函根鎮守府~提督と艦娘たちの戦いと日常~   作:柱島低督

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前回のあらすじ せっかく建造したはいいけど最後1/4程度のメシテロパートが全部持っていった。


第六話 涼風と吹雪と暁と満潮と…

「ちわ!涼風だよ。私が艦隊に加われば百人力さ!」

「はじめまして、吹雪です。よろしくお願いいたします!」

「暁よ。一人前のレディーとして扱ってよね!」

「満潮よ。私、なんでこんな部隊に配属されたのかしら」

 

例の事件(サルミアッキ事件)から15分かけて神通と夕立を回復させたのち、工廠に戻ってきた寒川は、建造された4隻の艦娘と相対していた。

 

「挨拶してもらったところ悪いんだけれど外は雨が降ってるし、立ち話もなんだから先ずは執務室に来てくれ」

 

◆◇◆◇◆◇◆

 

「ちわ!涼風だよ。私が艦隊に加われば百人力さ!」

 

江戸っ子気質の涼風を前に、再び着任の挨拶をして貰う。

 

「ウチはまだ数が少ないからな。期待している」

 

「おぉぉ、期待されちまったよぉ…」

 

実際の所寒川が期待しているのは事実で、1艦隊も組めなかった状態では駆逐艦1隻でも実際大幅な戦力になると判断していた。期待された本人も案の定満更でもない様子で、頬を緩ませている。

 

「はじめまして、吹雪です。よろしくお願いいたします!」

 

「真面目だなぁ…」

 

寒川は勢いに押されて口数が減る。

 

「世界を驚愕させた特型駆逐艦。存分に活躍してくれ」

 

「はい!有難うございます!」

 

前世では戦いの過渡期を渡り切れずに、建造時に想定された戦いとは大きく違う戦場に送り込まれ、矢尽き刀折れる迄必死に足掻きながらも届かなかった想い。それを爆発させるような活躍を期待していた。

 

「暁よ。一人前のレディーとして扱ってよね!」

 

背伸びをして大人ぶるお子様タイプなのではないかと予想した寒川は彼女の頭に手を伸ばす。そしてその手を頭の上に乗せ左右に動かす。

 

「な、なでなでしないでよっ!プンスカ!」

 

形だけは怒ってはいるが本人は満更でもない様子で完全に隠し切れずに嬉しそうにしている。それよりも「プンスカ!」は本人が口に出すものではない(擬態語)のだが、そこに突っ込みたいという衝動を、早く終わらせるためにグッと堪えて次の艦娘に顔を向ける。

 

「満潮よ。私、なんでこんな部隊に配属されたのかしら」

 

「いやぁ、こんな小さな艦隊で悪いねぇ」

 

「そういうことを言ってるんじゃないわよッ!アンタがいけ好かないって言ってんのよッ!」

 

「まぁそうカツカツするなよ」

 

こんなこと言ったらシバかれるので言わないが心中ドウドウと声を掛けていた。

 

「なっ!」

 

一瞬の意識の虚につけ込む要領で一気にまくしたてる様に伝える。

 

「ハナからすべて信じろとは言わないさ。少しずつ様子を見ててくれないか?結論を出すのはそれからでも遅くないはずだ。それでもいけ好かない奴だと判断したらそれでいい。焦る必要は無いんじゃないか?」

 

言いたいことは伝えた。後は彼女自身の判断に任せることにしようと心に決めた寒川は返答を待つ。

 

「まぁ、見ててあげるわ。フンッ!」

 

満潮も納得した(丸めこまれた)ところで時雨たちにあとを譲る。

 

◆◇◆◇◆◇◆

 

挨拶の後の時雨たちの自己紹介も終わり、執務室脇の座敷コーナーでお茶を飲みながら休憩となった。

 

時雨は西村艦隊のよしみか、満潮と会話する。2人とも時折顔を綻ばせ、和やかな会話を交わしているだろうことは想像に難くない。

 

涼風は姉妹艦の夕立と賑やかな会話を交わし、時折会話がこちらにも聞こえてくる。

 

吹雪、綾波、暁の特型I、II、III型長女で集まって会話している。3人とも朗らかな顔をしている。

 

神通、大淀は軽巡同士でお茶を飲みながら時折笑顔を浮かべる。

 

平和とはまさしくこのことだろうと寒川は確信し、お茶請けのいちご大福に手を伸ばす。すると同時に取ろうとした時雨と手がぶつかるが、

 

「あっ…」

 

「ほら、食べていいから」

 

と言い、手を引っ込める。代わりにお煎餅を手に取りパリポリと噛み砕く。いつしか窓の外の雨は止んで晴れ間が覗いている。

しかし洋上は時化てることを示す海域図の赤いゾーンが広範囲に渡っていることをタブレットで確認すると出撃はやはり中止だと判断した。

 

「平和だなぁ…」

 

身を投げ出していると今朝補佐を頼んだ小さな秘書艦が声を掛ける。

 

「提督、艦隊の編成を考えようよ」

 

「あぁ…神通達は?」

 

周りを見渡すと時雨と大淀が立っているだけだ。他の誰かの姿はない。

 

「?神通たちなら提督が寝ている間に部屋に帰ったよ?お開きにして」

 

「そうか。寝てたのか…いまいち実感は無いが…」

 

身体を起こして脳を回転させる。

 

◆◇◆◇◆◇◆

 

函根鎮守府講堂

艦娘全体への指示、発表がある際に使用される空間には、函根鎮守府の現在の全員が集められていた。

 

「第一艦隊の編成を発表する」

 

寒川の一言で場が静まり返る。

 

「旗艦時雨以下、神通(副官)綾波(3番艦)夕立(4番艦)涼風(5番艦)満潮(6番艦)だ。第二艦隊は、吹雪、暁の編成だ。第一艦隊は1-1を中心に周回して練度を確保。第二艦隊は遠征を中心に、今後新たに加わる(軽巡・駆逐級)艦娘の初期教練も任せることになる」

 

『はい!』

 

◆◇◆◇◆◇◆

 

1025出撃ドック

第一艦隊の面々が揃った其処では作戦前のブリーフィングが行われていた。作戦海域図には時雨たちがボスを撃破した時の航路が橙色の線で表示され、それを幾度も挟むようにジグザグと赤色の線が引かれ、敵主力との会敵地点まで伸びている。

 

「今回の作戦の主目的は、鎮守府正面の掃討・安全確保になる。速やかな制圧を期待している」

 

『了解!』

「時雨、行くよ!」

 

号令一下、第一艦隊の全員が次々と飛び出していく。青い海面に白波が覆いかぶさるように幾重にも重なる光景は見る者に威風堂々とした威圧感と力強さを感じさせる。

 

◆◇◆◇◆◇◆

 

主モニターに戦闘の様子が映し出される。大柄な体躯に備え付けられた砲が火を吹く。駆逐イ級の砲撃を神通が躱し、時雨、満潮が砲撃を掛け水底へ沈んでいく。一方的というにはあまりにも言葉に見合わない蹂躙が繰り広げられる。

 

◆◇◆◇◆◇◆

 

艦隊は速度を上げ海域の首魁たる軽巡1、駆逐3の敵艦隊と正面からぶつかる。神通がその身に多数搭載された砲で弾幕を張り、相手の動きを牽制する。綾波、夕立が駆逐を1隻沈め、時雨、涼風もそれに倣うように撃沈。満潮の砲撃は駆逐が小破に止まる(とどまる)

 

次々と随伴を撃破された軽巡の砲撃が乱れ始め、混乱していることを伝える。それに気付いた神通が一気に速度を上げて懐に飛び込み至近距離から砲雷撃を浴びせようとする。

 

阻止に動く駆逐を時雨たちが抑えて沈め、神通は接近に成功する。時雨たちは神通に攻撃させまいと主砲のつるべ撃ちを掛ける。あいまいな照準で撃ち出された砲弾は大きな放物線を描き、周囲にばら撒かれるように着弾の水柱が上がる。敵の視界を遮る()()は、相手の動きを抑え込み、神通の接近をより容易くした。

 

しかし砲撃の繰り返されるうちに命中率はすぐさま上がり、着弾の水柱の代わりに爆発・黒煙が上がる数が増える。敵がよろけ、動きが鈍る。さらに駆逐の砲撃が集中し、姿勢を完全に崩す。

 

駆逐たちの繰り返される砲撃が堅牢な装甲にダメージを負わせていた。数瞬の内に何発もの砲弾が突き刺さり、装甲が綻び始める。さらに執拗に繰り返される集中砲火が装甲を砕き、武装に直撃した砲弾が外板を貫き完全に破壊し尽くす。

 

結果として必中距離から神通の砲雷撃が放たれ、そのどれもこれもが敵を捉え、その全てを吹き飛ばし、一瞬のうちに海の藻屑に還す。

 

巨大な水柱が上がり、中から人影が現れる。

 

「響だよ。その活躍ぶりから不死鳥の通り名もあるよ」

 

◆◇◆◇◆◇◆

 

「響だよ。その活躍ぶりから不死鳥の通り名もあるよ」

 

ところ打って変わって函根鎮守府帰投桟橋。作戦で邂逅した彼女()と、寒川は相対していた。

 

「この函根鎮守府の司令をしている寒川です。よろしく」

 

「こちらこそ、よろしく頼むよ」

 

落ち着きを持ちながら静かな闘志を湛えた彼女の目を見つめる。

 

「あ!見つけたわよ響!」

 

寒川のさらに背後から暁の声がかかる。ギギギと首から音を立てながら振り返るとそこには暁が立っていた。

 

「い…居たのか暁」

 

「ほかに暁型は居るのかい?」

 

飛び込む暁を受け止めつつ響が訊く。内心、どちらが姉だ!と叫び散らしたい寒川は顔を僅かに引きつらせながらその衝動をグッと堪え、その反動で一瞬反応が遅れる。

 

「ん、ああ…他にはいないけど…」

 

やや引き気味で答える。前世で生き別れる形になった姉妹。2人きりで仲良くしている時間を邪魔するのも申し訳ないと思った寒川はそっと場を去った。

 

◆◇◆◇◆◇◆

 

響は第二艦隊に編入され、3隻揃う。

 

「3隻いれば遠征も多少はこなせるな」

 

「それじゃぁ遠征の準備をするの?」

 

小さな秘書艦が横からささやく。

 

「練習航海に出てもらおうかな…」

 

「分かった。呼んでくるね」

 

「あぁ、頼む」

 

◆◇◆◇◆◇◆

 

時雨が吹雪、暁、響を呼び出し、執務室に全員揃う。彼女たちの前に立ち、遠征の確認を行う。

 

「練習航海に出てもらおうと思う。先の戦闘で深海棲艦は減ってるはずだが、用心して注意してくれ」

 

『了解!』

 

出撃ドックへ移動し、航海のルートの最終確認を行う。先の戦闘で第一艦隊が通ったルートを示す橙色の線を追いかける様に赤い線が一直線に引かれ、橙色の線にまとわりつかれるような形となる。その赤い線は会敵した地点の直前で右に逸れ、少し進んだところで反転し、一直線に鎮守府へ帰ってくる。

 

「司令官!吹雪、遠征に出撃します!」

 

威勢よく吹雪が先頭で飛び出し、暁、響が続く。本格的に始動した第二艦隊を見つめる。

 

ドックから飛び出していく後姿が見えなくなるまで見送る。3人の後姿が、艤装に備え付けられたマストの先端が水の一分子よりも小さくなろうかというくらいまで離れたのち、帰ろうとすると時雨が袖をつかむ。

 

「もう見えなくなったし…」

 

「まだ向こうからは見えてるよ。こっちから見えるから」

 

「はっ…これはまた…」

 

人間を遥かに超える視力を持つ彼女の言葉に驚いた寒川の視線は、すぐ横の小さな存在ではなく、全く見えない水平線の向こう側へ向けられていたという。




・注意を払ってはおりますが、誤字脱字等発見された方は報告していただければ幸いです。

・今回登場した涼風、吹雪、暁、満潮、響についてですが、性格等を把握しきれていない為、発言等に少々違和感を覚えられるかも知れませんが、鼻持ちならん!という場合は感想等で一言言っていただければ、出来うる範囲で対応したいと思います。
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