Fate / battle of Berserker   作:JALBAS

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帰り道にイリヤ達に襲われた士郎は、お持ち帰りサイズにさせられて思考を停止してしまいます。
ゲームはそこで終了なんですが、この話はそこからのスタートになります。
士郎が潰された後、その他のキャラはどう動いていくのか?




《 第一話 》

 

「では、改めて問おう。聖杯戦争に参加するか?衛宮士郎。」

「お断りだ。俺は、そんな殺し合いには参加できない!」

聖杯戦争の監督役、聖堂教会から派遣された神父、言峰綺礼に俺はそう答えた。

突然与えられたマスターの権利と義務を、俺は放棄した。

その言葉を聞いた遠坂凛は、哀しそうに俺を見詰めている。しかし、俺の決意は変わらない。聖杯などという得体の知れない物のために、他人と殺し合うなんてまっぴらごめんだ。

俺は言峰の霊媒手術を受け、一画を残して令呪を削り取られた。残ったひとつは、俺のサーヴァントであるセイバーとの契約を解除するために使う。それは、この場で強制的に行うこともできたが、それではあまりにもセイバーに対して失礼だと思い、俺は直接セイバーと話をするために教会を出た。

言峰は、セイバーとの契約を解除した後の俺の身柄も教会で保護すると言ったが、俺はそれを断った。何故か、本能的にこの場所に長居したくないと感じていた事もあるが、もうマスターの権利を失った俺のような未熟な魔術師を、狙うマスターやサーヴァントも居ないと思ったからだ。

「……話は終わりましたか?シロウ。」

教会の外で俺を待っていた、青い礼装に身を包んだ、ブロンドの髪と碧い瞳の英霊、セイバーが話し掛けて来る。

「ああ……すまない、セイバー。俺は、お前と一緒に聖杯戦争を戦う事は出来ない。俺は、マスターの権利を放棄した。」

セイバーは、ある程度予想していたのか、それ程驚きは示さなかった。だが、すんなりと引き下がる事もしなかった。俺の足を払ってその場に倒し、俺の胸に見えない剣を突き付けて脅しを掛けて来た。

「シロウ、サーヴァントにはマスターが必要だ。貴方が契約を断つのなら、私は貴方を殺して魔力回路を貰い受ける。それでも、貴方はマスターを降りると?」

「……降りる。仮に今から考えを改めたところで、俺にはそんな殺し合いが出来るとは思えない……俺は、一度戦いを拒絶した。なら、この先またいつ同じ事をするか判らない……そんな奴をマスターにしたところで、待っているのは敗北だけだ。」

俺は、折れなかった。

すると、セイバーはあっさりと契約の解除を受け入れた。俺に、令呪で契約を解除しろと言って来た。

「え?」

「気にする事はありません。私は、今回のマスターとも信頼を築けなかっただけだ……この体を保てるのは二時間程度でしょうが、その間に新しい寄り代を見つけるだけです。」

その言葉が、妙に心に引っ掛かった。

 

今回のマスターとも信頼を築けなかった?

どういう事だ?

 

後ろめたい気持ちも強かったが、俺は言われるままに令呪に念じてセイバーとの契約を解除した。俺の腕から、完全に令呪は消えて無くなった。

「……再び会う事はないでしょうが、無事この戦いを切り抜けられるよう祈りましょう。」

最後にそう言い残して、セイバーは俺の前から立ち去ってしまった。

 

 

士郎が去った後、一人教会に残った凛に綺礼が話し掛ける。

「ふっ……残念だったな凛。何かと気に掛けていたようだが、あの少年はこれで終わりだ。」

「はあ?何言ってるの?セイバーは、彼を殺したりはしないわ。」

「セイバーはな……」

「ど……どういう意味よ?」

「まさか……気付いていないのか?この強大な魔力に?」

「?!」

言われて、凛はようやく気付いた。近くに迫る、強大な魔力に。

 

 

「なあんだ。一人になっちゃったんだね、お兄ちゃん。」

セイバーと別れて帰路に就いていた俺は、突如目の前に現れた恐怖に足が竦んでしまった。

坂の上に、紫のコートと帽子を身に付けた、銀色の髪の幼い少女が立っている。だが、俺を震え上がらせたのはその少女では無く、少女の背後に立つ異形だった。身の丈は三メートル近くあろうかという、褐色の肌に赤い目をした巨人が立ち塞がっていたのだ。

驚いたのも束の間、巨人は一瞬で間合いを詰めて襲い掛かって来た。

「ぎぃやああああああああああああああああああああああああああっ!」

巨人の持つ巨大な石斧剣のひと振りで、俺の脚は一瞬で潰されてしまう。

激しい痛みで、思考が回らない。その間に、俺の体は次々と砕かれて行く。

内臓が飛び散り、骨が砕ける。止む事の無いとてつもない痛みで気が狂いそうになる。

あっという間に、俺の体は頭だけ残してペシャンコにされていった。

だが、どんなに激しい痛みを感じても、何故か意識は無くならなった。既に内臓も血管も砕かれている。本来なら、脳はとっくに酸欠で機能を停止している筈なのに……

「安心して、お兄ちゃん。簡単に死なれたらつまらないでしょう?だからぁ、私がちょっとだけ手を貸してあげましたぁ!お兄ちゃんは、どんなに痛くても壊れても、頭を潰すまでは意識がちゃあんと残ってるの。」

無邪気な声で、その少女はとんでもなく残酷な事を言ってくる。

 

何故?……

 

激しい痛みの中で、その疑問だけが頭に浮かんだ。

「……ち……違う……俺はもう、マスターじゃ……ない……」

助けを求めるように、少女に訴えるが……

「ええ、だから何?」

少女はにっこり微笑んで、そう答えた。

 

な……何だこの少女は?

マスターだから、俺を襲ったんじゃないのか?

なら、どうして俺を?

 

「まだまだ、こんなものじゃ終わらないわ。お兄ちゃんには、キリツグの分までたっぷり苦しんでもらわなくっちゃ……」

 

切嗣の分?

どういうことだ?

この少女と親父に、何の関係が?

親父は……切嗣は、この娘に何を……

 

 

その頃凛は、教会を飛び出して士郎の所に駆け付けようと走り出していた。そんな凛を、霊体となっているアーチャーが制止させようとしていた。

『止めるんだ凛!相手はバーサーカーだ。君一人でどうにかできる相手じゃ無い!』

「何言ってるの!それなら、尚更衛宮くんじゃ手も足も出ないじゃない!」

『だからといって、君が行ってどうなるものでもない!それに、もう手遅れだ!』

「え?」

そこで、凛の足が止まる。

『もう、衛宮士郎の体は完全に潰された。バーサーカーのマスターの魔力で、頭部だけはまだ生かされているがな……あれは、もう生きているとは言えない。』

「そ……そんな……じゃあ、あいつは何のためにマスターの権利を放棄したのよ……」

凛は、呆然と佇むだけだった。

 

 

「うん、やっと私でも抱き上げられるくらいになったかな。それじゃあお兄ちゃん、私のお城に招待してあげる。」

どんなに死にたくとも、いつまでも意識は無くならない。

自分で死ぬ事もできない。

既に、言葉を発する事も出来なくなっていた。

そこで、もう考える事も止めてしまおうかと思った時……

「貴様っ!よくもっ!」

血相を変えた、一人の騎士が目の前に現れた。

「なあんだ。誰かと思えば、お兄ちゃんに捨てられた哀れなサーヴァントじゃない?」

セイバーは、俺を抱えようとしている少女に向かって突進して来る。

「その手を放せっ!」

だが、セイバーの刃は少女には届かない。俺をペシャンコにした巨人、バーサーカーがセイバーに襲い掛かる。

「くっ!」

セイバーの剣撃は、バーサーカーの巨大石斧剣の一撃に簡単に弾き飛ばされてしまった。

「何よセイバー?お兄ちゃんはもう貴女のマスターじゃ無いでしょ?なら、私がお兄ちゃんをどうしようと、貴女には関係無いじゃない。」

「ふざけるな!例え契約を解除しても、一度は主として忠誠を誓った者を見捨てるなど、騎士としての誇りが許さない!」

 

せ……セイバー……そんな、俺はお前を裏切ったのに……

 

「ふん……いいわ。なら、ここで仕留めてあげる。私も、貴女には恨みがあるんだから。」

「恨み?いったい、私に何の恨みがあると言うのだ?」

「貴女は……私の母様を護れなかった!」

「母様?」

「私の名は“イリヤスフィール・フォン・アインツベルン”。それだけ言えば判るでしょう?」

「な……」

その名を聞いた、セイバーは大きな動揺を示す。

 

何だ?何を言っている?

セイバーが、この少女……イリヤスフィールと言ったか?彼女の母親を護れなった?

 

再び、セイバーとバーサーカーの戦いが始まる。

だが、それはまともな勝負にはならなかった。万全な状態でも、一対一で戦っては分が悪そうなバーサーカーに対して、セイバーは殆ど魔力も残っておらず、ランサーに負わされた傷も完治していなかった。終始圧倒され続けた挙句、バーサーカーの一撃をもろに喰らって胸を大きく切り裂かれてしまう。

「ううっ!」

胸から大量の血を流しながら、それでもセイバーは、剣で体を支えて何とか立ち上がる。

 

も……もういい……頼む、逃げてくれセイバー……

 

満足に回らない思考で、心の叫びを上げる。が、その声がセイバーに届く事はない。

「いいわよバーサーカー。そいつ再生するから、首を跳ねてから殺しなさい。」

イリヤスフィールの命令で、バーサーカーがセイバーに止めを刺そうとする。だが、セイバーにはもう速い攻撃を躱す力も残っていない。

 

や……止めてくれ……

 

俺は、心の中で虚しく叫ぶしかなかった。その時……

「?!」

バーサーカーが突然動きを止めた。イリヤスフィールも、驚いた表情を浮かべる。

「な……何、あれ?」

セイバーが必死に立っているその脇に、突如黒い影が現れた。地面から、草が芽を出すかのように湧き出て来たのだ。

「……っ?」

少し遅れて、セイバーもその影に気付く。その直後、セイバーはその影に飲み込まれてしまう。そして影はセイバーごと、地面に吸い込まれるように消えて行ってしまった。

 

な……何だ?何が起こったんだ?

 

これには、イリヤスフィールも硬直して、しばらく言葉を発せられなかった。

 

 

“な……何だったの?今のは?せ……セイバーはどうなったの?”

隠れて、その様子を見ていた凛も、目の前で起こった異常に呆然としていた。

少しして、ようやくイリヤが言葉を発する。

「……セイバーは取り逃がしたけど、まあいいわ。どうせ寄り代が無いから、あと数時間で消滅するでしょうし。こうして、お兄ちゃんも手に入ったし……」

そう言って、頭部以外をペシャンコにして折り畳んだ士郎を抱き上げる。

“え……衛宮くん?!”

無残な士郎の姿に、思わず顔を引き攣らせてしまう凛。

士郎の顔は虚ろな目をしていて、もう思考も停止しているようだった。

「……だから、今夜は見逃してあげるわ。リン!」

「?!」

慌てて身を隠す凛。隠れて様子を伺っている事は、イリヤには完全にばれていた。

「あなたのアーチャーはまだ戦えないみたいだし……でも、次に会った時は確実に殺すからね。」

そう言い残して、士郎を抱えたイリヤはバーカーサーと共に闇の中に消えて行った。

「……っ!」

凛は唇を噛みしめ、何もできなかった自分の力の無さを呪っていた。

 

 

 

深山町の坂の上には異国風の豪勢な邸宅が並んでいる。その中でも、最も大きいのが遠坂邸である。

その遠坂邸から少し離れて、遠坂邸に次ぐ大邸宅がある。それが間桐邸だ。

しかし部屋数が多い割に、夜になっても明りのついている部屋はいつもごく僅かしかなかった。ただ、今は深夜であるので部屋の明りは全て消えている。

だが、屋敷の奥からは異様な奇声が漏れ出していた。

その声は、屋敷の地下から聞こえて来ている。その屋敷には、薄暗い、石の壁に囲まれた広大な地下室があった。その中では、無数の異形な蟲達が蠢いている。

その蟲の群れの中に、一人の少女が蹲っている。奇声を上げているのはその少女だった。

「いやああああああああああああああああああああっ!そんな……そんな……せんぱい……せんぱいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいっ!!」

狂ったように奇声を上げる少女を、その後ろでこれも異形な、妖怪のような様相の老人が見詰めていた。体中を蟲に囲まれ……いや、その老人自体が蟲の塊だった……

「ほう……今回の聖杯戦争は外れじゃと思っておったが……これは、案外いけるかもしれんの……」

老人は、静かにそう呟いた。

 






という訳で、いきなり主人公が脱落してしまいました。
まあ、タイトルにあるように、バーサーカーがメインの話を書きたくて書いたんですが……
冒頭から、士郎もセイバーも居なくなってしまった聖杯戦争。
果たして、この後どのように展開していくのでしょうか?
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