函根鎮守府~提督と艦娘たちの戦いと日常~   作:柱島低督

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前回のあらすじ クソジジイ(元帥)の無茶ぶりとぼっちスキル発動


第二話 着任

寒川雪成大佐(シャツの裾はズボンに入れる派&元帥の無茶ぶりで疲労困憊中)は自室の片付けを済ませベットにバタンキューして0600の総員起こしで目を覚ましたところである。

 

朝食を摂りに下へ降りて行く。大本営の食堂は第一から第五まである宿舎の其々一階に設けられ、中華系、ラーメン系、ファストフード店、和食・うどん系、牛丼店までが入っている。卵かけご飯定食を頼み醤油をかける。

朝はTKGに限る。異論は認め………る事にしよう。

卵を溶きながら今日のスケジュールを思い出す。0900の専用列車で箱根へ向かうために0830に車が来る。

 

ここから箱根までの鉄道路ー中央縦断鉄道路ーは函根鎮守府の計画着手後に敷設された比較的新しい鉄道路だ。

セカンドインパクト後に生存していた経済の中心の静岡方面と第二新東京をほぼ最短ルートで一直線につなぐルートであったが、中央道新幹線開通後は交通に占める地位が低下していた。箱根の近くまで延伸していた状況と、ほぼ全線において山間のトンネルが中心になっており全線地中化が容易だったことから第二新東京市ー旧松本市ーから箱根までのルートは軍事路線に徴発された。最短ルートをつないだため全長は180kmで、高速車両を利用するため一時間強で着く。駅出口は函根鎮守府施設構内に直結しているので5分とかからず中へ入れるだろう。

 

宿舎から出て朝の光を浴び、澄んだ空気を吸う。大本営敷地を出る時に出入口ゲートの警備員にパスを見せ外に出る。外のスーパーでミカンを1ネット分とお茶を買ってまた出入口ゲートを通る際にパスを見せる。中に戻って自室へ向かう。

 

確か向こうでは既に2隻が建造されて大本営ドックでも試験稼働が間近だったはず。向こうで使う用のパソコンで3隻の情報を呼び出す。

白露型駆逐艦4番艦 夕立

綾波型駆逐艦1番艦 綾波

大淀型軽巡洋艦1番艦 大淀

ソロモンの悪夢とソロモンの黒豹・鬼神、史上最後の連合艦隊旗艦か。

 

夕立は第三次ソロモン海海戦の第一夜戦において単艦で突撃し米艦隊に大損害を与えた(とされている)艦である。

 

綾波はその後の第二夜戦においてこれまた単艦で突撃し米戦艦2隻を護衛していた駆逐艦4隻の内2隻を撃沈もう2隻を大破させた。

 

どちらの艦も駆逐艦史に残る戦果を上げた。どんな性格なのかの情報についての記載が見られないが写真はある。

 

夕立は金色の長髪を下ろし、目は緑色をしている。細い紐の蝶結びの様な髪飾り(?)をつけている。どこかのお嬢様の様な風貌だ。

 

綾波は茶髪の長髪を後ろで留めたポニーテールの髪型をしている。

 

史実における武勲艦はおっとり系(見た目)になる法則でもあるのだろうか?

 

大淀については、建造された際艤装を持たず、事務能力が反映されたようで事務担当のようだ。黒縁メガネをかけ、緑色のカチューシャの黒髪ロングで、学校だったら生徒会長の様なしっかりとした真面目な印象を受ける。

 

そうこうしていたら迎えの大淀が来る。もう0815だ。

 

「提督。お迎えに上がりました」

 

「お疲れ。それじゃ行こうか」

 

「はい。お荷物は担当者に一任してあります」

 

みかんとお茶、そしてパソコンを持って部屋を出る。幸い荷物はカバン一つに収まった。本庁舎正面玄関ロビーに向かう。

 

大本営の地上庁舎全ては地下通路でつながっている。

有事に備え、各庁舎の電源システムー正・副・予備の三系統ーは其々独立している。

地下通路には更に非常用の耐爆・防水・耐汚染隔離用隔壁が設けられ各々で気密レベルを維持している。地下に入る階段には完全遮断隔壁が設置され分離できる。

 

中央作戦戦略指令室が入る戦略司令部棟地下は外部から完全に切り離された独自の電力系統ー主・正・副・補助・予備・非常・の六系統ーと気密システム、非常用の7層の耐爆・耐汚染隔壁・補助空間で地上から隔てられた上で通常用の地下通路からも分断され絶対に直接侵入することは不可能である。

地上施設は厳重に警備が固められ常時厳戒態勢ー現在の軍の中では最高レベルの警戒体制ーが敷かれている。警備隊は侵入者に対し全火器の使用が許可されている。

 

今日はそこには関係が無いが提督となった以上いつか行くことになるだろう。地下通路を抜けて本庁舎正面ロビーに出る。0820ジャストだ。

 

時雨が既に着いて待っていた。

 

「提督?僕をもう5分も待たせてるよ?」

 

「うっ。スマン」

 

「まあいいよ」

 

あっさり許してくれた。キレたら5万馬力で締め殺される。もしかしたら12.7cmの砲弾をねじ込まれるかもしれない。そうなったらひとたまりもなく俺の体は木っ端微塵だ。けど許してくれた。機嫌は良さそうだ。良かった。

 

荷物をトランクに放り込み時雨と大淀と共に後部座席に座る。時雨、大淀が左右から挟み込み、大淀がドアを閉めた。

 

「提督。ほら、座席ふわふわでふかふかだよ」

 

「ああ。そうだな。あと、もう出発するからシートベルト締めとけよ」

 

身をシートに深く沈めて時雨の問いかけに応える。

 

「うん。分かった」

 

第二新東京を目指して走る。山間を通っていた細い道は軍用車両の通過用に一車線の幅が広くなっており片側二車線まで拡張されている。

 

第二新東京駅裏の政府・軍用要人警護車両用地下駐車場へ入る。IDとパスを見せて地下の軍用特殊車輌プラットホームに出る。中央新幹線で使用されているN700系車両を改装し速度を一部犠牲にした代わりに高い防御力と安全性を確保した車輌ーN700-03Tーが停車している。1輌目・最後尾の8輌目は襲撃警戒用赤外線センサー・精密探知機器を搭載。更に正面装甲は660mmの複合装甲で防御盾として運用可能な作りになっている。2~4・6~7輌目には非常時に備え警護隊が待機し、武器庫となっている。護送対象は中央の5輌目に収容される。

 

「何ていうか……暇だね」

 

「……そうだな。………」

 

安全のため全線が地下に埋められているので景色に変化がないのである。

 

みかんの皮を剥がしつつ答える。一房目を口に放り込む。甘くて美味い。

 

「提督?そのみかん、僕も食べていいかな?」

 

「ん?いいよ?」

 

「ありがとう」

 

暫くしてみかんの味にも飽きて手が止まってくるとそれを見計らっていたかの如く時雨がよっこいしょとリュックの中から将棋盤を取り出す。

 

「提督って将棋指すかな?」

 

「まあ…そこそこ?」

 

こんなやり取りで時雨との対局が始まった。

 

1戦目は相矢倉で一応勝てた。

2戦目は一手損角換わりに相腰掛銀で、時雨が勝った。

3戦目にもなると、趣向を変えた時雨が四間飛車に、そこにこちらから山田定跡の急戦を仕掛けて、ギリギリ勝った。

白熱して4戦目をやろうというところでもう函根地下プラットホームに入った。

 

「っ! 夕立!」

 

時雨が駆け出す。本人は会ったことは無いようだが話でも聞いていたのだろうか。

 

「時雨ちゃん元気だったっぽい?」

 

「僕は大丈夫だよ。夕立は?」

 

「夕立も大丈夫っぽい!」

 

抱き合ってはしゃぐ二人から離れてもう一人少女が近づいてくる。

 

「ごきげんよう。特型駆逐艦、綾波と申します」

 

「寒川雪成です。以後よろしく」

 

見た目通りほんわかふんわりしている。

 

「夕立っていつもあんな感じなのか?」

 

「こんなにはしゃいでるのを見たのは綾波も初めてです」

 

「そうなのか」

 

夕立と時雨の奇跡の(?)再開も一段落したところで上へ向かう。

 

函根鎮守府が立地する函根国有地帯は芦ノ湖の北岸、旧箱根町の全域を含んでいる。周りの山岳地帯も国有地となっており、一見森林に見える山腹には国連陸軍第二方面軍の戦車大隊と特科部隊一個連隊、日本陸軍の中央方面師団一個師団が展開し防衛線を構築している。

更に地中に埋め込まれた第八までの要塞には対空・対艦誘導弾発射用VLSが設置された他、OTOメララ127mm速射砲、45口径46cm三連装砲、30.5cm連装砲を中心に多数の砲熕兵装が展開している。

鎮守府施設は基本的に出撃ドックとの海抜標高一致のため地下900m(海抜20m)に設けられ第一・第二発令所と独立電力系統ー大本営戦略司令部棟と同じ主・正・副・補助・予備・非常の六系統ーを賄う発電設備が厳重に保護されている。

戦闘情報処理を高速で行う中央戦略コンピュータとしてスーパーコンピュータ・MAGIシステムーメルキオール、バルタザール、カスパーの三基のスーパーコンピュータによる多数決システムーの筐体が設置され、函根鎮守府内部設備すべてをコントロールすることが可能な構造になっている。地下通路各所には非常用耐爆隔壁が設けられ、区画単位で特殊ベークライトで埋めて遮断することも可能である。

居住区画は地上にあるが非常時(意味深)には地下に格納される。

更に居住区画を守る様に地上に要塞が展開され、カクモ式複合装甲板が現在8層まで完成し地下施設を守っている。

 

と、大淀が説明した。

 

つまり地方の一拠点としては過剰と言える程の施設が用意されているのである。

 

そのため素直な感想が

 

「ぶっちゃけかなりオーバーキルじゃないかこの設備?」

 

となるのも致し方ないのである。

 

「え?提督、今何か言った?」

 

時雨がつぶやきに反応してしまうのである。

 

「いや、何でもない」と苦笑いで返した寒川雪成大佐(いろいろ違う意味で疲弊中)は自分の心の世界の中心で「腑に落ちねぇ!」と100回叫んだが、このことがあとあと重大な事件の鍵を引くことは遂に無かったという。




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