Fate / battle of Berserker   作:JALBAS

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“Fate / stay night”本編では描かれていませんが、アサシン(佐々木小次郎)は柳洞寺の山門で一度はバーサーカーを撃退しています。
二次創作等でその戦いを描いた物はありますが、私独自の妄想でその戦いを書いてみました。
納得いかない部分も多々あるとは思いますが、あくまで個人の妄想なので大目に見て下さい。




《 第三話 》

 

バーサーカーに抱きかかえられ、夜の冬木市を進むイリヤ。向かっている先は、円蔵山だった。

柳洞寺の山門前の石段の下まで辿り着き、イリヤは口を開く。

「ここが、キャスターの隠れ家ね?進みなさい、バーサーカー。」

一歩毎に石段を大きく揺るがせながら、バーサーカーは山門に向かって登って行く。

ところが、山門が近づいて来たところで、バーサーカーは足を止めた。

「どうしたの?バーサーカー?」

すると、イリヤ達の前の空間が歪み、目の前にひとつの人影が出現した。

黒い長髪を頭の後ろでひとまとめにした、羽織袴姿の長身の侍。本来英霊として召喚される者は西洋の英雄であるにも関わらず、その姿はどう見ても日本人であった。

「何よ貴方?……キャスターじゃ無いわよね?」

「私は、アサシンのサーヴァント佐々木小次郎。」

「あ……アサシンですって?!」

イリヤは、驚きの声を上げる。何故なら……

「馬鹿言わないで!アサシンのクラスに呼び出される英霊は、ハサン・サッバーハだけよっ!」

「そんな事を言われても知らぬ。現にこうして、私は召喚されている。」

納得のいかないイリヤだが、これ以上問答しても仕方が無いので質問を変える。

「じゃあ、アサシンの貴方が何故ここで道を塞ぐの?ここは、キャスターの根城じゃないの?」

「簡単な話よ。私を召喚したのはそのキャスターなのでな。」

「なっ……?!」

それで、イリヤは納得した。ルールを破ってサーヴァントがサーヴァントを召喚したため、本来召喚される筈の無い異色なサーヴァントが召喚されたのだと。

「じゃあ……貴方は道を譲るつもりはないのね?」

「おうよ。ここを通ろうとする者を退けるのが、私の役目なのでな。」

「判ったわ……」

イリヤの、目の色が変わる。バーサーカーの腕から石段の上に降りて、バーサーカーに向かって叫ぶ。

「バーサーカー、あいつを今直ぐ殺しなさい!」

夜の山に響き渡る雄叫びを上げて、バーサーカーはアサシンに向かって行く。

「やれやれ……」

アサシンは、背中の鞘から異常な長さの刀を抜く。正に、“物干し竿”の名がしっくりとくる長刀を。

バーサーカーの巨大石斧剣が、アサシンに向かって振り降ろされる。アサシンの刀も異様に長く大きいが、バーサーカーの石斧剣はそれを遥かに上回る大きさだ。それがバーサーカーの怪力で炸裂すれば、アサシンには防ぎようが無いように思われた。しかし……

「な……なんですって?」

バーサーカーの一撃は、アサシンには当たらなかった。かなり左に逸れ、アサシンの右横の石段を砕いていた。

「な……何やってるの!ちゃんと狙いなさいバーサーカー!」

イリヤに叱咤され、再びバーサーカーはアサシンに斬り掛かる。だが、今度はアサシンの左横の石段を砕いただけだった。更に繰り返し剣を繰り出すが、何度やってもバーサーカーの攻撃はアサシンの周りの石段を砕くだけだった。

「そんな……」

驚愕するイリヤ。

アサシンは、その長刀を使ってバーサーカーの攻撃をいなしていたのだ。

もっとも、バーサーカーが本来の全力で攻撃を放てていたら、こううまくはいかなかったであろう。キャスターが柳洞寺の中から魔力を送り、バーサーカーの力を大きく減衰させていた。その上、山門に続くこの石段以外の場所は、強力な結界が張られていて容易には侵入ができなかった。よって、アサシンに対しては常に正面から挑む以外手は無かった。その限定環境とアサシンの卓越した剣技により、このような神業が可能となっていた。

ただ、バーサーカー側も完全に足止めされている訳ではなかった。バーサーカーの一撃はアサシンには当たらないが、足場の石段を悉く砕いていった。そのため、少しずつではあるが、足場を求めてアサシンも後退せざる負えなかった。そうして、山門の手前の最後の踊り場まで押し込まれてしまう。

「いかんな。このままでは、大事な山門にまで被害が及ぶ……ここらで、退場願おうか。」

アサシンは構えを変える。両手で剣を持ち、水平にさせて深く構える。

「な……何をするつもり?」

「秘剣!燕返し!!」

一瞬の閃光、神速で放たれたアサシンの剣撃が、強靭なバーサーカーの肉体を切り裂いた。

「な……?!」

一撃で……いや、バーサーカーは三方から斬り裂かれ、その場に崩れ落ちた。赤く輝いていた目は光を失い、膝をついて沈黙してしまう。

「ど……どうなってるの?一瞬の内に、三度も剣を放っていたの?」

驚いているイリヤに、アサシンはご丁寧に解説を始める。

「燕という鳥は、風を受けて刀を避ける。速かろうが遅かろうが関係はない。どのような刀であろうと、大気を震わさずには振れぬであろう?連中はその震えを感じ取り、飛ぶ方向を変えるのだ。故に、どのような一撃であれ燕を断つ事はできなかった。一本線にすぎぬ刀で、縦横に空を行く燕を捕らえられぬは道理よな……ならば、逃げ道を囲めばいい。一の太刀で燕を襲い、風を読んで避ける燕の逃げ道を二と三の太刀で取り囲む。但し連中は素早いので、事を成したければこれらをほぼ同時に行わなければならなかった……」

得意気に解説をするアサシンだが、次の瞬間、バーサーカーは再び動き出した。

「何?!」

白い蒸気を発して、斬り裂かれた体が徐々に再生をしていく。光を失った目は再び赤く輝き、雄叫びを上げてバーサーカーは立ち上がった。

「何だと?……不死身か?こやつは……」

一度は動揺したイリヤだったが、蘇生したバーサーカーに驚くアサシンを前に、高圧的な口調に戻る。

「驚いた?これがバーサーカーの宝具、“十二の試練”よ!」

「“十二の試練”だと?ならばこやつは……」

「そう、バーサーカーの真名はギリシャ神話の大英雄“ヘラクレス”よ!」

 

柳洞寺の中からその戦いを見ていた、紫のローブに身を包んだ魔導師の様相の英霊キャスターは、思わず舌打ちをする。

「ちっ!……ヘラクレスですって?よりにもよって、なんて奴を召喚してくれたのよ……」

 

一度は驚いたアサシンだが、再び平静を装い、イリヤに問い掛ける。

「“十二の試練”という事は……十二の命を持つという事かな?」

「そうよ!それに、一度受けた攻撃には耐性ができて二度目は通用しないわ。」

「ほう?」

「貴方にあと十一個必殺技があるのなら別だけど、そうでなければ貴方の負けよ!」

「それはどうかな?」

「バーサーカー、一気にあいつを門の中まで押し込むのよ!」

イリヤの指示に、バーサーカーはアサシンに襲い掛かろうと石斧剣を振り上げる。そこでアサシンは……

「秘剣!燕返し!!」

同じ技を、再度放っていた。

「馬鹿ね!同じ技はもう効かないって……」

言いかけて、またもイリヤは愕然としてしまう。

先程と同じ燕返しに、再びバーサーカーが斬り裂かれ、沈黙してしまったのだ。

「そ……そんな……どうしてっ?!」

動揺するイリヤに、アサシンは淡々と答える。

「“十二の試練”による一度受けた攻撃に対する耐性は、ヘラクレスの初見で相手の技を見切る技能によるものだ。だが、私のスキル“宗和の心得”は、容易に相手に技を見切らせない。如何に“十二の試練”といえども、一度や二度で私の秘剣を見切る事は不可能!

もっとも、あと十度見切られずに技を決められるという保証も無いがな……どうだ?試してみるか?バーサーカーのマスターよ。」

「……っ!」

歯軋りをして、アサシンを睨み付けるイリヤ。

バーサーカーは直ぐに蘇生したが、イリヤからの指示が無いので襲い掛かろうとはしなかった。しばしの間、睨み合いが続く。

「……戻りなさい、バーサーカー。」

ようやくイリヤが口を開く。

バーサーカーは石段を降りてイリヤの所まで行き、再び片腕でイリヤを抱き上げた。

「今日のところは……見逃してあげるわ……」

本当は腸が煮えくり返る程頭に来ていたが、イリヤは平静を装って柳洞寺を後にした。

アサシンは何も言わず、去って行くイリヤとバーサーカーを見詰めていた。

 

城に戻っても、イリヤの気持ちは収まらない。

自分の部屋に戻るや否や、手に持ったぬいぐるみを思い切りベッド脇の壁に投げ付けた。

「なんなのよ!あいつ!」

直ぐさま壁の下に落ちたぬいぐるみの足を持って、今度はベッドの角に何度も叩き付ける。

「この!この!このっ!」

完全に八つ当たりである。

別に敗北したという訳ではないのだが、目的は果たせず、いいようにあしらわれた事が頭に来て仕方が無かった。

士郎の魂の入ったぬいぐるみにとってはいい迷惑であったが、神経の通わないぬいぐるみの身では、痛くも痒くも無いので実被害は無かった。

「わああああああああああああっ!」

最後は、ベッドの端にぬいぐるみを投げ付け、ベッドに倒れ込んで泣き出していた。

しばらく突っ伏して泣いた後、ようやく気持ちが落ち着いたのかイリヤは顔を上げる。

ベッドの隅に放り投げられたぬいぐるみを見詰め、体を起こしてそのそばに行く。そして、ぬいぐるみを抱き起こして言う。

「ごめん……ごめんねお兄ちゃん……お兄ちゃんは、何も悪くないのに……」

何度も謝りながら、イリヤは士郎のぬいぐるみを強く抱きしめるのだった。

 

 

 

その数日後の夕刻、凛は慎二に呼び出されて弓道場の裏の雑木林に来ていた。

いつまで経っても返事をしない凛に、慎二が痺れを切らしたのだ。

「いつまで待たせるんだ遠坂!いい加減に返事をもらいたいな。」

苛ついた顔で、慎二は凛を問い詰める。

凛は溜息をつき、もうこれ以上の引き伸ばしは無理と判断する。

「仕方無いわね……じゃあはっきり言うけど、貴方と同盟は組めないわ。慎二。」

「なっ?!」

楽観的な慎二は、凛が断るとは考えていなかった。予想だにしなかった回答に困惑しながら、慎二は改めて問い掛ける。

「ど……どうしてさ?僕と手を組んだ方が、絶対勝率が高くなるだろうに……」

「それはどうかしら?」

「なっ……何?」

「どうせ手を組むのなら、本物のマスターと手を組んだ方がいいわ。」

「何を言ってるんだ?僕はマスターだって言ってるだろ?」

すると、凛は慎二が手に持っている小さな書籍を指差して言う。

「それ、“偽臣の書”でしょ?という事は、貴方はマスターの代行をしているに過ぎない。」

「ど……どうしてそれを?」

「貴方からは、何の魔力も感じない。貴方は魔術師じゃないわ。魔術師じゃない者にサーヴァントの召喚は出来ない……だから貴方は、ライダーを召喚した本物のマスターから、“偽臣の書”を通してマスターの権利を譲り受けただけのただの人間よ。まあ、貴方に権利を譲り渡した本当のマスターが誰なのか……それは、大方予想がつくけど……」

完全に取り乱しながら、それでも慎二は諦めずに言う。

「そ……それが何だって言うんだ!代理だろうが何だろうが、今は僕がライダーのマスターだ!それの何が不満なんだ?」

「魔術師じゃ無いマスターなんて、足手纏いにしかならないわ。」

「なっ……」

「それに、貴方は私に嘘をついている。」

「何だって?」

「確かに、この学校にはもう一人マスターが居るのかもしれない……だけど、学校に結界を張っているのはライダー……貴方のサーヴァントよ!」

「……っ!」

全てを見抜かれ、もう慎二は返す言葉も無い。

「そんな人間を、誰が信用できるって言うの?」

黙り込んでいた慎二は、更に厳しく凛を睨み付けてようやく言葉を発する。

「そ……そうかい……じゃあ、もう僕達は敵同士だな。後から泣いて謝ったって許さないぜ……殺れ!ライダーっ!」

慎二の叫びに応じて、霊体化していたサーヴァントが姿を現す。地面に付きそうな程の長髪で、女性としては異常に背の高い英霊のライダーが。

全身は黒いボディコンスタイルに包まれ、何故か顔には目隠しがされている。

ライダーは、すかさず鎖付の鉄杭を凛に向かって投げつけて来る。

「アーチャーっ!」

凛の叫びで彼女の目の前に、赤い外套を纏った浅黒い肌で白髪の英霊、アーチャーが実体化する。

「トレース・オン!」

アーチャーは白と黒の夫婦剣“干渉・莫耶”を投影し、凛を襲う鉄杭を弾く。

「はあっ!」

更に、ライダーに向かって切り掛かって行く。

「ふっ!」

ライダーは素早くこれを躱し、再び鉄杭を放つ。

しかし、アーチャーも両手の剣でこれを悉く弾く。

雑木林の中を駆け回りながら、二人はこのような攻防を繰り返していく。

「慎二っ!」

凛も黙ってはいない。慎二に向かって左手を向け、指を二本立ててその先から銃撃のようにガンドを放った。

「え?うわああああああっ!」

いきなり攻撃され、慌てて慎二は飛び避ける。

凛の放ったガンドは、慎二が立っていた場所の地面を大きく抉っていた。

「な……僕を殺すつもりか?遠坂っ!」

「今更何言ってるの!先に仕掛けて来たのはあんたでしょうがっ!」

凛は容赦しない。怒涛の如くガンドを撃ちまくる。

「ひいいいいいいいいいっ!」

慎二は、見っともなく逃げまくるだけだった。

だがそれも長くは続かず、直ぐに躓いて転んでしまう。

「ここまでね。」

凛は、動きの止まった慎二に狙いを定める。

慎二は近くの木の所まで這って行き、もたれ掛って許しを請う。

「ま……待ってくれ……撃つなあああああっ!」

「さっきのあんたの言葉をそのまま返すわ!泣いて謝ったって許さない!」

「ら……ライダアアアアアアアッ!」

慎二は、大声でライダーを呼んだ。

慎二の危機を察して、瞬時にライダーは駆け付ける。凛の前に立ちはだかって、慎二を庇う。

しかし、アーチャーも瞬時に駆け付けた。凛の前に立って、ライダーに対峙した。

そこで、ライダーは奥の手を出す。自らの目を封じていた、目隠しを外したのだ。

「何っ?!」

ライダーの魔眼が、妖しく輝く。

その直後、アーチャーと凛の体は麻痺したように硬直してしまう。

「な……う……動けない……」

「これは……石化の魔眼?!こいつ……メドゥーサか?」

ライダーは、続けて攻撃に移る。アーチャー達に向かって突進して来る。

ただ、狙いはアーチャーでは無かった。少し横に動き、弧を描くように接近して来る。直接、マスターである凛を仕留めるつもりだ。

「くっ……だめ……」

対処しようにも、凛は身動きできない。だが……

「トレース・オン!」

アーチャーは動きを封じられても、魔力まで完全に封じられてはいなかった。

凛に迫るライダーの周囲に、無数の剣が投影される。

「?!」

気付いた時にはもう遅かった。全方位からの剣の群れに、ライダーの体は貫かれてしまう。

「あああああああああああっ!!」

串刺しになって、ライダーは崩れ落ちる。

「な?!……おい……ら……ライダー?」

問い掛ける慎二の目の前で、ライダーの体は消滅していった。それと同時に……

「うわっ!」

慎二の持つ、“偽臣の書”が燃え出した。

「な……何で?どうして?待て……待てよっ!」

慎二の叫びも虚しく、“偽臣の書”はそのまま燃え尽きて無くなってしまう。

「ひっ……ひぃ……ひいいいいいいいいいいっ!」

慎二は、脱兎の如くその場から逃げ出して行く。

「追うか?」

ライダーが消滅して、体が自由になったアーチャーが凛に問う。

「その必要は無いでしょう。サーヴァントが居なくなったら、あいつにはもう何にもできないわ。」

もう凛の頭の中には、慎二の事など微塵も残っていなかった。

それよりも、慎二にマスターの権利を譲渡した、ある魔術師の事が気になって仕方が無かった……

 






後半は、アーチャーVSライダーの戦いでした。
士郎とセイバーが居ませんので、ライダーと慎二のお相手はアーチャーと凛に代わってもらいました。
この話の慎二は、もうこれで退場予定です。
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