函根鎮守府~提督と艦娘たちの戦いと日常~   作:柱島低督

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前回のあらすじ 珍しくシリアスパート。ヘ級許すマジ

・今回、(以前から多少はその気がありましたが……)若干のキャラ崩壊が発生しております。ご注意ください。
・また、地の文が多少荒ぶってます。
・ギャグ回となっております。また、この回は読まずとも物語の進行に影響を与えることはございません。ムリだという方はブラウザバック推奨です。


第八話 特型駆逐艦

「白雪です。よろしくお願いします」

「深雪だよ。よろしくな!」

 

場所は大本営函根鎮守府執務棟執務室、寒川の前には2人の艦娘が並んで立っていた。同型艦らしく、同じ意匠のセーラー服ー水色(薄青でも、空色でもない)を基調に、襟と袖の色のついた部分に1本の白線が引かれ、スカートは水色に染められているーを身に纏い、部屋の奥に陣取る執務卓の手前、部屋のほぼ中央に揃って立っている。

 

特I型・吹雪型駆逐艦2番艦 白雪

完成した大本営ドックの試験稼働で建造され、本来の計画では大本営艦隊を別に編成し、戦力の拡張を行う筈だったが、大本営では手に余る代物で(派閥間闘争の果て)、紆余曲折の末に函根鎮守府に配属となった。今寒川の目の前に並んでいる片割れこそが()()白雪である。

 

片や戦闘での邂逅艦、片や内部抗争の末の体裁上の着任艦。寒川は、元帥筋の軍令部率いるハト派と、往時の艦隊運用を担っていた艦隊本部を中心とするタカ派の大本営艦隊の構想を巡る衝突が繰り返し起き、その折衝を行った結果、タカ派が主導した大本営艦隊構想は白紙に帰り、所属先の議論は結局この拠点に軟着陸したという話を思い出していた。

建造されてこんなに間もないのに政治的折衝(大人の都合)に巻き込まれる半ば被害者のような立ち位置の彼女に同情する寒川は、時雨たちと共に挨拶を交わす。

 

◆◇◆◇◆◇◆

 

執務室で秘書艦の時雨と共に書類を捌いていると、ノックが4回響く。

 

「吹雪です。今よろしいでしょうか?」

 

寒川は、自身は構わないが……と言おうとして、思い留まる。視界の端に写り込んだ小さな黒髪お下げに視線を送ると、無言で小さく頷く。寒川も頷き返すと、構わない、と伝える。ドアノブが回されガチャリと音がすると、キィーと音を立てながら少しずつ扉が開く。吹雪が現れる。

 

……何やら書き込まれた1枚の紙を手にして。

 

「吹雪……それは?」

 

「むぅ、今から説明しようと思ったのにぃ……」

 

頬を膨らませて形だけ起こって見せる。正直怖くない。というか寧ろちょっと可愛い。

……それは置いといて、吹雪が続ける。

 

「居住区の私たちの部屋なんですが、ドアプレートを掛けてもよろしいでしょうか?」

 

少しモジモジして、恥ずかしいのか僅かに頬を染めながら手にしていた紙を此方に見せる。

デザイン案だろう。縦向きに3本、横向きに2本薄く引かれた線が紙を12分割している。中央の2つ並んだマス目に「吹雪型の部屋」と描かれ、キャルンキャルンの丸文字で「吹雪」、毛筆の書体(どう見ても普通の紙なので筆ペンだろう)で「白雪」、ややそれぞれの画の最後の処理が荒い「深雪」の文字に、残りの姉妹艦の「初雪」、「叢雲」、「東雲」、「薄雲」、「白雲」、「磯波」、「浦波」の艦名が、マティス-EB(所詮 極太明朝体)のフォントで書かれている。

…………突っ込みどころ満載である。

 

「ドアプレートを掛けるかどうかは自由だし、デザインも好きにして貰って構わない……が、材質は何にするんだ?場合によっては止めるかもしれんが……」

 

「えっと……はい。キューバ・マホガニーですね」

 

キューバ・マホガニー

キューバやフロリダ半島南部原産のマホガニー。マホガニーとしては最高級の品種とされている。ハワイなどでも人工的に植林されている。

マフィアの資金源となっていることから生産者の検査が行われている。

また、他のマホガニーと比較すると価格も非常に高価であるとされていた。

 

間違っても、丸ゴシック体の艦級名を彫り込んだり、キャルンキャルンな丸文字を描いたり、毛筆で仰々しく名前を描いたり、果てはドアプレートにされた()()が斜めに傾いて掛かってたりしちゃう木材ではない。というかなぜその存在を知っているのか、そんなものをどうやって手に入れるのか突っ込みたいのは山々だったが、寒川のメンタル的に

 

「えっと……フブキ=サン、却下です…………」

 

呼ぶ名前に不穏な雰囲気を漂わせながら片言で、全国の木材流通業者を敵に回す事を未然に阻止するのが限界だった。

 

「えっ、何でですか!?」

 

「何でってオマ……高価すぎます。こんな希少なんてレベルじゃすまない木材どうやって手に入れるつもりですか木材流通業者を敵に回すつもりですか原産国の人たちにどうやって連絡つける気ですか国交断絶してる国なんですよ!?」

 

額にうっすらと井桁の筋を浮かべながら、小言を言ってるかの如く空気でお説教を垂れる寒川を、横から時雨がつつき囁く。

 

提督。大淀さんが予算通って既に下りてるって

 

時雨の背後で微笑する眼鏡。位置が気に入らないのか、しきりとクイクイと眼鏡の位置を直している。腹立つ。

しかしそれよりも、有利だと思っていたら既に外堀が埋め立てられていた事で、寒川の豆腐メンタル(絹ごし豆腐)に楔が中指立てながら突き刺さり、ぐちゃぐちゃに吹き飛ばした挙句、更には毛根にダメージを与えた瞬間だった。

ついでに国内の木材流通業者全てを敵に回した瞬間だった。

 

oh……淀=サンェ…………

 

目のハイライトをOFFにした寒川は暫し「oh淀さん相談されたんなら先に言ってくだせぇよぉ……」と繰り返し呟き、その後暫く微動だにしなかったという。

 

◆◇◆◇◆◇◆

 

閑話休題(そんな事はさておき)

 

鎮守府居住棟、1階大部屋。玄関から右に入って少し行った所の、高級感漂うドアプレートがありふれた既製品の扉に掛けられている。アンバランスなんて次元じゃねぇ、と突っ込んでやりたい扉の内側から、吹雪・白雪・深雪の声が漏れ出す。

 

「やっぱり白雪ちゃんの淹れるお茶は美味しいね。……お腹タプタプだけど…………

 

「んなこと言って、吹雪姉ぇのお饅頭だって美味いじゃん!」

 

「そうですね。お茶も進んじゃいます。ふふっ

 

「いやいやぁ……」

 

白雪の着任劇、吹雪型大部屋ドアプレート騒動から4日が経ち、こうして3人集まってお茶を飲むのも恒例となりつつあった。しかし今日だけは違うことがあった。

 

「なぜ自分が此処へ連れてこられたのか理由を訊いても……?」

 

寒川の存在である。ちゃぶ台の淵から手を挙げつつ、不審げに聞く。つい先程まで時雨と執務室で書類をさばいてた筈なのだが、「お取り込み中のところしつれぇ~~いっ」との声と共にドナドナされた挙句、居住棟のものと思われる意匠の大部屋の談話室らしき部屋の座敷コーナーにシッダウン(sit down)させられているのだが、それが手慣れた、無駄に 無駄の無い所作で、一瞬の内に拉致られてきたので暫く頭上には「?」が3つほど浮かんでいた寒川が漸く回復した所だった。

 

「毎日何時間もこのメンバーでやってたら飽きてまうっしょ?」

 

さも当然と言わんばかりに深雪が発言し、吹雪、白雪もコクコクと頷く。吹雪さんアンタ妹に優しすぎませんかねぇ!

 

「場所変えてやれば良かったのでは……?」

 

「メンバーから来るマンネリには効果ないですよ」

 

真顔で吹雪が言う。だったら綾波を呼べばいいだろう。暁や響だってきてくれるかもしれない。しかし寒川は聞き逃さなかった。「お腹タプタプ」と呟いたのを。アナタ言動が乖離してますよ。

 

「だから自分を人柱にした…………と?」

 

「はい(白雪)」

「もちろん(吹雪)」

「あったりまえよぉ(深雪)」

 

なぜ白雪が真っ先に返事をよこしたのか、あなた貴重な常識枠じゃないんですか。

 

「こうでもしないと出番が無いからですよ」

 

『おおメタいメタい』

 

3人ともそんなこと言ってないでもっと真面目にツッコミなさい。それよりも地の文の発言に返すのはやめて頂けないだろうか。

 

「他の特型の方々呼べば良かったのでは……」

 

「出番減っちゃうじゃないですか」

 

『おおメタいメタい』

 

吹雪さん、あなたまでメタ発言する必要ないんですよ?分かってます?そして白雪、あなたはついさっき同じ発言したんですからね?ツッコミできる立場にないんですよ?Do you understand ?

 

Is anything wrong ?(何か問題ありますか?)

 

だから地の文に返すのはやめて頂きたい。それと何故英語で聞いたからといって英語で返す?

 

Do you have a problem with that ?(なんか問題あっか?)

 

「白雪…………サン……?なんか口調荒くない……?」

 

「何か問題でも?」

 

「アッハイ サーセンシタ メッソウモゴザイマセン」

 

ゴゴゴという音が聞こえてきそうな程の圧を周りに振り撒きながら威圧的な笑顔でお茶をすすり、饅頭をホイホイと口にいれていく白雪。もうイメージ崩壊なんて次元じゃねぇ。度の過ぎたカオスが異空間を作り出す。

 

暫し無言が続いたあと、その沈黙を破ったのはこともあろうに張本人の白雪だった。

 

「司令官、お茶、お淹れします」

 

「いやもうソロソロお暇させて?事務に戻らないともうそろそろohよd……時雨に怒られる」

 

何故かその名を発してしまうと自身の背後の扉を某メガネが開けて、抹殺されるイメージが脳裏に浮かんだ寒川は、身震いをして小さな秘書艦の顔を思い浮かべながら訂正した。

しかし曲がりなりにも吹雪たちは艦娘だ。寒川が吐きかけた言葉の一言や二言は聞き逃さなかった。寒川が立って帰ろうとした瞬間こう発した。

 

「へ?大淀さんがどうしたんですか?」

スターーップ(s t o p)!!!!」

 

しかし時既に遅し。吹雪の口は既に大淀の名を発していた。それと同時に、寒川の心がポッキリ折れた瞬間だった。目のハイライトをOFFにして床に膝から崩れ落ちる。

 

「Noooooooooooooo!」

 

天に向かって叫ぶ寒川。しかし床板を介して廊下を走っている何者か(大淀)の振動が伝わってくる。もう来やがった。全身から力を抜き、床に横たわる。そして寒川は最期、扉が勢いよく開け放たれ、ドアプレートの紐が音を立てて千切れ、ドアプレートが飛んで行く直前に虚ろな目で床を見ながら一言呟く。

 

oh……geez……(なんてこった)

 

最終的に目のハイライトをOFFにした寒川は、大淀に再びドナドナされて無抵抗のまま、執務室の自身の椅子に押し込まれ微動だにしなかった。そしてこの一連の事件は「吹雪型ドアプレート掛け紐ちぎれ飛び事件(要するに 寒川どこいった)」と呼ばれ、一つの伝説として語り継がれて行くことになるのだが、今後語られることはついぞ無かったという。




・注意は払ってはおりますが、誤字脱字等発見された方は報告いただければ幸いです。

・今回、傍点、ルビ以外にも文字の大きさ変更、色変更を使用してみました。
・また、地の文が多少荒ぶってます。今後も多少発生する可能性があります。
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