もう一度輝くために   作:粗茶Returnees

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大学ではps4ができないので、結局更新できちゃいますね。
今期は携帯をイジれる授業が少ないですけど…。


14話

 ポピパの子たちと別れて、私と雄弥は客席に潜り込んだ。前の方でもいいんだけど、雄弥の希望で後側にいることにした。

 

 

「前でもよかったんじゃない?見えにくいと思うよ?」

 

「いや、こっちの方がいい。あの子たちの演奏だけじゃなくて、ライブ全体を見たいから」

 

「なるほどね。…もう、純粋にライブを楽しんでもよくない?」

 

「そういう結花も細かなとこまで見るんだろ?」

 

「まぁね。職業病ってやつかな〜」

 

「今は違うがな」

 

 

 たしかに、今は職業病って言い方は当てはまらないね。じゃあ…癖かな、……一気にショボくなった感じだよ。

 そんなこんなで雄弥と取り留めもない会話をしていたら、ポピパのライブの時間になった。ステージ幕が上がるのと同時に始まるポピパの演奏。技術面はまだまだ課題がたくさんってとこだけど、そんなのを抜きにしても盛り上がる演奏だね。

 

 

「楽しそうに演奏してるな」

 

「うん。それがポピパの魅力だろうね〜。あんなに笑顔で演奏してたら、こっちも楽しくなっちゃうよ♪」

 

 

 そう。ポピパの魅力はライブをしてる本人たちだ。バンドが好きで、メンバーが好きで、ライブが好きで、一緒に楽しんでくれるお客さんが好きで…、そんな溢れんばかりの"好き"という気持ちが伝わってくる。プロだろうとアマチュアだろうと関係ない。この"好き"って気持ちがとても大切で、この気持ちがあるからこそ活動をするんだ。

 忘れちゃいけない、誰しもがこれを胸に刻んでないといけない。技術の向上を目指そうとも、根源にはこの気持ちがあるのだから。これを忘れなかったら何度だって壁を突破できる。

 

 

「みなさんこんにちはーー!!私たち"Poppin'Party"です!」

 

「香澄ってこういう時でも元気なんだね〜」

 

「ポピパの原動力らしいしな」

 

「私たちだったらやっぱり疾斗かなー」

 

「そう思ってるのは結花だけだぞ」

 

「あれ?」

 

 

 えー、絶対疾斗だよ。いろんなイベントの情報をかき集めて、私たちをいろんなとこに連れてってくれてたんだから。ライブの段取りもだし、野良でやるときもだし、遊びに行く時だって、…ほら、やっぱり疾斗が中心だよ。

 

 

(結花のやつ、こんなこと思ってんだろうなー。我が強いというか、キャラの濃いメンバーが纏まってたのは、リーダーの疾斗以外が中心だったからなんだがな…。ま、いいや)

 

「沙綾もノリノリだね〜。うんうん、お姉さんは嬉しいよ」

 

「保護者か」

 

「沙綾はもう妹みたいな感じだよ〜。それに、雄弥も気にかけてたんでしょ?」

 

「…さぁな」

 

「あはは、素直じゃないね☆」

 

 

 沙綾も沙綾で抱え込んじゃうタイプみたいだしね、だからこそ雄弥も気にかけてるんだよね。…抱え込みすぎると心が疲弊しちゃうってことを知ってるから。

 

 

「りみもライブでなら自分を出せるようになったんだな」

 

「みたいだね〜。これはゆりさんも喜んだだろうな〜」

 

「そうだな。それも…あの子の影響か。みんなを引っ張って、それでいて支えてもらう。…いい関係性だな」

 

「だね〜」

 

 

 うんうん、あの子たちもお客さんも盛り上がっていいライブだね〜。技術が高いバンドとかはもちろん好きだけど、こうやってライブを全力で楽しむバンドも好きだな〜。

 ……あ、そうだ。帰る前に沙綾にCD渡さなきゃ。

 

 

〜〜〜〜〜

 

 

 ポピパのライブの後、感想を言いに再度ポピパの控室へと足を運んだ。あとで電話するなり、明日話すなりでいいと思ったんだが、結花が「こういうのはすぐに言いに行かなきゃ!沙綾だってその方が喜ぶから!」と押し切られた。ちなみに結花は今も他のバンドの演奏を見てる。……俺も見たかったんだが…。

 

 

「あ!雄弥さんだー!わたし達のライブどうでした!?」

 

「香澄落ち着け!そんなグイグイ行ったら迷惑だろ!」

 

「いや、気にしないでいいよ。ライブ、良かったよ。みんなが楽しそうにライブしてるから、こっちも楽しくなった」

 

「そうですか?…えへへ〜」

 

「香澄ちゃんが…」

 

「おとなしくなった!?」

 

「それより雄弥さん、沙綾の演奏どうでした?」

 

「ちょ!おたえ!」

 

「え?だって沙綾気にしてたじゃん」

 

「それも言わなくていいってばぁ…」

 

 

 おたえって、人のことをよく見ているんだろうが…、天然だからぶっ込むんだな。今だって、よくわからないが、沙綾が恥ずかしがってるのを気にせずに沙綾のことを聞いてきてるし。

 

 

「それで、どうでした?」

 

「おたえは鬼か!」

 

「何言ってるの有咲。私は人間だよ?」

 

「例えで言ってんだけどな!?」

 

「沙綾の演奏、カッコよかったよ。大変なパートが多かったのにしっかり叩けてたし、それでいてみんなと一緒に笑えてたし、…うん、素敵だった」

 

ふぇぇーありがとう…ございましゅ

 

「あれ?沙綾どうしたの?真っ赤だよ?」

 

「香澄ちゃんやめてあげてー!」

 

「え?え??」

 

「りみの言うとおりだよ香澄。沙綾のことを考えてあげなきゃ」

 

「おたえが言うのか…」

 

 

 ポピパ内での話もあるだろうし、長居しても仕方ないと判断して俺は部屋を後にした。出る前に改めてライブの感想を言い、沙綾にチケットをくれたことのお礼を言っておくのは、もちろん忘れてない。ライブはあまり再入場ができないのだが、ここはそこらへんも自由らしい。なんともオープンな店だ。

 

 客席に戻ろうしたら、見たことがある……いや、決して忘れることができない髪色をした女子がこちらへと歩いていた。場所を考えたら控室へと向かうのだろう。ま、そんな分析せずともわかるのだが…、

 

 

 なぜなら…向こうから歩いてきているのは、

 

 

 大切な幼馴染の1人

 

 

 日菜の姉であり、Roseliaのギターを担当している

 

 

 氷川紗夜なんだから。

 

 

〜〜〜〜〜

 

 

 思いがけないことが起きた。

 

 私は今日のライブに出演するためにライブハウスへと来ており、用意していただいている控室へと向かっていた。そうしたら、向こう側からよく知っている…昔からとてもとてもよく知っている、藤森雄弥くんが歩いてきたのだから。

 

 私は彼を認識した瞬間頭が真っ白になった。

 

 

(なぜ彼がここへ…?)

 

(そもそもなぜバンドの控室から…?)

 

(彼は私のことをどう思っているのだろうか…)

 

(いえ…、きっと嫌われてるわ)

 

(きっと彼は私を拒絶しに来たんだわ)

 

 

 纏まらない思考では、よくない方へと考えが及んでしまう。彼の性格、人柄からすればそんなことはありえないのに、脳が正常に働いていない私はそのことを忘れてただただ恐怖を感じている。

 体が震え、足取りが覚束なくなり壁へと体を預けた。目を閉じて現実から逃げようとする。だけど、彼は歩みを止めずにこちらへと近づいてくる。すぐそばで人の気配がした。きっと彼が私の目の前にいるのね…。

 

 そうわかっていても、私は未だに目を閉じて現実から逃げていた。

 

 だって、

 

 彼が私に優しくしてくれるのは、過去のことで…!

 

 今の私には嫌悪感しか抱いてないはずなんだから!

 

 彼は…私のせいで(・・・・・)……!

 

 

「紗夜大丈夫か?具合が悪いなら無理しないほうがいいぞ」

 

「……ぇ?」

 

 

 耳を疑った。彼にそんな言葉をかけられるなんて思ってなかったから。私は恐怖を堪えて目を開けることにした。

 今度は目を疑った。目の前には、心配そうな顔をしている彼がいたからだ。

 

 

(わからない…わからない!……なんで…なんであなたはいつも…!)

 

「……俺を拒んでるよな。…ごめん、Roseliaのライブを…紗夜の演奏を見ようと思ったんだが、止めといたほうがよさそうだな」

 

(…え…ん…そう?…雄弥…くんが?…わた…しの?)

 

「紗夜がバンドを組んで、ギターを弾いていてくれて嬉しいよ。結花も来てるから、どうだったかは家で聞くことにする。…ごめんな紗夜、極力会わないようにするから。鬱陶しく思ってるかもしれないが、応援してる。じゃあな」

 

(あ……)

 

「…紗夜?」

 

 

 私は横をすり抜けて行くように歩いていく雄弥くんの服を、無意識のうちに掴んでいた。気にしなければ簡単に振り払えるような弱々しい力だったのだけど、雄弥くんは立ち止まってくれた。

 困惑している彼の顔を見て、私もどうしたらいいのかわからないでいた。だって、気づいたら服を掴んでいたのだから。とりあえず何か話さなきゃ。

 

…て…いって

 

「ん?」

 

「…ライブを…見ていって」

 

「……え?」

 

「だって、雄弥くんは…ライブを見に来てくれたのでしょう?…なら、見ていって。最後まで…私たちRoseliaを、そして…私の演奏を見てほしい」

 

「紗夜はそれで大丈夫なのか?」

 

「…っ!……きっと大丈夫よ。ライブが始まれば、彼女たちとなら大丈夫なはず」

 

「そうか、なら見させてもらうよ」

 

「ええ」

 

「…それにしても…ははっ」

 

「…なによ」

 

「いや、悪いな。…紗夜が曖昧なことを言うなんてな。Roseliaに入って紗夜も変わったのか?」

 

「かもしれないわね。Roseliaに入って良かったと思ってるもの。……大切な居場所だわ」

 

「そっか」

 

 

 …不思議だわ。会うまでの時も、会ってすぐもあれだけ取り乱していたのに、会話をしたらそれまでの重荷が無くなったわ。肩の荷が降りたというか、胸がスッキリしたというか、とにかく私の気持ちは前向きになれたようだわ。

 

 

「それじゃあまた後で。紗夜の演奏も、Roseliaの演奏も楽しみにしてる」

 

「ええ。私たちにしかできないライブをするから、一瞬も目をそらさないで」

 

 

 雄弥くんの後ろ姿を見送りつつ、心が温まっていることを実感する。…恐れているだけでは駄目なのね。彼は私のことを嫌っていなかった、怨んでいなかった。彼の態度からそれは伝わってきた。改めて、あの時の話をしないといけないけれど、今日はライブに集中するとしましょう。

 

 

「あれ〜?紗夜なんかご機嫌じゃーん?何かあったの〜?」

 

「そんなことないわよ。私はいつも通りだわ」

 

「えー、絶対に今日の紗夜超機嫌いいよ〜。ね?友希那もそう思うよね?」

 

「そうかしら?リサの気のせいよ」

 

「えーー!」

 

「紗夜今日も最高の演奏を頼むわよ」

 

「湊さん……。ええ、もちろんです」

 

 

 湊さんが今井さんを抑えてくれたけど、…湊さんにまで気づかれるだなんて。詳しくは聞かないでいてくれる湊さんには、感謝しないといけないわね。もちろんお礼は演奏で。

 

 

絶対今日の紗夜いつもより機嫌いいと思うんだけどなー。燐子もあこもそう思うよね?

 

うーん…、あこもそんな気はするけど、友希那さんが違うって言ってるからやっぱり違うんじゃない?りんりんはどう思う?

 

…え……。えっと〜……、わたしには……いつもと…同じに見える…かな

 

 

 …今井さん、諦めてくれないかしら。




紗夜と雄弥の心情を整理しますと
紗夜も雄弥も、相手に嫌われていると"勝手に思い込んでいた"のです。実際にはそんなことないので、顔を合わせて話し合ってみたら、「思いの外大丈夫」となったのです。
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