函根鎮守府~提督と艦娘たちの戦いと日常~   作:柱島低督

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セカンドインパクトの激震が世界を襲った。人類は数を半数に減らした。立ち直る人類は南太平洋から始まった異変に気を向ける事はなかった。そして、気づいた時は既に手遅れで、人類は手も足も出ない内に陸地まで活動圏を押し込まれた。奴らー深海棲艦ーは人類が積み上げた現代兵器の悉くを退け、人類に、地球に存在する強者が自分達だけではないことを思い知らせた。
ある者は、あの世への衝動に駆られ、ある者は神に縋るべきと声高に叫び、ある者は神に見限って信仰を捨てた。
そんな地獄に突き落とされた人類に、一条の希望の光が差す。「艦娘」が出現し、深海棲艦と互角に戦い得る力を人類は初めて手にした。しかし、彼女達は万能ではない。ヒトの願いに応え現れた彼女達は、人間に存在基準を置くため、歪な存在となった。故に心の支えを持たず、「提督」という存在がいなければ実力を引き出すことは叶わない。
艦娘と共に現れた「妖精」達は、海軍中の人間を観察した。そして一人の男に辿り着いた。


第一章 函根鎮守府
第一話 邂逅


 …当海戦においては生還した艦艇が無く、情報は戦闘中の通信、衛星データリンクから入手した情報しかなく、戦闘詳報が存在しない。従って以下に確実な情報を出来うる限り詳細に記述する。

国連軍艦隊は接敵と同時に砲雷撃同時攻撃を受け戦線が瓦解。側面援護の日本海軍選抜部隊は空襲と超長距離砲撃を同時に受け前衛が崩壊。辛うじて全滅を免れた本隊も6割が爆沈。以後の戦況は不明である。

 

被害一覧

 

・未帰還(行方不明含む)

   ・国連海軍(アーノルド・フレッチャー大将(米)直卒)

       巡洋艦92

       駆逐艦149

       フリゲート162

       ミサイル艇87

   ・日本海軍(寒川通司中将直卒)

       巡洋艦43

       駆逐艦58

       フリゲート71

       ミサイル艇44

   ・日本海軍基地航空隊

       支援戦闘機77

       邀撃戦闘機81

 

・戦没者

   ・国連海軍

       18,351名

   ・日本海軍

       9,847名……』

 

…キ、おい雪成(ユキ)

 

俺のことをユキと呼ぶ人間(友人)は地味に少なく、この大本営図書館に来るような奴はあいつだけだ。そんなこと意識する前に既に口は反応している。

 

「何だ拓人」

 

「何だじゃねえよ」拓人ー朝霧拓人がさして怒った風でもなく続ける

 

「館内放送がガンガンかかってたぜ。元帥室に出頭せよ、ってよ。何かお偉いさんがたに悪いことしたか?」

 

目が笑っている、本気で聞いてるわけではなさそうだ

 

「馬鹿言え、んなわけねーだろうが」

 

軽く答えて読んでいた本を閉じる

 

「集中してるとまわりが見えなくなるのがお前の唯一の悪いとこだよな」

 

「ハハハ」受け流しつつ本ー第二次マリアナ沖海戦詳細資料ーを本棚へ戻すその足で図書館を後にする。窓から見える空は雲が低く垂れ込み、雪が降っている。

 

…………

……………

…え、…………雪?(※フリーズ)

……………もう3月で増してやここは盆地だぞ

何をどうすれば雪が降るというのだ

思わず足を止める。嫌な予感しかしない。

 

『元帥室』重苦しい達筆(なのか?)な(そしてほぼ読めない)檜のルームプレートに書かれた文字を見ながらドアをノックする。この字も元帥の趣味らしい。いちいちよくわからない趣味をしている。誰か、と聞かれるので

 

「寒川少佐、只今出頭いたしました」と返す。

 

「入れ」

 

「失礼します」

 

「25分遅れだ寒川少佐、俺をここまで待たせるとは…まあ座れ」

 

「それでは」腰掛ける

 

「今回は何の用でありますか?」

 

「ちゃっちゃと本題に入るがいいな?」

 

「はい」

 

「最近、深海棲艦に対抗し得る可能性がある存在として艦娘が発見されたのは知っているな?」

 

「はい」

 

もちろんこれは知っている。確か旧日本海軍の艦艇と同じ特徴を持つ艤装を背負い艦の頃の魂と記憶を宿した少女、だったはず。そのことを口に出すと元帥は首を縦に振る。

 

「今回確認されたのは白露型駆逐艦2番艦 時雨だ」

 

「時雨、ですか。あの『佐世保の時雨』ですか?」

 

「これが彼女の写真だ」

 

そこには三つ編みにした黒く長い髪の先端を赤いリボンで縛って、黒を基調とし、所々赤を散りばめたセーラー服を着た少女が写っていた。見た感じ13~15歳位に見える。

 

「彼女は我が軍に合流することを快諾している。そのため既に彼女は函根鎮守府の指揮下の入っているが、君の知っている通り函根鎮守府の提督の席は現在空席にある」

 

「はい」

 

さっきの雪を思い出し嫌な予感が頭をよぎる。

 

「そこの司令を任せたい」

 

「はい…」

 

警護役として駆り出されるのだろう、きっと。「君にだよ」と言われても護衛部隊の指揮を任されるのだと思った。現場指揮か…肉体労働は得意ではない。これだから事務担当に回ったのだ。気落ちしていく。

 

「なんだ?以外に反応が小さいが」

 

「えっ!?俺がっすか!?」あっ…ヤバイ素が出た

 

顔色を伺うが起こってはいない。セーフか。

…よりも…

マジかよ聞いてねえよこの元帥話の振りがメチャクチャだよ(褒め言葉)

 

「それに際して今回、正式な辞令を下す。寒川()()、本日付けで函根鎮守府司令官として職務を開始せよ」

 

封筒を渡される。封筒の中身を見ると本日付けで大佐として着任せよとある。なるほど、嵌められた。この部屋から初めて窓の外を見る。吹雪いてる。何がどうなってんだちくしょうメ。

 

「これが彼女のいる区画へのIDとパスだ。警備部門にはこちらから話を通しておく。言って来い」

 

「感謝いたします。不肖寒川雪成、謹んで拝命致します」

 

カードキーを渡されその区画への地図を手にして部屋を出る。

目の前に拓人がいる。

 

………ふぁっ!?(※フリーズ(立ち直りが早くなった))

 

「ななななな何でお前がいるんだよ」

 

「いいだろ?」

 

ニヤニヤしてる。ニヤケ顔が妙に腹が立つ。さてはこいつ盗み聞きをしてたな。目で訴えるが気づかないらしい。都合のいいことだ。

 

「よくねえよ。その顔のせいで説得力皆無だよ」

 

いや待てよ?元帥室前までくるのに相当な許可が必要だ。この区画に入る時、この廊下に出た時、廊下の中間の警備員詰所でも許可が必要なはずだ。そうこう考えてる内に拓人は元帥室に入って行く。

そういうことか。遠慮なくこの場を立ち去ろう。今絡まれたら厄介だ。

ほらそこ逃げとか言わない。実際逃げなのを理解してるんだから。

 

なるほどあの元帥結構有能なようだ。俺があいつと会話してる一瞬で連絡を済ましたらしい。IDを見せた瞬間顔パスで通れるじゃないか。

 

担当の警備員に聞いて彼女の居る中庭へと向かう。

 

「誰、かな?」

 

「今日から君の所属する函根鎮守府の司令になった、寒川雪成だ。今日からよろしく」

 

「僕は白露型駆逐艦「時雨」だよ。これからよろしくね」

 

きっちりとした海軍式敬礼で返ってくる。

 

「明日にはここを出発して函根に入りたい。明日の0825に正面玄関前に迎えの車が着いて大淀君と共に0850に駅に入る。0900発の専用列車で鎮守府に向かうから0820までに準備を済ませてくれるとありがたい」

 

「うん。聞いてるよ」

 

「何か質問は?」

 

「大丈夫。特にないよ」

 

「それじゃ明日の朝にまた」

 

「分かったよ」

 

さてと、俺も準備に向かうとするか。尤も、警護課の仕事の都合であちらこちら飛ばされてばっかりだったので幸い部屋の荷物は少ない。

 

「おいユキ!」

 

「っ!」

 

デジャヴを感じる。気のせいではないはず。多分。恐らく。きっと。そんな気がする。

 

「抜け駆けしやがって。急に消えるなよ」

 

「ああ、うん」

 

曖昧に返す。ここにいるのが分かってたなこいつ。そっと反対側へ足を向け気配を消して逃げる。逃げるが勝ちだ。異論は認めない。幸い(?)なことに昔から影が薄くて気配を消すのは得意だ。

 

「ああんもうどこ行った?おーい!ユーキー!」

 

取り敢えず自室の前まで来たので中に入って鍵をかける。明かりをつけて封筒の中身を取り出す。ホチキスで綴じられている手順書を読み終え最後に申し訳程度に入っている紙を二枚取り出す。

 

 

海軍大本営第四警護課事務次席 寒川雪成

 

任 海軍函根鎮守府司令長官

 

平成二十八年三月二十八日

 

軍令部元帥    景山英作

 

 

と、もう一枚。

 

 

寒川雪成

 

任 海軍大佐

 

平成二十八年三月二十八日

軍令部元帥    景山英作

 

 

これを要約すれば『本日付けで大佐として着任』となる。

はああ…

 

マイルームカッコカリの片付けをしていた寒川雪成大佐はクソデカ溜息をついていた。




・注意は払っておりますが、誤字脱字等あるかもしれません。気づいた方は、報告いただければ幸いです。
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