Fate/Apocrypha/Quantum   作:うおぬま

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Ⅲ - 告死十字

 

 ライダー討伐作戦まで あと2時間

 

 

 

 ロンドンの北部、ハイゲイト墓地にて死神犬は体を丸めて眠る。

 サーヴァントには睡眠の必要ない。

 しかし奇妙な肉体を手に入れてなお、セルデン・オースティンだったその存在はかつての習慣を忘れていなかった。

 

 セルデンは本を読む人間ではなかったが、自身がどういった存在であるかを理解していた。

 かつて子供の頃におとぎ話で読んだような妖精の実在を、己の身を持もって証明させられたことに当初は戸惑っていたが、今となっては彼はこの姿でいることを極めて冷静に受け入れていた。

 

 先程も魔術師の体を脊髄を中心にカーペットにでもするかのように器用に引き裂いた。

 その時彼は自分が生前お気に入りだったヘヴィメタルの鼻歌を諳んじていることに気がついた。

 

 しっかりとその心臓を飲み込んだあとにもかかわらずセルデンはそのような残酷な自分が恐ろしくなった。

 かつて冤罪で陥れられたはずの自分が自ら殺戮に、安々と加担しているなんて。

 

 しかしながら自分を抑えることは不可能に近い。

 乖離したと思われるサーヴァントとしての体は絶えずエネルギーを求めていた。

 

―あの老魔術師の言うところの "魔力" を。

 

 不思議とその方法をセルデンは野生の勘とでも呼ぶべきもので理解していた。

 生き残こるためには喰らえばいい。

 実際のところ、その眠りは浅いもので、体の興奮を抑えられない状態が長く続いている。

 

 

 

―気が休まらない。

―もっとだ、もっとくらわなければならない。

 

 

 

 閉じた瞼の裏に浮かぶ老魔術師の顔。

 魔術師。魔術師。魔術師。魔術師。魔術師。魔術師。魔術師。

 

 

 

 魔術師魔術師魔術師魔術師魔術師魔術師魔術師魔術師魔術師魔術師魔術師魔術師魔術師魔術師魔術師魔術師魔術師魔術師魔術師魔術師魔術師魔術師魔術師魔術師魔術師魔術師魔術師魔術師魔術師魔術師魔術師魔術師魔術師魔術師魔術師魔術師魔術師魔術師魔術師魔術師魔術師魔術師魔術師魔術師魔術師魔術師魔術師魔術師魔術師魔術師魔術師魔術師魔術師魔術師魔術師魔術師魔術師魔術師魔術師魔術師魔術師魔術師魔術師魔術師魔術師魔術師魔術師魔術師魔術師魔術師魔術師魔術師。

 

 まぶたを開いてなお、目の前に広がるのは静寂と闇。

 月は出ておらず、雲もない。ただただ空洞のような夜空。

 

―なら星は?

 

 セルデンは星座を殆ど知らない。

 

―いや、知っているものもあったか……ええと、この季節だと。

 

 

 

 家族とキャンプに出かけた頃のことを思い出す。

 

 

 

 セルデンの妻は掴みどころのない女性であったが、星の動きにはやたらと詳しかった。

 まるで占うかのようにひとつひとつの天体の位置を確かめて、仕事についてアドバイスをされる日もあった。

 

 セルデン自身は冗談半分でそれを聞いていた。

 彼女の占いの的中率はというのはお世辞にも高いとは言えないからだ。

 

 キャンプサイトの星は見事なものであった。

 娘と妻、家族で語らうあの時間はかけがえのないものだ。

 

 

 

 夢想の中で人間の体を取り戻したセルデンはふと上空の夜空から愛する家族の顔へと視線を下ろした。

 彼女らの顔はまるでピントがボケたかのようにようにそこには写って見えたが、セルデンにとってはそのことなど気にする必要もなかった。

 

 彼はいわゆる軽度の相貌失認と呼ばれる状態にあった。

 人の顔をすぐに判断区別できない奇特な体質にある。

 

 すぐに、というのは完全ではないということだ。

 彼の相貌失認には程度があったが、この程度の原因について人々は様々な悪意でもってとらえた。

 人間関係の形成はとても難儀なものであったことは間違いない。

 彼が殺人鬼のソシオパスであるというメディアの吹聴はいとも簡単に流布されたことはいうまでもない。

 

 妻子の顔すら思い出せないことに、セルデンは自嘲した。

 そして胸につっかえた居心地の悪さが彼を覚醒させる。

 

 セルデンの獣性はピークに達し、飲み込まれようとしていた。

 

 世間の目が、人の声が、己を駆り立てる。

 

 俺が人を憎むのではない。

 

 世界が "俺が人を憎むこと" を望んでいるのだ。

 

 であるならば、この命が尽きる限り、それに "応えて" やるとしよう。

 望まぬ死、望まぬ追放を受けた、満たされぬ者の最期のあがきを、ありありと人間の記憶に刻みつけてやるのだ。

 

 

 

―覚悟するがいい人よ、魔術師よ。

 そこに程度の差はあれ違いはない。

 誰であろうと平等に襲いかかるもの、それこそが死という概念の化身であるセルデンにふさわしいあり方だ。

 

 

 

『……来る』

 

 数百メートル先から漂う匂い。

 魔術師を食らうときに何度も鼻にしたあの匂い。

 

 セルデンはひと吠えすると立ち上がり、来訪者に備えた。

 

 

 

 ロンドン 某所

 

 市内のホテルの一室。

 以前に泊まっていたホテルからはグレードが落ちているが、彼女は気にもとめていない。

 以前の部屋の感覚で前を見ないまま歩き回るせいで、彼女の肢体にはいくつかの痣さえ見える。

 これは当然服を着ていないせいでもあるが。 

 

「念の為」というキャスターの提言により、防衛の簡単な構造のホテルに彼女は移り代わっていた。

 

 イザイ・エルトナムはその日も一日中情報端末のタブレットから目を離さずにいた。

 当然ロンドンじゅうの交通監視システムをチェックするためだ。

 これらの映像はミランダ・ウォルフォークから送られてくるものである。

 もはや二人の同盟関係は強固なものであると両者は信じて疑わない。

 

「……ほうほう」

「今朝からずっとそれ眺めているけど、ライダーの動向はなにかわかったのかい?」

 

 タブレットを見てつぶやくイザイに、キャスターが背後から声をかける。

 

「ライダーなら最後にカメラに写ったのがハイゲート付近で、それきり終えてはいないよ。おおかたどこかの森で休息しているんじゃないか?」

「これから討伐作戦だが、やはり君は他のマスターに会うつもりはないのかい?」

「先日のランサーのマスターの件があるからね」

 

 キャスターの方を向くことなくイザイは答えた。

 

「リャオ・ファン、東洋の魔術師一族で、かつてはロードに名を連ねる貴族の末裔か」

「今でこそ落ちぶれつつあるが、時計塔での立場はあいも変わらず強固だ」

「彼が一声かければ小遣い稼ぎに何人もの懲罰部隊が喜んで彼のために働くぐらいの力はまだあるということさ」

 

―それに。 イザイは続ける。

 

「彼の今の立場からしても、なんとしてでも聖杯を手に入れたいはずだ。それもセイバーの召喚に固執するくらいにね」

「聖杯に託す願いは当然、一族の再興。ただし……」

「再興そのものを願うのではなく、あくまで根源到達のための手段を得たいというもの」

「手段のみを欲しているというあたりはさすが元貴族のプライドというわけか」

 

 高揚した様子でなおもつぶやく。

 

「高みの見物をしているつもりだろうけど、君だって危ない立場にいることは自覚してほしいね」

 

 呆れた様子でキャスターは諌める。

 その後ため息を吐いて、申し訳無さそうに続ける。

 

「……一つ報告。セイバーのマスターに真名を見破られた」

「君は最善の選択をしてくれたよ、ガンダルフ。アサシンの襲撃は少し早計だったな。ミランダも逸る気持ちが抑えられなかったのかもしれない」

「ミランダにはなんて説明するんだい?」

 

 暗い声でキャスターは不安そうに尋ねる。

 

「……手違いがあった、とだけ。深く考慮する必要はない。そのまま同盟関係を続行する」

「次もアサシンがセイバーを狙うなら?」

「セイバーが倒され、ホムンクルスがミランダのもとで利用されるのならそれはそれで問題ない」

 

―不老不死を求めた仲なのだから、そのような結末になったら暖かく彼女を祝福してやるとも。

―もっとも、その不老不死が彼女にどのような結果をもたらすのか、それすら私の好奇の対象であることは言うまでもないがね。

 

「しかしスペアを用意するのも簡単ではない。できる限り今回で彼女には"完成"してもらわなければならない」

 

 

 

「つまり君にとってあらゆる事象は、ただの研究であり、結果でしかないのか」

 

 ふいにキャスターが漏らす。

 

「まるでコンピュータだな。情緒のかけらもない」

「情緒を獲得しようと思ったこともなくはないが……」

「その言い方がもうダメダメなんだよなぁ」

「ふふふ……今日は珍しく饒舌じゃないか、ガンダルフ」

 

 思いがけない一面を見たと、イザイは目を丸くした。

 

「マスターは知らなかったかもしれないけれど、これからライダーの討伐作戦なんだ」

 

 皮肉交じりにキャスターは強調する。

 

「だから一応その……万が一のこともあるし、最後のあいさつをしておこうと思って」

「柄にもなく弱気じゃないか?」

「万が一だよ。私は死ぬつもりはない」

 

―どうせ今回も遠くで見ているだけなんだろ?

 

 臆病者と一言罵ってやりたいところだったが、ガンダルフはぐっとこらえた。

 その言葉を言う資格は自分にはない。

 

「短い間だが、君という存在は私にとって非常に面白いものだったと思う」

「良くも悪くも常識はずれの、ネジの外れたスーパーコンピュータとでも呼ぶべき君が見せるその世界」

「"全人類の救済"それが実現した世界を、私も"彼方"から見届けてみたいものだな」

 

 キャスターが手を差し出す。イザイはそれに応える。

 

「私が救済するのではない。人間が自らを救済するのさ」

 

 

 

「そのためにまずは"死の運命"を乗り越えなくては」

 

 

 

 ロンドン 某所

 

 暗い闇夜をフクロウが翔ける。

 やがてどこかの公園の木で止まると、それは目を光らせながら、書状の受取人を待ち構えた。

 

 奥から一人の青年が現れて、ポケットからライトを取り出す。

 チカチカ何度か音を立てて合図を送ると、フクロウは眼光を明滅させてそれに応える。

 

「アバーライン神父からだ。ライダーの位置がわかったのかもしれない」

「……いよいよか」

 

 エハッド・ティーレマンが腕を上げると、ちょうどよくフクロウが止まり、足につけた書状をこれみよがしに見せつけた。

 エハッドは書状を受け取るとすぐにそれを広げて読み始める。

 

「ハイゲートの墓地か……墓地。死神犬にとってはテリトリーのようなものだな」

「分が悪くはあるが、夜の街よりはマシだろう」

「まったくロンドンは真夜中でも人がちらほらだからな。やりづらいったらありゃしないよ」

 

 エハッドの脇にバーサーカーが現れる。

 あいも変わらずムスッとした表情で、腕を組んで立ちつくす。

 

「色々とあったが、ひとまずはこのライダー討伐戦がターニングポイントになることは間違いない」

 

 低い声でバーサーカーのマスターは説明する。

 

「この際ライダーのことはランサーやアーチャーに任せておけばいい。力をほどほどに出しつつ、その後に備えるのがいいだろう」

 

―決してこのバーサーカーの実力を心配しているわけではない。

 しかしこの戦いで深手を追うことは好ましくないこともエハッドは承知していた。

 

「ランサー……とそのマスター。彼らは今この聖杯戦争に参加している中では最有力候補と言っていい。そして……」

「聖杯をアトラス院から奪うと公言している。であれば、この作戦に乗じて他のサーヴァントに危害を加えることも考えられる」

「ランサーに警戒しつつ、5割の力で死神犬に挑もう」

 

「それには賛成しかねるなマスター」

 

 しかしバーサーカーはこれを拒否した。

 

「なっ……どうしてだよ、バーサーカー?」

「あれこそは、私が求めていた "運命" そのもの」

 

 大げさに両腕を広げて、バーサーカーは叫ぶ。

 

「そう、"運命"だ! 逃れられぬ宿命と呼ぶのもいい! であればこそ、あれは私が乗り越え、打ち砕かねばならないだろう」

「相手は死神だぞ。生前のお前も、モーツァルトでさえも、古今東西のあらゆる英霊でさえ打ち克つことのできなかった相手だ」

「それがどうしたというのだ」

「あれは概念としてそれを保有している可能性がある。ある意味じゃ、ハデスやタナトスと同等の存在だぞ」

 

―ならばこそ、とバーサーカーは強調する。

 

「ますます私の力が必要となることだろう。ひとまずはあの "皇帝風情" に一泡吹かせつつ、群衆を導くこともときに必要であるな!」

 

―こいつは何を言っているんだ?

 

 エハッドは困惑した表情で仰々しく大手を振るうこのサーヴァントを見つめた。

 

「バーサーカーの宝具って……ようは対心宝具だろ? どう考えても真正面から戦うタイプのものじゃあ……」

「ふふふ……楽しみは後でとっておけ。かのシェイクスピアやゲーテの性悪な宝具とは違うところを見せねばな」

 

 バーサーカーがその屈強な両腕を勢いよく打ち付けると、乾いた音が夜の広場に響いた。

 

「開演は近い!」

 

 

 

 ロンドン 某所 カナウの家

 

 玄関で身支度を整えるカナウ。

 刻限はやがて作戦開始を告げる時間に迫りつつあった。

 できる限り、動きやすい服装を着た。

 

―これで少しは生存率が上がる、はずだといいのだが。

 

 身軽になると、今度はセイバーのサーヴァントを呼ぶ。

 

「セイバー、準備はいいか?」

「……」

 

 声をかけてみるが、セイバーからの返事がない。

 彼女は窓から外の景色をぼうっと眺めている。

 

「セイバー?」

「ん、ああ……すみません。少し考え事を」

「大丈夫か?」

「心配いりません、戦闘には全力で挑むつもりですから」

 

 カナウを心配させまいと、セイバーは微笑んだ。

 

「……真名、まだ思い出せないか?」

 

 おそらく答えはわかっていたが、カナウは思わず聞いてしまった。

 聞いてから彼の中で罪悪感が膨れ上がり、バツの悪い表情を思わず漏らす。

 

「……すみません。私は、サーヴァントとしては失格かもしれませんね」

「ごめん、そんなつもりじゃ」

「わかっています。カナウの人柄はこのわずか数日間でも身にしみて理解しています」

 

―だからこそ、あなたに失望されることが。

―私はこんなにも辛い。

 

「……宝具は使用できませんが、いくつか私に策があります」

 

―嘘だ。本当は既に宝具は使用されている。

 

「あとはアーチャーやバーサーカー、ランサーが前衛で戦ってくれるでしょう」

 

―ずっとずっと、騙し続けているのだ。

 

「6対1であれば、いくら地域による補正を受けた死神犬であっても……」

 

―騎士としてこれほどの辱めを今も背負って。

 

 

 

「力を出せないことを心配しているんじゃない、前にも言っただろ?」

 

 ふいにカナウからの言葉が、まるで異なる方角から急に吹いた風のように、セイバーをハッとさせる。

 

「自分が何者かもわからないまま生きるのは、耐え難いことのはずだ」

「たとえ自分が何者であっても、自分の存在を肯定してこその人間だろ?」

 

―ああ、いや、今はサーヴァントなんだけど。

 苦笑いしてカナウは付け加える。

 

「自分の存在を……肯定する」

「そのためにまずはやっぱり名前だと思うんだよな」

 

 

 顎に手を当てて考え事をするようにカナウは続ける。

 

「この名前すら、本当の両親がつけた名前ではないんだ」

「自分が何者なのか、本当のところ、俺自身もわかっていないんだと思う」

「だからこんなふうに、流されるようにいつも生きているんだ」

 

―そんなことはない!

 

 心のなかでセイバーは反論する。

 しかし声が出ない。 

 

「いつか、セイバーの本当の真名が知りたいものだね」

 

 そしてフッと微笑んだ。

 

 

 

「……戦力を温存しておきます」

 

 不意にセイバーは霊体化する。

 粒子状になる寸前、セイバーの目が目元が少し光っているように見えた。

 

 

 

(余計なことを言ったか?)

 

 そんなふうに考えていると、家屋の奥からもうひとり少女が現れる。

 ホムンクルスの少女だ。

 

「……少しでかけてくる。朝までには戻るよ」

「行くのね」

「ああ……大丈夫、かならず生きて帰ってくる。そうしたらまた、新しい話を持ってくるよ」

 

 このホムンクルスの少女を匿ってから数日。

 彼女は本を読めば読むほどよく喋るようになったと、カナウは考えていた。

 

「ねぇ、カナウ」

「何だい?」

 

 ふと、ホムンクルスの少女がカナウを呼び止める。

 

「本当は辛いんじゃないの? 怖いんじゃないの?」

 

 疑問に思っていたことを彼女はぶつけてみた。

 

「……怖くないさ」

 

 少し考えて、カナウは答える。

 

「本当に?」

「怖くないね」

「不思議」

「どうして?」

 

「人間は死を恐れているのではないの?」

 

―そうか。これも物語から得た知識で。

 

「そうだ。恐れている」

 

―でも。

 

「でも実際のところ、死ぬより怖いことなんて、この世にはいくらでもある」

「それらに比べたら、死ぬことなんて、些細な不幸のひとつさ」

 

―そうさ、死ぬよりも恐ろしいことなんてこの世にたくさんある。

―いちいち怖がってなんかいたら前に進めない。

 

「俺は前に進みたい。失った自分の名前を取り戻したい」

「そのために命を落とすことになっても、最後には笑えるだろうから」

 

「まるで英雄のような勇敢さね」

 

 不意に少女はつぶやいた。

 

「そうだ、俺は英雄に憧れている。でもスーパーマンみたいな誰かの望みを叶える英雄じゃない」

「自分自身で、自分のために苦難を乗り越える、そういう英雄さ」

 

「……わかった」

 

 少女はなおもカナウに何かを告げようとして、あるいは何かをしようと、片手を振り上げてカナウを指差したが、結局その手を下ろした。

 

「な、なに?」

「なんでもない」

「そうか……」

 

 

 

「……っとそうだ、キャスターがこの家に結界を張ってくれているんだ」

「ここでじっとしていてくれ、なるべく部屋から出ずに隠れているんだ。いいね?」

 

 今日の朝のこと、キャスターが現れてカナウたちに魔力の込められた布石を渡していった。

 この布石が部屋を囲い、結界となって防衛してくれるらしい。

 

「なにせ灰色のガンダルフだ。実力は折り紙付きだろう」

「安心して、ここで待っててくれ」

 

 そう言い残して、カナウは玄関の扉を開ける。

 

 冬が近い冷たい風が体を覚醒させる。

 

 古い路地に降り立つ。人の気配は既にない。

 

「……よし、いくぞセイバー」

 

 そしてコートの襟を立てて、カナウは歩き出した。




遅くなって申し訳ないです。
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