際のところこの会見映像を見て、彼が犯人に見えて仕方ないって視聴者もいるってさ」
「ああ、アレは確実に何人かやっちまってるって顔だよな」
苦笑いしながらカメラマンの男はつぶやいた。
その視線の先で壇上に上がったアバーラインは、会見を続けている。
――しかし、どうしたものか。
秘匿の漏洩について、これ以上隠し通すのは困難であるというのが、アバーラインの見解であった。
今もこうして可能な限りの質問に答えて入るが、ほとんど中身のある回答とは言えなかった。
マスメディアの問いかける語調に苛立ちが感じ取れるのがわかる。
聖杯戦争の参加者に協力を仰ぎ、グリムドッグの討伐を指示したのが昨晩のことである。
アバーラインは敬虔な教徒を自称し、また自身が根っからのイギリス人であることを自覚している。
マナーにうるさく(かと言って空気も読まずにそれを口に出すことはしないが)、しかしながら狡猾で利己的である。
が、その全てが胡散臭い人間であった。
なにかに矯正されたのかのようにその男は生きている。
何人かの人間は彼の本質を見抜いており、彼を不気味と評価した。
その評価すらを残念に思う気持ちすら、彼は機械的に所持していた。
中身のない会見を続けながら、アバーラインはふと遠くを見た。
記者会見中の記者たちの首筋をなめるようにして霊体化した「なにか」の気配を目で追う。
***
「不可解だし、不愉快だな」
記者会見を終え、会議室で一息ついたアバーラインは、不機嫌そうにふと虚空に語りかけた。
すると、虚空の中から実体化したアサシンが姿を見せる。
「どうにも、お前には私の気配がわかるらしい」
ドクロのお面をつけた東洋風の男が話しかける。
「お前の気配遮断はレベルが低い……いや、隠す気がないと言うべきか」
冷静にアバーラインは説明を続ける。
「本物の"山の翁"の気配遮断はこの程度ではない。お前の真名は、山の翁ではない」
「……しかしそれだけでなぜわかる?」
「"憎悪"だ。アサシン、お前から漏れ出す"憎悪"がそれを隠せずにいる」
アバーラインはこのアサシンから漏れ出る常人とも言えない憎悪を敏感に感じ取っていた。
「かつて山伏に育てられた時期があってな。感覚を研ぎ澄まさなければ、山で生きてはいけぬ」
「お前のその憎悪が、臭うのだ」
アバーラインの答えに、アサシンは満足そうに称賛する。
「素晴らしい」
――だが、とさらに続ける。
「何故だ?」
「……何故というのは?」
「それほどの力を持ったお前が、なぜ聖杯戦争に参加しない?」
「聖杯を私物化する趣味はない、あれは聖堂教会の……」
「そうではない」
「は?」
アサシンは指をさす。
「それは聖堂教会という枠を与えられたお前の建前だ」
「お前はアレが欲しくはないのか?」
「万能の願望機を前にして、そうも冷静にいられるのか?」
「……理解できんな」
アサシンの挑発も、アバーラインは一蹴した。
「お前には望みがないのか?」
「与えられた組織と使命に力を尽くすことだけが私の生きがいだ」
「そこにお前の幸福はあるのか?」
突然大きく、わざとらしくアバーラインはため息を吐いた。
「お前は精神科医か? カウンセラーなのか?」
「かつて同様の質問をされたことがあるぞ」
「彼らは私を"やばい人間"だと決めつけるんだ。自分たちのメソッドに合わない、自分たちの常識にあわない、そういった存在を間違いだと勝手に思い、矯正しようとしてくる。挙げ句に、その助けを求めているんだと余計な気を回すのだ」
「かわいそうなやつだと、自分たちの知っている枠に、形がゆがむまでなんども当てがい、捻じ曲げ、最終的にボコボコになりながら枠にハマったそれを"私が完成させました"と周囲に自慢するのだ」
「お前の問答は、その"自称精神科医"のやりかたと同じだ」
少し喋りすぎた、とアバーラインはここまで喋り、自らを制した。
「……すまない。サーヴァント相手に、面白くもない話を」
「素晴らしい」
アサシンはただひとことつぶやいた。
「素晴らしい、やはりお前は逸材のようだ」
乾いた空間に冷淡な拍手が再生される。
「私を試して何になる、アサシン……お前の目的は何だ?」
なおもイライラした様子でアバーラインは尋ねる。
アサシンが仮面に手をかけた。
その素顔を晒すと、先程とは明らかに異なる声のトーンでアバーラインに答える。
「私のマスターになれ」
――しばらくの沈黙。
アバーラインはしかし表情を一切変えずに、問いただした。
「理解不能だし、拒否もする」
「あえて理由を答えるならば、3つある」
三本の指を立ててアバーラインは説明する。
「いちから説明する必要が本当にあるのか?」
「ひとつに、私は今回の聖杯戦争の監督役だ。マスターになることはまずありえん。公平性を欠くことになる」
「ふたつめに、その聖杯戦争もすぐに収束する。ホムンクルスを奪還したあと、お前たちサーヴァントには自害でもなんでもさせて座に還らせるのだから」
「みっつめだ。そもそもお前のマスターであるミランダ・ウォルフォークはどうするつもりだ? このことを了承しているのか?」
――嫌な予感がする。
サーヴァントの中には単独行動スキルにより、マスターが不在あるいは遠いところにいても魔力を維持することができる者もいる。
本来であればこのスキルはアーチャーのサーヴァントが所持しているスキルである。
アバーラインはしばしばこのサーヴァントが自分に付きまとっているのを思い出す。
近くにミランダの気配はなかったし、彼女のドローンをもってしてもそれを経由した魔力供給は不可能のはずだ。
――このアサシンは高次の単独行動スキルを所持している。
――なんて凶悪なサーヴァントを引き当てたか。
仮面を脱いだアサシンの顔は以外にも老いていた。
泥鰌髭をはやした東洋風の老人だった。
「私のことはドクターと呼びたまえ」
「ドクター……?」
「そうだ、お前を治療するもの、お前に悪の喜びを教えてやるものだ」
老人の表情は穏やかに歪んだ。
上品でありながら、掴みどころのない無味毒のような悪意を滲ませていた。
憎悪は徐々に、アバーラインの精神を否応なしに蝕もうとしていた。
***
ロンドン 時計塔
「……そうか、グリムドッグの報告どうもありがとう、ミス・ロジェ」
「お役に立てて光栄です。ロード=エルメロイでしたらきっと大丈夫だとは思いますが、夜道には……」
「二世だ……それが、ちょうど適任者と思われる私の弟子はルーマニアに旅立っていてな」
「ルーマニア? それにお弟子さんって…」
「そうだ」
シャルロットは思い出す。
確かにフードをかぶった少女がいつもエルメロイ二世のそばについていた気がするが今はいない。
時計塔の一室でエルメロイ二世とシャルロット・ロジェがソファに向かい合って座り、情報交換をしている。
「今回の件が起きてからすぐに、かつての亜種聖杯戦争……聖杯大戦が行われたトゥリファスという街で調査をさせている」
「私も仕事を終えたあとで、同行しようと思っていたところに死神犬の騒動だ」
エルメロイ二世はため息を吐いて悪態をつく。
身分に不相応なFワードが聞こえたのでシャルロットは意外そうに目を丸くしたが、我に返ってすぐに言葉を返した。
「それは災難でしたね……それにしても、今更トゥリファスに行って何をするのですか?」
「気になることがあってな……君はトゥリファスでの出来事をどのくらい知っている?」
葉巻に火をつけながらロードエルメロイ二世は眉間にシワを寄せたまま問いかける。
「今回の聖杯戦争にあたって公開されている資料には一通り……犠牲者やユグドミレニアの魔術師たちのことも」
「そのユグドミレニアの一族の者がひとり、うちの教室にいることは知っているな?」
「ええ、カウレスのことですね」
――そうだ。エルメロイは肯定する。
かつてトゥリファスで起きたユグドミレニアの一族による魔術協会への挑戦、聖杯大戦は今でも時計塔の中で話題となっている。
一族の人間であればどこの学科も手放しに歓迎するとロード・エルメロイ二世は言うが、それは結局の所体の良い人質ということであった。
その人質であり、本来ならユグドミレニアの最後の当主であるカウレス・フォルヴェッジは時計塔にいるべきはずなのだが、その彼は現在、ロードの指示でトゥリファスに出向いているという。
「カウレス・フォルヴェッジはユグドミレニア側のマスターとしてトゥリファスの聖杯大戦に参加し、生き残った」
「今や全世界に拡散された亜種聖杯戦争だが、我々魔術協会が確認できている限りあの聖杯大戦は唯一の成功例と考えて間違いないだろう」
「そこで今回の聖杯戦争の起こりについてなにか手がかりを得られるかもしれないと、トゥリファスにカウレスとグレイを向かわせたのだが」
ここまで言って、エルメロイ二世はやはりため息を付いて首を横に振るった。
「今の所有力な情報は得られてはいない……だが」
「"ない"ということ事態はある種の可能性を示している」
「可能性?」
シャルロットは首を傾げてエルメロイ二世に問うた。
「どういうわけか、トゥリファスからはほとんどの霊脈が失われていた。まるで根こそぎ掘り返されたかのようだった」
「城塞は荒れ果て、大聖杯はもちろんかけら一つ存在せず、そこにユグドミレニアがいたのかも怪しいほどに」
「この騒動の黒幕が、トゥリファスの聖杯大戦を参考にしていることは間違いないだろう」
――でも、とシャルロットは食い下がる。
「そのカウレス・フォルヴェッジの事情聴取では大聖杯は消えたと」
「そうだ、大聖杯はジークと名乗るホムンクルスによってこの世界の届かないどこかへと運ばれたと、カウレス・フォルヴェッジは証言している。それは嘘偽りでないということも保証できる」
「では、もはやトゥリファスの大聖杯を使った聖杯戦争のシステムを参考にするのは無理があるのでは?」
「そこなんだ、ミズ」
髪の毛をくしゃくしゃとかきながら、エルメロイ二世は悩ましげにぼやく。
「肝心の大聖杯がないのでは、聖杯戦争は行えない。そもそも聖杯自体、そう簡単にいくつも手に入るものではない」
「……そんなときに、突然アトラス院特性の聖杯が現れた。ホムンクルスという形でな」
「聖杯、ホムンクルス、トゥリファス……全てが共通している。偶然とは思えない」
「だが、最後のピースが……足りないのだ」
しばらくの沈黙。
次に口を開いたのはシャルロット。
「私には何がなんだか……すみませんロード」
困惑したままシャルロットは申し訳無さそうに答える。
「いや、まだ結論を出すには早いだろう、何にせよ、弟子たちが新たな発見を……」
――突然教室の扉が勢いよく開かれる。
驚いて二人が扉の方を見て、そして絶句して、呆れ顔でため息を吐いた。
「ノックをせんか馬鹿者」
「先生! 大発見です! トゥリファスに向かったカウレスから連絡が!」
フラット・エスカルドスが飛ぶように部屋に現れると、シャルロットのことなどお構いなしにソファにドサッと座り込み、持っていたスマートフォンの画面をエルメロイ二世に見せつけた。
「……これは」
「一体何を見つけたのよ」
ちょうどよくスマートフォンに着信が入る。
画面にはカウレス・フォルヴェッジの名前が写っている。
フラットからスマートフォンをひったくると、恐る恐る画面のアイコンをタッチして、エルメロイ二世は電話に出た。
「カウレス、今送ってきたこの画像……」
『魔術関係の礼装は根こそぎ大戦直後の協会の調査で持ち去られちゃいましたからね……でもどうやら、ただの"これ"には彼らは目もくれなかったようです』
スマートフォンの向こうから青年の声が聞こえる。
「なるほど、目の付け所が冴えている。大きく前進したようだ……それにしても、大きく出たものだな連中は」
スマートフォンを一旦顔から遠ざけ、今一度エルメロイ二世は、送られてきた画像を確認する。
『ユグドミレニア城塞の、ダーニックの書斎で見つけました。床に無造作に捨てられていたのが急に気になって見てみたんですけど……これは』
「ああ、想像以上に入り組んだ事情がありそうだ。もはや偶然とは呼べまい」
画像に映るのは何十年も昔を思わせる一枚の古い写真立であった。
三人の男女が並んで写り込んでいる。
カウレスはこのうちの一人の男を知っている。
当然、ダーニック・プレストーン・ユグドミレニアである。
かつて聖杯大戦で同じ黒のマスターとして戦ったかつての上司。
しかしその服装は軍服であった。
もう二人の女性もまた、エルメロイ二世は知っている。
なぜならつい最近その顔を見たばかりだからだ。
ダーニックと並んで立っていたのは、イザイ・エルトナムとミランダ・ウォルフォークであった。
『ダーニックはともかく、他の二人も年をとってない……』
緊張した様子の声がスマートフォン越しに伝わってくる。
「不死を求めた三人の魔術師、いやひとりは錬金術師か……旧友だったとはな」
――だがこれでつながった。
エルメロイ二世はスッキリした様子で、しかし慎重な様子でシャルロットに警告した。
「イザイ・エルトナムと、ミランダ・ウォルフォーク。二人は危険だ」
***
ロンドン某所
『マスター』
「……!」
はっと我に返った瞬間目の前を猛スピードで車が通り過ぎていった。
見上げると赤い信号が点灯し、歩行者に危険を知らせている。
時計塔という魔術師世界から再びロンドンに降り立ったシャルロット・ロジェ。
言いようのないもやもやが、未だに彼女の頭を重く垂らしていた。
『交通事故で脱落なんて、勘弁してくれよマスター』
アーチャーの念話が響いてくる。
言い返す事もできず、シャルロットは黙り込む。
『いつもの態度はどうした?』
「うるさいわね……」
『今どっちのことを考えてた?』
「どっちって?」
――とぼけるなよ。アーチャーが鼻で笑う。
『セイバーのマスターと、あのアサシンのマスター、どっちの方だ?』
「なんで私があの男なんかのことを」
『へえ、そうかよ…じゃあ、それでもいいけどよ。どうするつもりだ?』
横断歩道を渡ろうとして、再び足が止まる。
運転手は不審そうにしながら目の前を通り過ぎていく。
返答に困っている間に再び横断歩道は封鎖される。
「どうするって……それは、ホムンクルスを……」
『ま、そうだよな……』
念話で聞こえてくるアーチャーの声はほとんど生返事だ。
「不満そうね。マスターとしては、サーヴァントであるあなたとの関係性はできる限り正しておきたいのだけど」
『……それじゃあ言わせてもらうがな、マスター』
『はっきり言って不満だね。つまらないと断言してもいい』
「今の状況がってこと?」
『今の状況も、お前も、何もかもだ』
アーチャーはきっぱりという。
『俺たちがどうして、英霊として存在しているか、知らないわけじゃあないだろう』
「……聖杯に託す望みを持って、ここにいるから」
『そうだ、俺の望みだ。俺は "勝ちたい" 何もかもに勝ちたいんだ』
通りから公園に入り、人気が少なくなったところで、アーチャーは実態を表す。
「勝利こそが俺の生きがいだ、征服こそがこの俺の生きた証だ」
「なのに、景品は没収ときたもんだ」
「俺は何故此処にいる? オレたちは何故ここにいる?」
――落とし前をつけろ。
アーチャーは声には出さなかったが、目が物を言っている。
ここでのナポレオンのあり方は侵略者であり、悪である。
このときはじめて彼の苛烈な性格をシャルロットは垣間見た。
ここにいるのはサーヴァントであってもフランス皇帝である。
流血により開かれた道、近世ヨーロッパの礎、戦争の天才、冷酷な指導者。
――いや、だとしても違う。
「余はフランス皇帝として、参謀である我がマスターに問う」
かしこまった口調でナポレオンは問うた。
「お前が世に捧げられるものとは何だ?」
――違う。
「……さっきから黙っていれば、偉そうに」
「ああ?」
「それが何よ、あなたはナポレオンじゃないわ」
「本物のナポレオンは何年も前に死んだんだから」
訝しげに睨むアーチャーを、シャルロットは挑発的な表情で言い返す。
「私はあなたを否定する」
「ほう……ではここにいる男は?」
「歴史の影法師、サーヴァント、アーチャー。それ以上でもそれ以外でもない」
シャルロットの魔術回路にビリビリとした電流のようなものが流れる。
危機感、圧倒的な胸板と、迫るサーヴァントの殺気。
周囲の空気が鉛のように重くなる。が、
「偉そうにしたって駄目よ。あなたのことは知っている」
「あなた、女という生き物が苦手なのね」
「何だと?」
少し驚いた様子でナポレオンは声を荒げた。
「あなたは私を征服しようとしている。自分の元において、コントロールしたいんだわ」
「あなたに私は征服できない、私はそんな女じゃない」
――知っているわ、こじらせ過ぎたナポレオンさん。
――だから、私はあなたの愛人にはならないけれど。
「あなたを現代に呼び出した者の責任として、約束はする」
「このままでは終わらない」
しっかりと頭を上げると、シャルロットはナポレオンを睨み返した。
「私は私のやり方で、この戦いに勝利すると誓うわ」
「いっちょまえに言いやがるが、まさか無策じゃあるまいな、指揮官殿?」
「あなただって、私の年の頃には戦争に出ていたそうじゃない」
「それはそうだが……で、それは面白くなるんだろうな?」
睨み返した視線が和らいで、笑みが溢れる。
「これよ、こういう関係を私は待ち望んでいた」
「お行儀の良い外交はもうやめにするわ、私は何に対してもこびたりしない、恐れない」
「この聖杯戦争を"征服"する。誰にも私の覇道は邪魔させない」
そしてそれは告げられた。
「ホムンクルスだろうが、アトラス院だろうが、関係ない」
「私達が皇帝になり、この聖杯戦争を"征服"する!」
このとき再びシャルロットは何故ロッコ・ベルフェバン教授が自分にロゼッタストーンを触媒として与えたのかを思案した。
敵国イギリスでわざわざ彼を呼ぶことの意味を見いだせなかったが、今は。
このサーヴァントこそ、自分にふさわしいトップサーヴァントであることは間違いない。
ヨーロッパの征服者、その参謀として、ロンドンをかき回す存在であるということを彼女はとうとう自覚した。