Fate / battle of Berserker   作:JALBAS

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間桐臓硯が動いているので、遂に真アサシンが召喚されます。
ただ、その後の流れを原作とは少し変えました。
そして海浜公園で凛と臓硯は顔を合わせますが、ここも士郎陣営が居ないので代わりに別な陣営が加わる事に……




《 第四話 》

 

数日間、イリヤは狩りには出掛けず、城でぬいぐるみの士郎と戯れていた。

「私、今迄ずっとひとりで寂しかった……でも、もう寂しくないよ。これからは、お兄ちゃんがずっと一緒なんだから。」

イリヤは士郎に、自分の過去を語って聞かせていた。

 

父母と過ごした、幸せだった日々の思い出。

ひとり取り残されて、二人の帰りをじっと待っていた寂しかった日々の事。

母の死を知らされた時の悲しみ。

いつまで経っても迎えに来てくれない、切嗣への苛立ちが憎しみに変わっていった事。

マスターに成るための辛い試練。

そして、バーサーカーとの出会い……

 

日が経つにつれ、壊れ掛けていた士郎の自我が元に戻り始める。

イリヤの話す内容が判断できるようになり、最初は疑問であった自分が襲われた訳も、納得出来るかどうかは別にして理解する事ができた。

イリヤは、血は繋がっていないが、士郎とは兄妹という事になる。

イリヤの士郎に対する怒りは、憎しみから来ているものでは無かった。幼い頃に自分が失ってしまった家族とその安らぎを、独り占めしてしまった事への妬みから来ていた。

士郎を自分の物にして、イリヤはようやく家族を取り戻す事が出来たのだ。

人の良い士郎は、そんなイリヤが可哀想になり、自分が酷い目に合った事など忘れていく。

だんだん、イリヤが愛おしくなっていく。

自分の妹として、イリヤに好感を持ち始めた士郎だが、その気持ちをイリヤに伝える術は無かった。

イリヤは士郎に自分の言葉を聞かせる事はしても、士郎の意思を知ろうとはしなかった。自分を否定されるのが怖かったのだ。切嗣のように、離れて行ってしまう事を恐れていた。だから、物言わぬ人形にして自分の気持ちだけをぶつけていたのだった。

もうひとつ、士郎は気付いていた。

切嗣が、一人で何度も海外に出掛けていた理由を。

 

“あれは、イリヤを連れ戻しに行っていたのだろう。

だが、アインツベルンにとっては切嗣は裏切り者でしかない。そんな切嗣に、アインツベルンがマスターの資質の高いイリヤを渡す筈がない。

それをイリヤは、切嗣が自分を捨てたと勘違いして……いや、アインツベルンにそう吹き込まれていたのかもしれない……“

 

こうしてイリヤが城に籠っている一方で、聖杯戦争は大きくその動きを変えようとしていた。

 

 

 

柳洞寺の山門の門番を務めるアサシン。

彼はあのバーサーカーを退けていたが、それ以外に今回の聖杯戦争において、ランサー、ライダーをも一度は退けていた。

そんな山門の前では無敵に近い強さを誇る彼が、その夜、異様な苦しみを見せていた。

 

アサシンの手から長刀が離され、石段を転げ落ちていく。

「ぐっ……ぐわああああああああっ!」

突然、アサシンの胸が裂け、大量の血が噴き出す。アサシンは、そのまま仰向けに倒れてしまう。

その胸の裂け目から、二本の黒い腕が飛び出す。その腕が地面に着くと、今度は裂けた胸から頭部が飛び出す。その顔は、骸骨を模った面で隠されている。頭部はアサシンの内臓を喰らい始め、喰らう毎に首から下が湧き出て来る。内臓をあらかた喰らい終わった頃には、屈んだ姿勢の全身がアサシンの内臓と入れ替わっていた。

「キキキキキイイイイイイッ!」

全身を黒いローブで包んだその奇怪な人影は、奇声を上げながら柳洞寺の中へ飛び跳ねて行った。

残された胸に大穴の開いたアサシンの体の周りに、突如黒い影が広がっていく。それはアサシンの体を飲み込んで、地面の中に消えていった。

「アサシン?」

そこに、一人の女性が山門をくぐって境内から出て来る。

それは、一般の女性の姿を装ったキャスターだった。

キャスターは山門の周りを見渡すが、何処にもアサシンの姿は無い。もっとも、気配を断っていればキャスターにも感知できないのだが、契約により支配下にあるアサシンが、主であるキャスターの呼び掛けに答えないのはおかしかった。

よくよく見渡すと、石段の少し下方の踊り場の上に、アサシンの長刀だけが落ちていた。

「?!」

その時、キャスターは柳洞寺本堂の中から不穏な魔力を感じた。

慌てていつもの紫のローブ姿に戻り、本堂の方に駆けて行く。戸を開けて中に入ったキャスターは、目の前の光景に愕然とする。

「そ……宗一郎……さま?!」

暗い本堂の奥には、キャスターのマスターである葛木宗一郎が、糸の切れた操り人形の如く浮いていた。

いや、正確に言うと、謎の黒い怪人に吊り下げられていた。

手足は骨を砕かれたようにダラリと下がっており、体中血だらけだった。その顔にはもう生気は無く、意識も全く無い様子だった。

黒い怪人は、その葛木の首に黒いナイフを突き付けており、キャスターに向かってカタコトの言葉を発した。

「ケイヤクヲ……トケ……」

その一言で、キャスターは全てを理解した。

目の前の化け物は、アサシンに取って代わって出現した真のアサシンである事。

前のアサシンの中から誕生したため、キャスターとの契約が完全に無効になっていない事を。

キャスターは自らの宝具、歪な形をした短剣“ルールブレイカー”を取り出し、それを自分の心臓に突き刺した。

「はうっ!」

キャスターと真アサシンの間に魔力のオーラが立ち昇り、分断するように切れて消滅する。

「これで満足でしょう!」

“言われた通りにしたのだからマスターを離せ”と言わんばかりに、キャスターは叫ぶ。

しかし真アサシンは……

「キキキキキイイイイイイッ!」

即座にナイフで葛木の首筋を切り裂いてしまった。

「き……きさまああああああっ!」

激昂したキャスターは、光弾を放って真アサシンを攻撃する。真アサシンはそれらを素早く躱して、境内に飛び出して行く。キャスターもそれを追って飛び出し、絶えず光弾を放ち続けるが真アサシンを捕えきれない。そうしている内に、真アサシンは気配を断って姿を消してしまう。

「ど……何処に行ったの?」

境内の中央で、キャスターは真アサシンの魔力を探るが全く感知出来ない。

すると、真アサシンは突然キャスターの背後に現れた。

「ちっ!」

慌てて振り向き、キャスターはまた光弾を放つ。それを躱しながら、真アサシンは右腕のローブを解いた。オレンジに輝く、その右手が解放される。

「ザバーニーヤ!」

その右腕は異様な長さに伸びて、指の先がキャスターの胸を捕えた。

「?!」

だが、それに殺傷能力は無かった。ただ触れただけで、右腕は縮んで元の長さに戻る。

散々逃げ続けた真アサシンだが、山門の前に差し掛かったところで突然動きを止めてしまう。

「掛かったわね!」

キャスターは、攻撃を続けながらも罠を張っていた。真アサシンの足元には魔法陣が広がり、これにより足が止められてしまった。

「塵になりなさい!」

キャスターは、目の前に巨大な魔方陣を作り出す。強力な一撃で、一気に葬り去ろうというのだ。

しかし、真アサシンには慌てる様子は無かった。ゆっくりと、オレンジに輝く右手を上げる。そこには、いつの間にか心臓が掴まれていた。真アサシンは、その心臓を一気に握り潰した。

「……っ!」

その瞬間、キャスターの胸が爆ぜる。

魔法陣は消え、口から血を流し、キャスターは立ったまま絶命した。

真アサシンの右手の心臓は、その直後に消滅してしまう。真アサシンはひとっ飛びでキャスターの前まで行き、破裂したキャスターの胸から潰れた心臓を抉り取る。そして大きく口を開け、その心臓を一気に飲み干した。

「ふっ……」

先程までとは少し雰囲気が変わり、含み笑いを浮かべた後、真アサシンは再び闇の中に消えて行った。

 

 

 

それからまた数日後、凛は綺礼と話をするため言峰教会を訪れていた。

今回の聖杯戦争に、父親に聞いていたものと違う異質なものを感じたからだ。

礼拝堂の祭壇の前で、凛と綺礼は話をしている。

「何?キャスターが……」

「キャスターは柳洞寺を根城にしていた。新都の昏睡事件で集められた魔力は、全て柳洞寺にいっていた……二日前の夜、私達は柳洞寺を探りに行ったわ。でも、キャスターの姿は何処にも無かった。魔力の痕跡は残っていたけどね。それで、寺の人間は全て生気を吸い取られて昏睡状態……そんな中、一人だけ命を奪われていた者が居た。うちの学校の教師、葛木宗一郎……彼が、キャスターのマスターなんでしょ?」

「おそらくな……」

「おそらくって、貴方監督役でしょ?聖杯戦争に参加しているマスターは、全て把握しているんじゃないの?」

「キャスターは色々とルールを破っていてな。奴は一度マスターとの契約を切って、自分のマスターを殺している。」

「契約を切るって……サーヴァントにそんな事ができるの?」

「キャスターの宝具、“ルールブレイカー”なら可能だ。それで奴は柳洞寺に逃げ込み、新たなマスターと契約した。それが、その葛木という男なのだろう。」

「何者かが柳洞寺を襲撃して、キャスターとそのマスターを殺した……でも、キャスターが死んだのなら、新都の昏睡事件も止まる筈……なのに、昨夜もその前の夜も昏睡事件は起こり続けているわ。それどころか、被害は前よりも酷くなっているわ。」

綺礼は少し考え込んだ後、凛にある情報を伝える。

「……確かに、今回の聖杯戦争には不穏な動きを感じる。監督役である私に何のことわりも無く、強引に参戦しているマスターも居る事だしな……」

「強引に参戦?だ……誰よ、それは?」

「間桐家の長老、間桐臓硯だ。」

 

 

 

その日の深夜、雨の降る中レインコートを着た凛が街を歩いて行く。

その横を、サイレンを鳴らしてパトカーや救急車が通り過ぎて行く。

凛はそのまま、海浜公園までやって来た。

公園の中央には、小さな人影がひとつあった。凛は、その人影の前に立つ。それは、暗闇では本当に妖怪と見間違うような、異質な雰囲気を発している老人だった。

「あれは、あなたの仕業でいいのかしら?間桐のご隠居。」

凛は、鳴りしきるサイレンを指して問う。

「ふふ……遠坂の娘か?」

「間桐の長老までマスターだったとはね……一家の中から二人もマスターとして参加してるなんて……」

凛の言葉を、間桐臓硯は鼻で笑う。

「ふっ……二人か……」

「?!」

その時、凛は強大な魔力を感じ取る。それは、凛と臓硯が正対する真横の方から感じられる。

そして暗闇の中から、その魔力の主がゆっくりと現れる。

「……言ったよね、リン。次に会った時は、確実に殺すって……」

後ろに、褐色の巨人バーサーカーを従えて、イリヤが二人の前に現れる。その腕には、士郎の魂の入ったぬいぐるみが抱かれている。

「イリヤ……バーサーカー……」

「ふん……最悪の展開だな……」

非常事態を察知して、凛の横にアーチャーが実体化する。

「ふっ……アインツベルンの小娘か?奇しくも、冬木の聖杯戦争を創り上げた御三家が揃い踏みするとはのぉ。」

臓硯が、不気味な笑みを浮かべながら言う。

「初めまして臓硯……とうとう間桐も魔術師の血が絶えて、ご隠居が出張るしかなくなったのかしら?」

「ふん……人形風情が、一端の口を利きおるわい。」

「五百年も人を喰らって生き長らえている妖怪に、言われたくはないわ。」

臓硯とイリヤは、いきなり皮肉の言い合いを始める。

“人形風情?……五百年も生き長らえた?……”

しかし、詳しい事情を知らない凛には理解のできない内容だった。

今ここに、三つ巴の戦いが展開されようとしていた……

 






原作では、真アサシンはキャスターの心臓は取り込んでいません。
何か理由があるのかもしれませんが、召喚されてすぐ目の前にある餌を食べない道理は無いので、この話ではキャスターの心臓を取り込ませました。ついでに、キャスターとの戦闘も少し書いてみました。
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