もう一度輝くために   作:粗茶Returnees

14 / 29
ちょっと短めな気がします。


13話

「雄弥なにしてんのー!早くしないと間に合わないよー!」

 

「何時だと思ってんだよ…。ポピパがやる時間まであと2時間はあるぞ」

 

「何言ってんの雄弥…。こういう時に差し入れを持っていくのは当たり前でしょ?」

 

「…そうかよ」

 

 

 結花はこういう時いっさい引かないからな。こっちが折れるしかない。そんなわけでライブを見に行くための準備を済ませる。と言ってもチケットと財布と携帯ぐらいだがな。差し入れは結花が持つようだしな。

 

 

「それじゃあライブハウスに向かってシュッパーツ!」

 

「元気だな…」

 

「ポピパのもそうだし、Roseliaのも楽しみなんだもん♪」

 

「…そうだな」

 

「なにより、こうやって雄弥と2人でライブを見にいけるって思ってなかったからね☆」

 

 

 それもそうなのだろうが、それ以外にも理由がありそうな気がする…。それもきっと俺関係の理由なのだろうが…、何だろうな。記憶を掘り返していき、思い当たるものがあることに気づいた。それはたしかに結花がここまで楽しそうにする理由だ。それがわかった俺は、鼻歌を歌い一歩先を歩いていた結花の横に行き手を繋いだ。

 

 

「どうしたの?」

 

初めてだな(・・・・・)

 

「え…」

 

「ライブを見に行くこと自体、これが初めてだったなって。合ってるだろ?」

 

「……。うん♪」

 

 

 そうだ。思い返してみても、俺たちは一度だって観客側でライブ会場にいたことなんてない。いつだってステージの上に立って演奏する側だった。今日は、人生初の観客側だ。楽しませてもらうとしよう。

 

 

「雄弥はポピパのライブが終わったらどうするの?Roseliaのは最後だけど」

 

「さぁな。沙綾と話してるか、他のバンドのも見てるかだな」

 

「ま、そんなとこだよね〜」

 

「結花は?」

 

「ずっと見てるかな〜。気が変わったらRoseliaの控室に行ってるかも」

 

「自由だな」

 

「まぁね〜♪」

 

 

 結花らしいな。この自由奔放さにどれだけ助けられてることか。それでいて他の人のことをしっかり見ているんだから、いよいよ非の打ち所がない。ま、こんなべた褒めなんて絶対に口にしないがな。調子に乗ることが分かってるから。

 

 

「いらっしゃいませー。…ん?お客様の入店はもうしばらく後になるんですけど…」

 

「すみませーん。出演者に知り合いがいるのでその差し入れをと思いまして」

 

「あー、そういうことならいいよー。ちなみにどのバンドか聞いていいかな?」

 

(一気にフランクになったな…)

 

「ポピパとRoseliaです」

 

「そうなんだ。えと、これが店の地図になって、ポピパちゃんはここで、Roseliaはここだよ」

 

「ありがとうございます☆」

 

「リハーサルとかするだろうし、長居はしないであげてね〜」

 

「はーい!」

 

(……んん!?今の2人ってもしかして!?)

 

 

 教えてもらった部屋の場所を覚え、先にポピパの部屋へと向かう。扉に「Poppin'Party」と紙が貼ってあるし、ここで間違いないな。扉をノックすると中から元気な返事が聞こえ、すぐに勢いよく扉が開けられた。

 

 

「…雄弥大丈夫?」

 

「…なんとか」

 

「わわっ!ごめんなさい!」

 

「だからいっつも勢いよく扉開けるなって言ってるだろ!」

 

「だってぇー、お客さんが来てくれたって思うと嬉しくて…」

 

「それで怪我させたら元も子もねぇだろ!」

 

「香澄ちゃんも有咲ちゃんも落ち着いて…。お客さんが来てるんだよ?」

 

「あ、そうだった!ホントにごめんなさい!」

 

「いいよ、怪我したわけでもないし。悪気がなかったのもわかったし」

 

「ホントですか!?やったー☆有咲!許してもらえるって!」

 

「その言い方だとアタシがやったみたいになるじゃねぇか!」

 

「初めまして花園たえです」

 

「何自己紹介始めてんだ!」

 

「とりあえず中に入ってもらったら?」

 

「そうだよ有咲。お客様に立たせっぱなしなのは失礼だよ」

 

「このっ、〜〜っ!!」

 

 

 なるほど、沙綾がこのバンドを好きになるのがよくわかる。こんなに明るいところだと、嫌なことなんてすぐに吹き飛ばしてくれそうだしな。

 中に入れさせてもらい、用意してもらった椅子に結花と並んで座る。沙綾が驚いてたんだが、俺たちだとわかってなかったのか…。

 

 

「お2人は私たちのファンですか!?」

 

「質問がおかしいだろ!こういう時は自己紹介からだろ!」

 

「あ、そっか〜」

 

「チョココロネって美味しいですよね…」

 

「りみ!なんの話してるんだ!」

 

「沙綾とはどういう関係ですか?」

 

「おたえも変なこと聞くな!……って、え?」

 

「「ええ!?」」

 

「?みんなどうしたの?」

 

「どうしたのって…おたえお前何言って」

 

「え?だって沙綾の知り合いの人でしょ?」

 

「そ、そうなのか?」

 

「あははー、…うん。そうだよ」

 

「もしかして彼氏さん!?」

 

「香澄!目を輝かせるな!」

 

 

 あの子、さっきから1人でツッコミしてるけど、タフだな。香澄って子とおたえ(たえって言ってたからあだ名かな?)がボケ側だし、りみはマイペースになると手に負えないんだけど、ちゃんと相手してるの凄いな。

 

 

「あはは、残念だけど彼氏じゃないよ。この人はうちの手伝いしてくれてる、藤森雄弥さん。お隣がそのお姉さんの結花さん」

 

「よろしくね〜♪香澄ちゃんとは会ったことあるよね〜」

 

「あ!覚えててくれたんですか!ありがとうございます!」

 

「どういたしまして〜」

 

「香澄ちゃん。いつ知り合ったの?」

 

「うーん、結花さんが沙綾と一緒に登校してて、その時かな」

 

「よくそこに入れたな…」

 

「えー?結花さんいい人だよ?私たちと同じ花女だし」

 

「え?そうなんですか?」

 

「うん。2年A組だよ」

 

 

 あ、女子トークが始まった。こうなると俺は会話に混ざれないし、傍観に徹するか。そう思ってると沙綾と目が合い、アイコンタクトで外に出ようと誘われた。ここにいても話に混ざれないし、もちろん承諾した。

 

 

「結花、ちょっと外に出てくる」

 

「うん。行ってらっしゃい。あ、ついでに飲み物買っといてー」

 

「炭酸か?」

 

「よくわかってるね〜」

 

「じゃ、行ってくる」

 

「香澄、私もちょっと出てくるね」

 

「ならわたしも!」

 

「香澄、ダメだよ」

 

「えーなんでー?」

 

「私は香澄と話したい」

 

「わかったー!わたしもおたえと話すの楽しいし!」

 

 

 …へー?あの子、ただの天然かと思ってたけど、意外と凄い子なのか?…あ、でも香澄が単純っていうのもあるのか。ま、なんでもいいや。

 先に部屋から出ておき、後から出てきた沙綾と一緒にスタジオの外に出る。ちょっとしたカフェもあるから、そこで飲み物を買って椅子に座る。

 

 

「悪いな沙綾。気を使ってもらって」

 

「いえいえ、雄弥さんとこうして過ごすのも楽しいので♪」

 

「そう言ってもらえると気が楽だよ」

 

「ふふっ、どういたしまして?」

 

「なんで疑問形なんだよ…」

 

「なんとなくですよ♪」

 

 

 両肘をテーブルにつき、両手の上に顎を乗せ、笑顔でほんとに楽しそうにしてる沙綾を見てると、こっちも気持ちが明るくなる。気が沈んでたってわけじゃないんだがな。紗夜と向き合うとは決めたが、会ってどう話すかがまったく分からない。そこが引っかかっているんだ。

 

 

「……雄弥さん、何か悩みごとですか?」

 

「ぇ…」

 

「分かりますよ?雄弥さんが私を見てくれてるのと同じだけ、私も雄弥さんを見てるんですから」

 

「ははっ、短い期間なんだけどな」

 

「そこは私の実力ってことですかね?お姉ちゃんだから細かいところまで見るようにしてるんです」

 

「そうなのか。…立派だな」

 

「ありがとうございます♪…それで、話してくれますか?」

 

「……沙綾はさ、約束を破った相手と会うときってどうする?もちろん謝るってのは決めてるんだが、…なんか一歩踏み出せなくてさ」

 

 

 誰とのことかは伏せさせてもらうとしよう。流石にそこは、な。言葉にしてみると何やらチンケな悩みな気がしてきたが、俺からしたらそうでもないんだよな。

 肘をつくのをやめた沙綾は、目を瞑り背もたれに体を預けた。沙綾なりに真剣に受け止めてくれてるようだ。

 

 

「……気持ちはなんとなく分かりますよ。…私も仲間を…友達を……裏切ったことがありますから」

 

「……え?……沙綾…が?」

 

「えへへ…、詳細は今は伏せさせてもらいますけど、…気まずくて話すことなんてできませんでした。でも、香澄がそれじゃ駄目だって…、お互いの気持ちをぶつけなきゃ駄目だって。たしかに怖かったですよ。絶対に嫌われてるって、恨まれてるって思ってましたから。でも…結局は怖がってちゃ何も分からないんですよ。勇気を持って、例え傷つくのだとしても、向き合うと決めたのなら……ってすみません。私なんかが雄弥さんに、こんな…」

 

「いや、いいよ。…ありがとう沙綾。…沙綾は強いな」

 

「そんなことないですよ。私はみんなが背中を押してくれたから、それで向き合えたんです。…なんなら私が雄弥さんの背中を押してあげますよ?…なんて…えへへ」

 

「十分だよ。もう十分沙綾には背中を押してもらってる。…本当にありがとう」

 

「ーーっ。その笑顔はズルいです

 

 

 なぜか頬を赤くして目をそらす沙綾を不思議に思いつつ、そろそろ戻るべき時間になっていることに気づいた。急いで結花に頼まれた飲み物を買って、沙綾と一緒に控室へと戻り、結花に飲み物を渡した。どうやらリハーサルはしないらしく、ライブを楽しむために今から精神面を調整するらしい。……さっきまでと何か変わったのか?

 

 

「結花…紗夜には最後に会うよ」

 

「…そっか。なら、差し入れもライブの後だね」

 

「ごめんな」

 

「ううん。逃げないってことはわかってるから。タイミングは任せるよ。…私も何か手伝ってあげれたらいいけど」

 

「大丈夫だ。結花が側にいてくれるだけでも心強いから」

 

「ならよかった」

 

 

 ポピパのライブはもちろん、その後の他のバンドのもいくつか見るとしよう。そして、Roseliaのライブも。

 

 紗夜に会う時間は刻々と迫っている。もう逃げたりはしない。俺は傷つけてしまった人に、ある意味日菜以上に傷を追わせてしまった人に、正面から向き合う。




ちょっとね、ゲームしたいので、そっちが終わったら次のを執筆します。どれぐらいかは分かりませんが、お待ちください!m(_ _)m
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。