函根鎮守府~提督と艦娘たちの戦いと日常~   作:柱島低督

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前回のあらすじ 国際規模で木材流通業者を敵に回しちまったZE!そして暴走を続ける特型に殺意の波動を発しながら寒川を〆にかかる大淀

今回から漸くエヴァキャラネタが発生します。予め断っておきます。無理な方はブラウザバック推奨です。

そして一部キャラ(特に寒川)が荒ぶります。ご注意ください。


第九話 建造(其の一)

吹雪、白雪、深雪、暁、響、5隻の揃った第二艦隊を、輸送船団の護衛任務へ出撃させる。

 

日本国内では、深海棲艦の出現以来、自由な物の移動が不可能だったため、国内資源の偏り、枯渇が問題となっていた。特に石油の()()は深刻で、輸入が困難と判明した直後から廃坑からの石炭の採掘を再開し、電力需要は石炭主軸+備蓄されていた燃料棒を投入した原子力となっていた。しかし、プラスチックを中心として、工業用など、石油の需要は一定量発生する。

その結果として、石油は本州方面で枯渇し、一時期石油輸送タンカーの中継地点として利用されていた九州では一部に余りが発生するという極端な偏りが発生していた。

関門海峡にかけられた橋は、深海棲艦の攻撃で喪失。海底トンネルは海面上昇の際水没しており、陸路では輸送できなかった。

これまで深海棲艦の襲撃を恐れてタンカー輸送は行われていなかったが、第二艦隊の編成に伴い出来た余裕をあてがう事が可能となり、大本営主導での北陸迄の輸送作戦が立案された。

 

函根鎮守府はもともと海軍拠点である。本来の目的として、中型船程度であれば補給・整備能力を有している。嘗ての戦いにおいて使用された輸送船がドックに係留されていた。

函根鎮守府から輸送船団が出発する。5隻。

 

戦時標準型の内、排水量9,500t・積載量2,000tクラスで速力31.7kntのコユ-III型高速油槽船2隻、「桔梗(ききょう)」「燕子花(かきつばた)」、排水量12,500t・積載量3,800tクラスで速力30.9kntのコユ-IV型高速油槽船3隻、「芍薬(しゃくやく)」「牡丹(ぼたん)」「百合(ゆり)」で構成され、強行突入の要領で敵中を突破する。

本隊には大本営資材部の軍人が搭乗し、暁・響が直掩、吹雪・白雪・深雪が前路掃討隊として警戒する。

 

◆◇◆◇◆◇◆

 

幸いにも深海棲艦とは遭遇せず、輸送作戦は成功。本土、鎮守府に多量の燃料が搬入され、艦隊運用上の制約も減った。しかし強行輸送がそう幾度と成功するはずが無い。そのため南西諸島の近海を制圧、その次の1-3こと潮岬沖合の敵部隊の撃破が必要である。しかし、現状の戦力で制圧は厳しく、1-3では戦艦ル級も確認されている。その為、可及的速やかに戦力を整える必要がある。そこで寒川は新たに建造を行う。

 

鎮守府工廠

 

「それじゃ、巡洋艦狙いで4つとも動かしてくれ」

 

寒川の言葉を時雨が妖精さんへ伝える。建造ドックの後方に備え付けられたモニターに表示された残りの各資材量が減ってゆく。

 

順に、

00:20:00

01:00:00

00:22:00

01:30:00

と表示される。

 

「高速建造材を投入」

 

一つ目のドックに炎が掛かり、シューと音を立てて、白煙が上がる。

 

「あたしの名は敷波。以後よろしく」

 

綾波型駆逐艦 2番艦 敷波

史実において磯波、浦波、綾波と共に第十九駆逐隊を編成し、第一艦隊 第三水雷戦隊に所属していた。マレー沖海戦、バタビア沖海戦、ミッドウェー海戦、第三次ソロモン海戦などに参加し、特にバタビア沖海戦では、重巡「ヒューストン」を共同撃沈する戦果を上げた。

 

「違うのは番号(2番艦)だけじゃないわ。所詮、零番艦(浦波)初番艦(綾波)は開発過程のプロトタイプとテストタイプ。けどこの弐番艦は違う。これこそ実戦用に造られた、世界初の、本物の特II型駆逐艦なのよ。正式タイプのね」

 

暫し沈黙が訪れる。寒川も時雨も固まる。

某式波・ア○カ・ラングレーの初登場セリフを語り終え、やり切ったと言わんばかりの顔でこちらを見つめる。蒼龍ではないので、惣流の方では無いのだろう。「訓練なしのアンタなんかにいきなりシンクロ……」の件が入っていないのがその証拠だ。しかし哀しいかな、史実においても(現地改修等除けば)此方の世界においても性能で敷波が綾波を上回ってる事実は存在しないのである。(たぶん同等くらい)

 

…………かと思いきや、急に少し面倒くさそうな、鬱陶しそうな表情になり、ジト目で此方を見つめている。まるでもって何がなんだか分からない。寒川が思わず思案していると、ふとツッコミの衝動に駆られる。

 

「残念ッ!浦波は今ここには居ないし、綾波に関しては既に実戦出撃してる。しかも性能差はナッスィングゥ!(良発音)」

 

「そんなこと分かってるよぉっ!なんか誰かに操られたみたいに勝手に口が動いてッ!」

 

無駄にテンションの狂った寒川にツンツンしながら突っ込んでくる。打てば響くタイプ(確信)。何時の間にか、時雨も敷波ではなく寒川へ目を向けている。

 

「悪い悪い。変な衝動に駆られちゃって」テヘペロッ

 

敷波は、口を△にして、より目を細めたジト目で睨んでくる。時雨も怪訝な表情で見上げている。

 

「おおコワイコワイ……と、それは脇に置いといて、ここの司令をさせて貰ってる寒川だ。よろしく頼む」

 

「……よろしく」

 

プイとそっぽを向いて差し出した手を握り返してくる。心なし力が強いような気がするというか実際強いというかイタイというかジンジンするというか血が指先で止まってる感じがするというかメチャクチャ痛いというかヤメテ痛い痛い痛い痛い

 

無理やり手を引き離すと血液がまた流れ始める。指先が凄い熱いというか若干痺れてる。しかし自業自得である。依然として敷波はジト目で睨んできているが、先程よりかは心持ち幾分か和らいでいる。一瞬垣間見えた黒いオーラは鳴りを潜めている。

 

◆◇◆◇◆◇◆

 

涙目になりながら綾波を呼んで、敷波を連れ帰ってもらう。次のドックを開くと、中から少し紫がかった黒髪をした頭身の高い艦娘が現れる。

 

「始めまして、龍田だよ。天龍ちゃんがご迷惑かけてないかな~」

 

「えっと、その……はい?天龍サンはまだ居ないんですが…………」

 

一言発した途端、龍田の顔が一瞬引きつる。ほんの一瞬、先の敷波のそれを上回る黒いオーラが発せられたように感じたのは気のせいではないはず。しかし龍田はそんなことは感じさせずに一言発す。

 

「そう……」

 

しかし続けて、

 

「そっかぁ……それじゃぁ、私が先任になるわけね~」

 

「ん、そうなるな」

 

曖昧に返す。いつ天龍が着任することになるのかはわからないが。

 

「突然だが、部屋は何階がいい?」

 

「あら~本当に唐突ねぇ~それじゃぁ3階にしようかしら~」

 

「それじゃ、これが鍵だ。はい」

 

鍵を渡し、居住棟の説明を行う。中には見取り図が要所要所に配置されているので付き添いは不要だろう。

 

◆◇◆◇◆◇◆

 

「駆逐艦、朝潮です。勝負ならいつでも受けて立つ覚悟です」

 

次のドックからは、若干灰色がかった黒髪の艦娘が現れる。しかし寒川の視線は、肩まわりに集中する。

 

「寒川です。よろしく……それよりも、ランドセル……?」

 

背部の艤装を支えるベルトが色合いといい意匠といいランドセルにしか見えない。満潮が居るのに今更かよと言いたいところだが、濃い灰色の満潮のベルトは、服のサスペンダーと色がほぼ同じで気付きにくかったのが影響している。後世に語り継がれる「私立朝潮小学校」なる言葉も存在しない時期である。満潮のそれに気付かなくとも不思議ではない。

 

いや待てよ……確か満潮も……ん?……えっと…………?

 

「司令官が待てと言うのなら、この朝潮、ここでいつまででも待つ覚悟です!!」

 

さらっと放置ボイスを口に出す朝潮。しかし目の前で言われて気付かない寒川ではない。

 

「いやキミに言った言葉じゃないから待たなくていいよ!?別に満潮が居るから一緒に帰ってもらっていいからね?居住棟に部屋が用意してあるから」

 

「はい!ありがとうございます!」

 

◆◇◆◇◆◇◆

 

「ボクが最上さ。大丈夫、今度は衝突しないって。ホントだよ」

 

「確かに史実では衝突しまくってたけど……そんなトラウマ……?…………というか、軽巡……?」

 

()()()()、最上型のネームシップ、最上だよ。()()()()がいい感じでしょ?」

 

そして再びの図鑑ボイス(放置ボイスではないが)である。

 

「いい感じに三連装主砲装備してる時のアナタは軽巡以外の何物でもありませんが……自覚ないの……?」

 

しかし重巡洋艦である。初期装備は15.5cm三連装砲である。だが重巡洋艦である。

 

「えっ」(最上)

 

「えっ?……」(寒川)

 

気まずい沈黙が場を支配する。

 

「まぁいいか。……いいの…………か……?」(寒川)

 

口を開いても あー とか うー とか意味のない音しか出ないだろうと思った寒川は、横の時雨へ目をやる。心なしかその視線は若干だが懇願気味で、救援を要請しているようでもある。視線で語る寒川、それを真正面から受け止める時雨。

 

俗にいう全振りである。そして一拍おいて、手を上げて手のひらを見せながら左右に振る。

 

寒川に対するちょっとした死刑宣告である。

 

「えっと……()()()()の最上サン……ココで最初の重巡なので、期待しておきますね」

 

重巡洋艦にほんの少し力を込めてこう放つのが寒川の限界だった。

 

◆◇◆◇◆◇◆

 

「戦艦レシピで建造まわしてくれ」

 

再び、寒川の指示の下各種資材が投入されてゆく。

 

04:30:00

01:20:00

01:30:00

01:00:00

 

全体的に1時間越えで、特に長いそれは戦艦だろう。他は重巡洋艦か軽巡洋艦クラス。寒川は高速建造材の残りを確認するが、残りは2つ。

 

「提督、どうしようか……使い切っちゃう?」

 

タブレットを覗き込んできた時雨と思わず顔を見合わせる。小悪魔的な発言をする時雨、寒川が一瞬固まる。

 

「ん、それもそうかもだけどここは待とう。資材にも余裕は有るし、時間に制約も無いし」

 

◆◇◆◇◆◇◆

 

「んっと……重巡は最上、軽巡は神通、龍田、駆逐は……時雨、綾波、夕立にでもしようか」

 

執務室で第一艦隊の編成を調整する。

 

「あと建造中は戦艦1と重巡2と、巡洋艦1……どうしようか」

 

寒川が独り言を呟く。

 

「大型艦で固めるのは何か違うような気もするんだどなぁ」

 

時雨、ここまで完全に空気である。

 

「それじゃぁ戦艦1、重巡3、軽巡1、駆逐1でどうかな?」

 

「主力の打撃の中心になる戦艦1、重巡3に、随伴の護衛に軽巡1、駆逐1ってことか……フムン」

 

「提督、その間投詞なんだか神○長平っぽいよ」

 

寒川本人はそんな事は全く意識していなかった訳だが、時雨がつっこむ。

 

「時雨、おま……SF系読むんだ……へぇ……」

 

寒川雪成(世界の命運を握っちゃった上にとあるSF作家に少し汚染されつつある独身貴族)は隣の時雨の頭に手を乗せ、左右に動かす所詮ナデナデを暫くしていた。しかし夕立に見つかりちょっと大変な騒動になるのはまた別の話である。




・こちらでも確認してはおりますが、誤字脱字等発見された方はお手数ですが御報告頂ければ幸いです。
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