Fate / battle of Berserker   作:JALBAS

5 / 10
いよいよ、冬木聖杯戦争御三家によるバトルロイヤルが始まります。
序盤は凛、臓硯、イリヤの戦いですが、後半は……
遂に、彼女が姿を現します。
そして、あの英霊も……
ここから先は、原作とは展開は変えてありますがふんだんにネタバレを含みます。
HFルートの話を知らなくて、2019年1月公開の劇場版第二章を楽しみに待っている方は決して読まないで下さい。




《 第五話 》

雨が降りしきる中、深夜の海浜公園では遠坂、間桐(マキリ)、アインツベルンの冬木聖杯戦争発起御三家による戦いが始まろうとしていた。

「ではゆくぞ……」

先手を打ったのは臓硯だった。

臓硯が右手を上げると、そこに巨大な光の塊が発生する。その中から、紫のローブに包まれたサーヴァントが出現する。だが、それは……

「きゃ……キャスター?」

驚愕する凛。

そこに現れたのは確かにキャスターであったが、キャスターにはもはや生気は無かった。

それどころか、胸には大きな大穴が空いていて、その中を蟲のような物が蠢いているのが見える。

「ふん、趣味が悪いわね。」

イリヤが言い放つ。

既にキャスターは死んでいた。その死体を、臓硯は自分の分身の蟲で操っていたのだ。

キャスターの周りに、無数の魔方陣が浮かび上がる。そこから、無数の光弾が放たれた。

それは、その場に居る臓硯以外の全員に向けて放たれていた。

「ロー・アイアス!!」

アーチャーは凛の前に立って、光の盾を出してこれを防ぐ。

「バーサーカー!」

イリヤに指示され、バーサーカーはイリヤの前に仁王立ちする。その強靭な体で、全ての光弾を弾き返す。

攻撃の合間を縫って、アーチャーは即座にキャスターとの距離を詰める。両手に持つ干渉・莫耶で、キャスターの体に斬り掛かる。

「何?」

しかし、既に死体であるキャスターに感覚は無い。切られても一切怯む事無く反撃に移る。歪な短剣“ルールブレイカー”を取り出して、アーチャーを突いて来る。

「ちいっ!」

ひと目でその短剣の属性を見抜いたアーチャーは、後方に大きく飛んでそれを躱す。

「アーチャー!」

凛が叫ぶ。アーチャーの背後には、突進して来るバーサーカーの姿があった。

バーサーカーは巨大石斧剣で、間髪入れずにアーチャーに襲い掛かる。

「ちいいいいいっ!」

アーチャーは咄嗟に横に飛び避けて、これを躱す。空振りした剣が地面を砕き、その場に大穴が空く。

その隙に、今度はキャスターがバーサーカーに襲い掛かる。キャスターは、ルールブレイカーをバーサーカーに突き立てるが……

「無駄よ!そんなものバーサーカーには効かないわ!」

イリヤの言葉通り、ルールブレイカーはバーサーカーの体に弾かれてしまう。肉体そのものが宝具であるバーサーカーの体に、ランクCの宝具であるルールブレイカーは全く歯が立たなかった。

そしてバーサーカーの反撃。巨大石斧剣のひと振りで、キャスターの体は大きく切り裂かれた上、遥か後方まで跳ね飛ばされてしまう。

それでも、死体であるキャスターは何も応えない。ボロボロの体で何事も無かったように立ち上がり、再び向かってこようとする。

「ふん、まるでゾンビね。」

「ひ……酷い……」

イリヤは呆れ、凛は死してまで傀儡として弄ばれるキャスターが哀れでならなかった。

「ん?……馬鹿な!」

その時、突然臓硯が声を上げた。立ち上がったキャスターの背後に、突如黒い影が出現したのだ。

今、この場にそれが現れる事を、彼は想定していなかった。

「な……あの黒い影は?!」

凛達も、イリヤ達も、それには見覚えがあった。

士郎がイリヤとバーサーカーに襲われた夜、セイバーを呑み込んでいった影だ。

その影から、帯のような触手が伸びていく。それは瞬く間にキャスターの体を絡め取り、セイバーの時のように一気に呑み込んでしまった。

「ここは、引いた方が良さそうじゃの……」

そう呟いた直後、臓硯の体が崩れ出した。臓硯は無数の蟲に姿を変え、あっという間にその場から飛び去ってしまった。

だが、凛達もイリヤ達も、臓硯の事など気に掛けてはいられなかった。不気味な黒い影が、ゆっくりと彼女達に近付いて来たからだ。

その影は少しずつ形を変え、人の形を成していく。そして白く変色した長髪に、黒に赤い縦縞の入った服……いや、影を纏った少女の姿となる。その頬には、血管のように広がった令呪が刻まれている。

「さ……さくら……桜……なの?」

驚きに目を見開き、体を震わせながら凛は問う。

そんな凛を、軽蔑したような目で見詰めながら、桜は問い掛けて来る。

「遠坂先輩……いえ……姉さん。どうして……どうして、先輩を見殺しにしたんですか?」

「そ……それは……」

答えられる筈がない。士郎を死なせてしまった(そう思っている)事は、凛にとって悔やんでも悔やみきれない事なのだから。

しかし、そんな凛の苦悩を、狂気に犯された桜は気付きようもない。

桜の目が、殺意を持った目に変わっていく。

「ゆるさない……先輩を殺したその小娘も……それを黙って見ていた姉さんも……」

その言葉に、イリヤは反論する。

「何言ってるの?シロウは死んでなんか……」

「セイバアアアアアアアアアアアアアッ!!」

だが、イリヤが言い終わらない内に桜は叫んでいた。

その桜の足元から、地面が黒い影に覆われていく。そしてその影の中から、一人の英霊が出現した。

全身を黒い鎧で覆い、目を黒いバイザーで隠している。ブロンドの髪をした小柄な女性であるが、その身から発せられる魔力は桁違いだった。黒く染まった聖剣を持つその英霊は、様相こそ違うが紛れも無くあのセイバーであった。

「せ……せいばあ?」

「あの姿……黒化か?」

黒化したセイバーの出現に、驚愕する凛とアーチャー。

「殺しなさいセイバー……皆殺すのよっ!」

桜の指示に、セイバーは凛達に向かって突進して来る。

「バーサーカーっ!」

桜とセイバーの変わりように、凛とアーチャーは直ぐに反応が出来なかった。

それに対してイリヤは即座に反応した。イリヤの指示で、バーサーカーがセイバーを迎え撃つ。

お互いの剣がぶつかり合い、激しい剣戟が繰り広げられる。

その戦いは、前回とは全く違っていた。前回はバーサーカーの猛攻にセイバーは防戦一方だったが、今回のセイバーは全く力負けしていない。凄まじいパワーのバーサーカーの剣撃を、同等の力で弾き返している。

その戦いを、凛とアーチャーは呆然と見詰めていた。

「す……凄い……あれは、本当にセイバーなの?」

「いや……むしろ、あれが本来のセイバーの力だ。十分な魔力供給さえあれば、剣戟でセイバーの右に出る者など殆ど居ない。」

激しい剣戟の影響で、セイバーのバイザーが弾け飛んだ。これによってセイバーの目が露わになる。その目は、かつての碧い瞳ではなく、感情を感じさせない金色の瞳に変わっていた。

「せ……セイバー……」

凛は、冷徹な意志しか感じられないその瞳に、何とも言えない恐怖を覚えてしまう。

セイバーとバーサーカーの戦いは最初の内は互角だったが、突如状況は一変する。

桜の足元から伸びていく黒い影が、バーサーカーを絡め取ろうとして来たのだ。

「バーサーカー!その影に触れちゃ駄目っ!」

危機を察知して、イリヤはバーサーカーに指示を出す。バーサーカーはとっさに影を避けるが、そこをセイバーに狙われる。一瞬の隙を突いて、セイバーの聖剣がバーサーカーを貫いた。

「バーサーカーっ!」

心臓を一突きにされ、動きを止めてしまうバーサーカー。それでもバーサーカーはまた蘇生するが、動きの止まったバーサーカーは影の恰好の餌食だ。

「私の中に戻りなさい!バーサーカーっ!」

令呪を使い、イリヤはバーサーカーを霊体化させる。寸でのところでバーサーカーが影に捕まるのは避けられたが、イリヤを護るサーヴァントは居なくなってしまった。

「今よセイバー!その憎たらしい小娘を殺しなさい!」

憎悪に満ちた目で、セイバーにイリヤ抹殺を指示する桜。セイバーは、一切の躊躇無くイリヤに向かって行く。

「いかんっ!」

何と、これにアーチャーが反応した。

イリヤに斬り掛かるセイバーの剣を、アーチャーの双剣が受け止めた。

「え?」

「な……何で?」

イリヤも凛も、このアーチャーの行動に驚いた。ただアーチャーも、はっきりと意識しての行動では無かった。殆ど反射的に、体が動いていた。

だがこの行為は、何よりも更に桜の逆鱗に触れてしまった。

「な……何なのよあなた!あ……あなたは、姉さんのサーヴァントよねぇ?そのあなたが……何でその小娘を庇うの!先輩を殺したその女を!!」

そう叫んだ後、桜は少しの間俯いてしまう。そして、桜は笑い始める。

「ふ……ふふふ……ふふふふふ……そう?そういう事なのね?姉さんは、始めからその小娘とグルだったのね?!」

桜は、とんでもない誤解をしてしまう。

「何言ってるの桜!そんな訳無いじゃない!」

「うるさい!!……もう判ったわ!一気に、み~んなまとめて殺してあげるわ!セイバアアアアアアアッ!!」

桜の狂気じみた叫びに反応して、セイバーは一旦後退する。凛達と少し距離を取って、聖剣を両手で持って上段に構える。

「はあああああああああああっ!」

セイバーは魔力を高め始める。すると、天に向けた聖剣から黒い極光が柱のように立ち昇っていく。

「ま……まずいっ!」

慌ててアーチャーは、再び凛の前に移動する。

セイバーは凛達に向けて、聖剣を一気に振り下ろした。

「エクス……カリバアアアアアアアアアッ!!」

激しく広がる黒い極光が、光線のように地を駆け、一直線に凛達を襲う。

「ロー・アイアス!!」

すかさずアーチャーは光の盾で防御する。黒い極光の帯と光の盾が衝突し、激しい光と轟音が辺りを包み込む。

「……っ!」

その光は、凛とイリヤの視界も一瞬奪う。強い衝撃波も伝わって来て、凛はしりもちを付いてしまう。

しばらくして、光は消え視界が回復する。そこには、アーチャーの姿はまだ残っていた。だが……

「あ……アーチャー?!」

アーチャーの体が、淡く光って透け掛かっていた。もはや、消滅寸前であった。

「すまない……凛。どうやら、最後まで君を護り抜く事は出来ないようだ……」

「そんな……」

凛の目に、涙が浮かぶ。

「癪だが……後はあいつ……に頼るしかなさそうだ……」

「え?あいつって……」

そこまで言って、アーチャーは細かな光の粒となって消えて行った。

「あ……アーチャー?アーチャアアアアアアアアアアアアアッ!」

涙を流し、取り乱して叫ぶ凛。少し後ろに立っているイリヤは、何も言えずに佇んでいる。

「ふっ……ふふふ……あははははははははははは……」

そんな凛を見て、笑い声を上げる桜。流石の凛も、これには怒りを露わにして桜を睨み付けた。

「どお、姉さん?大切な人を奪われる気持ちが、少しは判ったかしら?」

そんな気持ちは、士郎を失った時に凛も痛い程味わっていた。だが、狂気に犯された桜は、凛の気持ちなど考えようともしていなかった。

その時、イリヤの抱いたぬいぐるみが、突然激しく光り出した。

「え?……な……何なの?」

セイバーは、再び黒い聖剣を振り上げる。黒い極光が、天に向かって伸びていく。

「さあ、セイバー。姉さんもアーチャーの元に送ってあげなさい!」

「エクス……」

セイバーは、もう一度エクスカリバーを振るおうとする。アーチャーを失った凛に、それを防ぐ術は無い。もはや凛もこれまでと思われた時……

「あっ?!」

イリヤの腕の中から、突然ぬいぐるみが消え去った。そしてそれは、凛の目の前に出現した。

「カリバ……」

そこに、セイバーが剣を炸裂させようとしたところで……

「止めなさい!セイバーっ!」

急に桜がセイバーを制止した。寸でのところで、セイバーは剣を止める。

「え?!」

面食らったのは、凛だった。完全に殺されたと思ったところで、相手が攻撃を止めたのだ。

桜は、両手を頬に当てて、目を見開いて凛の前のぬいぐるみを見詰めている。その体が、わなわなと震え出す。

「そ……そんな……うそ……うそよ……あああああああああああああああああああっ!」

突如、桜は発狂したように叫び出した。

頭を抱えて、蹲る桜。そしてそのまま、影に戻って地面の中に吸い込まれるように消えていく。

桜が消えると同時に、セイバーも影に呑まれて地面の中へ消えていった。

 

凛は、座り込んだまま呆然としているだけだった。

そこに、イリヤがゆっくりと歩み寄って来る。凛の前まで歩いて行き、そこにある熊のぬいぐるみを抱き上げた。

そこで、ようやく凛は口を開く。

「な……何なの?そのぬいぐるみは?……桜は、何で……」

イリヤは、凛の顔を見て、ゆっくりと凛に告げる。

「これは……シロウよ……」

「なっ?……」

それだけ言って、イリヤは去って行く。もう、凛と戦おうとはしなかった。

 

ひとり取り残された凛は、虚ろな目で、ただ降りしきる雨に打たれ続けている。次第に、雨脚は強くなっていく。

肉体的には何のダメージも無いが、凛の心はもうボロボロだった。

ずっと気に掛けて来た血を分けた妹に、心の底から憎悪され殺されかけた事。

少しずつ、心を通わせ信頼を築きつつあったパートナーを失った事。

完全に死んではいなかったものの、変わり果てた姿になってしまっていた士郎の事。

それらが、重く圧し掛かって凛の心を押し潰していく。

凛は、とうとう意識を失ってその場に倒れてしまう。そんな凛の体に、無情に雨は降り注ぐ。

 

その時、凛にゆっくりと近づいて来る人影があった。

全身青いタイツのような格好に、青い短髪の長身の男……ランサーである。

ランサーは凛の前まで来ると屈み込んで、優しく彼女を抱き上げる。そして、そのまま雨の中を歩いて行くのだった……

 





士郎を失い、アーチャーを失い、妹の信用も失った……
もう、凛の心は崩壊寸前です。
そんな傷付いた凛を、さり気なく助けるランサー。
今迄私の作品ではずっと不遇続きでしたが、今回はおいしい役やってます。
といっても、綺礼の指示でやっている事ですが……

桜を、ちょっと壊し過ぎてしまったかもしれません。
桜ファンの皆様、ごめんなさい!
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